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番外編
第12話 仲間と共に
しおりを挟む修学旅行2日目、午後2:05。
紅華がすぐに退院し、博物館に戻った後は少し遅めのお昼ご飯を食べることにした。
「では、電車の中でお弁当を食べましょう。萌葉、お弁当のワゴンを」
「はいよ~紀伊葉姉さん。できるだけ速達で届けまーす。子供らは自由席で~」
萌葉と呼ばれた、女性と勘違いされるような美青年の発言に、紅華、鈴菜、美埜音、蓬、煌、苺、誉の七人は、
「「「「「「「はーい!!!」」」」」」」
と返事をした。
「今回お乗りいただく電車は、”E531系”という電車です。この博物館は、展示している電車を動かすことができます。先程見た”気動車”は中には入れますが、動かすことは電車自体がかなり古い物の為できません。が、このE531系は博物館内なら動かせます。どうぞごゆっくりとお楽しみください」
紀伊葉の説明を聞いた後、電車に乗った7人はペアになって座った。ペアの組は紅華&鈴菜ペア+美埜音、煌&蓬ペア、苺&誉ペアの組に決まった。
電車が動き、弁当が運ばれるまで、7人は雑談をすることにした。
「なあなあ蓬! 今度電車乗ろうぜ!」
「今乗ってるだろ。あと煌、声でかいからもう少し抑えろ」
「あ、ごめん。……って、そうじゃなくってさあ! 駅に行くやつ!」
「......そうだな、今度行くか」
「おう!美味しい抹茶スイーツ専門店探しておくな!」
「おん、サンキュ」
「誉~! 博物館の中めっちゃ見える!電車鑑賞めっちゃ楽しいね! お菓子食べながら外見ようよ!」
「こら、だらしないからやめなさい。でもお菓子は食べようかな、カステラあるかしら?」
「あるよ! はい、抹茶カステラ! 皆にも後で上げる!」
「ありがとう、きっと皆喜ぶわ」
「うん!」
「お弁当楽しみだね鈴菜!」
「食い意地貼り過ぎだよ紅華ちゃん。でも確かに、奥の方からいい匂いがする!」
「楽しみですね!......ところで、煌さん達は?」
「後ろで喋ってるよ。行ってみれば?」
「いいえ、邪魔は良くないですので」
「邪魔じゃあ無いと思うけど......おーーい煌~?」
紅華が呼ぶと「なーにー?」という声が聞こえてきた。
「しりとりしよう! しりとりの『り』! 次鈴菜ね。その次美埜音、煌、蓬ね」
「えっ!? えーと、『リンゴ』!」
「えー、『ゴメス』!」
「いやなんだそれ、誰だよw! ……うーん、『スイカ』!」
「なんで俺も入ってるんだ......。『河川敷』!」
「あ私か。『切り株』!」
「『武士』」
「『シマウマ』です!」
・
・
・
こんな調子で会話やしりとりは続き、煌の番になった頃に弁当をのせた萌葉と紀伊葉がやってきた。
「おまたせ~。メルカ島鉄道博物館”モキハナ”の名物『駅弁』言う電車の中で食べる弁当だべ~」
「方言は出すなといつもいつも言っているでしょうに......」
いつもの調子で小言を並べ立てる紀伊葉と、指摘されても方言を直さない萌葉の、まるでコントのようなやり取りに紅華達は苦笑する他なかった。
「この駅弁はですね、容器についている紐を引っ張れば開けられます。中身はそれぞれ違いますので、お好きなものをお取りください」
紀伊葉の声にいち早く反応した紅華は、『牛タン弁当』と書かれているものを取った。それに続き鈴菜、美埜音、煌、蓬、苺、誉はそれぞれ『いくら丼弁当』、『うな重弁当』、『鶏照り焼き弁当』、『生姜焼き弁当』、『親子丼&他人丼弁当』、『牛肉カルビ&鮭の西京焼き入り幕ノ内弁当』を取り、弁当についている糸を引いた。
すると、弁当から白い湯気が立ちのぼるではないか。紅華達は驚きや喜びの表情でその湯気を見たあと、サンタさんからもらったプレゼントを開ける子供のような表情で、弁当を開けた。
中には美味しそうな肉やイクラなど、それぞれの弁当の中身があらわになった。
紅華達は元気に食べるときの最初の挨拶を言った。
「「「「「「「いただきます!!」」」」」」」
七人はお弁当を食べ、具材交換をし、思い思いのひとときを過ごした。
電車はまだ、動いたばっかりだった。
* * *
「「「「「「「ごちそうさまでした!!」」」」」」」
「美味しかった~! イクラも美味しいね鈴菜!」
「うん! ......半分ぐらい食べてなかった?」
「き、気の所為だよ~」
「へえ~?」
「鈴菜さぁん、ちゃいますやん!」
「っふふ、何その喋り方! アハハッ」
「美味かったな!」
「そうだな」
「また食べたいなあ~」
「また皆で行こうよ! 大人になったらさ!」
「苺の言う通りね。またスイーツ巡りしたいわ」
「抹茶ケーキ、今度こそ食べるぞ」
「俺も! チョコケーキ食いたい!」
「私はガトーショコラ食べたい!」
「私チーズケーキとショートケーキ! 後抹茶パフェ!」
「うおっ、鈴菜と紅華!?」
「スイーツあるところに紅華アリ......ってこと!?」
「いや草」
お弁当を食べ終わった紅華たちは、電車を降り、博物館を後にした。出るときは萌葉と紀伊葉が仲良く手を振ってくれていた。
……続く。
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