神世界と素因封印

茶坊ピエロ

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閑話3:一方アメリカは

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 ここは旧ホワイトハウス、現バレンタイン邸の執務室でレオナルド=バレンタインは激昂していた。


「どういうことだ斑鳩!戦果が大将一人だけとは!」


「申し訳ございません」


 そうだ。
 総勢200人以上もの精鋭で帝国に攻め込んだというのに、帰還者がたったの50人。
 1/4もの戦力を失って、レオナルドは顔を真っ赤にして怒っていた。


「これだけの犠牲を出しておいて、なにもなしということはないだろうな?」


「えぇ。まずはネイサン・A・スコッティをご存じでしょうか?」


「報告書をみせてもらった。唯一の戦果をあげたものだったな」


 ネイサンは唯一大将、ゴードンを殺して帰還した男。
 ブレードの暴走で、一時は瀕死の状況までいったが、神属性ブレード所持者に治療されて一命を取り留めた。


「はい。彼のブレードですが、私と同じく神格を得ました。一つの目的はこれで達成されました」


「うむ・・・。まぁそれはいいが、たった一人が神格を得ただけであれだけの犠牲が許されるはずがないぞ?」


「はいわかっております。二つ目ですが・・・」


 そして二つ目の目的も完遂したことを聞くと、レオナルドはニヤニヤと笑みを浮かべる。


「それはよくやった。ククク。帝国の奴らは苦しい思いをするだろうな」


「はい。しかし油断は禁物。もう一度侵攻作戦を練り直しましょう」


「そうだな。元帥も呼んで、全員で会議だ」


「はっ!」


 そして斑鳩は、バレンタイン邸をあとにした。

◇◆◇◆◇

「くそが!僕が遠征で帝国に行ってる間に姉さんはどこかへ逃げてしまっただと!ふざけるのも大概にしろよ」


「申し訳ありません。斑鳩、グハっ!」


「謝ったら姉さんが帰ってくるのか。もういいや。君、死刑」


「そんなお慈・・・」 


 看守はお慈悲をと言おうとしたのだろうが、首を切断されて死亡した。

 斑鳩は遠征か帰還直後、自分の性欲を満たしに姉、静枝の牢屋に足を運んだ。
 しかしそこには静枝の右腕だけが残っていた。
 そして看守は亀甲縛りをされてみつかった。


「全く無能だな。まぁそれは僕にも言えたことか」


 こんな無能を大事な姉の元に置かせていたのがおかしかったのだ。
 こいつも姉で楽しい思いをしたのに、恩を仇で返されたと、斑鳩は思っていた。


「さて、姉さんはどこに行ったのかはいずれわかるだろう。なぁクトゥルフ」


『マイマスター。彼女の位置は現在補足できない場所にあり、特定ができません』


「そうか。じゃあアメリカには居ない可能性もあるね。まぁいいさ。それなら帝国の和澄の所に行くだろうからね」


『僭越ながら申し上げます。我々アメリカが敗北するなどありえないかと』


 自身の相棒クトゥルフにそう言われてにやつく斑鳩。
 クトゥルフもバディール同様、神格を得て自我を持っている。


「君はそうやって油断する。だからクウラ・バルデックに遅れを取られたんだよ」


『申し訳ありません。彼のブレードは神格を持っていないと思い油断しました』


「まぁ仕方ないさ。彼のような猛者は早々いないしね。次の行軍の時に彼は直々に殺してあげよう。そして紅の女王、アンデル。次の行軍の際にはちゃんと処分しないと、本当にバレンタイン大統領は怒りかねない」


 斑鳩は心底忌々しいという顔をする。
 斑鳩はどうがんばってもレオナルドには勝てないとわかっているから、逆らうことができない。
 そもそも待遇も良いわけだから逆らう気もないのだが。


『敵に神格を得たブレードがいた場合どうしますか?』


「次回そのような場面があったら、逃走するさ。さすがに神格者同士で戦闘して勝てると思うほど、僕は愚かじゃない」


 斑鳩は聡明だった。
 なので、クウラとの戦闘すら確実な勝利が望めないために離脱した。


『実際あのおじいさんはまずかったです。神格を得たというのに恐怖を覚えました』


「やっぱりあのときの選択は間違ってなかったようだ」


『えぇ。英断でした。万が一があります』


 斑鳩は自分に酔っている。
 そしてワインを飲み干し、次回の遠征で一足早く、甥の首を持ち帰ってやろうと考えていた。


◇◆◇◆◇

 ここはアメリカ軍、軍事施設。
 アメリカ軍では知らないモノはいない、堂々たる顔ぶれが揃っていた。


「これより第二回帝国侵攻作戦の会議を始める。第一回は斑鳩の部隊が単独で攻め込み、壊滅的な被害を受けた。この資料を見て欲しい」


 そう発言するのはアメリカ軍元帥、コルヴァ・メルヴィオン。
 彼の一言により全員資料をみる。


「我々の利点魔眼部隊は、多くのブレード所持者に敗北。またブレード所持者達も9人いた中で3人しか帰還ができていない」


 全員が騒ぎ出す。
 ブレードはあくまで重火器より強い程度で、魔眼とオールレンジ武器などの近代兵器を組み合わせた部隊に蹂躙されると考えられていたからだ。


「元帥殿。この報告が本当だとしたら、ブレード所持者がそこまで多くないアメリカには不利な状況じゃないでしょうか?」


 発言したモノ以外にもその考えを持っているのが多数であった。


「お前達がそう思うのも無理はない。しかし今回。我々のこの最悪の状況を打開すべく、ある人物が協力を申し出てくれた。斑鳩呼んできてくれ」


「はい、元帥」


 そして斑鳩の横には、白い髭を伸ばした男が現れる。


「ふぉっふぉっふぉ。今回諸君等にブレードを提供する、鍛冶の神ヘパイストスじゃ。よろしく頼むのぉ」


「神?爺さん本気で・・・」


「口を慎め、サミエル・ガジェット少将!彼は本物の神だ。疑うことは即ち、アメリカに害をなすとみるぞ」


 そういって拳銃を突きつける、コルヴァ。


「止しんさい。儂は気にしとらんぞ。時に諸君等には、この新作のブレードを試して欲しいのじゃ」


 そういうと同じ形のブレードのペアが、ここに居る人数分出された。


「それは量産型のブレードじゃ。邪心の欠片ヘブンズフラグメント邪心の欠片ヘブンズフラグメントは入っておらぬが、似たようなモノを入れてみたんじゃ。ブレード適合者でない者は是非使ってみてくれ」


「感謝する翁。よしブレード所持者は斑鳩を含めてここには三人しかいなかったが、全員に行き渡れば、総勢150名のブレード使い。さらに将軍地位まであるという最強の軍隊となる」


 そして各々がブレードを手に取り、ブレードを起動する。

「おぉこれはすごい」


「力がみなぎってくるな。おっ電撃がでたぞ」


 属性も操ることができる。
 もちろん出力は落ちるが、近代兵器より脅威な事に違いは無い。


「ふぉっふぉっふぉ。気に入ってくれたようじゃのぉ。しかし連発には注意せい。それはブレードとは違って、使用者のエネルギーが無くなっても無理矢理起動できて命に関わるからのぉ」


 このブレードのリスクはエネルギー量が限界まで達しても、無理矢理エネルギーを放出することができること。
 それは即ち、死ぬ事を意味しているが、そのことを理解できた者は少数名だった。


「さて、では武器が渡ったところで、先に作戦日を言わせて貰おう。作戦決行は4日後。夕方に飛行機を使って帝都上空へいき、降下作戦をする。目標は帝国民。できるだけ帝国民を殺し、我々に逆らうとどうなるかを思い知らしめなければならない」


 この作戦、最も重要なのはどれだけ民間人を殺したか。
 その数によって敵が自国への警戒をするかが決まる。
 それは即ち、自分たちの母国アメリカに対しての攻撃力を削り取ることでもあり、戦争に勝利するファーストヒューズだった。


「作戦詳細は次の資料を見てくれ」


 そしてページをめくり帝国行軍作戦の会議は続けられた。
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