僕を愛して

冰彗

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第一章

『第十四話』

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「多分、このことが心広さんの覚えていないことかと」

 三日月さんはそう言うと僕の方を見てにこりと笑った。

 ――刹那、断片的にだが思い出してきた。

 僕も学校帰りだったんだ。その時、僕より身長の高い高校生が女性に迫られていて、困っていたんだ。困っていたのと同時に、怖がっていた。僕が間に入っても下がらなくて、だから僕はその子のてを引いて逃げたんだ。その時、タイミング悪くヒートになってしまって。意識が混濁していく中、覚えているのは『助けないと』という気持ちのみ。

「あの時の子、三日月さんだったんですね」

「思い出したんですか?」

「断片的にだけど」

「あの時から俺は心広さんと番になりたいって思ったんです。これは、理性ではなく本能が言っているんです。今だって、番にしたいって叫んでます」

 三日月さんはそう言うとベンチから立ち上がり僕の前に跪き、僕の両手に握った。

「お願いです、心広さん。僕と番になって下さい」

「っ、はい」

 涙を流しながら返事をする。了承の返事を。

 その瞬間、三日月さんに抱き締められる。

「よかったっ……! 今回振られたら泣くかもでした」

「泣くほどなんですか?」

 泣きながらクスクスと笑うと三日月さんは同じようにクスッと笑った。

 顔を見合わせると自然と唇を合わせキスをする。

 幼い子どもがするような触れ合うキスをしていると周りの目線に気付いた。

「三日月さん、ここ、公園です」

「あっ」

 お互い場所のことを忘れていたらしい。

 小さな子どもが僕らを見て「ちゅーしてる!」と指差している。恥ずかしくて顔が赤くなる。

「いいでしょ、お兄ちゃんの大事な人だよ」

 赤くした僕の顔を隠すように抱き締めると三日月さんは子どもたちの方を見るとそう言い放った。多分、すっごい嬉しそうな顔をしているんだろうな、三日月さん。

 そんなことを思いながら三日月さんを抱き締め返した。
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