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帝都のひと夏

カレンブルクのお茶会へようこそ(ディアナは居心地が悪いⅠ)

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異国風のおしゃれなお仕着せを着た侍女に席まで案内して貰うとやっと一息ついた。
「こら、そんな姿勢で座るな、みっともない。」
ルー兄さまが小声で注意してくるけれど、、、一体誰のせいでこんなに脱力してると思っているのよ。
「兄さまの態度に驚いて疲れちゃったんだもの。今はこのテーブル、私たちの他誰もいないんだから構わないの。」
お祖母さまのいる席に行くのかと思ったら、私たちは、近くだけどちょっとインテリアの影になった場所に案内された。子供だから粗相してもいいように大人の席から隠されたのかな?
しかも、あと二席空いてるけど、今は私たちだけ。
私がちょっとむくれると、ルー兄さまの後ろに控えたマックス殿下が小さく笑った。
「俺も驚いた。ルーファス、どうしたんだお前?どっちかって言うと慎重に相手を見極めるタイプだろう?」
いきなり噛みつくなんてお前らしくないな。そう言うマックス殿下に、兄さんはぶすっとした声で答える。
「攻撃は最大の防御なんだよ。それに、、、」
さっと辺りを見回す。
「馬車を降りて見回した時にも思ったが・・・俺たちにとってあまり良い客層じゃないんだ。」
「?そうなの?」
私もちらっと見てみるが、一昨日会った人、それもコンラート一門の仲間と言われた人も結構いる。
私の顔にははてなマークが飛んでいたらしい。兄さまは溜め息を一つ吐いた。
「お前の考えていることは分かる。コンラートの下僕が居るのにって思ったんだろう?でも、あいつら、あまり強くない家門の、しかも伯爵以下の連中だからな。いざと言う時、伯父上に丸め込まれるだろう。それなのに高位貴族は南の奴らが多い。」
今来た一団を見て少し顔をしかめてから、言葉を継ぐ。
「あいつも来るなんて・・・」
ルー兄さまがそんな嫌そうな顔する人って誰だろう?
気になってそっと振り返ると、チラッと横顔が見えた。ステファンさんだ。
確かにちょっと構えちゃうかも。
近い席で気付かれたらイヤだな、と思っていたら、インテリアの影で見えないところに案内されたみたい。
ホッとしていると、兄さまが続けた。
「なんか仕組まれてるかもしれない。攻撃的な態度さっきのは、きな臭いって分かってるんだって伯父上に伝えたんだよ。」
「そ、そうなの?でも、それにしても私たちは子供だし、味方も少ないんなら、もうちょっと穏やかに伝えても良かったのに・・・」
私が遠慮がちに言うと、ルー兄さまは、ハッと悪い顔で笑った。
「だからだ。子供だから多少の無礼も許されるだろ?気に入らないってアピールはしたんだ。双子と交流しろと言われないように一発かましたしな。茶を一杯飲んだらさっさと帰るぞ。幸いこの席は他のところからは見えにくい位置だし、俺たち以外いないし・・・」
兄さまの言葉が途切れた。どうしたの?小首をかしげると、背後に視線を送られる。え、後ろ?
振り返ろうとした時。
「失礼致します。」
落ち着いた声がした。あ、空いてる席の方が来たのかしら?
振り返った私の視線の先にいた侍女が脇に退く。
後ろに居たのは母さまくらいの年頃の貴婦人と、後ろにもう一人、、、男性?
「ロイス侯夫人、申し訳ございませんがもう少しお待ち下さいませ。ロイス卿はこちらの席でございます。」
その言葉に驚いて振り仰ぐと。
「あ・・・」
「えっ?」
そこには驚いて一歩後ずさったジキスムント君が居た。
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