儚げな君の写真を撮りたい

冰彗

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第七話

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 飲み物のお酒が届いてから十分が経った。八月一日はお酒に弱かったらしく、既に頬が赤く染まって目がぼーっとしている。けれど表情は普段となんら変わりない。何事もないように澄まし顔でカシスオレンジを飲んでいる。その顔を盗み見ていると八月一日は俺の方へ目線をやった。

「つきしまくんは、おさけつよいね」

「まあ俺の家系、酒豪しかいないからな。肝臓は強い方だと思うぞ」

「ふーん…」

 八月一日は素っ気ない返事をしてはカシスオレンジをまた一口飲んだ。一口が少な過ぎてちびちび飲んでいるが可愛いとすら思ってしまう。

 そんなことを思っていると突然八月一日は「つきしまくん」と俺の名前を呼んだ。

「ん? どうした?」

「ぼくにかまわなくていいよ」

 突然舌ったらずな様子でそう言われ、俺は目を見開いた。

「なんで構わなくていいんだ?」

「ちょうしにのっちゃうから、やさしくしないで…」

 なんだその可愛い理由は‼︎

 そう叫びたいのを我慢して「調子に乗っていいんじゃないか?」と言ってみる。それは俺の本心だった。

「だめなの」

「なんで駄目なんだ?」

 幼い子どもに話し掛けるように問い掛けると八月一日は泣きそうな顔をした。

「ほ、八月一日?」

「だって、なかよくなって、いずみみたいにどこかいっちゃったら、ぼくしんじゃう…」

 八月一日はそう言うと決壊したダムのように涙をポロポロと流し始めた。俺は、泣いてしまうとは露ほども思っていなかった。だから慌ててしまった。

 ポロポロと涙を流す八月一日の姿は、息を飲むほど美しかった。心がドキドキして、胸の高鳴りだけが鼓膜で響く。

「つきしまくんも、どこかいっちゃうのが、こわい」

 八月一日はそう言うとテーブルに突っ伏して静かに泣いていた。俺は反対側に座っていたのだが八月一日の隣に座り彼を優しく抱き締めた。

「大丈夫、どこにも行かねぇよ」

「っ、ほんと……?」

「嗚呼、本当だ」

 俺は心から思ったことを言うと八月一日は顔を上げて俺を見る。潤んだエメラルドグリーンの瞳がとても綺麗だった。そし心の底からホッとしたような表情を浮かべて「よかった」と笑うとそのまま俺のことを抱き締め返してきた。

 なんで、こうなったんだっけ?

 俺は内心現実逃避をした。
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