神世界と素因封印

茶坊ピエロ

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9.地上へと帰還

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「彼、途中からわたしの話流してきいてなかったかしら?」


「すいません。カズくんは自分が強くなれると聞いて居ても立っても居られないんだと思います。わたしを守るために強くなりたいらしいので嬉しくはあるのですが」


 ミナは苦笑いはしてるが、嬉しそう答えた。和澄はイヴから自分にも力が眠っていると聞いてから、ずっと自分の世界に入り込んでいる。


「ミナちゃんでいいのかしら?あなた達の絆は深いのね」


「あわわ。ま、申し遅れました!わたしはミナ・ヒューゲルで、あっちの男の子が真壁和澄くんです」


 ミナは自己紹介がまだだったことをおもいだして慌てて話す。


「ふふ。あなたは質問をする時は冷静だったのに、普段はかなり抜けてそうね」


「よく言われます・・・」


「あの様子だと彼、自分の武器と指輪の中に邪神の欠片ヘブンズフラグメント、クズのかけらが入ってること聞いてないわね」


「えぇ。おそらく今は地上に戻ったら、邪神の欠片を見つけ出すことについて考えてると思います」


「かーっ!どこまでアダムに似てるのかしら」


 今どこにいるかわからない彼も夢中になると人の話を聞かないことがたまにあった。


「ブレードとかいうあの武器。製作者は知らないけど、あのふたつを身につけてる間は一時的に素因封印の一部を解除してるわね」


 人の素質を封じたもののことを素因封印とした。これはイヴと話していてミナがふと口にした言葉だったが、イヴはしっくりきたためそう呼ぶことにした。


「つまり昔の人たちは色々なものを操れたんですか?」


「そうね。大抵の人は複数の属性を操れたわね。ただあのブレードって武器はそれだけじゃないわ。おそらく神の欠片で素因封印を解除するだけじゃない。何かもっと強力なものを放出する強度なのよね。アクセサリーと武器、両方ないと封印が解除されないのも気になるわね」


 彼女がブレードを見た感想は、武器が錠前でアクセサリーが鍵みたいのものだった。


「それはわたしも地上に戻ったら解析してみます」


「そうね。そろそろあなた達を地上に返してあげないとね。わたしは帝国の皇城の前にしか送れないけどいいかしら?」


「はい、助かります。カズくんの負担がこれでかなり貼りますので」


 この地下深くに頻繁にきているというイヴは、地上と地下を行き来する手段を何か持っていると思い、ミナは質問した。そしたら帝都にある皇城の前に転移する装置を持っているというので、それで自分たちも送り届けてほしいとお願いし了承を得ていた。


「わたしはあなた達を送り届けたらまたここに戻るわ。しばらくはこの神殿にとどまるつもりだからなにか困ったことがあったらまたおいで。彼は氷の他に雷属性も操れるのよね?」


「はい。カズくんは氷属性より雷属性のが適性があります」


「ならそれでここら辺に向かって電波を流してもらえればわたしから迎えに行くから。来るときはよろしくね」


 思考の海に行ってしまった和澄を引っ張って、和澄とミナはイヴの転移によって、無事帝都に帰還した。


◇◆◇◆◇


 まだ落ちてから数時間しか経ってないのに懐かしい感じがする。
 俺たちはイヴさんの装置を使い帝都の皇城前に来ていた。


「俺たちの無事を兄さん達に知らせたほうがいいかな?」


「もしまだ戦闘が継続してた場合の援軍を呼ぶために、陛下には知らせておいた方がいいと思うかな」


 ミナの意見はごもっとも。たしかに兄さん達が負けるとは思わないけど、万が一の可能性があるし報告は大事だ。
 そう思い近くにいた兵士に皇帝陛下との謁見をしたいと告げる。


「和澄様にミナ様ですね。今現在ヨシュア様とカナン様が謁見中でございます。今から案内いたします。どうぞこちらへ」


「これはご丁寧にありがとうございます。でもわたし達は謁見の予定はありませんよ?確認の方はとらなくてよろしいのですか?」


 ミナが言った通り俺たちは急にここへきた。戦闘で地下に落ちなきゃ報告等は兄さん達がやっていたはずだ。普通は確認を取りに行くのにそれがなかったから、ミナは言ったのだろう。


「問題ないです。ヨシュア様がおふたりがここに来ると言うことは聞いております。陛下からもつい先ほどおふたりが来たら通すように言われていますので」


 どうやら兄さん達は俺たちがここに来ることを予想してたらしい。たしかに現場に戻って兄さんがいなかったら俺たちはここに来るだろう。


「なるほどそういうことでしたか。失礼しました」


「いえいえ。ではこちらへ」


 俺たちは兵士に案内されて大きな扉の前に来た。


「わたしの案内はここまでになります。扉は勝手に開けてよろしいそうです。それではわたしはこれで」


 そういうと兵士は廊下へと消えていった。


「これほんとに勝手に開けていいのかな?」


「どのみちあの人がいなくなったから、開けるしかないし開けようか」


 そう言って俺とミナは大きな扉を開けた。
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