僕を愛して

冰彗

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第一章

『序章』

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 いつも夢に見るのは一番苦しかった記憶。己の身体に伸びてくる数人の手、己の身体を舐め回すようね視線、飛んでくる暴言。

 それらに我慢しながら僕は「ごめんなさい、ごめんなさい」と誰に謝っているのか分からない謝罪を述べ続ける。

 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい――オメガに生まれて、ごめんなさい。

 謝罪を幾つ並べても、己の身体を撫で回す手はいなくならなず、己の身体を舐め回すような視線は消えず、ただただ嘲笑う声だけが僕の頭の中で木霊する。

 呼吸が苦しくなってくるのを感じ、目が覚めてしまう。

 そんな夢を見るのは数回なんてものじゃなかった。毎日、毎日、毎日、眠ろうとすると見るのだ。

 忘れるな、とでも言うように。

 それから、僕はまともに眠ることすら出来なくなってしまった。
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