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一章
宿の場所、異議あり!ボッチをこじらせた男の苦難
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俺達は帝都を観光する前に、入寮までの間衣食住を出来る場所へと足を運んでいた。
ミラもイルミナもアルナも余りのすごさに声も出ないみたいだ。
「坊ちゃん。いくら一週間とはいえこりゃないぜ」
「なんだ!?高すぎたか」
「いや、値段はかなり安いけどさ・・・」
「ボク、今から別の場所に宿とっても良いかな!リアスくんに宿の確保を頼んだのが馬鹿だった!これは酷いよ!」
「ミライちゃん!ワタクシも!ワタクシも別の宿に泊まりたいですわ!」
「私はどこでも構いません。しかしリアス様。ここは些かイカ臭・・・仕事の熱心な建物でして」
『イルミナはこんな宿を確保するなんて、デリカシーが足りないって言ってるんですよ』
「え、なんで!?一週間だし安く済む方がいいだろ!?」
俺は生前からできる限りは安上がりで済むように暮らしてきた。
だから一週間のために高級宿を頼むような、貴族のような生活をしたくないためここを確保したんだ。
安くすれば、それだけ領地へと回す金も増えるしな。
「リアスくん・・・ボク、ここで暮らすと覗かれる可能性あるんだけど」
「あぁ、だから侵入を妨害する魔法はちゃんと全員の部屋に付与する予定だ。それにここは女性が多く泊まる宿で探して出てきた場所だ!」
「はぁ・・・何もわかってない!侵入しなくてもここは隙間だらけで覗き放題なの!それにここから出てくる人をよくみて!」
俺は周りを見る。
少し露出が激しいが、至って普通の女性だ。
間違っても浮浪者なんかじゃない。
「女性が多いのは当たり前だよ!ここは娼館で働いてる女性だらけなんだからさ!」
「なにっ!?」
「さすがに今回ばかりは酷いよリアスくん!安く済まそうとするのは良いことだと思うよ?でも限度って物があるの。何度も何度もリアスくんを傷つけないようにしてたけど、もう我慢の限界!リアスくんがどうして前世でモテなかったかわかる?顔や性格じゃない、その貧乏根性が嫌になったからだよ!」
「がーんっ!」
俺は地面に両手を突いて考え込む。
そういうことだったのか。
俺は大体女性へのプレゼントを利のある物ばかりを選んでいた。
そして食べるときも、無駄に高い店より安い老舗を選んでいた。
それでフラれても別に良い、金食い虫を養うくらいなら一生独身のままのがましだと。
気がつけば三十路になっていた前世・・・
独身のままのがマシは強がりだと自覚したが、それでもモテない理由はイケメンじゃないからと諦めていたのに・・・
『ミライ、やっとストレートに言いましたね。遠回しに似たような事を良い機会です。贅沢をしろとは言いませんが、最低限の貴族の生活をしてみてはどうでしょうか?』
「貧乏性が治らないと、ボク、リアスくんと結婚したくない!経済的DVしそうだもん!」
「経済的・・・ドメスティックバイオレンス・・・」
『ですね。暴力を振るうだけがDVじゃないんですよ?それに自分は前世の親みたく子供を虐待しないとか考えてるでしょう?ある程度限度が必要ですけど、おもちゃひとつ買ってあげない父親って、世間的に批難されない分、暴力による虐待より質が悪い経済的虐待ですからね?』
俺は開いた口が閉じなかった。
いや閉じれなかった。
節約が正しいと思っていたけど間違っていたからだ。
貧乏性もDVや虐待になるなんて考えてもなかった。
治そう・・・。
贅沢過ぎるのもよくないが、節約しすぎてミラと別れるくらいなら、節約なんてクソ食らえだ。
「よし!別の宿を取りに行くぞ!」
『単純ですね。猿です』
ミラがクレをキッと睨む。
うん、今のミラ心強いけど怖い。
『リアスはミライに惚れています。今まで贅沢を女性に強要してきても変われなかったのは、本気で好いてた訳じゃないからです。つまりこれを逃せばリアスの構成のチャンスはなくなります。結婚後にそんな生活いやでしょう?だからなるべく高い店に行くことをおすすめします』
「うん。リアスくん高い店じゃなくて、質が良い店を考えて!」
任せとけ!
もう俺は我慢しないぞ!
ふかふかベッドに美味しい料理・・・はメルセデスが作ってくれるから良いとして、従業員の質が良い場所を探そう。
「ここから5件離れた場所に、少々値段が張りますが、評判の良い高級宿があります」
「え、それって帝国ターニャテトランゼじゃない?」
「ターニャテトランゼ?」
ターニャって名前が入ってるから、なんとなくだけどターニャ公爵家のホテルな気がするな。
え、だとしたら勘弁したい。
でもミラに嫌われたくない。
「なんで兄貴知らないの?ターニャ家が経営する高級宿よ!?貴族なら誰でも憧れる」
「そんなに有名なら予約で埋まってるんじゃないか?」
「今はお父様みたいに貴族達は遠征で国境に出払ってるから空いてるんじゃないかしら?」
「なるほど、よしそこにしよう」
「り、リアスくん!?よく考えてよ!?ボク達の小遣いじゃ足りないからね!?」
「いくらなんだ?」
「金貨三枚は堅いですわね」
金貨三枚・・・
屋台にある食べ物が銅貨一枚で買えるから、銅貨は大体日本円で百円くらいの価値だ。
銅貨が百枚で銀貨、銀貨が十枚で金貨だったから、30万!?
「たっけぇ!?」
「だから言ったじゃん。別に高くなくても普通の宿ならいいんだよ」
「さすがに金貨三枚はキツいな。一日だけなら泊まれるかもしれないけど、それで俺達の来月の食費は消えるな。イルミナ、他に良い店はないか?」
「私は帝都に詳しくないので、アルナ様が適任かと」
「アルナは貴族っ気が強い------」
「リアスくん?」
目で訴えている。
貧乏を強要するくらいなら、贅沢してる方がマシと。
たしかに貴族達が贅沢していても、領地が豊かなら文句言われないもんな。
「悪いアルナ。お前が勧める宿を教えてくれ」
「任せといて!幼少期に嫌ってほど通ってるから!」
「楽しみにしてるねアルナ」
最早このことに関しては、俺の評価よりもアルナの評価のが高いようだ。
悲しいけど、俺はどうしても安い方安い方へと思考が行ってしまいそうだから仕方ない。
そしてアルナに案内された宿は、これまたまぁ豪勢な宿屋だった。
ただ、何て言うか・・・見た目がダサい。
「アルナ?ここがアルナのお勧めの店・・・?」
「そうですわ!ここは料理も美味しくて、なにより装飾がおしゃれでしょ?」
「坊ちゃん・・・今、なんとなくアルナお嬢様とあんたの血の繋がりを感じたぜ」
「俺はセンスが無いんじゃなくて気にしないだけだぞ?」
「リアス様、それは自分の首を絞めてるだけかと」
「俺はこんなダサいホテル泊まりたくないぞ!しかも絶対高いだろ!」
「銅貨五十枚くらいよ!安いじゃないの!」
「たしかに安いが・・・」
「まぁ見た目を気にしないタイプより、気にしようと頑張ってるタイプのがマシだよな。なんか応援したくなるし。気にしないタイプは救いようがないしな」
「そうですね。どのみちリアス様はもう少し色々と見直された方が良いかと思っています。なにせ私服のチョイスを考えたら」
「たしかに、制服やスーツ姿以外でいる兄貴と一緒に居ると、恥ずかしくて外に歩けない」
『ナスタの主人、酷い言われようだな。まぁ自業自得なところあるけど』
『もう少しリアスさんは、見た目に気を使った方が良いと思う。かっこいいと思ってるみたいだけど、軍服普段着にしてる人間なんて、見たことないよ』
『たしかに人のこと言えた口じゃないですよね。センスがあろうと無かろうとわからなきゃ同じですしアルナの方がマシですよ。いくら影響下の高い料理を食べても不味かったら意味ないと同じです。まぁセンスがあるかどうかも疑わしいですけど』
「リアスくんわかった?これがみんなの本音だよ?」
「・・・」
え、みんなそういう風に思ってたの?
正直、転生してきて死にたくなるとか思ってなかった。
俺、ショックすぎて涙出てきたんだけど。
「そ・・・」
「そ?」
「そこまで言わなくてもいいじゃん・・・」
「「「『『『ッ!?』』』」」」
「だって軍服かっこよかったんだ。軍人って感じがキリッとしてて・・・」
「り、リアスくん?」
「贅沢しないのだって、今まで領の人達が苦しんでたんだし、それに貯金貯めて将来のこと考えて・・・」
「兄貴・・・」
「俺だって、ちょっと豪華な料理食べたり、屋台で買い食いしたりもしたいよたまには・・・」
「リアス様、そ、その!」
「でも、こんなだから全くモテなかったんだ。友達も全然できなかった・・・」
「坊ちゃん、そこまで思い詰めて」
あ、思えば前世で俺の死を悲しんでくれそうな人いねぇや。
そう思ったら涙が止まらなくなってきた。
公衆の面前?
そんなの知らない。
俺コミュ障じゃないとおもってたんだけどなぁ。
「ご、ごめんねリアスくん!ちょっと言い過ぎた。戻って来て」
俺のことを揺さぶるミラ。
俺のことは放って置いてくれ。
「ははは・・・僕正気なんです。ニャハハハハハハ!」
「兄貴が壊れた・・・」
「ど、どうしましょう!メルセデス、良い方法はないのですか!」
「おい、精霊達!どうにか坊ちゃんを正気にしてくれ!」
『め、メルセデス!俺には無理だ』
『僕にもできませんよ。そ、そのリアスさんごめんなさい!』
『全員でリアスをいじめるからそうなるブヒ!それにリアスとミライ以外に言葉は通じないブヒよ』
あ、俺の心の癒やし系男子シュバリン。
この柔らかい腹が俺の心を落ち着・・・きはしないな。
ぷにぷにだ。
『さすがに心の傷を抉りすぎましたか。ミライ、リアスに抱きついて頭を撫で回しなさい』
「え、そんなことでいいの?よしよぉし。ごめんねリアスくん、いいこいいこ」
「年下に撫でられる俺って・・・お前ば------ブツブツ」
「どうしよう!本格的にリアスくんが壊れた!」
「と、とりあえず宿に入ろうミライちゃん。ここじゃ目立つ」
俺はみんなに連れられて、豪華そうな宿に放り込まれた。
因みに宿の名前はクサハエルだ。
みんなで大笑いしてそうな良い名前だなぁ。
*
ミラはリアスと出会ってから初めて困惑していた。
こんな婚約者の姿を見たのは初めてだったからだ。
「よしよぉし、リアスくんいいこいいこ」
「俺、引きこもりじゃなかったはずだよな・・・ブツブツ」
「ど、どうしよう・・・」
今まで思ってきたことをぶちまけたのはよかった。
でもこうなるとは思ってなかったので、ミラ自身どうすればいいか判断がつかず、宿の部屋についてからもクレの言うとおり頭を撫で回していた。
リアスは何かと節約するところがあり、自分の服装には無頓着で持っている服がほとんどがジャージばかりだった。
辛うじておしゃれで軍服を所持していたが、迷彩柄の軍服なのでダサかった。
それでも幼い頃は可愛いかったが、15にもなってその格好は色々と痛いトコロがあった。
領地でそんな格好をしたリアスとミラがデートをしていたとき、何度も振り返られたときはミラも顔から火が出る思いだった。
『重症ですね。まさかリアスがここまで弱いとは』
「坊ちゃん、カップケーキだ。糖分を食べれば落ち着くだろ。お嬢、あーんしてやれ。今は心の癒やしが大事だ」
「あ、うん。リアスくん、カップケーキだよ。口開けて」
「カップケーキ・・・そういや調理実習の時も女子が------ブツブツ」
「ダメだ!話を聞いてくれない!」
リアスは前世ではコミュ障だった。
それも根暗じゃないコミュ障であり、自分がコミュ障という自覚がなかった。
会話は弾むタイプで、人当たりもよかったのだが唯一の欠点があった。
お金を使うことに関して異常なまでに自分の意見を変えないことだった。
そこから付いたあだ名が守銭奴だったのだが、あだ名が付けられたときにプライベードで交流のある友人が居なかったのでリアスは知らない。
その過去の出来事を思い返していたら、リアスはすべて自分の金に体しての自己主張が原因だったことを思い出し、自分の世界へと閉じこもってしまったのだ。
『図星を突きすぎましたね。どうでしょう?ここは放置して・・・』
「ダメだよ。リアスくんと帝都観光楽しみにしてたんだから。ちょっと言い過ぎちゃったけど・・・それでも楽しみなものは楽しみなんだから!」
「ミライちゃん・・・兄貴、婚約者にここまで言わせたんだから、いい加減機嫌直しなさい!」
「婚約者・・・思えば俺は三十路を迎えて魔法使いになるところだったんだ・・・ブツブツ」
「これは重症ですね。リアス様、かなり心の内に抱えていたものがあったようです」
『リアスは結構強かな心を持っていると思ってましたが、案外繊細なのですね』
リアスはかなり精神力が強い。
だからなんと罵られよと受け流すことが出来る性格だった。
それは前世と今世の幼少期から、虐待に近い事をされていたために、事を荒立てない術を幼少期から身につけていた。
それ故に、貧乏性も身についてしまったのは仕方の無いことだろう。
そのことを走馬灯のように思い出してるリアスは、自分の世界に入ったまま出られない原因でもあった。
思い返してみれば、45年間でまともな友人と呼べる人間が一桁しかいないのは、ぼっちを拗らせている証拠だった。
「ミライ様覚悟を決めた方がよろしいかと」
「何の覚悟よイルミナ!」
ミラはリアス無しで観光なんか考えられなかった。
リアスにそれだけ好意を持っているからだ。
貧乏性を加味にしても、リアスへの好意が下がることがなかったのは、両親が死んで寂しい思いをしていた時に、共に居てくれたからだった。
そんな人間を放って置いて自分だけ楽しむと言う選択はできなかった。
だから覚悟というイルミナの言葉に、過剰反応してしまうのも仕方なかった。
しかしイルミナの考えは、ミラの予想していた物とは違った。
「キスでございます」
「はい?」
「リアス様は拗らせ童貞で、朴念仁でございます。自分では好きだとわかっていても、相手に本当に好きと思われているかはわからないのです。童貞にはキス。これだけの刺激で傷心の傷は癒えてしまいます」
『なるほど、ショック療法ですね。闇が深いならそれ以上に光で照らしてしまえば良いと言うことですか』
「すごいわイルミナ!ミライちゃん、眠れる姫じゃないけど王子を目覚めさせられるのは、姫しかいないんですのよ。さぁいっちゃって!」
普段まともな冷静さはなかった。
イルミナにしろ、クレにしろ、アルナにしろ、普段は冷静に物事を判断出来る者達だ。
リアスがポンコツになってしまったことで、この場に居る全員が酷く動揺していたのだ。
故に自分達が何を言っているのかわからない。
「キス・・・わかった!」
故に、ここには親しい間柄しかいない。
しかしそれでも人に見られている中キスができるほどミラは肝が座っては居なかった。
にもかかわず、ミラはリアスの唇に唇を重ねる。
それはミラ自信も、動揺して物事の判断が付かなくなっていたからだった。
「んぐっ!?ミラ!?」
「機嫌・・・治した?」
「あぁ。でもその、みんなに見られながら・・・キスされるのはちょっとその・・・」
そしてこの中でクレの次に生きている時間が長い人間とは思えないリアスの情けない姿に、キスされたんだからもっとする反応があるでしょと思うと共に、徐々にミラの頬は紅く染まっていく。
今になって自分がしたことに対しての羞恥心が巡ってきたのだった。
「にゃああああああ!」
「そ、そのミライ様。ごめんなさい・・・私も冷静じゃなかったです」
『よく考えてみれば我々は退出すべきでしたね』
2人が自分に気を遣ってくれているので、羞恥心を押し込めようとする。
罪悪感を感じて欲しくなかったからだ。
しかしそれは叶わない。
「ミライちゃん、元気出して!結婚式では同じことするんだよ」
「うにゃあああああ!」
アルナのその一言はミラにトドメを刺すには十分だった。
そのまま布団に覆い被さり、叫び声を上げる。
15歳の少女にこの羞恥は耐えることができなかったのだ。
「今度はお嬢が・・・」
『ミライ様も大変ですね』
『いやナスタ、別に付き合ってるからいいんじゃないか?』
『フェリーはデリカシーが足りないよ!女の子はね、キスとかは隠れてしたいものなの!恥ずかしいの!よく見せつけたいチャラ男がいるけど、それは乙女心をわかってないだけなの!』
『ナスタすげぇ物知り!』
『そ、それほどでもないよ』
実際ナスタ自身に恋愛経験は無く、アルゴノート家の書籍にあった恋愛小説に書いてあったことをそのまま言っただけなのだが、ここまで純粋な眼差しを向けられるとそのことを切り出せないナスタだった。
「おい坊ちゃん・・・」
「そうだ、今世はちゃんと友達も恋人もいる・・・ウヘヘ」
「ぼっちゃーん!」
そして別の意味で再び自分の世界に旅立っていた。
ミラは自分の行動に慌てて、リアスはトラウマを拗らせる極値の最中、周りはポンコツ化した混沌と化した。
『はぁ・・・みんないい加減にするブヒ!ウォーターブレイン』
水を生み出す魔法を展開するシュバリン。
そして全員の頭に水をかぶせて正気にする。
「何すんだシュバリン。あ、悪いみんな。ちょっと考え事して・・・あれ?ここどこだ?」
「リアスくん!あ、えっと。ごめんね、言い過ぎちゃった」
「あ、いや。みんながそう思って居たことはたしかだよな。だったら俺は改善してかないといけないな」
「それはその通りですが、まさか放心状態になるとは思ってなかったです。リアス様はその、心は強い方かと」
「俺もそう思ってたけど、みんなにいざ言われたら結構突き刺さってな」
リアスは他人に対しては強いが、仲間内に対してぶつけられる、言わば内輪での感情に体してはかなり弱かった。
それは育ち方による弊害で、他人に対しては冷たくあしらえても親しい間柄に何か言われると心に深く突き刺さってこの事態を招いたのだが、それは本人すら気づいていないことだった。
「さて、気を取り直して観光に行くか!今日は俺が何でも驕ってやるよ!みんなに迷惑をかけたしな」
「やったぜ!坊ちゃん、包丁を新調したくてな。鍛冶屋行こうぜ鍛冶屋!」
「現金な奴だな。まぁみんな適当に欲しいものあったら言ってくれよ。あ、常識の範囲内で頼む」
そこはかっこつかないのがリアスである。
しかしそんな彼だから、ミラは好きになったのだ。
だからミラは腕に抱きついて、帝都の観光を始めた。
ミラも女の子。
出るところは出ているわけで、わざとやっているとわかっていてもリアスは顔を赤くしていた。
「多分このことを言わせたくてやってると思うけど一応聞くぞミラ、当たってんだが」
「当ててんのよ」
「ちょっと兄貴、ミライちゃん。ワタクシ達も居るのを忘れないでくださいまし!」
帝都で四人の買い物に付き合ったリアスの財布の中身が、大変なことになったのは言うまでもない。
ミラもイルミナもアルナも余りのすごさに声も出ないみたいだ。
「坊ちゃん。いくら一週間とはいえこりゃないぜ」
「なんだ!?高すぎたか」
「いや、値段はかなり安いけどさ・・・」
「ボク、今から別の場所に宿とっても良いかな!リアスくんに宿の確保を頼んだのが馬鹿だった!これは酷いよ!」
「ミライちゃん!ワタクシも!ワタクシも別の宿に泊まりたいですわ!」
「私はどこでも構いません。しかしリアス様。ここは些かイカ臭・・・仕事の熱心な建物でして」
『イルミナはこんな宿を確保するなんて、デリカシーが足りないって言ってるんですよ』
「え、なんで!?一週間だし安く済む方がいいだろ!?」
俺は生前からできる限りは安上がりで済むように暮らしてきた。
だから一週間のために高級宿を頼むような、貴族のような生活をしたくないためここを確保したんだ。
安くすれば、それだけ領地へと回す金も増えるしな。
「リアスくん・・・ボク、ここで暮らすと覗かれる可能性あるんだけど」
「あぁ、だから侵入を妨害する魔法はちゃんと全員の部屋に付与する予定だ。それにここは女性が多く泊まる宿で探して出てきた場所だ!」
「はぁ・・・何もわかってない!侵入しなくてもここは隙間だらけで覗き放題なの!それにここから出てくる人をよくみて!」
俺は周りを見る。
少し露出が激しいが、至って普通の女性だ。
間違っても浮浪者なんかじゃない。
「女性が多いのは当たり前だよ!ここは娼館で働いてる女性だらけなんだからさ!」
「なにっ!?」
「さすがに今回ばかりは酷いよリアスくん!安く済まそうとするのは良いことだと思うよ?でも限度って物があるの。何度も何度もリアスくんを傷つけないようにしてたけど、もう我慢の限界!リアスくんがどうして前世でモテなかったかわかる?顔や性格じゃない、その貧乏根性が嫌になったからだよ!」
「がーんっ!」
俺は地面に両手を突いて考え込む。
そういうことだったのか。
俺は大体女性へのプレゼントを利のある物ばかりを選んでいた。
そして食べるときも、無駄に高い店より安い老舗を選んでいた。
それでフラれても別に良い、金食い虫を養うくらいなら一生独身のままのがましだと。
気がつけば三十路になっていた前世・・・
独身のままのがマシは強がりだと自覚したが、それでもモテない理由はイケメンじゃないからと諦めていたのに・・・
『ミライ、やっとストレートに言いましたね。遠回しに似たような事を良い機会です。贅沢をしろとは言いませんが、最低限の貴族の生活をしてみてはどうでしょうか?』
「貧乏性が治らないと、ボク、リアスくんと結婚したくない!経済的DVしそうだもん!」
「経済的・・・ドメスティックバイオレンス・・・」
『ですね。暴力を振るうだけがDVじゃないんですよ?それに自分は前世の親みたく子供を虐待しないとか考えてるでしょう?ある程度限度が必要ですけど、おもちゃひとつ買ってあげない父親って、世間的に批難されない分、暴力による虐待より質が悪い経済的虐待ですからね?』
俺は開いた口が閉じなかった。
いや閉じれなかった。
節約が正しいと思っていたけど間違っていたからだ。
貧乏性もDVや虐待になるなんて考えてもなかった。
治そう・・・。
贅沢過ぎるのもよくないが、節約しすぎてミラと別れるくらいなら、節約なんてクソ食らえだ。
「よし!別の宿を取りに行くぞ!」
『単純ですね。猿です』
ミラがクレをキッと睨む。
うん、今のミラ心強いけど怖い。
『リアスはミライに惚れています。今まで贅沢を女性に強要してきても変われなかったのは、本気で好いてた訳じゃないからです。つまりこれを逃せばリアスの構成のチャンスはなくなります。結婚後にそんな生活いやでしょう?だからなるべく高い店に行くことをおすすめします』
「うん。リアスくん高い店じゃなくて、質が良い店を考えて!」
任せとけ!
もう俺は我慢しないぞ!
ふかふかベッドに美味しい料理・・・はメルセデスが作ってくれるから良いとして、従業員の質が良い場所を探そう。
「ここから5件離れた場所に、少々値段が張りますが、評判の良い高級宿があります」
「え、それって帝国ターニャテトランゼじゃない?」
「ターニャテトランゼ?」
ターニャって名前が入ってるから、なんとなくだけどターニャ公爵家のホテルな気がするな。
え、だとしたら勘弁したい。
でもミラに嫌われたくない。
「なんで兄貴知らないの?ターニャ家が経営する高級宿よ!?貴族なら誰でも憧れる」
「そんなに有名なら予約で埋まってるんじゃないか?」
「今はお父様みたいに貴族達は遠征で国境に出払ってるから空いてるんじゃないかしら?」
「なるほど、よしそこにしよう」
「り、リアスくん!?よく考えてよ!?ボク達の小遣いじゃ足りないからね!?」
「いくらなんだ?」
「金貨三枚は堅いですわね」
金貨三枚・・・
屋台にある食べ物が銅貨一枚で買えるから、銅貨は大体日本円で百円くらいの価値だ。
銅貨が百枚で銀貨、銀貨が十枚で金貨だったから、30万!?
「たっけぇ!?」
「だから言ったじゃん。別に高くなくても普通の宿ならいいんだよ」
「さすがに金貨三枚はキツいな。一日だけなら泊まれるかもしれないけど、それで俺達の来月の食費は消えるな。イルミナ、他に良い店はないか?」
「私は帝都に詳しくないので、アルナ様が適任かと」
「アルナは貴族っ気が強い------」
「リアスくん?」
目で訴えている。
貧乏を強要するくらいなら、贅沢してる方がマシと。
たしかに貴族達が贅沢していても、領地が豊かなら文句言われないもんな。
「悪いアルナ。お前が勧める宿を教えてくれ」
「任せといて!幼少期に嫌ってほど通ってるから!」
「楽しみにしてるねアルナ」
最早このことに関しては、俺の評価よりもアルナの評価のが高いようだ。
悲しいけど、俺はどうしても安い方安い方へと思考が行ってしまいそうだから仕方ない。
そしてアルナに案内された宿は、これまたまぁ豪勢な宿屋だった。
ただ、何て言うか・・・見た目がダサい。
「アルナ?ここがアルナのお勧めの店・・・?」
「そうですわ!ここは料理も美味しくて、なにより装飾がおしゃれでしょ?」
「坊ちゃん・・・今、なんとなくアルナお嬢様とあんたの血の繋がりを感じたぜ」
「俺はセンスが無いんじゃなくて気にしないだけだぞ?」
「リアス様、それは自分の首を絞めてるだけかと」
「俺はこんなダサいホテル泊まりたくないぞ!しかも絶対高いだろ!」
「銅貨五十枚くらいよ!安いじゃないの!」
「たしかに安いが・・・」
「まぁ見た目を気にしないタイプより、気にしようと頑張ってるタイプのがマシだよな。なんか応援したくなるし。気にしないタイプは救いようがないしな」
「そうですね。どのみちリアス様はもう少し色々と見直された方が良いかと思っています。なにせ私服のチョイスを考えたら」
「たしかに、制服やスーツ姿以外でいる兄貴と一緒に居ると、恥ずかしくて外に歩けない」
『ナスタの主人、酷い言われようだな。まぁ自業自得なところあるけど』
『もう少しリアスさんは、見た目に気を使った方が良いと思う。かっこいいと思ってるみたいだけど、軍服普段着にしてる人間なんて、見たことないよ』
『たしかに人のこと言えた口じゃないですよね。センスがあろうと無かろうとわからなきゃ同じですしアルナの方がマシですよ。いくら影響下の高い料理を食べても不味かったら意味ないと同じです。まぁセンスがあるかどうかも疑わしいですけど』
「リアスくんわかった?これがみんなの本音だよ?」
「・・・」
え、みんなそういう風に思ってたの?
正直、転生してきて死にたくなるとか思ってなかった。
俺、ショックすぎて涙出てきたんだけど。
「そ・・・」
「そ?」
「そこまで言わなくてもいいじゃん・・・」
「「「『『『ッ!?』』』」」」
「だって軍服かっこよかったんだ。軍人って感じがキリッとしてて・・・」
「り、リアスくん?」
「贅沢しないのだって、今まで領の人達が苦しんでたんだし、それに貯金貯めて将来のこと考えて・・・」
「兄貴・・・」
「俺だって、ちょっと豪華な料理食べたり、屋台で買い食いしたりもしたいよたまには・・・」
「リアス様、そ、その!」
「でも、こんなだから全くモテなかったんだ。友達も全然できなかった・・・」
「坊ちゃん、そこまで思い詰めて」
あ、思えば前世で俺の死を悲しんでくれそうな人いねぇや。
そう思ったら涙が止まらなくなってきた。
公衆の面前?
そんなの知らない。
俺コミュ障じゃないとおもってたんだけどなぁ。
「ご、ごめんねリアスくん!ちょっと言い過ぎた。戻って来て」
俺のことを揺さぶるミラ。
俺のことは放って置いてくれ。
「ははは・・・僕正気なんです。ニャハハハハハハ!」
「兄貴が壊れた・・・」
「ど、どうしましょう!メルセデス、良い方法はないのですか!」
「おい、精霊達!どうにか坊ちゃんを正気にしてくれ!」
『め、メルセデス!俺には無理だ』
『僕にもできませんよ。そ、そのリアスさんごめんなさい!』
『全員でリアスをいじめるからそうなるブヒ!それにリアスとミライ以外に言葉は通じないブヒよ』
あ、俺の心の癒やし系男子シュバリン。
この柔らかい腹が俺の心を落ち着・・・きはしないな。
ぷにぷにだ。
『さすがに心の傷を抉りすぎましたか。ミライ、リアスに抱きついて頭を撫で回しなさい』
「え、そんなことでいいの?よしよぉし。ごめんねリアスくん、いいこいいこ」
「年下に撫でられる俺って・・・お前ば------ブツブツ」
「どうしよう!本格的にリアスくんが壊れた!」
「と、とりあえず宿に入ろうミライちゃん。ここじゃ目立つ」
俺はみんなに連れられて、豪華そうな宿に放り込まれた。
因みに宿の名前はクサハエルだ。
みんなで大笑いしてそうな良い名前だなぁ。
*
ミラはリアスと出会ってから初めて困惑していた。
こんな婚約者の姿を見たのは初めてだったからだ。
「よしよぉし、リアスくんいいこいいこ」
「俺、引きこもりじゃなかったはずだよな・・・ブツブツ」
「ど、どうしよう・・・」
今まで思ってきたことをぶちまけたのはよかった。
でもこうなるとは思ってなかったので、ミラ自身どうすればいいか判断がつかず、宿の部屋についてからもクレの言うとおり頭を撫で回していた。
リアスは何かと節約するところがあり、自分の服装には無頓着で持っている服がほとんどがジャージばかりだった。
辛うじておしゃれで軍服を所持していたが、迷彩柄の軍服なのでダサかった。
それでも幼い頃は可愛いかったが、15にもなってその格好は色々と痛いトコロがあった。
領地でそんな格好をしたリアスとミラがデートをしていたとき、何度も振り返られたときはミラも顔から火が出る思いだった。
『重症ですね。まさかリアスがここまで弱いとは』
「坊ちゃん、カップケーキだ。糖分を食べれば落ち着くだろ。お嬢、あーんしてやれ。今は心の癒やしが大事だ」
「あ、うん。リアスくん、カップケーキだよ。口開けて」
「カップケーキ・・・そういや調理実習の時も女子が------ブツブツ」
「ダメだ!話を聞いてくれない!」
リアスは前世ではコミュ障だった。
それも根暗じゃないコミュ障であり、自分がコミュ障という自覚がなかった。
会話は弾むタイプで、人当たりもよかったのだが唯一の欠点があった。
お金を使うことに関して異常なまでに自分の意見を変えないことだった。
そこから付いたあだ名が守銭奴だったのだが、あだ名が付けられたときにプライベードで交流のある友人が居なかったのでリアスは知らない。
その過去の出来事を思い返していたら、リアスはすべて自分の金に体しての自己主張が原因だったことを思い出し、自分の世界へと閉じこもってしまったのだ。
『図星を突きすぎましたね。どうでしょう?ここは放置して・・・』
「ダメだよ。リアスくんと帝都観光楽しみにしてたんだから。ちょっと言い過ぎちゃったけど・・・それでも楽しみなものは楽しみなんだから!」
「ミライちゃん・・・兄貴、婚約者にここまで言わせたんだから、いい加減機嫌直しなさい!」
「婚約者・・・思えば俺は三十路を迎えて魔法使いになるところだったんだ・・・ブツブツ」
「これは重症ですね。リアス様、かなり心の内に抱えていたものがあったようです」
『リアスは結構強かな心を持っていると思ってましたが、案外繊細なのですね』
リアスはかなり精神力が強い。
だからなんと罵られよと受け流すことが出来る性格だった。
それは前世と今世の幼少期から、虐待に近い事をされていたために、事を荒立てない術を幼少期から身につけていた。
それ故に、貧乏性も身についてしまったのは仕方の無いことだろう。
そのことを走馬灯のように思い出してるリアスは、自分の世界に入ったまま出られない原因でもあった。
思い返してみれば、45年間でまともな友人と呼べる人間が一桁しかいないのは、ぼっちを拗らせている証拠だった。
「ミライ様覚悟を決めた方がよろしいかと」
「何の覚悟よイルミナ!」
ミラはリアス無しで観光なんか考えられなかった。
リアスにそれだけ好意を持っているからだ。
貧乏性を加味にしても、リアスへの好意が下がることがなかったのは、両親が死んで寂しい思いをしていた時に、共に居てくれたからだった。
そんな人間を放って置いて自分だけ楽しむと言う選択はできなかった。
だから覚悟というイルミナの言葉に、過剰反応してしまうのも仕方なかった。
しかしイルミナの考えは、ミラの予想していた物とは違った。
「キスでございます」
「はい?」
「リアス様は拗らせ童貞で、朴念仁でございます。自分では好きだとわかっていても、相手に本当に好きと思われているかはわからないのです。童貞にはキス。これだけの刺激で傷心の傷は癒えてしまいます」
『なるほど、ショック療法ですね。闇が深いならそれ以上に光で照らしてしまえば良いと言うことですか』
「すごいわイルミナ!ミライちゃん、眠れる姫じゃないけど王子を目覚めさせられるのは、姫しかいないんですのよ。さぁいっちゃって!」
普段まともな冷静さはなかった。
イルミナにしろ、クレにしろ、アルナにしろ、普段は冷静に物事を判断出来る者達だ。
リアスがポンコツになってしまったことで、この場に居る全員が酷く動揺していたのだ。
故に自分達が何を言っているのかわからない。
「キス・・・わかった!」
故に、ここには親しい間柄しかいない。
しかしそれでも人に見られている中キスができるほどミラは肝が座っては居なかった。
にもかかわず、ミラはリアスの唇に唇を重ねる。
それはミラ自信も、動揺して物事の判断が付かなくなっていたからだった。
「んぐっ!?ミラ!?」
「機嫌・・・治した?」
「あぁ。でもその、みんなに見られながら・・・キスされるのはちょっとその・・・」
そしてこの中でクレの次に生きている時間が長い人間とは思えないリアスの情けない姿に、キスされたんだからもっとする反応があるでしょと思うと共に、徐々にミラの頬は紅く染まっていく。
今になって自分がしたことに対しての羞恥心が巡ってきたのだった。
「にゃああああああ!」
「そ、そのミライ様。ごめんなさい・・・私も冷静じゃなかったです」
『よく考えてみれば我々は退出すべきでしたね』
2人が自分に気を遣ってくれているので、羞恥心を押し込めようとする。
罪悪感を感じて欲しくなかったからだ。
しかしそれは叶わない。
「ミライちゃん、元気出して!結婚式では同じことするんだよ」
「うにゃあああああ!」
アルナのその一言はミラにトドメを刺すには十分だった。
そのまま布団に覆い被さり、叫び声を上げる。
15歳の少女にこの羞恥は耐えることができなかったのだ。
「今度はお嬢が・・・」
『ミライ様も大変ですね』
『いやナスタ、別に付き合ってるからいいんじゃないか?』
『フェリーはデリカシーが足りないよ!女の子はね、キスとかは隠れてしたいものなの!恥ずかしいの!よく見せつけたいチャラ男がいるけど、それは乙女心をわかってないだけなの!』
『ナスタすげぇ物知り!』
『そ、それほどでもないよ』
実際ナスタ自身に恋愛経験は無く、アルゴノート家の書籍にあった恋愛小説に書いてあったことをそのまま言っただけなのだが、ここまで純粋な眼差しを向けられるとそのことを切り出せないナスタだった。
「おい坊ちゃん・・・」
「そうだ、今世はちゃんと友達も恋人もいる・・・ウヘヘ」
「ぼっちゃーん!」
そして別の意味で再び自分の世界に旅立っていた。
ミラは自分の行動に慌てて、リアスはトラウマを拗らせる極値の最中、周りはポンコツ化した混沌と化した。
『はぁ・・・みんないい加減にするブヒ!ウォーターブレイン』
水を生み出す魔法を展開するシュバリン。
そして全員の頭に水をかぶせて正気にする。
「何すんだシュバリン。あ、悪いみんな。ちょっと考え事して・・・あれ?ここどこだ?」
「リアスくん!あ、えっと。ごめんね、言い過ぎちゃった」
「あ、いや。みんながそう思って居たことはたしかだよな。だったら俺は改善してかないといけないな」
「それはその通りですが、まさか放心状態になるとは思ってなかったです。リアス様はその、心は強い方かと」
「俺もそう思ってたけど、みんなにいざ言われたら結構突き刺さってな」
リアスは他人に対しては強いが、仲間内に対してぶつけられる、言わば内輪での感情に体してはかなり弱かった。
それは育ち方による弊害で、他人に対しては冷たくあしらえても親しい間柄に何か言われると心に深く突き刺さってこの事態を招いたのだが、それは本人すら気づいていないことだった。
「さて、気を取り直して観光に行くか!今日は俺が何でも驕ってやるよ!みんなに迷惑をかけたしな」
「やったぜ!坊ちゃん、包丁を新調したくてな。鍛冶屋行こうぜ鍛冶屋!」
「現金な奴だな。まぁみんな適当に欲しいものあったら言ってくれよ。あ、常識の範囲内で頼む」
そこはかっこつかないのがリアスである。
しかしそんな彼だから、ミラは好きになったのだ。
だからミラは腕に抱きついて、帝都の観光を始めた。
ミラも女の子。
出るところは出ているわけで、わざとやっているとわかっていてもリアスは顔を赤くしていた。
「多分このことを言わせたくてやってると思うけど一応聞くぞミラ、当たってんだが」
「当ててんのよ」
「ちょっと兄貴、ミライちゃん。ワタクシ達も居るのを忘れないでくださいまし!」
帝都で四人の買い物に付き合ったリアスの財布の中身が、大変なことになったのは言うまでもない。
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