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帝都のひと夏

兄さまたちが総出で慰めてくれました。

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「ディー、どうした?」
フッと目の前に影が差したと思ったら、ルー兄さまが覗き込んでいた。
「あれくらいのことでめそめそするなんて。お前らしくないぞ?」
兄さまは私とジキスムント君の関係を知らないから、そう言うのは当然だけど。
ううん、知らない人から同じような態度を取られても、やっぱりショックだったと思う。
私は涙をこぼすまいとするので精一杯だった。
「もう、帰りたい・・・。」
兄さまは私の涙を見てギョッとし、伯父さまたちに何ごとか言うと、私を壁際に引っ張って行った。
並んでる椅子の一つに座らせると、部屋から隠すようにかがむ。
「一体どうしたんだい?」
困惑した顔で見つめてくるルー兄さまに、私は涙声で訊ねた。
「ルー兄さま、本当のことを言ってちょうだい。兄さまも、私の顔、出来れば見せたくないんでしょう?」
「は?」
「だから、私の顔って、本当は顔を背けたくなるほど酷いんじゃないの?家族のひいき目で言わなくていいの、本当のことを言ってちょうだい。」
「・・・どうしたらそんな考えになるんだい?」
兄さまは途方に暮れたように呟いた。
「お前の顔が酷いって、そんなわけないだろう・・・誰かに何か言われたの?」
「う・・・実はさっき・・・」
私は先ほど魔導師団の人と会った時のことや、フィン兄さまに言われたことをぽつぽつと話した。
「ジキス・・・ロイス卿が顔を背けてすぐに居なくなったのも、私の顔に驚いたんだと思うの。」
話し終えると、ルー兄さまは首を傾げた。
「確かにロイス卿の態度は良くなかったが・・・お前の顔のせいではないと思うんだが。」
「じゃあ、なんで?私、ルー兄さまに話してないけど、ロイス卿とはライの姿で知り合いだったのよ。ディーに会うの楽しみにしているって聞いてたんだもの。」
「え?そうなのか?」
「うん。興味あるって感じだったから、仲良くなれるって楽しみにしてたのに。」
「そ、そうか・・・でも、顔、なあ。」
ルー兄さまは私の顔をまじまじと見つめてきた。うーん、と言って首を捻る。
「俺は見慣れてるから何とも言えないが・・・普通に可愛いと思うけどな?これって家族のひいき目なのか?でも、あの父上と母上の子供で、ひどい顔になるわけないと思うんだが?」
「でも、若い方は顔を背ける人が多いの。」
「それは・・・なんでだろうな?」
二人で首を捻ってしまう。

そこへ。
「おや?子供二人になって大丈夫?伯父上は?」
オスカー兄上とフィン兄さまがやってきた。
ビクッとした私の顔を見て、涙に気づいたのか、フィン兄さまがいきり立つ。
「ディー、誰に泣かされた?ルー、相手は誰だ?可愛い妹を泣かすなんて上等じゃないか、皇帝だろうとのしてやるぜ!ほら、何処のどいつだ?」
「多分、兄さまが原因ですよ。」
今にもどこかに駈け出しそうなフィン兄さまに、ルー兄さまが呆れたように言う。
「ディーの顔を見せたくないって言ったそうですね?酷い顔ってこと?と聞かれて困ってたんですよ。」
「?・・・はっ、まさかさっきの馬車での?」
さっと顔色を変えたフィン兄さまを、オスカー兄上が睨んだ。
「おい、フィン、なんだそれ?」
「兄上、これは・・・」



「つまり、可愛いディーを野郎に見せたくなくて言ったってことか?」
オスカー兄上がため息交じりで言った。フィン兄さまはぶんぶん首を振って頷く。
「それ以外にどんな意味があるって言うんだ!酷い顔だなんて、そんな訳ないじゃないか!ディーは世界で一番可愛い女の子だよ!」
跪いて私の手を握って訴えてくる兄さま。でも、でもね。
「若い人はほとんどみんな、顔を背けたり、怖い顔をするんだもの。こないだはオリヴィエ兄さままで、目が合ってニコってしたら、眉間にしわを寄せてきたの。」
「確かに、思い出してみると、今日挨拶していても、ディーの時は挙動不審な方が居たんですよね。」
私がなおも訴えると、ルー兄さまも難しい顔で言った。二人でうーんと言っていると。
「ディーの悩みにルーではまだ早かったか。」
オスカー兄上が何とも言えない顔で呟いた。
「そうだな・・・じゃあ、私の知り合いを紹介するよ。それで多分ディーもルーも分かるだろう。」
「兄上・・・」フィン兄さまが渋い顔をしたけど、兄上は知らん顔している。
「ちょっと荒療治の方が良いよ。ほら、二人ともおいで。今度は私がエスコートしよう。」

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