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「先程も言った通り、私は魔導書の魔女です」
「本物か?」
「ふふ、まあお待ちになって」
訝しむフォークナー様に、私は指をパチンと鳴らしました。空中から分厚い大判の本が私の手の中に落ちてきます。グリモワールです。
「禁書だろう、それは!何故、エデルガルト嬢が」
「だから魔導書の魔女だからですよ。私が創ったものですから、召喚出来て当然です」
「まさか、本物だったとは」
「魔導書の魔女すべての歴史が、この1冊に書かれています。今代の魔女である私は、あった、ここです」
三日前と同じ記載をフォークナー様に見せ、フォークナー様は難しい顔をしてグリモワールを読み始めました。生まれてから二十年分の歴史を見られているのは、なんだか恥ずかしいですね。
「君の名前がある」
「はい。それが証拠です」
「俺の名前もある」
「ですね。グリモワールには魔女に関わった人間すべての名前がありますよ」
ペラペラとページを捲るのを私は止めずに、温かいうちにいれて頂いた紅茶に口つけます。止めた方が良いと、読まない方が良いと思うのですが、フォークナー様には知っていて欲しい気持ちがあるのです。
「エデルガルト嬢、これ持ち帰っても?」
「私が居なくなった時点で、グリモワールは国立図書館に勝手に帰るので、私が居る時だけですね」
「そうか。なら、今日は此処で夜を明かすのは?」
「え?」
「まだ未婚だが、お互い結婚するんだ。一日や二日共に夜を過ごしても問題なかろう」
「え、閣下、ちょっとお待ちくださる?」
「なんだ」
「私、何にも持ってないんですよ?変えの衣服もないですし」
「……そうか、なら俺の屋敷に行くか」
「いやいや、お待ちくださいませ閣下。何も変わっておりませんわ」
ぎゅうっとフォークナー様の眉間にシワが寄りましたが、私はおかしなことを言っているつもりはないです。
「…仕方ない。すぐ読み終えるから」
「あら、そんなもの読まなくても良いんですよ?閣下が気分が悪くなります」
「ならば、猶のこと。俺の妻になってくれるんだろう?妻を知りたいと思うのは駄目なことか?」
「う、う~ん」
その顔で、そんなことを仰らないでくださいませ。トキメキ過多で心臓が破裂しそうです。熱を持ち始めた頬に両手で風を送っていると、フォークナー様は私を見てくつりと笑いました。
「顔、真っ赤だな」
「仕方ないでしょう。閣下の顔が良いですもの」
「そう思われているなら、結婚に否定的ではないんだな」
「そう!それですわ!どうして、閣下は私と結婚する気になってるんですの?別荘で過ごして、ろくに夜会もお茶会も出なかった出不精の女ですわよ」
「確かに、ベールマー家の長女と言えば『病弱令嬢』と言われているが、それは噂だろう?宰相やお前の兄の口から、エデルガルトは病がちで、なんて聞いたことがない。それに見たところ健康そうだ。あとは、魔力が多いと聞いていたから、人に関わることが嫌だったんだろうと予測できる」
フォークナー様は、グリモワールから顔を上げずにスラスラと語って見せた。まあ、強ち間違いではない予測なので、私は黙って顔を仰ぎ続けます。
「なぁ、エデルガルト嬢」
「っはい?」
「魔導書の魔女として、何度か結婚経験があることに対して自分を事故物件と言うのか?」
「え?もうそんなところまで読み進めましたの?」
「流し読みだがな。で、どうなんだ?」
「…閣下の仰る通りですわ。私ではない、過去の私は何度かろくでもない結婚をしています。今生でも、今まで婚約すらしなかったのはそのせいでもあります」
「ろくでもない結婚?」
「魔導書の魔女の血が欲しい殿方ばかりでしたの。なので、あまり結婚に良い印象を持たないです」
「なのに、俺と結婚するのか?」
フォークナー様の仰ることも分かります。ろくでもない結婚だけをしてきて、結婚に対して忌避感を覚えている私が、結婚。どうなってんだ、と思われても仕方がありませんし、この際ですから全部ぶちまけてしまおうかと思います。
「殿下が連れて帰って来た隣国の第五王女ユシュル様が今代の盾の子と分かったので、何十代振りかの再会ということもあり、私はあの子の幸せを見届けたいのです。困っているときは手を貸してやりたい。しかし、いつまでもベールマー家に居座るつもりもありません。ベールマー家から出たとすると、登城するのに手続きなどで時間がかかるでしょう?私自身、魔導書の魔女として地位も爵位も与えられては困るので、そうなると消去法で結婚が残ったのです」
「…なるほど?グリモワールにある“楽して登城するのに結婚を選んだ”という記述は、そういう意味か。それで、地位に不足がないとして俺が選ばれたということだな。俺以外に候補は居たのか?」
「いません。母が、閣下を推薦して、陛下がノったので…。申し訳ございません」
私はフォークナー様の目から逃れるように顔を伏せました。本当に申し訳ないと思っているのです。止めたのですが、周りが止まらなかったのです。ですが、それも言い訳にすぎません。
やっぱり魔導書の魔女は、結婚に向いていません。かつて、剣の子に言われたことがあります。『姐さんは結婚しない方が良い』と。苦い表情で、まるで幸せな結婚は出来ないのだという風に。元々、結婚には期待をしていませんでしたが、改めて思い返すとどれもこれも私の幸せはそこにありませんでした。
剣の子、槍の子、鎧の子、そして盾の子の赤子を抱いて、幸せにおなりと言祝いで。その幸せで私は満たされていたのですから。やはり、強欲は身を亡ぼすのでしょう。
フォークナー様は黙り込んだまま、グリモワールを読んでいるようです。トントントンと指先が机を叩いています。私から言うことなどもうありません。フォークナー様の言うがままにしようと思います。
「君自身は初婚で間違いないよな?」
「間違いありませんわ」
「なら、いい。やっと合点がいった。どおりで、謁見の間でずっと申し訳なさそうな顔をしていたわけだ」
「…私、そんなに顔に出ておりましたか?」
「分かりやすいぞ。だが最初はどうであれ、俺は君が気になっているし、恐らくこれが愛に移り変わるのもすぐだと思っている」
「え?」
「何故、どれもこれも最悪な結婚しかしてこなかったんだ?と逆に俺は不思議でならない。相手が悪かったんだろうが…。これを機に、結婚は幸せなものと分かればいい」
「…恐れながら閣下も、初婚ですわよね?」
「なんだ。君は、うちの両親の仲の良さを知らないな?あれだけ有名な夫婦だったんだぞ?俺のなかにある夫婦という関係は、あの両親が形成したも同然だからな。俺がお前を、歴代の魔女の中で一番幸せにしてやる」
自信満々に言い切ったフォークナー様に、私は何度も瞬きを繰り返してしまいました。口のなかで、フォークナー様が仰った言葉を繰り返して、細かく噛み砕き咀嚼—理解しようとしていますが、何がどうなっているのかさっぱり解りません。
「どうした?」
「いえ、何を仰っているのか分からなくて…。結婚してくださるのは分かりました。が、この私を愛してくださると…?」
「そう言ってるだろう?どうして、そんなに不思議そうな顔をする?」
「どうしてって、不思議だからとしか言いようがなくて。魔導書の魔女という、人間兵器にもなりえるそうな存在で、恐らく秘宝よりも特殊で、それなのにどうして愛されると、愛していただけると思えるのでしょうか…」
確かに、一縷の望みで僅かな愛を願いました。可能ならと幸せな結婚を願いました。けれど、けれども。いざ、それを言葉にされてしまうと私は不思議でならないのです。
「俺は魔導書の魔女だからエデルガルト嬢と結婚するわけではない。俺は俺が一目惚れをした、エデルガルト・ベールマーと結婚すると決めたんだが?」
「…はあ」
「まあ良い。今日は兎も角、明日も休みだからな。二人で出かけるとしようか」
「お出かけですか?」
「あぁ。丁度、城下町の鍛冶屋に剣を頼んであってな。部下に取りに行かそうと思っていたが、エデルガルト嬢とデートをしようと思う」
でーと。私の好みである厳つい強面の美丈夫の口から『デート』という言葉が飛び出してきた時の衝撃たるや。さっきまでの不思議な気持ちが一気に吹き飛んで、また私の顔に熱がこもり始めました。駄目ですね、好みの顔を前すると駄目です。これだから、この国の王族は。
「そう、それでいい。しっかりと俺を見て、顔を朱に染めてくれ」
「…っ、閣下。揶揄わないでくださいませ」
「揶揄ってなんかいないさ。嗚呼、気分が良い」
フォークナー様は私の頬にするりと手を寄せたかと思うと、くしくしと頬を乾いた指先で撫でてきました。身体が飛び上がり、更に熱が顔に集まります。やめてくださいませ、お願いですから。そう心の中で叫ぶだけで、私の口ははくはくと魚が水面に寄って来る時のように、開閉させることしかできません。
「さて、エデルガルト嬢…。エディと呼ぼうか。君も俺を閣下とは言わずに名で呼んでくれないか?」
「ひぇ」
「ほら、メルキゼデクと」
いつの間にか、フォークナー様は私の隣の空席だった場所に腰を下ろしています。何時の間に。そんな至近距離で顔を見つめないでくださいまし。お願いです。ギラギラとした蒼い目が私を射抜いているのですが?お願いです、顔が良いからそれ以上は。
「エディ。俺の名を呼んで」
甘くて低い声に囁かれて、頬に触れていた手が私の耳に触れて、ああ、駄目です。目が回ります。本当に目が回っているのですが。うぅん、駄目ですね!遠くから暗闇が手招きしているようです。
そうですね、招かれているようなので。現状から逃げるためにも、と驚いた顔のフォークナー様を最後に私は安息の闇に落ちていきました。
「本物か?」
「ふふ、まあお待ちになって」
訝しむフォークナー様に、私は指をパチンと鳴らしました。空中から分厚い大判の本が私の手の中に落ちてきます。グリモワールです。
「禁書だろう、それは!何故、エデルガルト嬢が」
「だから魔導書の魔女だからですよ。私が創ったものですから、召喚出来て当然です」
「まさか、本物だったとは」
「魔導書の魔女すべての歴史が、この1冊に書かれています。今代の魔女である私は、あった、ここです」
三日前と同じ記載をフォークナー様に見せ、フォークナー様は難しい顔をしてグリモワールを読み始めました。生まれてから二十年分の歴史を見られているのは、なんだか恥ずかしいですね。
「君の名前がある」
「はい。それが証拠です」
「俺の名前もある」
「ですね。グリモワールには魔女に関わった人間すべての名前がありますよ」
ペラペラとページを捲るのを私は止めずに、温かいうちにいれて頂いた紅茶に口つけます。止めた方が良いと、読まない方が良いと思うのですが、フォークナー様には知っていて欲しい気持ちがあるのです。
「エデルガルト嬢、これ持ち帰っても?」
「私が居なくなった時点で、グリモワールは国立図書館に勝手に帰るので、私が居る時だけですね」
「そうか。なら、今日は此処で夜を明かすのは?」
「え?」
「まだ未婚だが、お互い結婚するんだ。一日や二日共に夜を過ごしても問題なかろう」
「え、閣下、ちょっとお待ちくださる?」
「なんだ」
「私、何にも持ってないんですよ?変えの衣服もないですし」
「……そうか、なら俺の屋敷に行くか」
「いやいや、お待ちくださいませ閣下。何も変わっておりませんわ」
ぎゅうっとフォークナー様の眉間にシワが寄りましたが、私はおかしなことを言っているつもりはないです。
「…仕方ない。すぐ読み終えるから」
「あら、そんなもの読まなくても良いんですよ?閣下が気分が悪くなります」
「ならば、猶のこと。俺の妻になってくれるんだろう?妻を知りたいと思うのは駄目なことか?」
「う、う~ん」
その顔で、そんなことを仰らないでくださいませ。トキメキ過多で心臓が破裂しそうです。熱を持ち始めた頬に両手で風を送っていると、フォークナー様は私を見てくつりと笑いました。
「顔、真っ赤だな」
「仕方ないでしょう。閣下の顔が良いですもの」
「そう思われているなら、結婚に否定的ではないんだな」
「そう!それですわ!どうして、閣下は私と結婚する気になってるんですの?別荘で過ごして、ろくに夜会もお茶会も出なかった出不精の女ですわよ」
「確かに、ベールマー家の長女と言えば『病弱令嬢』と言われているが、それは噂だろう?宰相やお前の兄の口から、エデルガルトは病がちで、なんて聞いたことがない。それに見たところ健康そうだ。あとは、魔力が多いと聞いていたから、人に関わることが嫌だったんだろうと予測できる」
フォークナー様は、グリモワールから顔を上げずにスラスラと語って見せた。まあ、強ち間違いではない予測なので、私は黙って顔を仰ぎ続けます。
「なぁ、エデルガルト嬢」
「っはい?」
「魔導書の魔女として、何度か結婚経験があることに対して自分を事故物件と言うのか?」
「え?もうそんなところまで読み進めましたの?」
「流し読みだがな。で、どうなんだ?」
「…閣下の仰る通りですわ。私ではない、過去の私は何度かろくでもない結婚をしています。今生でも、今まで婚約すらしなかったのはそのせいでもあります」
「ろくでもない結婚?」
「魔導書の魔女の血が欲しい殿方ばかりでしたの。なので、あまり結婚に良い印象を持たないです」
「なのに、俺と結婚するのか?」
フォークナー様の仰ることも分かります。ろくでもない結婚だけをしてきて、結婚に対して忌避感を覚えている私が、結婚。どうなってんだ、と思われても仕方がありませんし、この際ですから全部ぶちまけてしまおうかと思います。
「殿下が連れて帰って来た隣国の第五王女ユシュル様が今代の盾の子と分かったので、何十代振りかの再会ということもあり、私はあの子の幸せを見届けたいのです。困っているときは手を貸してやりたい。しかし、いつまでもベールマー家に居座るつもりもありません。ベールマー家から出たとすると、登城するのに手続きなどで時間がかかるでしょう?私自身、魔導書の魔女として地位も爵位も与えられては困るので、そうなると消去法で結婚が残ったのです」
「…なるほど?グリモワールにある“楽して登城するのに結婚を選んだ”という記述は、そういう意味か。それで、地位に不足がないとして俺が選ばれたということだな。俺以外に候補は居たのか?」
「いません。母が、閣下を推薦して、陛下がノったので…。申し訳ございません」
私はフォークナー様の目から逃れるように顔を伏せました。本当に申し訳ないと思っているのです。止めたのですが、周りが止まらなかったのです。ですが、それも言い訳にすぎません。
やっぱり魔導書の魔女は、結婚に向いていません。かつて、剣の子に言われたことがあります。『姐さんは結婚しない方が良い』と。苦い表情で、まるで幸せな結婚は出来ないのだという風に。元々、結婚には期待をしていませんでしたが、改めて思い返すとどれもこれも私の幸せはそこにありませんでした。
剣の子、槍の子、鎧の子、そして盾の子の赤子を抱いて、幸せにおなりと言祝いで。その幸せで私は満たされていたのですから。やはり、強欲は身を亡ぼすのでしょう。
フォークナー様は黙り込んだまま、グリモワールを読んでいるようです。トントントンと指先が机を叩いています。私から言うことなどもうありません。フォークナー様の言うがままにしようと思います。
「君自身は初婚で間違いないよな?」
「間違いありませんわ」
「なら、いい。やっと合点がいった。どおりで、謁見の間でずっと申し訳なさそうな顔をしていたわけだ」
「…私、そんなに顔に出ておりましたか?」
「分かりやすいぞ。だが最初はどうであれ、俺は君が気になっているし、恐らくこれが愛に移り変わるのもすぐだと思っている」
「え?」
「何故、どれもこれも最悪な結婚しかしてこなかったんだ?と逆に俺は不思議でならない。相手が悪かったんだろうが…。これを機に、結婚は幸せなものと分かればいい」
「…恐れながら閣下も、初婚ですわよね?」
「なんだ。君は、うちの両親の仲の良さを知らないな?あれだけ有名な夫婦だったんだぞ?俺のなかにある夫婦という関係は、あの両親が形成したも同然だからな。俺がお前を、歴代の魔女の中で一番幸せにしてやる」
自信満々に言い切ったフォークナー様に、私は何度も瞬きを繰り返してしまいました。口のなかで、フォークナー様が仰った言葉を繰り返して、細かく噛み砕き咀嚼—理解しようとしていますが、何がどうなっているのかさっぱり解りません。
「どうした?」
「いえ、何を仰っているのか分からなくて…。結婚してくださるのは分かりました。が、この私を愛してくださると…?」
「そう言ってるだろう?どうして、そんなに不思議そうな顔をする?」
「どうしてって、不思議だからとしか言いようがなくて。魔導書の魔女という、人間兵器にもなりえるそうな存在で、恐らく秘宝よりも特殊で、それなのにどうして愛されると、愛していただけると思えるのでしょうか…」
確かに、一縷の望みで僅かな愛を願いました。可能ならと幸せな結婚を願いました。けれど、けれども。いざ、それを言葉にされてしまうと私は不思議でならないのです。
「俺は魔導書の魔女だからエデルガルト嬢と結婚するわけではない。俺は俺が一目惚れをした、エデルガルト・ベールマーと結婚すると決めたんだが?」
「…はあ」
「まあ良い。今日は兎も角、明日も休みだからな。二人で出かけるとしようか」
「お出かけですか?」
「あぁ。丁度、城下町の鍛冶屋に剣を頼んであってな。部下に取りに行かそうと思っていたが、エデルガルト嬢とデートをしようと思う」
でーと。私の好みである厳つい強面の美丈夫の口から『デート』という言葉が飛び出してきた時の衝撃たるや。さっきまでの不思議な気持ちが一気に吹き飛んで、また私の顔に熱がこもり始めました。駄目ですね、好みの顔を前すると駄目です。これだから、この国の王族は。
「そう、それでいい。しっかりと俺を見て、顔を朱に染めてくれ」
「…っ、閣下。揶揄わないでくださいませ」
「揶揄ってなんかいないさ。嗚呼、気分が良い」
フォークナー様は私の頬にするりと手を寄せたかと思うと、くしくしと頬を乾いた指先で撫でてきました。身体が飛び上がり、更に熱が顔に集まります。やめてくださいませ、お願いですから。そう心の中で叫ぶだけで、私の口ははくはくと魚が水面に寄って来る時のように、開閉させることしかできません。
「さて、エデルガルト嬢…。エディと呼ぼうか。君も俺を閣下とは言わずに名で呼んでくれないか?」
「ひぇ」
「ほら、メルキゼデクと」
いつの間にか、フォークナー様は私の隣の空席だった場所に腰を下ろしています。何時の間に。そんな至近距離で顔を見つめないでくださいまし。お願いです。ギラギラとした蒼い目が私を射抜いているのですが?お願いです、顔が良いからそれ以上は。
「エディ。俺の名を呼んで」
甘くて低い声に囁かれて、頬に触れていた手が私の耳に触れて、ああ、駄目です。目が回ります。本当に目が回っているのですが。うぅん、駄目ですね!遠くから暗闇が手招きしているようです。
そうですね、招かれているようなので。現状から逃げるためにも、と驚いた顔のフォークナー様を最後に私は安息の闇に落ちていきました。
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