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三章

第三皇子との会合

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 ニコラはジノアの回し蹴りを喰らって地面に打ち付けられ意識を手放している。
 ジノアがニコラを張り倒したことで、一瞬呆けちまった。
 いかんいかん。

「話ですか。後日じゃダメですかね?見ての通り俺の友人は大怪我をしてるんですよ」

「それは困った。母上から一つ伝言を預かっていると言うのに」

「伝言?」

「詳しく話す場が欲しいので手短に一言だけ。面倒ごとを増やすなってところですかね」

 なっ!?
 一体どこから見てるんだ!?
 索敵魔法で認識できない奴がいるのか!?
 俺は辺りを見回し、その姿を見るジノアはクスクスと笑っている。

「リアスくん、多分あれだよ」

「え?から・・・す?」

 そうか、アデルさんは鴉の精霊と契約していた。
 たしか名前はクロウ。

『やっほー、にゃ!今までの会話は全てご主人に伝えてるにゃ!』

 げっ、じゃあ転生とかそう言う内容はどうなんだ?

『そんな顔を青くしないでほしいにゃ。ご主人が転生者とか言うのに狙われたらまずいと思って回線は繋げてないにゃ』

「ねぇ聞いてる?」

 ジノアの言うことは無視する。
 転生者が暗躍する以上、陛下に何か思惑があっても、俺に何か危害を加えると言うことはないだろう。

「いや、これはもういっそ陛下やアデルさんには、話したほうがいいか?」

 おそらくだが、目の前のクロウは分裂体で本体は今もアデルさんの肩辺りにいそうだ。
 こう言葉にしておけば、アデルさんは察してくれるだろうと思ってる。

「さっきからどうしたの彼?やっぱ鷲掴みの君主って呼ばれるくらいだから、頭のネジの一つや二つ外れてるのかな?」

 おい、まてこら。
 百歩譲って鷲掴みの君主は良い。
 しかしこれだけは譲れない。

「この貞操概念がゆるゆるのくそ皇子!ミラとの距離がちけぇ!離れろ!」

「えー、いいじゃん。ただのスキンシップだ------」

 ミラの肩に手をやろうとしたジノアだったが、目の前に轟く稲妻によって、その手を引っ込めてしまう。

「天雷。触れるなヤリ○ンホモビッチ。君みたいのが、ボクの身体に気安く触るなんて許されてると思ってるの?」

「そっちの気はないんだけど・・・」

 しかし驚いた。
 ミラがキレたこともだが、ジノアも天雷を避けるような動きをしていたからだ。
 まぁミラが当てる気があったら一瞬で灰だっただろうが、それでも俺達より二つ下の男にそんな動きができるとは。

「ミラ!いくらそこの貞操ゆるゆるクソ皇子がムカつくからって殺すのはまずい」

「大丈夫、死んでも事故って処理できるよ今なら」

「わぁ、母上相手に脅しを掛けるだけあるねぇ。元とはいえ皇太子候補にかける言葉じゃないよ」

「それは生憎だったな。たとえ筆頭であるアルバートに対してだって言ってやるぜ!」

「二人とも落ち着けよ。あの女ったらしで女性のことを何も考えないクソど畜生で、結果的に女性からすら避けられている、あのジノア様が久々に人と会話しようとしてんだぞ?」

 グレイ、お前が言ってることも大概酷いぞ?
 ジノアみろよ。
 流石にそこまで言われたらキツイのか少し涙目になってんぞ。
 しかし目が細いなぁ。
 泣いてるかどうかも、よく見ないとわかんない。
 これが糸目ってやつか。
 初めて見た。

「グレイ、傷ついた!僕は傷ついたよ!だからリアス。君は僕の話を聞かなければいけない」

「だからっ、皇族だからって横暴ですね。言ったでしょう?見ての通り俺の友は脚が変な方向に曲がってるんです。早く治療をしないと」

「聖人と聖女がいるのに何言ってんの?」

「チッ!」

 時間はかかるだろうが、グレイとグレシアの治癒魔法だけでイルミナを完治させることは可能だ。
 けど俺はジノアと話なんてしたくない。
 陛下からって言うのは嘘でも本当でも、確実に面倒ごとに巻き込まれることがわかってるからだ。
 それも最悪の形で。
 
「舌打ちするほど嫌かい?まぁ君は多分僕の申し出を断れないよ。君、まさかなんの見返りもなしに公爵の爵位をイルシアが受け取れると思ってる?」

「どういうことだ」

「あ、話を聞く気になったかな?詳しい話は、出来れば君のその馬車の中でしたいんだけど」

 そういうと俺の馬車を指差して、これまた満面の笑みでこちらを見ている。

「だったら俺達は------」

「国を出ていくかい?薄情だね君。そんなことをすればイルシアは不敬罪になるのはわかってるよね?」

「それは------」

「イルシアも連れて逃げる?そんな無責任なことしないと思うよ?現公爵領にいる領民達が、苦しめられる可能性があるからね。貴族至上主義の貴族が領地を治めたら、大変だもんね~」

 こいつ・・・俺達を脅してやがる。
 たしかにイルシア先輩ならそう言いかねない。
 それに俺達がしたことは事実不敬罪になってもおかしくないことだ。
 陛下が言ってもいない、爵位授与をでっち上げたんだからな。

「腹黒いですね」

「強かと言ってくれよ」

「どうぞ馬車へ。クロウも来い」

『あざにゃーす』

 ジノアを馬車に案内する。
 ドアを開けた瞬間に、その中の光景に固まっていたのだろう。
 その細い目を見開くほどの驚きはあったようだ。作成者としては鼻が高い。

「これ本当に馬車かい?この扉がどこか別の部屋に繋がってると言われたほうが信じられるんだけど」

「すごいでしょう?」

「これを作ったのはリアスなんだよ。ボクの自慢の婚約者!比べるまでもないから、穢らわしい君はボクに二度と触れないでね♡」

 可愛い笑顔と仕草なんだが、これほど凶器を体現した鋭い言葉もないだろう。
 イルミナが脚を引き継ぎながら、コンロのある方に行こうとする。

「リアス様、お茶を!」

「いや、イルミナは怪我人だ。今日は俺が淹れるよ」

 流石に止めた。
 普段はイルミナが紅茶やらコーヒーやら入れてくれる。
 まぁ赤桐との闘いで一番の立役者だし、足も自分では歩けないほど曲がってる。
 そんな奴を働かせるわけにはいかない。

「あ、それならオレがやって------」

「やめろ。お前に任せるくらいならグレシアに任せる。間違っても手を出すんじゃねぇ」

「たしかにグレイがやると二度手間になりそうだものね」

「メルセデスが居ればなぁ。今頃あいつ寮でぬくぬくしてんだろうなぁ」

 まぁどのみちメルセデスが一緒でも、イルシア先輩達と一緒に避難させてたと思うし、この場にはいなかっただろうけど。
 とりあえずエアコンを付けて、コンロで水を沸騰させる。
 俺はお茶を淹れるのは素人だから勘弁。
 茶葉を抽出物で包んだ、ティーパックをお湯に入れればすぐに完成だ。
 一回これを寮でグレイにやらせたが、ジャバジャバとティーパックを入れたり出したりして、水と茶葉を撒き散らして悲惨だった。
 たったこれだけの作業もまともにできないとか、残念でならない。

「はい、どうぞ」

「え、やけに早いね」

 この世界にはティーパックって言う物がないからな。
 普通に紅茶を入れるならもっとか時間がかかる。
 まぁメルセデスやイルミナとか、本格的に紅茶を入れる奴もいるし。

「貴方が俺の婚約者に触れてないか心配だったので」

「触れるくらい別にいいじゃん?嫉妬深い男は切られるよ」

「性病の塊みたいな人が、ミラに触れるどころか視界に入れるだけで穢れが伝染りますので」

「リアスも大概ズバズバ言うよな」

「事実だ仕方ないだろ」

 グレイがイルミナの足を治療しながら、呆れるような目で俺を見てくる。
 いや、お前だってイルミナやグレシアが言い寄られてたらキレるだろう。

「僕、そこまで君たちに酷いことしたかな?泣きそう」

「別に公の場じゃねぇから言葉崩すけど、お前皇族の癖にメンタル弱いのな」

「それボクも思ったー!」

「涙目で抗議してるのは微笑ましいですけどね」

 お、イルミナは割と好意的。

「え、どうして・・・」

「どうしても何も、流石に目に涙溜めてたら気付くだろう。お前そんな豆腐メンタルで、よく浮気なんて出来たもんだな」

「たしかに浮気なんてしたら、婚約者に愛想を尽かされるのも当然で、付き合いの浅いボクらにこんな言われても泣くような子が、婚約者に愛想を尽かされたら、引きこもって出てこなさそうだしね」

 涙目になりながらも、俺達の言葉に何を驚いたのか知らないが口をぱくぱくさせている。
 そして次には溢れんばかりの涙が、ジノアの頬を流れ始めた。

「ジ、ジノア様!?ちょっと三人とも、ジノア様に謝って!彼、鉄仮面って言われて、何を言われても動じないのよ!?それなのに、こんなに涙流して。一応ジノア様は歳下なんだからもっと優しくしなさいよ」

 グレシアが甲斐甲斐しく、ジノアの涙を拭っている。
 メンタルが弱くてもさすがは皇族。
 公の場では我慢してたんだろうな。
 
「悪かったな。まさかそこまで泣くとは思ってなかった」

「いえ、初めての経験でして・・・」

「あぁ、そうだよな。皇族だからここまで罵られることもないもんな」

 もしかしたら、想像してる以上にこいつはメンタルが強いのかも。
 幼い頃から付き合いのあるぽい、グレイとグレシアがいるから、素の自分を見せたとかそういうところだろう。
 そして少しだけいつもより強い口調だったから、涙腺が緩んで涙が溢れてきたってところか

「ち、違うんだ。僕が泣いてることに、君たちが初めて気付いてくれたんだ」

「・・・は?」

 たしかに細目でよく見なきゃ気づかないが、涙を浮かべてるのに誰も気づかなかったのか!?
 俺は社交界なんて顔を出さないから知らないが、いくらなんでもそれはないだろう。

「今まで・・・僕は何を言われても動じない社交界の鉄仮面とか、ヤリ○ンのクソ野郎とか罵られたけど・・・いつも涙を浮かべてるのに、みんな何を言われても動じなくてすごいって言うんだもん!」

「え、嘘だろ・・・おい、グレシア。それって本当か?」

「ジノア様が涙流してるのは見たのはたしかに今が初めてよ。でも涙目なんて浮かべてたかしら?」

 ミラとイルミナは驚いた顔をしている。
 そりゃそうだ。
 少なくとも馬車に入る前に涙目になってただろう。

「馬車に入る前に、グレイが無自覚に失礼なこと言ってたときも、涙目になってただろう?」

「え、嘘!?良い口実が出来たと不適な笑みを浮かべていたの間違いじゃないの!?」

 あー、マジかぁ。
 なんかこうなると少し見方が変わってくるなぁ。
 もしそう言った勘違いが起きているのが涙目だけってことはないだろう。

「いいんだよ・・・僕はいつもそうやって勘違いされるんだ。別に今に始まったことじゃないし」

「あー、少しお前のことを勘違いしていたよ。でも尚更聞きたいが、そんなメンタル弱いのにどうして婚約者がいるのに浮気なんてしたんだ?」

「仕組まれた事だって言ったら信じてくれる?気づいてると思うけど、僕がさっき無効破壊者アンチブレイカーの肩を触ろうとしたのはわざとだよ」

「仕組まれた事を信じるかは内容次第だが、ミライの魔法を綺麗に避けたんだ。予想して動いていたのはわかるよ」

 さっきのは魔法が来ると予め警戒してたから出来た動きだったか。
 まぁ手慣れてるから警戒してるとも取れるが・・・
 おっと今度は気を引き締めてるな。
 多分過去のこと云々の前に、俺と話がしたいって言った内容の本題だろう。

「その話は最後にするよ。まずは------」

「あぁ、先に本題ってわけか」

「さすがは鷲づかみの君主。国の防衛をたった3人で防ぎきった立役者」

「その鷲づかみの君主はやめてくれ。リアスで良いジノア様」

「じゃあ僕のこともジノアで良いよ」

「わかったジノア。頼みってのはなんだ?」

「実は僕は近々皇位を取り戻したいって考えてるんだ」

 これは花そそのシナリオでのジノアの行動と同じだ。
 頼る相手がアルバートか俺かの違い。
 まぁ花そそではメンタルが弱いとか、浮気が仕組まれたモノだったとかそういう設定はなかった。
 
「皇位を取り戻したいか。そんなこと可能なのか?」

 残念ながらジノアが皇位を取り戻したシナリオがない。
 ジノアが登場するのはアルバートが攻略キャラから外れたときのみで、その時も結局ジノアが皇位を取り戻すことはなかった。
 それどころか悪役だからな。
 主人公に強姦行為を行って純潔を奪うって言う鬼畜キャラだ。

「お前が廃嫡された理由は、婚約者がいるのに不貞を働いた。それも一度や二度じゃないって話だろ?そんなお前が再び皇位を取り戻すって、無茶だ。もしそれが冤罪だとしても、一度通ってしまった罪状なら周りから見る目は変わらないぞ?」

「そんなことわかってるよ。だから後ろ盾が欲しいんだ」

「俺にそれをしろって事か?魔物大量発生スタンピードの時の実績は公表してないし、今回の騒動だって俺はイルシア先輩に手柄を譲る気だし、何を言われてもそこは譲る気は無い。だったら俺に価値は無いと思うが?」

 俺の戦闘力は自負でもうぬぼれでも無い。
 たしかにこの世界の人間基準では異常だ。
 だからこの力を使えば、確実に政争には勝てるだろうな。
 でもそれをする気は俺には無い。
 すべての人間を恐怖で支配するなんて、そんなつまらない人生を俺は送りたくない。

「本気で言ってる?君は本気でそう思ってる?」

「あぁ。俺には力しか価値がない。その価値を俺は隠すって決めたんだ。つまり俺には価値が無いと思うんだ?」

「リアスはたしかに戦闘力がすごいからその力を利用されると思うのも無理は無いけどね。でもそうじゃないんだ」

「そうじゃない?」

「君はもっと自分の価値を知るべきだ。飢餓に苦しんでいた領地の経済を回し、たった六年で帝国経済の中心まで進出してきた。これに加えて民を身を挺して守ったイルシア・フォン・ターニャとも懇意にしてる。君は民に取ってはヒーローなんだよ」

「え、そんな風に見られてんの?」

 俺は別に領地を良くして、最終的に自分の暮らしやすい土地を作れれば良いなって思っただけなのに。
 毒物とかそういう危険を考えないで暮らせるような。

「そうだよ。だからこそ僕は君の後ろ盾がほしいんだ」

「なるほどな。これは陛下も知ってることか?」

「うん。正直、リアスからみても兄上は、アルバートは皇太子には相応しくないと思わない?皇帝が貴族主義って、民達の税で生きている皇族が民を蔑ろにするなんて、国が崩壊しかねないし。それにグレシアのことも蔑ろにしてる。まぁこれは皇太子以前に人としての問題だと思うけどね」

 それはたしかに思う。
 アルバートはゲームでも、初登場から俺様貴族主義だったな。
 主人公である聖女リリィとの出会いで、その考えをストーリーが進むにつれて改めていき、皇太子に相応しい姿へと変わっていった。
 だが、今の段階ではそんな姿になるとは微塵も感じられない。
 この世界は現実であり、ゲームのように考えが必ずしも改められるとも限らない。

「そうだな。アルバートはたしかに皇太子に相応しいとは思えないと思う」

「でしょ?だからさ、この帝国を良くするためと思って僕に協力してくれないかな?」

「もし俺がこれを断れば、陛下はイルシア先輩の公爵の爵位授与をしてくれないってことか?」

「あぁ、それは違うよ。母上はそんなに非情じゃないよ。多分ちゃんと授与してくれると思うよ。寧ろ今はリアスに本来与える爵位の確保を考えてるんじゃ無いかな?」

「じゃあなんの見返りも無しに爵位を受け取れると思うなってのはなんだ!」

「これだけのことをして母上やアデルにこれ以上胃痛の種を増やすのかなって思ってさ。アルバートが皇太子になれば、確実に二人のどちらかはノイローゼになると思うよ。君の良心がそれを許すのかなって思って」

「お前、それって半ば脅しじゃねぇか!」

「いやいや、断ってくれてもいいんだよ。もちろん陛下は残念がるだろうけどね。ねぇねぇどうする?」

「さっきまで泣きべそ搔いてた奴の台詞じゃねぇよ!」

「公私混同はしない主義だからね。それじゃあ僕のことを陰で貶めた奴と同じだからねやるなら堂々と相手を脅すよ!」

 その言葉を聞いて俺はそんなことを正面から言うなよと思った。
 しばらくの沈黙のあと、ミラとイルミナがクスクスと笑い出す。

「ふふふ。いいじゃんリアスくん。引き受けてあげなよ後ろ盾になるの」

「ですね。わたしも引き受けたら良いと思います。何て言うか、彼が皇帝になった方がリアス様は楽しく暮らせそうだなと思いました」

 え、どうしてそうなった!?
 グレイとグレシアもそれは同様で驚いている。
 俺達がおかしいのか?
 いや、ジノアの顔を見たら、こいつも驚いているみたいだ。

「だって正面から堂々と脅すのって、リアスくんにそっくりじゃん。似たもの同士上手くやっていけそうだと思う」

「リアス様とジノア様は仲良くなれそうな気がしました。どうせなら馬が合わないアルバート殿よりも、ジノア様が皇帝になった方が得だと思いました」

 えー、二人って俺のことどう思ってるんだよ。
 いくら俺だって堂々と相手を脅したり・・・したな。
 陛下にしたなぁ。
 なるほど、類は友を呼ぶってよく言ったもんだ。

「悪いけど、すぐに答えが出せる内容でもないから、これは持ち帰らせてもらう」

「いや、考えてくれるだけでもありがたいよ」

「それでお前を廃嫡まで持ってくほどの仕組まれた浮気の件、一体何をされたんだ?」

 まだ涙目を浮かべてる。
 よく考えればこいつは前世ならまだ小学生か中学性の歳なんだよな。
 女誑しの可能性って割と低くないかと思えてきた。

「僕はある人に薬を盛られたんだ。そして意識を手放したとき、裸の女性が横に居た」

 薬で意識を飛ばしたあと、隣で裸の女性が寝ているところを誰かに見られれば、それは不貞を疑われても仕方ないよな。
 それに証拠もない。
 この世界には薬を盛られたかどうかを判断する器具がないからな。

「その現場に僕の元婚約者をある人が呼んでいたんだ」

「ある人って誰なんだ?」

「・・・皇族をハメられる人間なんてさ、皇族くらいしかいないよね?」

「アルバートか?」

 ジノアは首を横に振った。
 陛下がそんなことするはずもない。
 そんなことをして得する人物は間違いなくアルバートだ。
 皇太子候補が一人落ちて、残る皇太子候補のガランはアルバートに心酔している。
 あぁ、なるほど。

「犯人はガランか」

「正解です」

 俺はアルバートを警戒すべきだと思っていたが、とんだ間違いだった。
 アルバートはやることなすことがアホの塊だ。
 警戒するに値しない。
 真に警戒すべきはガランだったか。
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