僕を愛して

冰彗

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第一章

『第一話』

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 十二月五日、土曜日。折角の休日だというのに、その日は生憎の雨だった。雨が降っていることに気付いたのは午前十時。朝食を食べ終え、息子の斐都あやとと共にゆっくりしている時だった。

「ママ、あめふってきたよ」

「え、嘘」

「ほんとう」

「うわぁ、本当だ。どうしよう、洗濯物溜まってるのに」

「ね~」

 最初にも言ったように今日は折角の休日。締切を抱えているわけでもなく、かといって急いでやる必要もない。そういう日の休日は、家事をするのと同時に普段はあまり出来ていない斐都の遊び相手もやっているのだ。

 今日の予定は洗濯物を干して、掃除機を家中掛けて、昼食を食べ終えたら斐都を連れて近くの公園で一緒に遊ぶ。そのはずだったのだが……。

「所詮、予定は予定だしなぁ。斐都、今日は家の中で遊ぼうか」

「うん」

 物分かりのいい子で良かった、と心の底から思う。

 袖をまくり僕は家事をすることにした。朝食の分の皿洗い。掃除機を家中掛けてついでにテーブルの上を拭いたり本棚の整理もする。僕が家事をしている間、斐都は大人しく絵本を読んでいたり、お気に入りのクマの人形で遊んでいたりしていた。

 ある程度の家事を終えて時計を見ると午前十一時四十五分。そろそろ昼食を作り始めてもいい時間帯だ。

「アヤ、お昼何食べたい?」

「んとね、ぞーすい」

 まさかの雑炊ぞうすい

「えっ、雑炊でいいの? 具合悪い?」

「んーん、ぼくがたべたいだけ」

「そ、そう。じゃあ雑炊作るね」

 再度聞いてみる、なんなら具合が悪いのかと疑ったがどうやら違うらしい。

 にしても雑炊が好きだなんて変わった子だ。

 そんなことを思いながらキッチンに入り雑炊を作るため、小さめの鍋を取り出す。

 鍋に少なめの水を入れ、白出しをおたま一個分入れる。少しかき混ぜてから火を付け沸騰したらお茶碗一杯分のご飯を鍋の中へ。おたまでかき混ぜてまた沸騰させる。その間に卵を割って混ぜて頃合いを見計らって鍋の中へ卵を流し込み、少し混ぜたら完成だ。

 我ながら雑な昼食だ。

「アヤ、出来たよ。絵本とかおもちゃ出してたら片付けて」

「はーい」

 いい子の斐都はちゃんと返事をしておもちゃはおもちゃ箱へ、絵本は本棚へと片付けた。

 僕は斐都が片付けている間に僕と斐都のお椀に作ったばかりの雑炊を注いだ。

 今日もいつもと変わらない日常。僕は、この日常に幸せを感じているし、感謝もしている。

 この日常がずっと続きますように。

 心の中でそう呟いた。
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