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二章
歓迎会の会場はキラキラしてました
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イルシア先輩とバルドフェルド先輩は歓迎パーティーの準備があるため、俺達より早くパーティ会場へと向かった。
そして俺とメルセデス、グレイはミラ達を待っている。
恐らくグレシアの部屋の整理を手伝っているだろう。
どうしても衣類とかの整理もあるしな。
この学園は貴族の令嬢にとっては社交界の予行演習の場でもあるのだ。
基本的にこの学園は制服着用が義務だが、ドレスを使う場面もあるだろう。
歓迎会はどうなんだろうな。
「歓迎会に制服って間違ってないよな?」
「大丈夫だと思うけど、どうしたよ急に」
「いや、グレイのが社交界慣れしてそうだからさ。英雄の息子なんだしお茶会に呼ばれてそうじゃん?そう言うのほとんどアルナに任せきりで疎くてな」
貴族の責務だし参加もしてみたかったが、領地がそれどころではなかったと言う事実もあって機会が無かった。
貴族の社交界は経済を大きく回すための一つの手段だ。
宝石や流行のドレス、他の貴族と交流することで令嬢達がそれを購入し、商会が潤うことでその辺の市場での商品が安くなり、安くなった時に貧困層を含めた一般庶民が物を大量に購入する。
そして更に商会が潤うことにより新たな宝石やドレスが作成され、先ほどの循環に入る。
そうすることで経済が回る。
商品がどんな物が売れるか確認するためにも参加はしたかった。
だがまぁ、そんなことしないでも経済を回せるほど、アルゴノート領は酷かったから仕方ないな。
「まぁ頻度はそれなりに多かったぜ。英雄の息子である以前に俺は皇子の幼馴染みだからな。皇子の取り巻きの一人として、よく呼ばれていた」
「羨ましいな」
「そうか?めんどくさいだけだったぞ」
子供目線だったらそういう感想だよな。
下手したら平民層にも、貴族の遊び程度に無駄にお金を使うなとか思ってそうだ。
まぁ貴族達の普段の行いを考えたら仕方ないところがあるけどな。
「まぁそこは人の価値観の違いってのがあるだろうさ」
「リアスは大人なんだな。成人こそしてるがオレはまだまだ子供だぜ」
「よくわかってるな」
「少しくらい否定してくれよ」
「坊ちゃん達、嬢ちゃん達が来たぞ」
メルセデスがそういうと女子寮の方から歩く影が5つ見えた。
「一人多いな。あいつ誰だリアス?」
「リアスくーん!一人追加だよー!」
ミラが笑顔で手を振って走ってくる。
何あれ可愛い。
おっとそうじゃなかった。
あれはプラムか。
「兄貴~!プラムも歓迎会に参加するらしいですわ」
「アルナのお兄様。お久しぶりです」
「久しぶりだね。お父さんは元気かい?」
「はい。毎日手紙のやりとりをしておりました。学園に入ることで減ったはしまうでしょうが。あ、アルゴノート男爵も元気だそうですよ」
ヘンリエッタ子爵家とアルゴノート男爵家はひょんな事から交流ができた。
プラムの父親であるガリオが、領地改革に興味を抱いたからだ。
俺がそれを行っていたと知ると、娘を婚約者にとプラムを押しつけてきたときは焦った。
家格として上だからな。
断るのが大変だった。
たまに領地の経営について相談に乗ると言うことで断ることができた。
ミラが居るのに婚約者なんて押しつけられても困る。
「ありがとね。プラムは皇子の夜会に参加しなくて良いのか?」
「え、あんな自己中野郎の茶会に参加する新入生がいるんですの?あ、ごめんなさいグレシア様」
「いえ、アルバート様がその、すいません」
「そんな嫌うってアルバートの野郎一体何したんだ?」
グレイの言うことはもっともだ。
何かしてない限り嫌いにはならず無関心で終わるはずなのだ。
「ヘルナーリットは貧困層をかなり抱える領地なんだよ。ボクも何回か遊びに行かせてもらったけど、2年前は特に酷かったね」
「ミライ、その時です!殿下が税を徴収しに来たのは!」
アルバートは税を滞納していたヘルナーリットに、徴収しに行ったのだ。
本来であればヘルナーリットは処罰されるべきなのだが、事情が事情だった。
2年前にとある伯爵家が没落し、その領にいた貧しい平民達をヘルナーリット家がまとめて引き受けることになった。
それはヘルナーリット子爵が望んだ物ではなく、様々な貴族達が押し付け合い、子爵の中でも一番評判のいいヘルナーリット家に白羽の矢が立ったのだ。
「税を滞納していたわたし達も悪いですが、そもそも貧困層を受け入れる代わりに税を滞納する許可を得ていたのです。ですがあの皇子はそんなのは関係ない滞納する方が悪いとそれだけを言い、払わない場合没落させるとまで言ってきたのです!」
「申し訳ございません」
グレシアは謝罪する。
その人のことを何も考えない馬鹿皇子の尻拭いをしていたのがグレシアだ。
それは花そそでも度々明記されている。
誰を攻略キャラに選んでも、誰かしらの尻拭いをしていたな。
なのに婚約破棄から冤罪で処刑は酷いよな。
「あ、頭を上げて下さい!グレシア様が居なければ、ヘルナーリット家は終わっていました。こちらとしては感謝してもしきれません」
「それでも嫌な気持ちにさせたことは事実です。婚約者の不手際は私にとっても同罪ですからね」
「そんな。なんで婚約者に尽くしてるグレシア様がこんな目に・・・しかも皇子の催す夜会にはグレシア様を招待しないというのに」
たしかにグレシアって、俺が生前流行ってた悪役令嬢モノの主人公達に似てるんだよな。
悪役令嬢とされてるのに、実際は間違っていたことは何もしてないって言う。
いや最後は帝国すべてを滅ぼしたから、悪役令嬢ってされたんだけどさ。
っと、ミラの肩にいたクレが飛び移ってきた。
「まぁまぁ。グレシア様は歓迎会を楽しめば良いし、ボク達も学校生活ではできる限りグレシア様を守ろうってさっき決めたじゃない?」
「ありがとうございますミライさん」
『それより早く向かいましょう。食事が楽しみですからね。貴方もそうでしょう?』
クレの言うとおり、俺は今生では初めての外食になる。
だから楽しみで昼を抜いてきたほどだ。
「そんなことよか早く行こうぜ。なんだかんだ初めての外食だから昼飯食ってねぇんだよ。腹減ったー」
「リアス様。それは身体に悪いと思います」
「良いんだよ!よく言うだろ!美味しいモノは身体に悪いって」
「さすがに身体に悪いモノは歓迎会では出ないと思うぞ?貴族が来ることを想定しているだろうからな」
「まぁあの馬鹿皇子に引き抜かれてなきゃな」
冗談も交えつつ、俺達は会場へと向かう。
会場は校内だからすぐに着いた。
そこは先ほど入学式を行った状態とは打って変わり、体育館とは思えない装飾だらけだった。
ここで祭りをやっていると言われたら納得するほどカラフルだ。
「入学式の会場とは思えねぇな」
「すごいねー、まだ夕方だけど夜になったらこれ光そうだよ。ねぇリアスくん、ボクが雷魔法で電気通したら怒る?」
聞くまでも無い、怒るに決まってるだろう。
ミラはちょいちょい悪戯をしたがるのが悪い癖だよな。
「やめてもらっていいですかぁ?」
声をかけるのは、俺達より少し年上くらいのお兄さん。
髪の色は黒なのに、頭の両端に赤いメッシュが入っていて、右目にモノクルが着いている男だ。
なんだ口調が馬鹿にした感じでなんかムカつくな。
でもミラが悪いから口を出すことが出来ない。
「ごめんなさい」
「いや分かってくれれば良いんだよぉ。リアスくん入学おめでとう。初めましてぇ。僕はリューリカ・リリエンタールって言うんだよろしくぅ」
そう言って手を出してくる青年の名前はリューリカ。
俺はリューリカはよく知っている。
花そそで主人公に新しい魔法を教えてくれる人物であり、彼からのみ使用できる魔法装備のスロットを変更できたからだ。
ここは現実のため、魔法は覚えただけ使うことができるから多分あんまり関わることは無いと思っていたんだけどな。
「リアス・フォン・アルゴノートです。よろしくお願いします」
「君はぁ、感謝しても仕切れない恩がありますぅ」
「どういうことですか?」
俺はこの人と初対面だ。
だから恩を売ろうにも売れないはずだ。
「君が子爵男爵に影響のある行為をしたことで、僕の講義に出てくれるようになった生徒が増えたんだよぉ」
子爵男爵に影響ある行為って、多分魔物大量発生の時のことだよな。
ってことは、平民についての境遇が見直されたことだよな?
「僕の研究は学園長と副学園長にしか認められていないんだぁ。だから平民について見直されたことが感謝することじゃないよぉ」
「え、違うんですか?」
「いやまぁそれも感謝すべき事なんだけどねぇ。そうじゃないんだ。あとこれは箝口令が及かれてるんだからもっと小声でねぇ」
「あ、すいません」
俺としたことが、声がどんどん大きくなっていたか。
しかし平民の境遇改善じゃなかったら一体なんなんだ?
「ハッハッハ。これさぁ」
指を上に向けて、指先に炎を灯してみせるリューリカ先生。
「炎、ですか」
『馬鹿な!?』
え、クレが今までないくらい驚いている。
何がおかしいんだ?
「そう、炎ぉ。知ってるぅ?僕には契約してる精霊が居ないんだぁ」
「え」
おい、まさか・・・。
クレが驚いていたのはそう言うことだったんんだ。
『人間の中にも魔法を使えるモノがいるなんて』
「驚きました。そういうことですか」
「えぇ、一応箝口令が及かれているのでぼかしますが、あなたのおかげで、子爵男爵達はこの技術を身につけたいと、二学年と三学年の子爵男爵の皆さまの希望の表が溢れてしまいましたぁ。教師生活やってきて、希望表が来たのも初めてなのに、すごいですよねぇ」
え、逆に希望表が一枚も来ない方がすごいんだけど。
頑張っても誰かしら来るもんじゃないのか?
と言うかよくクビにならなかったな。
「え、えっとなんて言えば良いのか」
「この給料泥棒でいいんじゃねぇの?」
「おい、グレイ!いくら本当のことでも失礼だぞ」
「リアスくん、それも失礼だと思うよ」
「はい。ごめんなさい」
そうだよな。
今はちゃんと抗議を希望してくれる生徒が居るんだから良いよな。
それにしても、彼はどうやって魔法を覚えたんだろう?
「ア、アルゴノートの連中に、グレシアとグレイ!?どうしてお前達がここに居るんだ」
出た。
さっきはよくも置いて言ってくれたなシャルル副学園長。
俺は根に持つタイプだからな。
「歓迎会に来ちゃダメですか?あ、先生は俺達に来て欲しくなかったんでしたっけ?だって会場の場所が例年と変更されても、教えて下さりもしなかった」
「い、いやそれはだな・・・」
「なんですってぇ!?教頭ぉ、どういうことですかぁ!」
「リューリカ、お前そんな強い口調で話せたのか!?」
「彼は恩人ですぅ!一体どういうことか説明してくださいますねぇ!?」
教師二人の喧嘩?が始まった。
なんか面倒くさそうだ。
あ、グレシアがシャルル先生のところに歩いてく。
「この度は申し訳ございませんでした」
「グレシアくん?急になんだね」
「アルバート殿下が勝手に離れのパーティ会場を貸し切った上に、先輩や教師方々に連絡を入れなかったことを謝罪したく存じます」
グレシアが謝ることじゃないだろうに。
毎度毎度アルバートはグレシアに謝らせていたと思うと、この国の未来が心配になる。
「やはり殿下の独断なのですか?」
「はい。少なくとも私や宮殿に所属するモノはこのことを今まで知りませんでしたので、たしかだと思います」
あ、聞いては居なかったけどやっぱ独断なんだ。
婚約者であるグレシアにも伝えてない。
これはエルーザ陛下にも伝えてないんじゃないか?
皇族としての恥ずかしくないのか。
と言うかこれ泥を塗る行為だよな。
「はぁ、全く困ったモノだ。魔物大量発生と言う理由を出されて仕方なく貸したと言うのに。こちらとしても謝罪する。君たちは殿下の主催する夜会に出席すると思って蔑ろにしていた。すまない」
「私も、改めて殿下の代わりに謝罪致します。申し訳ございませんでした」
二人して頭を下げられたら、俺達に是非もない。
慌てて二人の頭を上げさせた。
「今回は俺達のための歓迎会だろ。二人とも頭を上げてくれ」
「リアスの言うとおりだ。悪いのはアルバートだ。グレシアも何かあれば言えよ。オレ達幼馴染みだし」
「あ、ありがとうグレイ」
こいつ、本当はイルミナじゃなくてグレシアに気があるんじゃ無いか?
いやもしかしたら恋心に気づいていないとか?
こいつ馬鹿だし。
「グレイって絶対グレシアのこと好きだよねリアスくん」
「奇遇だなミラ。俺もそう思って居たところだ」
「イルミナに交際を申し込もうとして失礼だね。ボコる?」
シュッシュッとエアージョブをしながら、とびきりの笑顔でそんなことを言うミラ。
いや、それはそれで歓迎会台無しにするからな?
「わたしとしてはありがたいのでこのままにさせておきましょう」
「えー、イルミナがそう言うなら」
「ミラ本気だったのか!?」
『どう見ても目が本気でしたよ』
俺よりもミラと長く居たクレがそう言うってことは、マジだったんだ。
ミラもイルミナも、浮気性や女の敵には容赦ないんだよな。
イルミナは出会った時のことを思えばしょうがないけど。
「ともあれ助かった。貴族の参加者は君たちだけでな」
「他にも俺達のクラスの子爵男爵が来ると思いますよ。ほら」
向こうから歩いてくる集団がいる。
クラスの子爵と男爵の次期当主達だ。
「おぉ、殿下の居るクラスで、殿下に逆らう貴族はいないと思っていたが、まさか・・・こんなに参加してくださる人間がいるなんて・・・」
泣いてる。
ガチ泣きだ。
「そんなに嬉しい事なのか?泣くほどなんて」
「当たり前だ!グレイくん、貴方は自分の影響力をわかっているか?貴方がお茶会の一つでも開催すればほとんどの貴族は出席するんだよ。殿下ともなれば、この国で参加しない人間はほとんどいないと言っていい」
「俺は参加ごめんですけどね」
「ボクも同感ー!」
「わたしもあんな殿方とお茶会をしても得るものは無いと思います」
「化け物三人はアルバートの言うこと聞く必要ないもんな」
化け物三人って俺達のことか?
失礼だなグレイ。
言うこと聞く必要がないっていうのは正しいが。
当然疑問に思う奴が出るのは間違いない。
学園に居る人間は、リューリカ先生の反応を見る限り知らされているからいいだろうが、この場で唯一俺達のことを知らない人間がいる。
グレシアだ。
彼女は公爵で魔物大量発生ときに前線には出ていない。
だからまぁ首を傾げてグレイに質問した。
「化け物三人組って一体誰の事かしら?」
「あ、やっべ」
「グレイ、お前わざとやってないか?」
「ち、ちげぇよ!グレシア悪いな。箝口令が及かれててオレの口からは言えな------」
「いやいいぞグレイ。陛下が俺達を気づかって箝口令を出しただけだ。俺達としては知られないに越したことがないが、グレシアは話題にしたりそれを理由に俺達をこき使ったりと低俗なことはしないと思うし話しても良いだろう」
面倒ごとを持ってくるとは思えない。
信頼関係があるわけじゃないが、別に子爵や男爵の次期当主達に知られてしまったことそこまで頑なに隠す気も無い。
「俺達は、俺とミラとイルミナの三人で一万の魔物を倒した。こいつが化け物って言うのはそういうことだ」
「何をおとぎ話のようなことを言いますの?リアス様はまともな方だと思っていましたけど」
睨み方がマジで怖い。
さすがに悪役令嬢として選ばれる顔。
でも当然そう思うよなぁ。
俺が逆の立場なら多分信じられないもんな。
だけど周りを見て欲しい。
誰も驚きもしていない。
当然、学園の奴らは参加してたか、陛下から直接聞いたかは知らないが、どっちにしても事実であることはわかっているはずだ。
そして身内に俺の実力を疑うモノはいない。
プラムですら、まぁアルナのお兄様ならやりそうですと首をうんうんと盾に何度も振ってるくらいだ。
「え、嘘!?ホントに?」
「グレシア、素が出てるぞ」
「しょうがないじゃない!こんなこと言われて驚かない人間がいるの!」
あ、お嬢様言葉って作ってたんだ。
アルナは作ったしゃべり方じゃないから、てっきり令嬢ってそう言うものだと思ってた。
「ついでに言うと、そんとき子爵以下の家格の奴らに説教を噛ました。だから今とぼとぼと歩いてくる奴らは、物事の本質を自分で考えようとして馬鹿皇子に対してイエスマンであることをやめたんだと思う」
「なるほど、それで子爵と男爵の次期当主達は殿下の誘いを断り、歓迎会に来てのだな。伝統を大事にしたと」
「あ、それは違うと思いますよ。冷静に考えて二つ上の学年で次期当主もいる貴族を蔑ろにするか、殿下を蔑ろにするか天秤にかけて前者より後者のがリスクが少ないからですよ」
さすがに殿下の誘いを伝統という理由だけで無下にするほど、彼らも馬鹿じゃない。
たしかにこの国の在り方を変えたいという意味では、アルバートは間違っていないんだ。
まぁあいつは自分好みにって単語が前に付くけどな。
「あぁそう言うことか。でも打算的な方が寧ろ信頼があるな」
「ちょっとリアス!証拠!証拠見せて!」
近い、近いよ。
鼻と鼻がぶつかりそうな距離まで、顔を近付けるなよ。
俺は距離を取ろうとするがその分近づいてくる。
グイグイ来るなグレシア。
ミラが俺とグレシアの間に入り無理矢理距離を取らせた。
「グレシア、彼はボクの婚約者!もうちょっと適度な距離を取って!リアスくんが距離を取ってるのに近づくのってよくない!」
「あ、ごめんなさい。一万の軍勢をどうやって倒したか気になって」
そういうと、グレシアの後ろから小さな龍が顔を出した。
手と足が短く蛇のような長さの龍だ。
グレシアの精霊か?
「あ、メシア起きたのね」
「ふぁあああ、おはようグレシア」
「あ、ちょっとメシア!言葉出ちゃってる」
でっけぇあくびで、牙がむき出しだ。
おいまて、今言葉を発したよな!?
見れば教師陣も口をパクパクさせている。
「おいグレイ!」
「リアス、驚いたか?これを知ってるのは、オレとグレシアだけなんだ。イルシアも知らないと思うぜ」
「まさかあれって」
『聖獣ですね。昔見た個体に似ています』
クレがそう言うってことは聖獣で確定か。
どうなってんだ?
グレシアと契約している精霊については言及されたことがない。
と言うより、キャラごとに持っている精霊なんて一々明記するなんて、ゲームの容量的にもキツかったんだろう。
「リアス、さっきオレの契約している精霊について歓迎会で話すって言ったよな?」
「あぁ、どうしてその話を急に・・・ってまさか!?」
「さすが察しが良いな!起きろクロ!」
グレイの腰にぶら下げている籠から飛び出す龍は、トカゲ型の龍で真っ黒だ。
「こいつがオレの契約してる聖獣クロだ」
「おいすー」
これは驚くなと言う方が無理だ。
聖獣を抱えてると言うことは、こいつらは聖人聖女って事だよな。
聖獣自体は、クレに比べれば別に珍しい個体でもないが。
「これは驚いた。歓迎会の前にインパクトのあるもんみせんなよ」
「あ、ここで話したことは秘密な。聖人や聖女って肩書き絶対に面倒だし、お前らは信用に値すると思ったから見せたんだからな!」
ここまで俺のことを買ってくれていたのか。
俺はちょっとだけ申し訳ない気持ちになった。
そして俺とメルセデス、グレイはミラ達を待っている。
恐らくグレシアの部屋の整理を手伝っているだろう。
どうしても衣類とかの整理もあるしな。
この学園は貴族の令嬢にとっては社交界の予行演習の場でもあるのだ。
基本的にこの学園は制服着用が義務だが、ドレスを使う場面もあるだろう。
歓迎会はどうなんだろうな。
「歓迎会に制服って間違ってないよな?」
「大丈夫だと思うけど、どうしたよ急に」
「いや、グレイのが社交界慣れしてそうだからさ。英雄の息子なんだしお茶会に呼ばれてそうじゃん?そう言うのほとんどアルナに任せきりで疎くてな」
貴族の責務だし参加もしてみたかったが、領地がそれどころではなかったと言う事実もあって機会が無かった。
貴族の社交界は経済を大きく回すための一つの手段だ。
宝石や流行のドレス、他の貴族と交流することで令嬢達がそれを購入し、商会が潤うことでその辺の市場での商品が安くなり、安くなった時に貧困層を含めた一般庶民が物を大量に購入する。
そして更に商会が潤うことにより新たな宝石やドレスが作成され、先ほどの循環に入る。
そうすることで経済が回る。
商品がどんな物が売れるか確認するためにも参加はしたかった。
だがまぁ、そんなことしないでも経済を回せるほど、アルゴノート領は酷かったから仕方ないな。
「まぁ頻度はそれなりに多かったぜ。英雄の息子である以前に俺は皇子の幼馴染みだからな。皇子の取り巻きの一人として、よく呼ばれていた」
「羨ましいな」
「そうか?めんどくさいだけだったぞ」
子供目線だったらそういう感想だよな。
下手したら平民層にも、貴族の遊び程度に無駄にお金を使うなとか思ってそうだ。
まぁ貴族達の普段の行いを考えたら仕方ないところがあるけどな。
「まぁそこは人の価値観の違いってのがあるだろうさ」
「リアスは大人なんだな。成人こそしてるがオレはまだまだ子供だぜ」
「よくわかってるな」
「少しくらい否定してくれよ」
「坊ちゃん達、嬢ちゃん達が来たぞ」
メルセデスがそういうと女子寮の方から歩く影が5つ見えた。
「一人多いな。あいつ誰だリアス?」
「リアスくーん!一人追加だよー!」
ミラが笑顔で手を振って走ってくる。
何あれ可愛い。
おっとそうじゃなかった。
あれはプラムか。
「兄貴~!プラムも歓迎会に参加するらしいですわ」
「アルナのお兄様。お久しぶりです」
「久しぶりだね。お父さんは元気かい?」
「はい。毎日手紙のやりとりをしておりました。学園に入ることで減ったはしまうでしょうが。あ、アルゴノート男爵も元気だそうですよ」
ヘンリエッタ子爵家とアルゴノート男爵家はひょんな事から交流ができた。
プラムの父親であるガリオが、領地改革に興味を抱いたからだ。
俺がそれを行っていたと知ると、娘を婚約者にとプラムを押しつけてきたときは焦った。
家格として上だからな。
断るのが大変だった。
たまに領地の経営について相談に乗ると言うことで断ることができた。
ミラが居るのに婚約者なんて押しつけられても困る。
「ありがとね。プラムは皇子の夜会に参加しなくて良いのか?」
「え、あんな自己中野郎の茶会に参加する新入生がいるんですの?あ、ごめんなさいグレシア様」
「いえ、アルバート様がその、すいません」
「そんな嫌うってアルバートの野郎一体何したんだ?」
グレイの言うことはもっともだ。
何かしてない限り嫌いにはならず無関心で終わるはずなのだ。
「ヘルナーリットは貧困層をかなり抱える領地なんだよ。ボクも何回か遊びに行かせてもらったけど、2年前は特に酷かったね」
「ミライ、その時です!殿下が税を徴収しに来たのは!」
アルバートは税を滞納していたヘルナーリットに、徴収しに行ったのだ。
本来であればヘルナーリットは処罰されるべきなのだが、事情が事情だった。
2年前にとある伯爵家が没落し、その領にいた貧しい平民達をヘルナーリット家がまとめて引き受けることになった。
それはヘルナーリット子爵が望んだ物ではなく、様々な貴族達が押し付け合い、子爵の中でも一番評判のいいヘルナーリット家に白羽の矢が立ったのだ。
「税を滞納していたわたし達も悪いですが、そもそも貧困層を受け入れる代わりに税を滞納する許可を得ていたのです。ですがあの皇子はそんなのは関係ない滞納する方が悪いとそれだけを言い、払わない場合没落させるとまで言ってきたのです!」
「申し訳ございません」
グレシアは謝罪する。
その人のことを何も考えない馬鹿皇子の尻拭いをしていたのがグレシアだ。
それは花そそでも度々明記されている。
誰を攻略キャラに選んでも、誰かしらの尻拭いをしていたな。
なのに婚約破棄から冤罪で処刑は酷いよな。
「あ、頭を上げて下さい!グレシア様が居なければ、ヘルナーリット家は終わっていました。こちらとしては感謝してもしきれません」
「それでも嫌な気持ちにさせたことは事実です。婚約者の不手際は私にとっても同罪ですからね」
「そんな。なんで婚約者に尽くしてるグレシア様がこんな目に・・・しかも皇子の催す夜会にはグレシア様を招待しないというのに」
たしかにグレシアって、俺が生前流行ってた悪役令嬢モノの主人公達に似てるんだよな。
悪役令嬢とされてるのに、実際は間違っていたことは何もしてないって言う。
いや最後は帝国すべてを滅ぼしたから、悪役令嬢ってされたんだけどさ。
っと、ミラの肩にいたクレが飛び移ってきた。
「まぁまぁ。グレシア様は歓迎会を楽しめば良いし、ボク達も学校生活ではできる限りグレシア様を守ろうってさっき決めたじゃない?」
「ありがとうございますミライさん」
『それより早く向かいましょう。食事が楽しみですからね。貴方もそうでしょう?』
クレの言うとおり、俺は今生では初めての外食になる。
だから楽しみで昼を抜いてきたほどだ。
「そんなことよか早く行こうぜ。なんだかんだ初めての外食だから昼飯食ってねぇんだよ。腹減ったー」
「リアス様。それは身体に悪いと思います」
「良いんだよ!よく言うだろ!美味しいモノは身体に悪いって」
「さすがに身体に悪いモノは歓迎会では出ないと思うぞ?貴族が来ることを想定しているだろうからな」
「まぁあの馬鹿皇子に引き抜かれてなきゃな」
冗談も交えつつ、俺達は会場へと向かう。
会場は校内だからすぐに着いた。
そこは先ほど入学式を行った状態とは打って変わり、体育館とは思えない装飾だらけだった。
ここで祭りをやっていると言われたら納得するほどカラフルだ。
「入学式の会場とは思えねぇな」
「すごいねー、まだ夕方だけど夜になったらこれ光そうだよ。ねぇリアスくん、ボクが雷魔法で電気通したら怒る?」
聞くまでも無い、怒るに決まってるだろう。
ミラはちょいちょい悪戯をしたがるのが悪い癖だよな。
「やめてもらっていいですかぁ?」
声をかけるのは、俺達より少し年上くらいのお兄さん。
髪の色は黒なのに、頭の両端に赤いメッシュが入っていて、右目にモノクルが着いている男だ。
なんだ口調が馬鹿にした感じでなんかムカつくな。
でもミラが悪いから口を出すことが出来ない。
「ごめんなさい」
「いや分かってくれれば良いんだよぉ。リアスくん入学おめでとう。初めましてぇ。僕はリューリカ・リリエンタールって言うんだよろしくぅ」
そう言って手を出してくる青年の名前はリューリカ。
俺はリューリカはよく知っている。
花そそで主人公に新しい魔法を教えてくれる人物であり、彼からのみ使用できる魔法装備のスロットを変更できたからだ。
ここは現実のため、魔法は覚えただけ使うことができるから多分あんまり関わることは無いと思っていたんだけどな。
「リアス・フォン・アルゴノートです。よろしくお願いします」
「君はぁ、感謝しても仕切れない恩がありますぅ」
「どういうことですか?」
俺はこの人と初対面だ。
だから恩を売ろうにも売れないはずだ。
「君が子爵男爵に影響のある行為をしたことで、僕の講義に出てくれるようになった生徒が増えたんだよぉ」
子爵男爵に影響ある行為って、多分魔物大量発生の時のことだよな。
ってことは、平民についての境遇が見直されたことだよな?
「僕の研究は学園長と副学園長にしか認められていないんだぁ。だから平民について見直されたことが感謝することじゃないよぉ」
「え、違うんですか?」
「いやまぁそれも感謝すべき事なんだけどねぇ。そうじゃないんだ。あとこれは箝口令が及かれてるんだからもっと小声でねぇ」
「あ、すいません」
俺としたことが、声がどんどん大きくなっていたか。
しかし平民の境遇改善じゃなかったら一体なんなんだ?
「ハッハッハ。これさぁ」
指を上に向けて、指先に炎を灯してみせるリューリカ先生。
「炎、ですか」
『馬鹿な!?』
え、クレが今までないくらい驚いている。
何がおかしいんだ?
「そう、炎ぉ。知ってるぅ?僕には契約してる精霊が居ないんだぁ」
「え」
おい、まさか・・・。
クレが驚いていたのはそう言うことだったんんだ。
『人間の中にも魔法を使えるモノがいるなんて』
「驚きました。そういうことですか」
「えぇ、一応箝口令が及かれているのでぼかしますが、あなたのおかげで、子爵男爵達はこの技術を身につけたいと、二学年と三学年の子爵男爵の皆さまの希望の表が溢れてしまいましたぁ。教師生活やってきて、希望表が来たのも初めてなのに、すごいですよねぇ」
え、逆に希望表が一枚も来ない方がすごいんだけど。
頑張っても誰かしら来るもんじゃないのか?
と言うかよくクビにならなかったな。
「え、えっとなんて言えば良いのか」
「この給料泥棒でいいんじゃねぇの?」
「おい、グレイ!いくら本当のことでも失礼だぞ」
「リアスくん、それも失礼だと思うよ」
「はい。ごめんなさい」
そうだよな。
今はちゃんと抗議を希望してくれる生徒が居るんだから良いよな。
それにしても、彼はどうやって魔法を覚えたんだろう?
「ア、アルゴノートの連中に、グレシアとグレイ!?どうしてお前達がここに居るんだ」
出た。
さっきはよくも置いて言ってくれたなシャルル副学園長。
俺は根に持つタイプだからな。
「歓迎会に来ちゃダメですか?あ、先生は俺達に来て欲しくなかったんでしたっけ?だって会場の場所が例年と変更されても、教えて下さりもしなかった」
「い、いやそれはだな・・・」
「なんですってぇ!?教頭ぉ、どういうことですかぁ!」
「リューリカ、お前そんな強い口調で話せたのか!?」
「彼は恩人ですぅ!一体どういうことか説明してくださいますねぇ!?」
教師二人の喧嘩?が始まった。
なんか面倒くさそうだ。
あ、グレシアがシャルル先生のところに歩いてく。
「この度は申し訳ございませんでした」
「グレシアくん?急になんだね」
「アルバート殿下が勝手に離れのパーティ会場を貸し切った上に、先輩や教師方々に連絡を入れなかったことを謝罪したく存じます」
グレシアが謝ることじゃないだろうに。
毎度毎度アルバートはグレシアに謝らせていたと思うと、この国の未来が心配になる。
「やはり殿下の独断なのですか?」
「はい。少なくとも私や宮殿に所属するモノはこのことを今まで知りませんでしたので、たしかだと思います」
あ、聞いては居なかったけどやっぱ独断なんだ。
婚約者であるグレシアにも伝えてない。
これはエルーザ陛下にも伝えてないんじゃないか?
皇族としての恥ずかしくないのか。
と言うかこれ泥を塗る行為だよな。
「はぁ、全く困ったモノだ。魔物大量発生と言う理由を出されて仕方なく貸したと言うのに。こちらとしても謝罪する。君たちは殿下の主催する夜会に出席すると思って蔑ろにしていた。すまない」
「私も、改めて殿下の代わりに謝罪致します。申し訳ございませんでした」
二人して頭を下げられたら、俺達に是非もない。
慌てて二人の頭を上げさせた。
「今回は俺達のための歓迎会だろ。二人とも頭を上げてくれ」
「リアスの言うとおりだ。悪いのはアルバートだ。グレシアも何かあれば言えよ。オレ達幼馴染みだし」
「あ、ありがとうグレイ」
こいつ、本当はイルミナじゃなくてグレシアに気があるんじゃ無いか?
いやもしかしたら恋心に気づいていないとか?
こいつ馬鹿だし。
「グレイって絶対グレシアのこと好きだよねリアスくん」
「奇遇だなミラ。俺もそう思って居たところだ」
「イルミナに交際を申し込もうとして失礼だね。ボコる?」
シュッシュッとエアージョブをしながら、とびきりの笑顔でそんなことを言うミラ。
いや、それはそれで歓迎会台無しにするからな?
「わたしとしてはありがたいのでこのままにさせておきましょう」
「えー、イルミナがそう言うなら」
「ミラ本気だったのか!?」
『どう見ても目が本気でしたよ』
俺よりもミラと長く居たクレがそう言うってことは、マジだったんだ。
ミラもイルミナも、浮気性や女の敵には容赦ないんだよな。
イルミナは出会った時のことを思えばしょうがないけど。
「ともあれ助かった。貴族の参加者は君たちだけでな」
「他にも俺達のクラスの子爵男爵が来ると思いますよ。ほら」
向こうから歩いてくる集団がいる。
クラスの子爵と男爵の次期当主達だ。
「おぉ、殿下の居るクラスで、殿下に逆らう貴族はいないと思っていたが、まさか・・・こんなに参加してくださる人間がいるなんて・・・」
泣いてる。
ガチ泣きだ。
「そんなに嬉しい事なのか?泣くほどなんて」
「当たり前だ!グレイくん、貴方は自分の影響力をわかっているか?貴方がお茶会の一つでも開催すればほとんどの貴族は出席するんだよ。殿下ともなれば、この国で参加しない人間はほとんどいないと言っていい」
「俺は参加ごめんですけどね」
「ボクも同感ー!」
「わたしもあんな殿方とお茶会をしても得るものは無いと思います」
「化け物三人はアルバートの言うこと聞く必要ないもんな」
化け物三人って俺達のことか?
失礼だなグレイ。
言うこと聞く必要がないっていうのは正しいが。
当然疑問に思う奴が出るのは間違いない。
学園に居る人間は、リューリカ先生の反応を見る限り知らされているからいいだろうが、この場で唯一俺達のことを知らない人間がいる。
グレシアだ。
彼女は公爵で魔物大量発生ときに前線には出ていない。
だからまぁ首を傾げてグレイに質問した。
「化け物三人組って一体誰の事かしら?」
「あ、やっべ」
「グレイ、お前わざとやってないか?」
「ち、ちげぇよ!グレシア悪いな。箝口令が及かれててオレの口からは言えな------」
「いやいいぞグレイ。陛下が俺達を気づかって箝口令を出しただけだ。俺達としては知られないに越したことがないが、グレシアは話題にしたりそれを理由に俺達をこき使ったりと低俗なことはしないと思うし話しても良いだろう」
面倒ごとを持ってくるとは思えない。
信頼関係があるわけじゃないが、別に子爵や男爵の次期当主達に知られてしまったことそこまで頑なに隠す気も無い。
「俺達は、俺とミラとイルミナの三人で一万の魔物を倒した。こいつが化け物って言うのはそういうことだ」
「何をおとぎ話のようなことを言いますの?リアス様はまともな方だと思っていましたけど」
睨み方がマジで怖い。
さすがに悪役令嬢として選ばれる顔。
でも当然そう思うよなぁ。
俺が逆の立場なら多分信じられないもんな。
だけど周りを見て欲しい。
誰も驚きもしていない。
当然、学園の奴らは参加してたか、陛下から直接聞いたかは知らないが、どっちにしても事実であることはわかっているはずだ。
そして身内に俺の実力を疑うモノはいない。
プラムですら、まぁアルナのお兄様ならやりそうですと首をうんうんと盾に何度も振ってるくらいだ。
「え、嘘!?ホントに?」
「グレシア、素が出てるぞ」
「しょうがないじゃない!こんなこと言われて驚かない人間がいるの!」
あ、お嬢様言葉って作ってたんだ。
アルナは作ったしゃべり方じゃないから、てっきり令嬢ってそう言うものだと思ってた。
「ついでに言うと、そんとき子爵以下の家格の奴らに説教を噛ました。だから今とぼとぼと歩いてくる奴らは、物事の本質を自分で考えようとして馬鹿皇子に対してイエスマンであることをやめたんだと思う」
「なるほど、それで子爵と男爵の次期当主達は殿下の誘いを断り、歓迎会に来てのだな。伝統を大事にしたと」
「あ、それは違うと思いますよ。冷静に考えて二つ上の学年で次期当主もいる貴族を蔑ろにするか、殿下を蔑ろにするか天秤にかけて前者より後者のがリスクが少ないからですよ」
さすがに殿下の誘いを伝統という理由だけで無下にするほど、彼らも馬鹿じゃない。
たしかにこの国の在り方を変えたいという意味では、アルバートは間違っていないんだ。
まぁあいつは自分好みにって単語が前に付くけどな。
「あぁそう言うことか。でも打算的な方が寧ろ信頼があるな」
「ちょっとリアス!証拠!証拠見せて!」
近い、近いよ。
鼻と鼻がぶつかりそうな距離まで、顔を近付けるなよ。
俺は距離を取ろうとするがその分近づいてくる。
グイグイ来るなグレシア。
ミラが俺とグレシアの間に入り無理矢理距離を取らせた。
「グレシア、彼はボクの婚約者!もうちょっと適度な距離を取って!リアスくんが距離を取ってるのに近づくのってよくない!」
「あ、ごめんなさい。一万の軍勢をどうやって倒したか気になって」
そういうと、グレシアの後ろから小さな龍が顔を出した。
手と足が短く蛇のような長さの龍だ。
グレシアの精霊か?
「あ、メシア起きたのね」
「ふぁあああ、おはようグレシア」
「あ、ちょっとメシア!言葉出ちゃってる」
でっけぇあくびで、牙がむき出しだ。
おいまて、今言葉を発したよな!?
見れば教師陣も口をパクパクさせている。
「おいグレイ!」
「リアス、驚いたか?これを知ってるのは、オレとグレシアだけなんだ。イルシアも知らないと思うぜ」
「まさかあれって」
『聖獣ですね。昔見た個体に似ています』
クレがそう言うってことは聖獣で確定か。
どうなってんだ?
グレシアと契約している精霊については言及されたことがない。
と言うより、キャラごとに持っている精霊なんて一々明記するなんて、ゲームの容量的にもキツかったんだろう。
「リアス、さっきオレの契約している精霊について歓迎会で話すって言ったよな?」
「あぁ、どうしてその話を急に・・・ってまさか!?」
「さすが察しが良いな!起きろクロ!」
グレイの腰にぶら下げている籠から飛び出す龍は、トカゲ型の龍で真っ黒だ。
「こいつがオレの契約してる聖獣クロだ」
「おいすー」
これは驚くなと言う方が無理だ。
聖獣を抱えてると言うことは、こいつらは聖人聖女って事だよな。
聖獣自体は、クレに比べれば別に珍しい個体でもないが。
「これは驚いた。歓迎会の前にインパクトのあるもんみせんなよ」
「あ、ここで話したことは秘密な。聖人や聖女って肩書き絶対に面倒だし、お前らは信用に値すると思ったから見せたんだからな!」
ここまで俺のことを買ってくれていたのか。
俺はちょっとだけ申し訳ない気持ちになった。
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