神世界と素因封印

茶坊ピエロ

文字の大きさ
上 下
54 / 83

53.何で内輪揉めばかり起きるのだろう

しおりを挟む
 俺達は一晩休息をとり、家にいた全員で早朝から学校に向かっていた。結局叔母さんは昨日は帰ってこなかったが、帝都はそこまで酷い状況なのだろうか?


「叔母さんになにかあったのかな?」


「不足の事態とまでは言わんが、すぐに家に帰れる状況ではなかったのだろう。香澄のことだ。大方事態の収拾に協力しているとかだろう」


 ルナトの意見に安堵を覚える。俺も叔母さんに限ってなにかあったとは思わないけど、万が一だってあるんだ。誰かがそう言葉にしてくれるだけで安心感が生まれる。


「カズくん、わたし達はわたし達のできることをしよ!」


「守ってもらう身としては恥ずかしいですけどね。ワタクシも出来る限り雑務なんかは請け負いますわ」


「ありがとう2人とも。ここに兵士が来られない以上、闘える俺達が警備兵にならなきゃいかんし」


 それにミナもソルティアも俺達の心の拠り所としていつも支えてくれてるんだ。代わりと言っちゃなんだけど、戦闘ができないなら守るのは当然。持ちつ持たれつって言うしな。


「殿下はまだわかるとして、あなた達本当に13歳か疑うレベルよ。しっかりし過ぎじゃないかしら?」


「そうかなお母さん?」


「えぇ!アタシがあなた達ぐらいの頃はショッピングをしまくってたわよ。ファッションの話題で持ち切りね」


 メアリーさんは青春時代はリア充だったんだ。俺だってこんな事態にならなければ遊び行ったりしてたんだけどな。


「メアリー、和澄は君に近いよ。完膚なきまでに心をぶっ壊れた所為で、ちょっとだけ性格が歪んだだけだよ」


 モルフェさんまで失礼なことをいう。完膚なきまで容赦なく壊してきたのはそっちなのに!あ、睨まれた。ごめんなさい・・・許して下さい何でもしますから。モルフェさん普段ニコニコしてるけど怒ると怖いんだ!


「そうなのねぇ。たしかにこの中じゃ普通男子よね。ルナト様は殿下だし、ソルティア様は殿下の婚約者だし、ミナはブレード持ちの整備の仕事をしてたしね」


「そうですよね!俺は普通だよ!」


「和澄。普通の中学生はな。大事な人間のために命は貼らないぞ?」


「何をバカなことを言ってるんだルナト。普通の人間なら大事な人のために身体張るだろう?」


 俺は疑問府を頭に浮かべるが、ルナトは呆れたように両手を上に向けてやれやれと頭を振る。


「普通の人間はな。目の前に死が迫っていたら、どうやって他人に押し付けるかを考えるんだ」


「それは俺だって考えるさ。他人なんかより自分の命のがかわいいさ」


「私が言っているのは、その対象を親しい者に向ける者もいるということだ」


 そんなやついるのか?さすがに家族や大切な人を犠牲にしてまで生き永らえたいなんて到底思えない。


「理解できないって顔だな。まぁそれはお前のいいところだ」


 ルナトは苦笑いしながら言う。見ればみんな頷いてる。俺はなんかわからないが、無性に恥ずかしくなったので頭をかいた。照れ隠しだ。


 そんなこんな話をしてると学校に着く時間も早い。校庭に行くと1人の男性が、ヨシュア兄さんとカナンさんと話をしていた。


「あ、和澄くん達。おはよう。昨日はしっかり休めた?」


「おはようございます。カナンさんが先生ぽい会話をできてることに驚いてます」


「いや、ぽいじゃなくて先生だから」


「自分の行動を思い返してみてください」


「どこかおかしなことがあったかしら?」


 カナンさん本気で疑問に思ってる。カナンさんのイメージは彼女が学校に赴任してから完全に崩れ落ちた。初日もそうだけどこの人はコミュニケーションに疎い!


「あはは、カナンちゃんは相変わらず破天荒のようだね」


「何を言っているんですか雨宮さん!それもカナンの良いところですよ。自分の芯を貫くその姿勢・・」


「あ、いいよ。ヨシュアのカナン語りはうるせぇ」


 ヨシュア兄さんが固まってる。普段周りでは誰もストレートに言わないが、この人は平気で指摘した。名前呼びもそうだけど、この人顔も日本人だ。


「お前が真壁の倅かぁ?和澄って言ったか?」


 真壁?母さんが父さんの知り合い?部下じゃなさそうだし友達かな?ぱっと見30代くらいだしありえそうだ。


「雨宮。こいつは真壁忠澄の息子、真壁和澄で間違い無いぞ」


「これは殿下。飛んだご無礼を・・・。お前らなぜ頭を下げないんだ!」


 軍人なのはわかってたけどルナトに頭をすぐ下げるってことは真面目なんだろうな。


「なんでって、ねぇ?」


「毎日一緒にいたらそう言ったことしなくなりますよ」


「バカ!この方は皇帝のご子息で、次代皇帝になるに十分あるお方だぞ!」


 雨宮って人はそういうけど、俺とルナトはもう完全に友達だ。親友と言っても差し支えないほどに深い仲だ。まぁ一緒に修行したしな。今更口調も変えれない。


「ルナト、この自体どうにかしてくれ」


「ルナトくんこの人誰ー?」


 俺はルナトを呼び捨てにしたらこの人どう言った反応するか気になって試してみた。ミナもそれに便乗する。俺たちの意図を汲み取ったか、ソルティアが呆れた顔をしている。


「ル、ルナト殿下を呼び捨てだトォ!貴様なんたる無礼か!」


「やめないか雨宮!お前は上官であるマーフィーやアンデルには敬語は使わんだろぉが!」


 ルナトからの激励で一瞬萎れるが、再び息を取り戻し叫ぶ。


「ですが!この程度の若造がルナト様を呼び捨てにするなんて!」


「私が許可したなのだ。友達なのだし問題ないだろう?」


「節度ある行動をです。親しき仲にも礼儀ありって!」


「相変わらず頭が堅い!ところで雨宮よお前何しに来たんだ?」



 ルナトも諦めちゃったよ。もう少しがんばろうぜ!


「あぁそうでした。帝都の現状報告に来た次第です」


「大将自らか?お前はこう言った報告はいつも補佐のやつに頼んでいただろう?」


 大将!?そんな大物だったのかこの人。でもたしかに大将がなぜ伝令をしているのか疑問に思うな。


「恥ずかしながら我が隊の者は全滅。レオンの隊もです」


 驚いた。帝国軍は将を隊長にして小隊を組むって聞いたけど、大将の小隊が全滅とは。


「一体帝都で何が起こっている?」


「帝都ではアメリカ軍の魔眼部隊の強襲に合いました。全区に襲撃が合いましたが事態は現在は終息しつつあります」


 魔眼部隊・・・。たしかに俺達の学園にきたやつも全員魔眼持ちだったな。


「他に戦死者はどれくらいいる?」


「いえ、これといった戦死者は。ただレオンが右手を失う重傷、マーフィーくんが脇腹を深く斬られる重傷です。また四等区は一人、一等区は全員の賊の逃走を許してしまい、情報源を得られませんでした。一等区はほとんどの大将が出張ったのですが実力者が多く戦況は拮抗したそうです」


 叔父さんが重傷!?叔父さんに重傷を負わせることのできる人間が敵にも来てたのか。まさか斑鳩か?
 話してるところに赤髪の少女が来る。ベロニカだ。ブレードは取り上げたので魔眼持ちって事が以外は普通の少女だ。校舎内なら自由にしていいって言ったけど校庭まで来ちゃダメだろう。


「カズスミっちー。ごめん祐樹ちんのタオル新しいの貰おうと思って」


「ダメだろう校舎内から出てきちゃ。一応ベロニカ達は捕虜なんだぞ」


「ごめん・・・」


 そう言うと後ろから殺気を感じた。俺は咄嗟に<未来視フューチャーアイ>を使用する。ベロニカの身体が真っ二つになる光景が視えた。俺は振り向いて忌纏を使い斬撃を止めた。大太刀のブレードだ。


「どういうつもりですか。雨宮大将?」


「こちらこそ聞きたいな?ルールを守らなかった捕虜は死刑。当たり前のことだろう?」


 そんなことで・・・!ルールと言ってもほんの少し出ただけだ。それで誰かが被害を被ったわけでもないのに!


「ごめんカズスミっち・・・」


「ベロニカは悪い事だと思ってるし反省もしています。十分に酌量の余地はあると思うのですが?」


「そんな子供のようなこと通じると思っているのか?そいつは敵だぞ?貴様も、逆賊の斑鳩と同様に裏切り者か!今そこを退けば国家反逆罪で逮捕で済ましてやる」


「どうしてもベロニカを殺すと言うんですね?」


「無論だ。それが規律というものだ」


「そうですか・・・ミナ!」


 こいつ・・・頭にきた!ルール、ルールって何のためにルールがあると思ってるんだ!いっぺん地べたに這いつくばらせて話をさせてやる!


「え、でも・・・」


「ミナ。和澄にブレードを渡してやれ。雨宮の頭の堅さは一回どうにかしないとと思っていた。それに隊の者全員が死んで気が立っているんだろう。年下の和澄に敗れれば思い直すこともあるであろう」


「わかりました。カズくん」


 ミナは俺に向かってブレードを投げて俺はキャッチする。指輪とナックルグローブを嵌めてブレードを起動した。


「万が一があるからベロニカもルナトのところに」


「わかった。ホントにゴメンカズスミっち」


 そういうとベロニカはルナトの方に走っていく。そこへ雨宮が斬りかかろうとする。俺は高速でベロニカと雨宮の間に入り斬撃を受けとめた。


「ふざけんなよ!あんたは自分の隊の者が全滅したからその憂さ晴らしがしたいだけだろうが!」


「お前・・・いいだろう。お前から先に刑執行だ。職務執行妨害、並びに国家反逆罪だ。喜べ大将自らがお前を死刑にしてやる」


 できるもんならやってみろ!俺と雨宮大将の戦闘が始まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

NTR動画を彼氏の浮気相手♀から送られてきたので〜──浮気する男はいりませんので──

ラララキヲ
恋愛
突然鳴ったスマホ。 そこに届いた動画。 大学で初めてできた彼氏。 告白されて付き合って半年。彼は私を大切にしてくれていたなのに知らない女から送られてきた動画には、私の知らない彼の乱れた姿が映っていた…… 決定的な浮気の証拠…… どうする? 許せる? 私は許せない。 だから私は…………── 〔※男女の絡みのフワッとした描写有り。フワッとしてます〕 〔※友人に大らかな男性同性愛者が居ます〕 ◇ふんわりゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※※男性同性愛者は居ますが、作中に『男性同士の恋愛描写』はありません(無い)。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...