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帝都のひと夏
四阿にてⅡ
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お茶を飲みながら、殿下のお話を聞いている。
どうやら、私の知らないところで、私の婚約話が進んでいるらしい。しかもそのお相手の中には殿下が入ってるとのこと。
「殿下の婚約者候補・・・」
驚いて私が呟くと、殿下は苦々し気に否定した。
「違う。ディアナ嬢の婚約者候補の一人が俺だ。」
思わずお茶を吹きそうになる。それって、つまり、、、。恐る恐る殿下を見ると、ぶっきらぼうに頷かれた。
「選択権は俺じゃない。君にある。」
「・・・」
突然何なの~!!心の中で絶叫する。声に出さなかったのを褒めて欲しいわ!
動揺を抑えるために目の前のプラリーヌをポイポイ口に放り込む。
そんな私を見て少し表情を和らげた殿下は、自分も軽食を摘まみながら、口を開いた。
「俺も聞きたかったんだが・・・。君は帝都に来るにあたって辺境伯や魔導師団長から何も聞いて無いのか?」
甘いものを食べて少し気分が落ち着いた私は、色々思い返してみる。
「はっきりとは何も・・・。バーベンベルクを発つ前に、母からは、私くらいの時から婿探しに帝都に来ていたと聞きましたが、私については何も言われませんでした。」
「魔導師団長は?こっちに来て、俺達に会った話をした時とか・・・」
「父はむしろ、殿下を始め若い殿方への警戒心が強くて。そうそう、殿下に名前で呼べと言われた後は、監禁されそうになりました。」
「グフッ!」サンドウィッチをのどに詰まらせる殿下。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。済まない、無作法を。びっくりしてしまって。」慌ててお茶で流し込んでる。
「驚きますよね・・・私も流石に怖くて。まあ、何とかなりましたけど。」魔力解放しちゃったけどね。
「そうか・・・何も知らないで、帝都に来たついでに社交界に出て来ちゃったってことか・・・」
殿下は再び難しい顔になって考え込む。
「そうすると、先ほどの挨拶はやりすぎだったか?」殿下、心の声ですか?漏れてますよ。
「ええ、今のような素の殿下と違いすぎて、ちょっと気持ち悪かったです。」
敢えてずけずけ言ってにっこり微笑むと、殿下は赤くなって反論してきた。
「な‼気持ち悪いって、それが皇太子の挨拶に対して言う言葉か?俺はお前にあまり多く男が群がるとうっとおしいだろうと思って・・・」
「威嚇して下さったんですね。有難うございます。」さらに笑みを深めると、
「威嚇とはなんだ威嚇とは。獣でもあるまいし。牽制してやったんだ。皇太子が興味を示したとなれば、一握りの高位貴族以外は寄って来なくなる。君もその方が煩わしくないだろう?」
殿下は向きになって言い募って来た。
「私は帝都でお友達が出来ると良いなと思って来ました。どんな方と知り合いになり、お友達になるかは、自分で決めたいですし、身分で分けようなんて思いもしませんでしたわ。」
殿下の話を聞くと、中堅以下の貴族の男の子とはもう親しく出来ないと言うことになる。少し残念に思って言うと、殿下はむっとした。
「なんだよ。ちやほやされたいのか?言っとくけど、高位貴族だってそれなりにいるから、相手にしだすと結構時間取られるぞ。仲良くなりたい奴がいるんだろ?時間は有効に使えよ。」
「ちやほやされたいなんて言ってません!素の殿下は、少し社交の時の言葉遣いを取り入れた方がよろしいと思いますわ・・・て、仲良くなりたい人?」
言い合いながら、つい小首をかしげると、殿下は再び気まずげな顔になった。
「済まない。話は聞いてる。ジキスムントと仲良くなりたいんだろう?正式な挨拶はもう済ませてると思うが、ゆっくり話してないんじゃないか?今、近衛兵に呼びに行かせてるから・・・そう言えば遅いな。どうしたんだろう。」
言いながら思い出したようにまた小径の方を見る。
「え?それって・・・」
私がいぶかしげに言うと、殿下は小径の方を向いたまま言った。
「まあ、詳しい話は置いといて。俺があんな挨拶すると、ジキスムントは、と言うかロイス侯爵家は、君との接触を控えるだろう。そういう家なんだ。だから、こうやって君とあいつが話せる場所を確保したんだ。時間が足りなくてあいつにも君にもその場で連絡する羽目になったが・・・ああ、来たかな?」
確かに、バタバタと足音がして。
私も思わず緊張して小径の方を見つめてしまった。
どうやら、私の知らないところで、私の婚約話が進んでいるらしい。しかもそのお相手の中には殿下が入ってるとのこと。
「殿下の婚約者候補・・・」
驚いて私が呟くと、殿下は苦々し気に否定した。
「違う。ディアナ嬢の婚約者候補の一人が俺だ。」
思わずお茶を吹きそうになる。それって、つまり、、、。恐る恐る殿下を見ると、ぶっきらぼうに頷かれた。
「選択権は俺じゃない。君にある。」
「・・・」
突然何なの~!!心の中で絶叫する。声に出さなかったのを褒めて欲しいわ!
動揺を抑えるために目の前のプラリーヌをポイポイ口に放り込む。
そんな私を見て少し表情を和らげた殿下は、自分も軽食を摘まみながら、口を開いた。
「俺も聞きたかったんだが・・・。君は帝都に来るにあたって辺境伯や魔導師団長から何も聞いて無いのか?」
甘いものを食べて少し気分が落ち着いた私は、色々思い返してみる。
「はっきりとは何も・・・。バーベンベルクを発つ前に、母からは、私くらいの時から婿探しに帝都に来ていたと聞きましたが、私については何も言われませんでした。」
「魔導師団長は?こっちに来て、俺達に会った話をした時とか・・・」
「父はむしろ、殿下を始め若い殿方への警戒心が強くて。そうそう、殿下に名前で呼べと言われた後は、監禁されそうになりました。」
「グフッ!」サンドウィッチをのどに詰まらせる殿下。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。済まない、無作法を。びっくりしてしまって。」慌ててお茶で流し込んでる。
「驚きますよね・・・私も流石に怖くて。まあ、何とかなりましたけど。」魔力解放しちゃったけどね。
「そうか・・・何も知らないで、帝都に来たついでに社交界に出て来ちゃったってことか・・・」
殿下は再び難しい顔になって考え込む。
「そうすると、先ほどの挨拶はやりすぎだったか?」殿下、心の声ですか?漏れてますよ。
「ええ、今のような素の殿下と違いすぎて、ちょっと気持ち悪かったです。」
敢えてずけずけ言ってにっこり微笑むと、殿下は赤くなって反論してきた。
「な‼気持ち悪いって、それが皇太子の挨拶に対して言う言葉か?俺はお前にあまり多く男が群がるとうっとおしいだろうと思って・・・」
「威嚇して下さったんですね。有難うございます。」さらに笑みを深めると、
「威嚇とはなんだ威嚇とは。獣でもあるまいし。牽制してやったんだ。皇太子が興味を示したとなれば、一握りの高位貴族以外は寄って来なくなる。君もその方が煩わしくないだろう?」
殿下は向きになって言い募って来た。
「私は帝都でお友達が出来ると良いなと思って来ました。どんな方と知り合いになり、お友達になるかは、自分で決めたいですし、身分で分けようなんて思いもしませんでしたわ。」
殿下の話を聞くと、中堅以下の貴族の男の子とはもう親しく出来ないと言うことになる。少し残念に思って言うと、殿下はむっとした。
「なんだよ。ちやほやされたいのか?言っとくけど、高位貴族だってそれなりにいるから、相手にしだすと結構時間取られるぞ。仲良くなりたい奴がいるんだろ?時間は有効に使えよ。」
「ちやほやされたいなんて言ってません!素の殿下は、少し社交の時の言葉遣いを取り入れた方がよろしいと思いますわ・・・て、仲良くなりたい人?」
言い合いながら、つい小首をかしげると、殿下は再び気まずげな顔になった。
「済まない。話は聞いてる。ジキスムントと仲良くなりたいんだろう?正式な挨拶はもう済ませてると思うが、ゆっくり話してないんじゃないか?今、近衛兵に呼びに行かせてるから・・・そう言えば遅いな。どうしたんだろう。」
言いながら思い出したようにまた小径の方を見る。
「え?それって・・・」
私がいぶかしげに言うと、殿下は小径の方を向いたまま言った。
「まあ、詳しい話は置いといて。俺があんな挨拶すると、ジキスムントは、と言うかロイス侯爵家は、君との接触を控えるだろう。そういう家なんだ。だから、こうやって君とあいつが話せる場所を確保したんだ。時間が足りなくてあいつにも君にもその場で連絡する羽目になったが・・・ああ、来たかな?」
確かに、バタバタと足音がして。
私も思わず緊張して小径の方を見つめてしまった。
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