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二章

感情のままに現れる化け物はガヤから生まれる

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 グレイに俺とクレの予測出来る限りの敵の狙いを話した。
 馬車の中ではクレがミラやグレシアに、考えを述べているところだろう。

「敵の狙いはターニャ家の信用!?だからオレ達を捕まえて止める人間を減らしたってことか!」

「いや、他にも理由があるかもしれない。信用を落とすならわざわざ帝都で暴れる必要が無い」

「ターニャ家の評価を落とす以外にも目的があるってことか?」

 グレイの言うとおりそれが有力だろう。
 最も考えてる時間が無い。
 俺がこのまま馬車を飛ばしていても、帝都まで1時間はかかる。
 だけどどうする?
 間に合わせるにはショートカットをするしかない。
 俺は馬車を一時的に止める。

「おい、みんな。今からかなり揺れるから気を付けてくれ」

「リアス、何をする気だよ!?」

「こうすんだよ!無属性魔法、身体強化!」

 馬車を思いきり持ち上げる。
 結構重い。
 
「おいおいおい!オレでも今お前がしようとしてることはわかるぞ?」

「話が早いな。口を閉じて捕まっておけ。舌噛んで死ぬぞ」

「ざけんな!オレも馬車の中に入れろ!」

「時間が惜しい!どっこいせい!」

「うあああああああああああ!」

 俺は持ち上げた馬車を思いきり真上に投げた。
 そしてヒャルハッハ王国に向けて全力でライジングトルネードを放ってやる
 あいつらは俺達を拘束してたんだ。
 これくらいの覚悟は出来てんだろう!

「グレイ、しっかり口閉じとけよ!ライジングトルネード!」

「あ、おまっ!うがああああああああああ!」

 ライジングトルネードの推進力でぐんぐん進んでいく馬車。
 馬車が通り過ぎたあとは、木々が生い茂る森の影が綺麗になくなる。
 帝都に着く頃には、帝都とヒャルハッハ王国の一直線の道が出来る。
 ん?ヒャルハッハの防壁が無傷?
 なにか付与された防壁だったのか!
 まぁいいや。
 この勢いならあと2分弱で帝都に着く。
 
「帝都が見えてきたな。そろそろ着陸準備を・・・」

 あ、やっべ。
 考えてなかった。
 着陸は問題ないけど、場所が問題だ。
 この勢いで突っ込んで良い場所なんてあるか?
 そうだ、敵と思われる奴らを認識したら、そこに突っ込めば良いか。
 そんな軽い気持ちで考えていたが、帝都の現状を見たらそうも言ってられなくなっていることがわかる。
 あちこちから火の手が上がっている。
 くそっ!
 あの現状を作らせたのは、他でもない俺達だ。
 人質を取らないと付け入ることが出来ない現状を作り、本人を殺害するのではなく、社会的に抹殺する方法をとらざるを得ない状況を作った俺達の。
 
「これ以上、この災禍を広げるわけにはいかねぇ!」

 俺は帝都を見渡すが、怪我人が治療している姿しか見えない。
 この現状を作った奴らがいるはずだ。
 中央部らへんを見ると、俺達と同じ制服を着た奴らが、ちょっと大柄の奴に対して魔法の弾幕を飛ばしている姿が見える。
 でも見た感じ魔法は効いていない。
 この世界は先頭に置いては、どれだけ集団を組もうとも個がそれを上回る可能性がある。
 あれがまさにそれだ。

「あそこに狙って降りるか!オラァ!」

「おいリアス!ってうわあああ!」

 馬車を思い切り着地地点に投げつける。
 着地と同時に三人のうちの一人が剣を横に凪吹いた。
 丁度俺の馬車に当たって、それ以上横に剣をなぎ払えなかったみたいだけどな。

「到着だ。ギリギリだったな」

 って待てよ?こいつって・・・結構肉体が変異してるが恐らくゾグニの新しい側近騎士のギルスってやつじゃないか?

「いってぇ!おいリアスてめぇ!いきなりどういう領分だ!てめぇこんなことすんならオレも室内に入れろよ!」

 おい、グレイ。
 お前がそれを言うか?

「はぁ!?俺に怒るってお前良い度胸してんな!お前が捕まるヘマしなきゃ今頃帝都で余裕を持って事態を収拾出来たんだぞゴラァ!」

「それとこれとは話がちげぇだろうが!くそっ!おい、ミライ!出てきて、お前の婚約者に何とか言ってくれよ」

 ミラを味方に付けようってのか?
 あいつだって俺と同じ気持ちに決まってる。
 ミラが馬車から出てくるが、笑顔を見せてるが目が笑ってない。
 あ、これはヤバイ・・・

「リアスくん、頭打った!さすがに馬車を投げるのはどうかと思う!」

「わ、悪い・・・」

「ほれみろ!」

 いや、たしかに衝撃がそこまで来ないとは言え、もうちょっと考えて飛ばすべきだったな。
 うん・・・
 馬車の重力が常に床に向くように改造しよう!
 今度はグレシアが怒りの形相でこちらを睨んでくる。
 あ、また怒られるのかこれ?

「グレイ!あんたはそんな偉そうな態度出来ないでしょう?誰のために、わたし達捕まったと思ってるのよもう!」

「悪いグレシア・・・」

 イルシア先輩が今度は降りてきた。
 ちょうど学園の生徒もいるしちょうど良いな。
 俺はイルシア先輩に目配せする。
 クレに馬車の中でちゃんと伝えられてるみたいだな。
 イルシア先輩は普段は見せない貴族の顔で民間人を見つめて、声を張り上げる。
 
「君たちの勇気ある行動が、民間人の被害を少しだけ食い止められた。感謝する。って言っても俺のの家の騎士がしでかしたことだからな。俺はお前らに謝らないといけない。すまなかった」

 もう、ターニャ家の評価を元に戻すことは不可能だ。
 どれだけ弁明してもゾグニがしでかした汚職の事実が付きまとうし、それは根も葉もない噂ではなく事実だから、俺達も何も言えない。
 だったら、もうその事実をリセットするしかない。

「俺達はターニャ家の裏の事情を暴き、こいつらがヒャルハッハ王国と手を組んだことを知った!我々はその功績を称えられ、皇帝陛下から、ターニャ家とは別に公爵の地位を与えられた。そして今、帝都のこの事態を収拾するよう、陛下に命じられ馳せ参じた!民の諸君。俺は絶対にお前達を裏切らない。だから信じてこの場から動かないで欲しい。守る対象が増えると、闘いにくくなってしまうからだ!」

 公爵の地位ってのに誰かしらが文句を言ったなら、俺が三年後に受けるはずの魔物大量発生スタンピードを食い止めた功績でもらった爵位を渡せば良い。
 あくまでイルシア先輩が、ターニャ家とはなんの関わりもないことを示せれば良い。
 俺たちがその力を示せば、汚職なんてしなくても好き勝手できるってことを証明できれば、イルシア先輩達が、ゾグニとは何の関係もないということの証明になる。
 そのためのプラスアルファに、別の公爵の爵位って言う、もってこいの証をチョイスした。
 さて、俺達も準備をしよう。
 少なくとも、こいつらは犯人の一部だとみてる。

『まだ仕事は残ってますからね。三人とも、魔力はなるべく使いきらずに速攻で倒してくださいね』

 クレの一言で確信した。
 まだ、帝都にはクレが脅威と思う魔力を持つ人間がいるってことだ。
 俺は屈伸しながら、ミラは深呼吸をしながら、イルミナは腕を交差させて伸ばしながら闘う準備をする。

「三人とも頑張れ」

「「「おう!」」」

「イ、イルシアァァァァァァア!」

 イルシア先輩に声を号令代わりに俺達は返事と同時にそれぞれ向かって行く。
 ミラは会合早々に天雷を放つが、魔法耐性が上がってるのか、ちょっと焦げる程度だ。
 イルミナは蹴りで吹き飛ばしたみたいだが、普通に立ち上がってる。
 さて俺はイルシア先輩の名前を叫んでいた、親玉と思われるギルスが相手だ。

「ハエがいくら集まろうともぉぉぉ!」

「太刀筋はいいけど、それだけだ。圧倒的な力を持って驕ったか?」

 剣速は申し分ない。
 それに地味に剣に魔法が付与されている。
 なるほど、魔法を剣に付与出来る騎士は貴重だ。
 だからこそ残念でならない。
 肉体の状況を見るに、恐らくなにかしらのドラッグか何かで一時的に身体を強化したのだろう。
 可哀想に。
 こういう肉体が変化する様な薬を作ってしまったら・・・恐らくもうまともに生きることも出来ないだろう。

「身体強化!これがまがい物と本物の力の差だ」

「馬鹿な!?」

 俺は奴の剣を身体強化だけで、素手で受けとめた。
 そして剣を砕く。
 所詮、ズルをして手に入れた力の限界。
 まがい物だ。
 けど、剣を砕かれただけじゃ止まらないか。
 こんなのでも身体を無理やり強化した身だ。
 素手でも直撃すればタダじゃ済まない。
 まぁ躱せばいいんだけどな。
 というか、こいつ肉弾戦のがキレが良い。

「す、すごい・・・」

「あの至近距離で殴られるのに、一切受け身を取らずに攻撃を躱すなんて」

「おい、お前ら!今のうちに民間人を避難させろ。喋ってる暇なんかないぞ!イルシア先輩、指示早く!」

「お、おう!そういうことだ。民間人の方々は、アルザーノ魔術学園に避難しましょう。あそこなら強力な魔術師がいっぱい居ます」

「「「はい!」」」

 グレイとグレシアは念のため俺達に治療が必要になった時のために残ったみたいだが、他の奴らは避難誘導を促し始めた。
 アルナを護衛に付けると少し不安が残るんだよな。
 まぁすぐに追いつくからいいか。

「何故だ・・・たしかに奴は、こいつを使えば帝国に敵はいないと言ったのに!」

「やっぱ別の黒幕がいるか。まぁいいや。言質は取れた。介錯してやるよ。このまま生きてても辛いだけだろうからな」

 耐久力は目を見張るモノがある。
 だが得物をなくした騎士に、負ける道理はない。
 ミラとイルミナの方を見ても、崩れ落ちている騎士の姿が見えた。
 もうトドメを刺すというトコロだろう。

「ぐっ・・・ゾグニ様の・・・ゾグニアアダァァアアアアアア!」

「最期の悪あがきか?いくら魔力が高くなろうとも、それだけじゃ圧倒的に確定してる勝敗は覆らな------」

『違います!リアス、今すぐそれから離れなさい!』

 クレが声を荒げていたから、慌ててその場から離脱する。

「これは・・・」

 禍々しいほどの魔力が、あふれで始めた。
 いやでもまさか、そんなことありえるのか。

「クレ!」

『恐らく貴方の考えてるとおりだと思いますよ。彼は今、魔物になろうとしています』

 やはり。
 なんか嫌な感じがしたからもしかしたらと思ったんだ。
 魔物化現象は、シナリオでも出てくるんだ。
 二周目のグレシア生存ルートの場合のラスボス登場前に、帝都を魔物で溢れさせた王国暗殺部隊、浅知恵の蜘蛛という組織が使う薬にその成分が入っていたらしい。
 だから最期に出てくる魔物のほとんどが帝国の民だったという、クソ設定だ。
 それも殺したあとに、その情報が出てくるから質が悪い。

「助かったクレ。危うく腕を失ってた」

『そうしたら私が再生していましたよ』

 頼もしいねぇ。
 ミラとイルミナの相手も同じことになってるから、禍々しい魔力に攻勢に移れないからこちらに下がってくる。
 
「リアスくん。人間の魔物化ってこんなに早く起きる出来事じゃないよね!?」

「リアス様。あれが魔物になるってことは、敵は・・・」

「どうやら浅知恵の蜘蛛という組織が、ゾグニを殺した犯人の関係者らしい。どうしてこんなにシナリオにズレがあるんだろうな」

 本来であれば、主人公が卒業前に起きるイベントだ。
 しかも今回は民間人が魔物化されていない。
 まだ時期が実験の範囲だったってことか?

「とにかく警戒しろ。ジャイアントベアとかの魔物だったらまだいいが、俺達の知らない魔物になる可能性もありえなくはない」

 基本的に人間は魔物化なんてしない。
 人間自体が魔物みたいなもんだからな。
 内部に魔力を保有する生物が魔物というカテゴリーだ。
 まぁ人間以外のって言うのが手前に来るんだが。
 
「クレ、アルナ達についてろ。もしこれが他にも現れたとき、相手が未知の魔物だった場合ヤバイ」

『わかりました。こちらは任せましたよ』

 そういうとクレは風に乗って飛んでいった。
 イルシア先輩達結構距離とったな。

「アガァアアアアアアア!」

「ウゴォォォォォォォ!」

「オーガだね」

「いや、あいつをみろ。サイズが俺達と同じくらいの元の高さに戻ったぞ?」

 ギルスとミラが闘っていた騎士はオーガに変化した。
 けど、もうひとり。
 イルミナが闘っていた奴が、小さくなったが人型になった。
 次の瞬間、これまで味わったことのない殺気が俺達に襲い来る。
 身体が震えている。
 
「おい・・・あれって本当に魔物なのか?」

「ヤバイよリアスくん。魔力量だけで言ったら、リアスくんより多い!」

 嘘だろ!?
 俺より多いってことは------

「ミラ、イルミナ!」

 俺は二人の頭を思いきり下に下げさせた。
 上に何かが通り過ぎたかのように、風が吹き荒れる。

「ほぉ、今のを反応するか」

「迷わず首を狙ってきやがった」

「ごめんリアスくん、見えなかった」

「すいません。不甲斐ないばかりに反応が遅れました」

「いや、俺も辛うじて見えた程度だ」

 気づけばギルスともう一人の騎士は胴体から真っ二つに斬り割かれていた。
 オーガとなってしまった以上殺すしかないわけだし仕方は無い。
 そうじゃなくても、俺はギルスを楽にするために殺してただろうしな。
 だが、まさかギルスじゃなくて、名前も知られない一塊の騎士があれだけの力を身につけるなんて。
 ガヤポジションだろあれは!

「今の初手を避けた貴様に、名乗ることを許可してやる」

「知らねぇのか?人に名前を聞くときはまず自分からってことをさ」

「ふむ。それは一理ある。我の名前は赤桐渉あかぎりわたる。初代魔王様だ!」

 赤桐渉・・・日本人か!?
 いや、初代魔王って言ってるからこの世界の人間なのか?
 だがこの世界の書物に勇者や魔王がいるなんて聞いたことがない。
 シナリオで出てきた記憶もないんだ。
 どっちにしたって、敵対してることに変わりは無い。
 迷わず俺達の首を飛ばしに来たんだ。

「へぇ、知らない名前だな」

「そうか?だがお前が我の名前を聞いたとき、頬がピクリと動いたのを我は見逃してはいないぞ?」

 結構ポーカーフェイスには自身があったんだけどな。
 単純にカマを駆けられてる可能性もあるし、ここはコメントはしないでおこう。

「俺はリアス・フォン・アルゴノートだ」

「我の話は無視か。まぁ良い。そういうことなら続きと行こう。名乗りとは大切だからな。まぁあと数秒後には、あの世で我と闘ったことを嘆いていることだろう」

 正直、今ですら嘆いているんだけど?
 なにが悲しくて得体の知れない何かと好き好んで闘いたいと思う。

「我が声に大地に眠る汝の聖なる力よ応えたまえ。我が名は------」

 何かやばい感じがする。
 あれはこの世界の記録にはないが、前世には色々な作品に存在した呪文詠唱だ!
 多くの作品が詠唱しない無詠唱に驚いているが、基本この世界で精霊達は詠唱を紡がない。
 精々声を張り上げて魔法を放つ程度だ。

「二人とも俺に抱きつけ!」

「え?急にこんな時に何を言うの」

「そうですふざけないでくださ------」

「早くしろ!」

 いつもならふざけあって笑い合うが、生憎今の俺にそんな余裕はない。
 二人ともそれを理解したのか黙って俺に抱きついている。

「ミラ!天雷、いや韋駄天を放て!俺が合わせる」

「え、それって------」

「時間がない早く!」

「わかった!」

 ミラの韋駄天と、俺の複合魔法を更に複合させた魔法を放つ。
 正直帝都一つ軽く吹き飛ぶ勢いだ。
 けどさっきのミラが見えなくて、イルミナが反応できない剣撃を考えたら、確実にこれくらいやらないと後ろのグレイとグレシア、イルシア先輩を巻き込むレベルの魔法が襲い掛かる。
 位置的に俺達が放つ向こう側は荒野で、オーバーキルしても民間人がいる心配はない。

「韋駄天!」

「ファイアバースト、トルネード。ブレイズタイフーン!」

 今回トルネードと組み合わせたのは、火の上級魔法の一つ、ファイアバースト。
 一言で言えばファイアーボールの上位互換だ。
 雷と火を風で合わせた魔法は、名付けるならライジングストームってところか?
 まぁそれはどうでもいいんだ。

「汝、我が声に応えたまえ!吹っ飛びやがれ!イグニッション・レイ!」

 それは聖属性を纏った魔法だった。
 魔王が聖属性、しかも攻撃に転じた魔法とかどんだけふざけてんだよ。
 ライジングストームとイグニッション・レイがぶつかり合い、拮抗し合う。
 けどこれは魔法の余波で俺達が吹っ飛ぶ。

「ミラ、フルシールド。イルミナもできる限り俺たちの補助な」

「うん、わかった」

「承知いたしました」

 余波を防ぐ為にシールドを貼る。
 二人をひっつかせたのはこの為だ。
 この距離じゃ俺達は確実に全員消し炭になってるだろうからな。
 グレイとグレシアは距離があるから、聖獣達が全力で守ってる。
 しかしここまでとは。
 魔法がお互い打ち消し合うが、俺たちは二人がかりで消し去ったのに、奴は一人で俺達の魔法を打ち消した。

「うぉ、すっげー!我の魔法を防ぎ切るとは」

「こっちは信じられねぇよ。出せる限りの全力を出したのによ」

 こんなの、ラスボスのグレシアにも放ったかわからないぞ。
 ん?ラスボスのグレシア・・・。
 まさかグレシアの力の源はこいつか?

「リアス様!」

「考え事?余裕じゃん!」

 頬が切れて血が伝うのがわかる。
 危ねぇ。
 イルミナが咄嗟に奴の腕を弾かなきゃ頭が陥没してた。

「助かるイルミナ」

「先ほどのお礼でございます」

 こいつは別のところに意識を割いて勝てるやつじゃない。

「お、今度はそっちのお嬢さんか。常に急所を狙いに行くのはジークンドーに似てるけど、空手やサバットをこの世界にアレンジしたって感じだ」

「よそ見するなよ!」

「いいハンデだろ?あ、君はサバットメインだね」

 あれだけの魔法を放てる奴が、近接戦もイルミナと俺を相手取って互角に渡り合っている。
 付け入る隙がない。
 できることはさっきの規模の魔法を放たれないように、ひたすら打撃を繰り返す。
 その間にミラに作戦を練ってもらう。
 強敵と、グレシアがラスボスになった場合に考えていた戦闘構図だ。

「君達のキレは悪くない。けど若いな。荒削りな部分も多いぞ」

「チッ!」

「リアス様、集中です」

 そうだな。
 いくら打撃を塞がれようとも、最終的に勝てばいい。
 どんなに善戦されようと、勝てば官軍だ。

「良い構図だと思うよ?」

「なに?」

「彼女を頭脳ブレーンとして、君達が思考の時間を稼ぐってところかな?」

 作戦を読まれてる!?
 あっちは戦いながらそこまでの余裕があるのかよ。

「単純に近接戦は俺たちの得意分野なだけだ。」

「だとしても、させると思うか?ライトニングスピア」

 俺やミラのとら比較にもならない速度のライトニングスピアが、ミラへと襲い掛かる。
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