月見里さん家の十人兄妹

冰彗

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一章

三話

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家の中に入った三夜たちは警戒した様子で兄弟たちを見ていた。

「ほら、あなたたちも自己紹介しなさい」

母親は兄弟たちを見てそう言うと夕吏は小さく溜息を吐いた。

「俺は月見里やまなし夕吏、一応社会人で二十五歳だ。よろしくな」

夕吏はそう自己紹介するとニカッと笑みを浮かべた。

「俺は月見里詠、毎日家にはいるけど一応小説家やってる。三夜、千夜、よろしく」

詠はそう言うと小さく微笑みを浮かべて頭を下げた。

「おれ月見里詩。専門学校に通ってて一応学生。家の事はおれと詠が交代でやってるから何か分からない事あったら気軽に言ってね」

詩はそう言うとにこりと笑みを浮かべた。

「俺は雫。高校生だけど怖くないからな」

雫は少しムッとした表情で自己紹介した為、詩に頭をペシッと叩かれてしまった。

「俺は霜、雫と同じ高校生。一緒にたくさん遊ぼうね」

霜は眠そうな表情のままそう言った。

「……あ、次僕か。僕は星那、本読むの好きだったら僕の部屋おいで。絵本もあるよ」

星那は一瞬ぼーっとしていたがきちんと自己紹介をした。

「ぼくは琥珀。たっくさん遊ぼうね」

琥珀はそう言うと子どもらしい無邪気な笑みを浮かべた。

「ぼくほたる、よろしく……!」

ほたるは今にも飛び掛からんばかりにスタンバっていた為、琥珀に抱き上げられていた。

一通り自己紹介を聞いた三夜と千夜は『人多いな』と言いたげな表情を浮かべていた。

「あなたたちも自己紹介してみて?」

母親は小さく微笑んだままそう言うと三夜たちと目線を合わせた。

「三夜です。三日の夜でみつや。よろしくお願いします」

三夜は淡々とした様子で自己紹介をした。そして三夜の後ろに隠れている千夜を前に出した。

「千夜、あいさつして」
「あい!ちよです!よろちくおねがいします!」

千夜は三夜に促され自己紹介をした。ところどころ上手く言えないのか噛んだりもしていたがきちんと自己紹介出来ていた。

「上手に自己紹介出来たわね、千夜ちゃん偉い!」

母親はそう言うと千夜の髪を梳かすように優しく頭を撫でた。

そしてしばらく千夜の頭を撫でていた母親は撫でるのをやめて立ち上がり夕吏たちの方を見て。

「じゃあ、あとはよろしくね」

と言い放った。

「ええええぇぇええええっ!!???」

夕吏たちが驚き叫ぶなか、母親と父親はケラケラと笑いながら仕事に向かったのであった。

(これ、大丈夫かな…)
(大丈夫じゃない気がする…)

詩と詠は目配せをしてそう同時に思った。
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