僕を愛して

冰彗

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第一章

『第二話』

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 昼食を食べ終え、僕と斐都はソファに座ってテレビを見ていた。といっても今の時間帯にやっているのは子ども向けの番組ではないため録画していたものを流しているだけなのだが。

 そういえば、と溜まっていた洗濯物の存在を思い出す。

 外の風景をベランダから見てみると午前中と変わらず雨は降り続いていた。スマホで天気を確認してみると今日、明日はずっと雨が降っているようだった。

「コインランドリーにでも持って行こうかな」

「おそといくの?」

 反応早い。

「ううん、違うよ。下に階にある共有コインランドリーに持って行くんだよ」

 滅多に使わない共有コインランドリー。こういう時のために使うんだよな。

「おそとでて、ママはだいじょーぶ?」

 斐都は心の底から心配したような眼差しで僕を見てきた。斐都が心配しているのは、オメガの僕が出ても大丈夫なのかということ。

 ――我が子にも心配掛けるだなんて。我ながら情けない。

 心の内でそう思いながら僕は小さく微笑みを浮かべ、斐都の頭を優しく撫でた。

「大丈夫。ヒートはまだ来ないから」

 安心させるように言うと斐都は納得したらしく「ならいーけど」と言った。

 本当に、優しい子に育ってくれてよかった。

 そんなことを思いながら脱衣所に向かい洗濯機の中から洗濯物を取り出してカゴの中に入れていく。

 そうしていると斐都が脱衣所にやってきた。

「ママ」

「ん? どうしたの?」

「クマさんもっていってもいい?」

「うん、いいよ。落とさないように気を付けてね」

「うん」

 斐都は嬉しそうに笑みを浮かべるとクマの人形をぎゅっと抱き締めた。

 うん、うちの子可愛い。
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