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3章

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 食べる前に少し喋ったからか、いつも感じていた、微かに張り詰める緊張の空気は溶けて消えたようだ。芦尾も同じように感じていたのか、食べている最中にはっきりと誠に視線を寄越してくる。

「折角だから、いろいろ聞いてもいいかな? 誠に聞いてみたいことがたくさんあったんだよ。おすすめのゲームとか、どんなスペックのパソコン使ってるかとか」
「そんぐらいなら答えてやる。気が乗らない質問には答えないけど。それで良ければ、たまには話してみれば?」

 高飛車な言い方ではあるものの、誠なりに歩み寄りを見せたつもりだった。孤独は慣れているし望むところだと思っていたけれど、せっかく近くに人がいるんだから――しかも、今のところ自分にかなり甘くしてくれる人だ。長い目で見定めるのも悪くはない。芦尾のことを完全に信じているわけではないが、裏があるはずだと思い込むのも偏った物の見方をしている。
 疑り深い性格は、今まで接してきた人々の黒い面を見てきたことによって形成されたものだが、だからといって、これから関わる人の全てが、下卑ていて他人を利用しようという姑息な考えに染まっているわけではない――芦尾にはそう信じさせてほしいものだ。誠は挑戦者を待ち受ける魔王のような心持ちで、芦尾の話を聞いてやろうと考えていた。

「つーか、おすすめのゲーム聞くってセンスねーな。配信動画全部チェックしろ……って、オレが全部消したんだったわ」
「誠が決めたことなら仕方ないけど、すごく勿体ないと思うよ。ああいう高難易度ゲームの動画って、配信者の人柄だけじゃなくてゲームスキルの高さも重要だからさ。誠、ああいうゲームかなり上手いし、上手く行かなくてもその原因をすぐに分析できるし、すごい参考になってたよ」
「誉めたって復活しねーぞ」
「本当のことだよ。るりちゃんの動画を初めて見たのは、ゲームやるときの参考用に動画を探してたときだったなーって、ここ一週間思い返してたんだ。俺、ああいう高難易度ゲームをやるのが初めてで、最初は頑張ってプレイしてたんだけど、独力だとすぐに行き詰まっちゃってね」
「ふーん。それ、何てゲーム?」
「ネクロイデアっていう……覚えてる?」
「当たり前だろ、プレイして配信したゲームは全部覚えてる。あのゲームは特別っていうか……グロい見た目の敵ばっかだし強いしで難しいんだけど、めちゃくちゃ楽しかったんだよ。武器を合体させたり変形させたりできるからカッコ良かったし、戦術の幅も広かった」
「そうそう、銃と剣が合体するんだよな」
「後にも先にも、あれ以上に楽しかったゲームにはまだ出会ったことがねーかも。うわ、懐かしー。またやりてーな」

 ここ数日の沈黙が嘘かのように、誠も芦尾も気楽に喋り倒していた。この人めっちゃ喋るじゃん、と誠は内心驚いた。更に、自分が気兼ねなく人と話をしていることにも驚いていた。
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