上 下
178 / 241
帝都のひと夏

とんでもない謁見が終わりました。

しおりを挟む
そう思ったのも一瞬のことで。
頭で考えるより先に、隣から噴き出す魔力の攻撃性の激しさに、私の魔力が反応した。
あれは怖いから消したい!騒ぎになるのはいや!

私が思ったのは、それだけ。でも。

私の魔力はフェリクス殿下と父さまたちの間に見えない壁を作ると、あっという間に噴き出した魔力と溶けあって消えて行った。

「え?」私がきょろきょろすれば。
「消えたっ!?」フィン兄さまが押し殺した声で叫び。
「攻撃の無効化・・・ディーか。まずいな・・・」父さまが呟くと同時にさっと周囲に視線を走らせ、、、。

「深呼吸だ、アル!ちょっとフィンもか・・・あれ、二人とも落ち着いてる?」
拍子抜けしたような母さまの声が聞こえた。
ん?さっきの魔力攻撃、無かったことになってる?
伯父さまやオリヴィエ兄さまを伺うと、「よく堪えたな、アルフ。」「叔父さん、大人になりましたね!」などと小声で話している。
フェリクス殿下に目を向ければ、にこやかなまま、私の方を見つめて、、、まだ手を握ってた。この様子だと、父さまたちの攻撃に気付いて無いのは確実だわ。そして、、、この手、これどうやって外すの?
色々疑問で、最後に恐る恐る父さまを見上げると。
父さまは、私のことを一瞬見つめたあと、殿下の手を無遠慮にペッと外し、
「・・・挨拶は終わった。戻ろう。」
「え?ええ、ちょっとアル・・・!」
それだけ言って、母さまを強引にエスコートしながら、さっさと踵を返してしまった。

え?え?いいの、それ?
見送る私も他の家族もあっけに取られていると。
「うちの弟が相変わらずで申し訳ございません、陛下。殿下も、あれはいつもあんな風でして。どうぞお気になさいませんよう。」
気まずい雰囲気を一掃してくれたのは、伯父さまだった。
流石宰相閣下、と言うより、不出来な弟を長年世話してきたお兄ちゃんって感じ?
「いや、構わない。我等が魔導師団長はいつも通り、いや、よく耐えたと言うべきかな?」
陛下まで、とがめる気は全くないみたいで、ほんとびっくりよ。
そして。フェリクス殿下は。
いつの間にかまた私の手を握っていて。
「もう行ってしまうの、ディアナ嬢?名残惜しいな。私が願ったら、どうか断らずに会って?」
切なそうな眼差しで訴えてもう一度指先に口付けし、、、私の手に何かを握らせた。そのまますっと手を外す。
「約束だよ?」
ダメ押しのようににっこりして、席に戻る殿下。なんなの?役者なの?素と違いすぎて気持ち悪いんだけど!
わなわなしている私を見て、潮時だと思ったのかしら。
伯父さまは陛下と挨拶を交わし、私たちを下がらせてくれたの。

頭を下げながら考える。
これ、取り敢えずポケットに隠さなきゃ。
ついでに、この指、スカートで拭いたら怒られるかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ幼馴染が帰ってきたので大人しく溺愛されます

下菊みこと
恋愛
私はブーゼ・ターフェルルンデ。侯爵令嬢。公爵令息で幼馴染、婚約者のベゼッセンハイト・ザンクトゥアーリウムにうっとおしいほど溺愛されています。ここ数年はハイトが留学に行ってくれていたのでやっと離れられて落ち着いていたのですが、とうとうハイトが帰ってきてしまいました。まあ、仕方がないので大人しく溺愛されておきます。

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【完結】帰れると聞いたのに……

ウミ
恋愛
 聖女の役割が終わり、いざ帰ろうとしていた主人公がまさかの聖獣にパクリと食べられて帰り損ねたお話し。 ※登場人物※ ・ゆかり:黒目黒髪の和風美人 ・ラグ:聖獣。ヒト化すると銀髪金眼の細マッチョ

ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」 きっかけは幼い頃の出来事だった。 ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。 その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。 あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。 そしてローズという自分の名前。 よりにもよって悪役令嬢に転生していた。 攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。 婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。 するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。

天災
恋愛
 美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。  とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?

【R18】鬼上司は今日も私に甘くない

白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。 逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー 法人営業部メンバー 鈴木梨沙:28歳 高濱暁人:35歳、法人営業部部長 相良くん:25歳、唯一の年下くん 久野さん:29歳、一個上の優しい先輩 藍沢さん:31歳、チーフ 武田さん:36歳、課長 加藤さん:30歳、法人営業部事務

処理中です...