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 扉を開けると、オリバー様と水色の髪をした青年が机を跨いで向かい合っており、水色の髪の青年の横に片腕がない女性が座っていた。。
 机の横にはマヤがこちらを向いてお辞儀している。
 多分あの青年はアニウーリ様よね?

「失礼致します」

「お、来た来た」

「へぇ、そいつが例の稲妻っしょ?」

 ニコニコ笑いながら手を振るアニウーリ様と、腕を組みながらペンを口に咥えはじめたオリバー様。
 そういえばアニウーリ様の第五師団部隊はほとんどが完治して街の警護をしているみたいね。

「初めましてだな。オイラはアニウーリ・フォン・マーキュリア。よろしくっしょ」

「初めまして。ルルシア・フォン・イガラシです」

 私は出された手を掴んで返事した。
 それにしても何この口調。
 なかとってつけたような口癖でインパクトあるけど、違和感がすごいわね。

「改めましてアリガン・ジェノベーゼよ。元々殿下の侍女兼護衛をしていたのだけど、再びその座に戻ったの。気軽にアリガンって呼んでちょうだい」

「アリガンさん、よろしくお願いします」

 アリガンさんとも挨拶を交わした。
 そう言えばなんだかんだ、名前ちゃんと聞くの初めてかも。

「元気そうで何よりだよ稲妻」

「おかげさまで。王宮の病棟での治療助かりました」

「それでもまだ安静が居るんだろ?まぁ今はゆっくり治しなよ。しばらく君は国の警護という形で、非常時まで待機ってことにしておくからさ」

「ありがとうございます」

 ありがたい話ね。
 本来なら軍に所属していたら、こんなことは許されないもの。
 動けるならすぐにでも復帰しないといけないのに。

「まぁ君とグレンは僕や幻惑以外からの命令権はないから安心してよ」

「職権乱用っしょ」

「元々軍に所属してもらうのも無理矢理だったんだ。当然だよ」

「まぁ良いけどな。それよりも、オイラはあんたに興味があるっしょ」

 私に?
 アニウーリ様とは初対面なのに、興味を持たれる要素が余り見当たらないわ。
 学生時代の事だと色々と興味を持たれそうな要素はあるけど、それ以外だと何も思いつかないわね。

「その顔はわからないか。帝国の稲妻は叡智長けるって聞いてたけど、まぁ噂なんてそんなもんっしょ」

「申し訳ありません」

「まぁ普通はわからないっしょ。実際オイラの婚約者がマーティンを警戒していたって聞いてちょっと先見の目があると思っただけっしょ」

 アニウーリ様の婚約者と言えば、あのお茶会にいたルカ様ね。
 妊娠しているって言ってたけど、この場では言わない方が良いわよね。

「まぁ本題は別だ。その魔装っしょ」

「魔装、ヴァルカンの事ですね」

「あぁ。興味深いけど君とグレン、マリアとガウリ、魔装を覚醒させたのは二人だけ。危険な状況で愛し合う物同士でしか覚醒ができないのか、非常に興味があるっしょ」

 ヴァルカンを触りながら、色々と顎を撫でながら見定めていた。
 普段ヴァルカンはあんまり喋らないから、されるがままね

『マヤ、助ケテクダサイ』

「アニウーリ様、それくらいで。ヴァルカンが嫌がっております」

「適合者じゃないのに、こいつの声聞けるのは羨ましいっしょ」

「友達です」

 マヤがヴァルカンを取って行ってしまった。
 私、ヴァルカンの適合者なのに頼ったのはマヤ・・・

『ゴメンナサイ。ゴ主人様ノオ手ヲ煩ワセル訳ニハ』

「いや、いいのよ。二人が仲良さそうで」

 マヤは私の妹みたいなもんだし、ヴァルカンも。
 まぁ少しだけ寂しいところはあるけどね。

「まぁオイラが考えるに、魅了属性ってのが鍵だと思うっしょ」

「魅了属性ですか。まだわからないところだらけですけど」

 実際魅了って何処までの範囲で適用されるのかしら?
 グレンと私の間では親愛だし、マリアとガウリ様は恋愛だもの。
 どちらも愛ではあるけれど。

「ふむ。どうやら魔装とやらは、若者にしか覚醒ができない可能性があるっしょ」

「初心な若者だよ。僕らみたいな王族にはちょっと難しいよね」

「まぁそれは人によるんじゃないっしょ?」

「そうだね。アニウーリはまぁ。それで今後についての話だけど稲妻。君、ナンチョウについてどこまで知ってる?」

「ナンチョウですか?ナンチョウ人民国は男尊女卑が激しい国と聞いていますけど」

 それ以上のことは何も知らない。
 大国である事はわかるけど、帝国からかなり離れていたし。

「ナンチョウの認識は概ね合ってるよ。でも僕が聞きたかったのはそういうことじゃなかったんだけど、まぁ子の反応を見るにあんまり詳しくは知らないって感じなのかな?」

「はい。特に知りません」

「うーん。ナンチョウはなんて言えば良いのかな?変わった部族?」

「変わった部族、ですか?」

 変わった部族じゃわからないわよ。
 少なくとも女性に対しての人権がないのはわかるけどね。

「魔法と呪法を組み合わせた独自の魔法を使うんだ」

「呪法ですか。強力な反面発動が大変と聞いて居ますけど」

「うん正解だよ。ただ呪法って言うのは魔力を馴染ませる他に、こういったことができるんだ」

 オリバー様が腕をまくると、刺青が掘られている。
 王族が刺青を入れて大丈夫なのかしら?

「これが呪法で作られた身代わりの呪法。魔力を常に一定量この模様に貯蓄され、致死量の攻撃を食らうと一度だけこれが代わりになってくれるんだ。試してみよう」

 するとオリバー様が自分の胸にナイフを突き刺した。
 え!?

「お、オリバー様!?」

「ほらね?」

 ほらって言われても、刺青に何か変化ができたのかしら
 全く見てもわからないわ。
 そう思ったら刺青が消えた。
 まさかこれって・・・

「呪法はまた書けばいい」

「これは魔法陣ですか?」

「正解だ。これはナンチョウの技術で呪法陣と呼ぶ。彼の国はこの呪法陣を使うことで、魔法よりも強力な兵力をもっているんだ」

 ナンチョウ、侮れない国だわ。
 そもそも一度どんな攻撃も無効化できる陣があるだけでも変わってくるわ。

「それでそのナンチョウから脱国しマーラを逃がした国民を、彼女と共に保護したっしょ。それで君に彼らのカウンセリングをしてもらい、あわよくば呪法陣について色々と聞き出してもらいたい。オイラ達王国貴族を言葉でまとめた君が適任だと思ったわけっしょ」

 そのアニウーリ様の言葉に、また難問を押しつけられたと額を押さえた。
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