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帝都のひと夏
兄妹パジャマパーティⅩ(終)ルー兄さまは頼られたい
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妹が大変なことになっている。
俺がそう気付いたのは、迂闊にも、皇帝一家に初めて拝謁した時だった。
それまで無表情だった皇太子殿下が、ディアナからの挨拶を受けた途端満面の笑みで立ち上がり、近付いてきたと思ったら指先に口付ける。
父上やフィン兄様の冷気を感じながら、俺はある意味感動していた。
皇太子なら、少なくとも父上の情報は持っているだろうに。この、家族にしか興味を示さず、特に母上と妹を執愛する稀代の魔導師の前であんな挑発するような行動を取るなんて、なんていう蛮勇なんだと。
この人の多い会場でどんな災害が起こってしまうのか?諦めつつ思ったが、しかし、それは起こらなかった。と言うより、阻止された、、、どうやら妹によって。
我が家の魔導師三人の表情を眺めながら、内心溜め息を吐く。
何で一番小さいのが、一番常識的なんだ。
妹の魔術の才能は小さい頃から知っている。父上譲りの天才だ。膨大な魔力量に体がついて行かないと長く魔力封印していたけれど、父上と帝都に滞在している間に、とうとう解放してしまったらしい。
この事態を見るに、解放して良かったと言うべきなんだろうが、、、小さかった妹が、それ故に魔力に溶けそうになっていた姿を目の当たりにしている俺としては、出来る限り長く封印して欲しかった。あんな恐怖は二度と味わいたくない。
ともかく。
自身の命が危うかったことに気付いていたのかどうか。
皇太子は妹に、引いては我々一族とこの拝謁を見ているこの場全ての人々に、自分はバーベンベルクのディアナを気に入っている、とはっきりと示してきた。
これは、何の意図で?
俺はその場を退去しながら考えた。
悩むまでもない。縁談だ。皇太子は、、、つまり帝室は、妹を皇太子妃に考えているということだろう。念のため、ちら、と宰相である伯父上やオリヴィエ殿を伺ったが、一切の動揺を感じなかった。
これは、結構進んでいる話ということか?
でも、それならなぜ父上は止めなかったんだろう?辺境伯であり、骨の髄まで騎士である母上なら、帝室の意を受入れることもあるだろうが、父上が妹をバーベンベルクから出すとは考えられない。
これは一度折を見て母上に確認しなければ。
懸案事項の一つとして心に留めつつ、始まったばかりの社交をこなしていく。
コンラート一門としての挨拶を一通り終えたあとは、オリヴィエ殿に連れられて、優秀な若手の屯しているところに顔を出した。
食事をしながら親睦を深めようということで、俺は正直どんなレベルの話が出るのか緊張しながら向かったが。
「君がバーベンベルクのルーファス君か?オリヴィエに聞いたけど、文官志望だって?僕は外務にいるんだ。よろしくな。」
「はい、よろしくお願い致します。それで、先輩はどのような施策を・・・」
「ところで君の妹君、可愛いよね。ディアナ嬢だっけ?彼女は皇太子殿下とはどんな関係なの?」
オリヴィエ殿お墨付きの十数人の挨拶は、ほぼ全て同じようなものだった。
これは、、、。妹は殿下に外堀を埋められたのか?
優秀な官僚の活発な議論を期待していた俺はガッカリしつつも流石に心配になった。
だから、先ほど夜空で二人きりになったのを幸い、妹に声を掛けたんだが。
「兄さま、誤解よ。殿下はすーっごく外面の良い方なの。」
妹はあっけらかんとして否定してきた。
驚いた。
まさか、あのアピールを外面の良さで流してしまうとは。
何という鈍感力だ。
呆れて黙った俺をよそに、妹は今度は素の殿下の様子を語り始めた。
おい、おいおい。お前はいつの間にそんなに殿下と親しくなっているんだ?
またもや驚くと、新しいお友達がね、と言ったノリで知り合った経緯など嬉々として話してきた。
挙句に、自分を女の子として気に入ってるとは思わないと言う。
待ってくれ。
この鈍ちんめ。いけすかないと思っていた皇太子殿下が、何だか気の毒になってきたじゃないか。
しかし困った。
この調子でやられたら、デビュー前とはいえ、色々問題を起こしそうだ。今日の若手の集まりで得た数少ない情報によれば、妹は、社交界に出ている彼等から見ても、どうやらとっても可愛いらしいのだから。
仕方ない、どうせすぐに学園に入るから、交友関係はとりあえず置いておこうと思ったけれど、付き合うか。
俺は溜め息を吐くと社交に付き合うと伝えた。
危なっかしくて見ていられない。当然の判断だというのに。
妹は素直に感謝をせず口答えしてきた。
生意気な。言い争ううち、別件で用が出来た兄二人と分かれ、俺たちは部屋に戻ることになった。
途端に心細そうな顔をする妹。
俺は頼りないか?腹立つな。
とりあえず部屋に送って、俺に出来る精一杯で元気づけてやった。
部屋に戻ってベッドに寝転がり考える。
まあ、確かに俺は二歳上なだけの、魔力の才も騎士の力も無い兄だけど。
それでも、お前に一番身近な兄として、そばで助けてやる事くらいは出来る。
もうちょっと頼れよな、、、ディアナ。
俺がそう気付いたのは、迂闊にも、皇帝一家に初めて拝謁した時だった。
それまで無表情だった皇太子殿下が、ディアナからの挨拶を受けた途端満面の笑みで立ち上がり、近付いてきたと思ったら指先に口付ける。
父上やフィン兄様の冷気を感じながら、俺はある意味感動していた。
皇太子なら、少なくとも父上の情報は持っているだろうに。この、家族にしか興味を示さず、特に母上と妹を執愛する稀代の魔導師の前であんな挑発するような行動を取るなんて、なんていう蛮勇なんだと。
この人の多い会場でどんな災害が起こってしまうのか?諦めつつ思ったが、しかし、それは起こらなかった。と言うより、阻止された、、、どうやら妹によって。
我が家の魔導師三人の表情を眺めながら、内心溜め息を吐く。
何で一番小さいのが、一番常識的なんだ。
妹の魔術の才能は小さい頃から知っている。父上譲りの天才だ。膨大な魔力量に体がついて行かないと長く魔力封印していたけれど、父上と帝都に滞在している間に、とうとう解放してしまったらしい。
この事態を見るに、解放して良かったと言うべきなんだろうが、、、小さかった妹が、それ故に魔力に溶けそうになっていた姿を目の当たりにしている俺としては、出来る限り長く封印して欲しかった。あんな恐怖は二度と味わいたくない。
ともかく。
自身の命が危うかったことに気付いていたのかどうか。
皇太子は妹に、引いては我々一族とこの拝謁を見ているこの場全ての人々に、自分はバーベンベルクのディアナを気に入っている、とはっきりと示してきた。
これは、何の意図で?
俺はその場を退去しながら考えた。
悩むまでもない。縁談だ。皇太子は、、、つまり帝室は、妹を皇太子妃に考えているということだろう。念のため、ちら、と宰相である伯父上やオリヴィエ殿を伺ったが、一切の動揺を感じなかった。
これは、結構進んでいる話ということか?
でも、それならなぜ父上は止めなかったんだろう?辺境伯であり、骨の髄まで騎士である母上なら、帝室の意を受入れることもあるだろうが、父上が妹をバーベンベルクから出すとは考えられない。
これは一度折を見て母上に確認しなければ。
懸案事項の一つとして心に留めつつ、始まったばかりの社交をこなしていく。
コンラート一門としての挨拶を一通り終えたあとは、オリヴィエ殿に連れられて、優秀な若手の屯しているところに顔を出した。
食事をしながら親睦を深めようということで、俺は正直どんなレベルの話が出るのか緊張しながら向かったが。
「君がバーベンベルクのルーファス君か?オリヴィエに聞いたけど、文官志望だって?僕は外務にいるんだ。よろしくな。」
「はい、よろしくお願い致します。それで、先輩はどのような施策を・・・」
「ところで君の妹君、可愛いよね。ディアナ嬢だっけ?彼女は皇太子殿下とはどんな関係なの?」
オリヴィエ殿お墨付きの十数人の挨拶は、ほぼ全て同じようなものだった。
これは、、、。妹は殿下に外堀を埋められたのか?
優秀な官僚の活発な議論を期待していた俺はガッカリしつつも流石に心配になった。
だから、先ほど夜空で二人きりになったのを幸い、妹に声を掛けたんだが。
「兄さま、誤解よ。殿下はすーっごく外面の良い方なの。」
妹はあっけらかんとして否定してきた。
驚いた。
まさか、あのアピールを外面の良さで流してしまうとは。
何という鈍感力だ。
呆れて黙った俺をよそに、妹は今度は素の殿下の様子を語り始めた。
おい、おいおい。お前はいつの間にそんなに殿下と親しくなっているんだ?
またもや驚くと、新しいお友達がね、と言ったノリで知り合った経緯など嬉々として話してきた。
挙句に、自分を女の子として気に入ってるとは思わないと言う。
待ってくれ。
この鈍ちんめ。いけすかないと思っていた皇太子殿下が、何だか気の毒になってきたじゃないか。
しかし困った。
この調子でやられたら、デビュー前とはいえ、色々問題を起こしそうだ。今日の若手の集まりで得た数少ない情報によれば、妹は、社交界に出ている彼等から見ても、どうやらとっても可愛いらしいのだから。
仕方ない、どうせすぐに学園に入るから、交友関係はとりあえず置いておこうと思ったけれど、付き合うか。
俺は溜め息を吐くと社交に付き合うと伝えた。
危なっかしくて見ていられない。当然の判断だというのに。
妹は素直に感謝をせず口答えしてきた。
生意気な。言い争ううち、別件で用が出来た兄二人と分かれ、俺たちは部屋に戻ることになった。
途端に心細そうな顔をする妹。
俺は頼りないか?腹立つな。
とりあえず部屋に送って、俺に出来る精一杯で元気づけてやった。
部屋に戻ってベッドに寝転がり考える。
まあ、確かに俺は二歳上なだけの、魔力の才も騎士の力も無い兄だけど。
それでも、お前に一番身近な兄として、そばで助けてやる事くらいは出来る。
もうちょっと頼れよな、、、ディアナ。
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