儚げな君の写真を撮りたい

冰彗

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十話

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 心のもやもやを解消する術が思い付かず、俺は酒を煽るように飲んだことしか覚えていない。

 目を覚ますと見慣れた自室の天井ではなく、知らない天井だった。ベッドの匂いも、嗅いだことはあるけれどどこで嗅いだかは思い出せない。

「頭、痛い…」

 手の平を額に当て抑えると二日酔いの症状と思われる頭痛に襲われた。右隣が妙に温かいと思い右隣を見るとそこには眠っている八月一日の姿があった。

「っ⁉︎」

 思わず大声を出してしまいそうになるのをなんとか止め、眠っている八月一日をまじまじと見る。

 こいつ、寝ていると余計女性に見えるな。

 そんなことを思いながら八月一日の長い髪を梳かすように頭を撫でていると八月一日は「んん…」と小さく唸って寒いのか体を小さく縮めていた。

 俺は慌てて自分に掛けられていた毛布を八月一日に掛ける。まだ秋とはいえ、寒い日は寒いのだ。朝方なんかは特に。

 またまじまじと見つめていると八月一日は瞼をゆっくりと開いて俺をじっと見てきた。

「八月一日、おはよう」

「おはよう、月島君」

 八月一日はそう言うと上半身を起こし背伸びをしてから俺の方を見て「昨日のこと、覚えてる?」と問い掛けてきた。正直、酒を煽るように飲んでからは全然覚えていない。

 黙ったまま目線を逸らした俺を見て察したらしい八月一日は「覚えてないんだね」と言ってきた。

「悪い、潰れるまで飲んだことなくて……」

「良いよ。キャパ分からなかったのは僕もだし」

 そう言い八月一日はベッドから降りてキッチンへ向かった。

「温かいの飲む? 味噌汁とかあるよ、インスタントだけど」

「嗚呼、頼む。頭痛くてな…」

 頭が痛い中、無理矢理体を起こそうとしていると八月一日は「無理に起きなくていいよ。寝てて」と言ってくれた。

「いや、悪いよ」

「後で二日酔いの薬出してあげるから、寝てて」

 こちらをチラリと見て小さく微笑んだ八月一日を見てまたもやドキッとした。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 俺はそう言うと再びベッドに寝転がった。

 刹那、姉貴が言っていた言葉を思い出す。『心がドロドロしているのは恋をしている証拠じゃないのか』的な言葉を。

 いや、実際恋しているとして相手は誰だ? 最近知り合った奴なんて八月一日以外居ない気が……。

 そんなことを思いながら寝転がったままキッチンに立っている八月一日の姿を見た。邪魔に思ったのか腰まで伸びている白銀色の髪を一個の三つ編みにしている姿はとても可愛いと思う。

 新妻に見えるのは俺だけか?

 そんな馬鹿げたことまで思う始末だった。
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