僕を愛して

冰彗

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前触れ

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 小さい頃から愛を感じずに生きてきた。愛をくれたのは実の姉さんである心華姉さんだけ。

 それ以外の人たちは僕のことを『可哀想に。五月七日つゆり家の子なのに、オメガだとさ』とか『五月七日家の嫡男はオメガだそうだ、五月七日家の子なのにねぇ』と話していた。

 僕の実家は地元では有名な名家。

 それなのに、僕はオメガとして生まれた。父親は言った、『失敗作だな』。母親は言った、『オメガだなんて……世間に顔向け出来ないわ……』。

『良い、心広みひろ。オメガだからとかアルファだからとか関係ない。強く生きなさい。強く生きていれば、きっとあなたを助けてくれる人が現れてくれる。少なくとも、姉さんは心広の味方よ』

 姉さんはそう言って僕の頭を優しく撫でてくれた。

 時は経って僕は二十五歳になった。我が子は六歳になっている。

斐都あやと、あんまり急ぐと転んじゃうよ」

 桜舞い散る春の季節。その年に運命のアルファと出会うだなんて、思ってもみなかった。
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