神世界と素因封印

茶坊ピエロ

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16.ラッキースケベ

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「ただいま」


 なんかやっと家に帰って来れた気がする。家の中に入ると叔母さんとミナのお母さんが話しをしていた。
 しばらくはミナとミナのお母さんはうちで寝泊まりするらしい。


「久しぶりね。和澄くんヨシュアくん」


「おかえりなさい、ヨシュア、和澄、大変だったみたいね」


 どうやら俺が眠ってる間、兄さんはずっと横でついていてくれていたらしく家にもまだ帰ってなかった。


「お久しぶりです。母さんに心配をかけたよ。ごめん」


「久しぶりメアリーさん。叔母さん本当にごめんなさい!」


 俺と兄さんはそれぞれ頭を下げた。心配をかけてしまって申し訳ない。


「いいのよ~。まぁあの人は思いっきり活を入れといたから!」


 元帝国軍少将、黒の女帝ブラックエンプレス活は一体どんなのだろうか?想像しようとしたが部屋から出てきた父さんの顔がパンパンに腫れていて想像をやめた。あれはもう威厳もなにもない。叔父さん尻に敷かれてるなぁ。
 後ろにはもう一人男がいた。


「帰ったかヨシュア、和澄」


「うん帰ったよ叔父さん。ところで後ろにいるのはルナト殿下?」


 そうだ。皇帝陛下の息子、おそらく俺が叔父さんと兄さんを疑う原因を作ったであろうルナト殿下その人がいた。


「やぁおかえりふたりとも。お邪魔しているよ。そして真壁、先日は悪かったね。この前は半ば私の所為であんなことになってしまって。身体の具合はどうだい?」


「はい殿下。俺も子供の癇癪が過ぎました。誠に申し訳ございません」


「思ったより気持ち悪いな」
 

 なんだこの男。謝るのか喧嘩を売ってるのかどっちだ?謝られてすぐにわりとイラッときたぞ。


「ハハハ。顔芸が得意のようだな。すごい顔してるぞ」


「誰の所為だ誰の!いきなり謝られて気持ち悪いとか誰だって顔引き尽かせるわ!」


 俺は礼節も弁えず殿下を怒鳴りつけてしまった。はっ!しまった!って顔をしてると殿下は笑いながら言う。


「悪い悪い冗談だ。私は皇帝の息子だ。私に向かって敬語を使わない人間は貴重でね。同世代の君たちとは対等で居たいんだよ。特に君なんて出会ってから私にほとんど敬語を使っていないからね」


「それは出会いが出会いで。わかったよ殿下。崩れた口調で話すな」


「殿下は堅苦しい。ルナトでいい」


「そうかわかったよルナト。ところで対等ってことはさ・・・」

 ーーーボカッ
 
 一発殴った。俺をあんなに疑心暗鬼にさせたんだ!これくらい当然な報いだ。
 殿下という立場の者を殴った俺。
 この場にいた全員が慌てる。


「対等なんだこれくらい当然だろ!」


「ふふふ。ふはははは。殴られたのはいつぶりだろうな。母上にぶたれて以来か、きいたぞ真壁」


 ルナトは笑っていた。なんだかんだ殿下として振る舞っていて肩の荷でも下りたのだろうか。


「・・・和澄」


「―――え?」


「俺は和澄だ。対等な関係なんだろ?名前で呼び合おうルナト」


「そうだな。わかった和澄。ヒューゲルは今上にいるとおもうぞ。早く顔をみせてやれ」


「わかったよ!俺はそもそもミナの顔がみたくて早く帰って来たんだからな」


 そういうと俺は笑顔で上の階に向かっていた。ルナトがまだ笑っていたが気にせずに・・・。
 そう、ルナトが笑っていた理由が、このことだと気づいたときにはもう遅かった。


「カズ・・・くん・・・?」


 ミナは着替えていた。髪が濡れてるからおそらくシャワーかお風呂に入ったあとだろう。白い肌に綺麗なボディライン。胸は慎ましいが決して貧相ではない。内心でルナトに感謝しつつ脳内カメラで焼き付け・・・


「キャァァァァァ!カズくんみないでぇぇぇ!出て行ってぇぇぇ!」


 おれは思いっきりビンタされた。ラッキースケベ。実際にあるんだな・・・
 そう思っておれは頬を腫らしてリビングに降りていき、ルナトが大笑いしていたのでチョップをかました。


◇◆◇◆◇


 ミナも着替えてリビングに降りてきた。まだ恥ずかしいのか顔が赤い。可愛い。しかし俺は結構なヘタレだ。気の利いたことを俺は何も言えなかった。まぁミナは恥ずかしがりながらもそのまま隣りに座ったが。
 ここには俺とミナと叔父さん叔母さん、ヨシュア兄さんとルナトとメアリーさんの七人でいた。
 カナンさんもあとで来るそうだけど、今は仕事中のようだ。
 兄さんが真面目な顔で口を開く。


「カズさっき病院で話した国家反逆罪の疑いがかけられたことについて当事者のがいるから話すな」


「うん。俺とミナのことだよね。教えて」


「まずそこからだな。容疑がかけられているのは母さんとカズのふたりなんだ」


「――――――!?」


 俺は驚いた。てっきりミナかと思って二人って言ったと思ったがまさか叔母さんだったなんて。


「あぁ悪いな。ヒューゲルへの容疑はまだ可能性の段階であって、私が和澄を煽るために使ったでまかせ・・・イタッ」


 とりあえずルナトには鉄拳制裁。そして兄さんは咳払いする。


「話を続けるぞ。容疑がかけられた理由。まずは黒澤祐樹とチャーリー・リングスレイと相対して、カズとミナちゃんが落下してから起きたことについてからだ」


 兄さんは祐樹とチャーリーに会ったことはないはずなのに。もう名前が判明してることに驚きつつ兄さんの話を俺は聞いた。
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