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二人で酒を飲んだ話

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 賢太郎は、無理矢理するのは趣味ではない。仮に本能の赴くままやりたいようにやったとしても、後から自己嫌悪で数日間動けなくなる恐れがある。好きにしていいと言われても逆に困る。健の意志が重要なのだ。

「……最近さ、賢太郎とそういうことすると、気持ちよくなれることが多くなったんだ。だから、ちょっと激しくしてほしいって思うこともあるわけ」

 渋る賢太郎を見て、健は言い回しを変えてくる。そういうことを言われると断れない。健の望みならば。その言葉に甘えてしまいたい。
 健は賢太郎の太腿を撫でさすりながら、より体重をかけてくる。不満と期待を混ぜたような、ぶすっとした表情をする健は、いつもより更に可愛く見える。酒の力も相まって、賢太郎の迷いは情欲に上書きされていった。

 今度こそ後片付けをして、布団を敷く。胡坐をかいて、その上に健を座らせた。当然のように向き合って座った健は、賢太郎の腰に足を絡ませ、胸に頭を預ける。

「心臓ドキドキしてる」
「酒入ってるからな。それだけじゃないけど」
「……今度は酒に合うおつまみも作ってほしいな。初めて俺の家に来てくれたとき、作ってくれたようなやつ。美味しかったから」
「分かったよ」

 唇を触れあわせると、酒の匂いがする。舌を絡ませて甘い味に浸りながら、裾から手を滑り込ませて、撫でるように胸に触れた。息継ぎの合間に声が漏れる。その度に健が感じているということが分かって、自分の興奮も高まっていった。
 寝間着の下を取り払って、尻を撫で回す。相変わらず肉付きが良く、触り心地が良い。下着も脱がせた後、ローションを手に取り指に絡ませた。普段よりも性急な自分がみっともなくて賢太郎は恥ずかしくなったが、健はそんなことを気にもせず、濡れた指に熱視線を注いできた。

 健に後ろを向かせ、指を目的の場所に這わせる。円を描くように触れた後で、指を埋め込んだ。健の声が耳に突き抜ける。指を少しずつ増やす度に、健の声に期待と艶が増した。自分のものにもローションを塗りたくり、健を後ろから貫く。喘ぐ健の声がもっと聞きたくて、力任せに腰を動かす。健は今、どんな顔をしているのだろう。
 好き勝手に動きたいとか、むちゃくちゃにしてやりたいとか、そういう気持ちは今までも確かにあった。今日はその気持ちに正直になって動いているけれど、結局のところ自分は健が気持ち良くなっている姿を見たいのだと思う。こういう言い方はあけすけだけれど、その健の姿を見るのが一番下半身に響く。
 健と一緒に気持ち良くなりたい。本能に従うのはその手段だ。
 自身を抜いて、健を仰向けに布団に転がした。正面から向き合って、もう一度昂ぶりを健に収める。頬が紅潮して、快感に眉をひそめる姿に胸が満たされた。一番欲しいのはこれなのだと自覚する。もっと見たい。恥ずかしがってる姿も、あられもない姿も、全部自分のものにしたい。その欲望のままに内部を穿つ。

「あっ、あぁ、はあ」
「はは。健、可愛い」
「う、あ……賢太郎、気持ちいい?」
「ああ。健、ここ突かれるの、好きだろ?」
「やっ、ああっ……お、俺のことは良いのに」
「健の、善がる姿が見たい。今日は、オレの好きなようにして、いいんだろ?」

 その後も、果てている最中の健を突いて、もう無理、という言葉を無視しながら腰を動かした。気が済むまで彼の中と姿を堪能して、賢太郎はこれ以上無いほどの高揚感に包まれた。
 ぐったりしている健は、明日には先程までのことを忘れているかもしれない。それでも構わない。賢太郎の記憶には、健の姿が全部残っている。

 翌日、健はうつ伏せのまま起き上がって来れなかった。甲斐甲斐しく世話をしている最中に、「どうして全部覚えてるんだよ……」という嘆きの言葉が聞こえてきて、賢太郎は思わず笑ってしまった。
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