群像転生物語 ――幸せになり損ねたサキュバスと王子のお話――

宮島更紗/三良坂光輝

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四章    ―― 夢と空の遺跡 ――

間奏  『子供たちの夜』

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――とある世界。とある時代の、とある夜の話。



「ねえ、悠人、起きてる?」

「……寝てる」

「起きてる!」

「うるさいな。これで何度目だよ。つばさ」

「だって寝られないんだもん。……今日、楽しかったね」

「ああ、SL博覧会はずっと行きたかったからな。……誰かさんがいなきゃ、もっと楽しかった」

「……意地悪。ほんと、意地悪」

「小四にもなって、迷子になるお前が悪い」

「だって……犬がいたから。撫でてるうちにいなくなったのはそっちでしょ」

「俺も、俺の親も後ろから着いてきてると思ったんだよ」

「……でも嬉しかった。悠人が見つけてくれた」

「暢気だな。こっちは焦ってたんだからな。……まあ、見つけられて良かったよ」

「なんで、あの場所が分かったの?」

「あー……内緒だ」

「??」

「と、ともかく、いい加減、ふらっとどっか行く癖やめろよ」

「そんな癖ないよ!」

「いいや、ある。水族館行ったときも、この前公園に行った時も……」

「……そう言われると、そうだけどさ」

「どっか出歩くときは、……俺の手――」

「なんて? 声小さくて聞こえなかった」

「なんでもない。とにかく、俺達ももうすぐ高学年だ。迷子になるのはこれっきりな」

「うん……分かった」

「一緒に寝るのもこれっきりな」

「えー!!」

「十歳にもなって一緒のベッドで寝るのはおかしいだろ」

「別にいいじゃん。お父さんもお母さんも悠人ならいいって言ってるよ」

「そりゃ俺らの親はな。けれど、友達はどうだ?」

「う……おかしいって言ってる」

「だろ? だからもう一緒には寝ない」

「……」

「それに俺の問題も――つばさ?」

「……馬鹿」

「あ?」

「折角今日、楽しかったのに。本物の機関車とか、一緒に見られて楽しかったのに……」

「ああ。あれは興奮し――ぶっ!?」

「悠人の馬鹿!」

「お、おーい、枕いらないのか?」

「いらない!」

「……すねてるのか?」

「すねてない!」

「すねてんじゃねーか。……こっちにくるか?」

「……」

「おーい、つばさ」

「……」

「あー、もう。分かった。俺が悪かった。……最後とか、もう言わないから」

「ほんと!?」

「最後かどうかは、あー、お前次第っていうか、二人しだいっていうか……」

「??」

「……なんでもない。いい加減、寝ようぜ」

「はーい」

「……」

「……」

「……暑い。やっぱ離れろ」

「やだ」

「……どっちが意地悪だ」

「悠人には負けるよ。おやすみ」

「……おやすみ」

「……」

「……」

「……」

「……悠人」

「……」

「また一緒に、こうやって――


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