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生贄発見したよ
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あたしの名前は姫。本名ではなくこの施設でのコードネーム。男性だったあたしは過去無理やりここの前身の組織に女にされながらも、ここで働き、任務をこなしてきた。
印象に残っている一輝ちゃんがまゆみちゃんになったあの時の事からもう5年。あたしは遂に手術部門の総責任者になり、管理業務の傍ら女性化希望の特に問題児の対応に毎日追われている。
あの時のあたしのアシスタントだった聡美ちゃんは、この施設に残る事なく、特殊任務の和之と結婚して退職し、今や一児の母親に。元男の子でもちゃんと子供生めるんだと改めて自分の仕事の重要さを認識した。
そして今のあたしのアシスタント、というか秘書的役割をしてくれるのは…。
「おはようございます姫先生、仕様書届いてます」
秘書の目印の白地に役員担当の金色のストライプの入ったスカーフの娘があたしに挨拶して数冊のバインダーを渡してくれる。胸もヒップも大きな可愛いロングヘアの娘は、まさにあの時まゆみちゃんになった一輝クンだった。あれから高卒であたし達の組織にはいった彼、いや彼女は成績優秀で今年の春からあたしの推薦もあったんだけど、秘書に抜擢されてあたしの担当になった。
その仕様書は新型の性転換装置。実は昨日の夜から試作機をあたしの部屋の傍らに設置する為の工事が進められていた。
「おはよう、ありがと」
コーヒーメーカーを操作しながら彼女からそれを受け取るあたし。
今までの装置は実績は相当あるんだけど、改良増設を繰り返してきた古いもので、手術完了まで二日かかるし、途中で人手を介入した方が良い結果が出る事もわかり。結構めんどくさい物だったけど。なんでも新しいこの装置は人によるけどわずか一時間か二時間で完了するというとんでもない物らしい。
「じゃ、機械設置の手伝いしてきます」
そう言って部屋から出ていこうとするまゆみちゃんに軽く目礼して、コーヒーメーカーからコービーを手に取り、あたしは新型装置の仕様書に目を通し始めた。
グラフや図解など全くない英文の羅列だけの仕様書を全て読み終えたのは夕方近く。サンドイッチの昼食タイムは有ったが、そま間にあたしは何度声を上げ、仕様書を叩き、髪を手でむさぼった事か。
「誰よ!こんなバカげた物作ったのは!」
全て読み終えた時そう叫んで、奥付の開発陣の氏名の総責任者の名前を見て声を上げて両手で顔を覆うあたし。
「何!あいつが作ったの!?」
その名前の奴はあたしも良く知っている。仕事中に突然歌って踊りだし、腰には若い時の織田信長みたいに自作の変なドリンクや携帯食をぶら下げている変な奴だけど。何十桁の四則演算や方程式、関数を瞬時に解いてしまういわば天才。バカみたいな行動もしばしば。過去に自分そっくりのアンドロイドを作って施設内に放ち、皆を恐怖に陥れたマッドサイエンティスト。
当然ながら友人なんてものは殆どいなくて、仕方ないからあたしが時々話し相手になってやってる奴だった。
そんなあいつもいつのまにか開発の総責任者になってしまったらしい。思い切った人事だこと。気を取り直してあたしはアイフォンを取り出しそいつに連絡を入れた。
「あれ、ケイちゃん?だよね?何あのバカの秘書になったの?えーかわいそう…毎日大変…え?毎日楽しいって?そう。それならいいけど。あたしも部門の総責任者になったからあんまりあのバカの相手してらんなくなったからさ。話し相手になってあげてよね。ねえ?あのバカいる?代わって」
アイフォンからは奇妙な音楽が聞こえて来る所見るとまた踊っているらしい。まあ奴としては無事装置が納品されたから浮かれているんだろうけど。
「よう、バカ。元気かバカ。楽しそうじゃん。…え?今設置作業中よ。…いやそれはあとで…あのさ、あんたの作ったあの装置の夢物語みたいな英文だけの仕様書読んだんだけどさあ…」
そう言いつつ、頬と肩でアイフォンを挟み、仕様書の該当ページをめくり始めるあたし。
「空中元素固定装置って何よ?昔のアニメでそういうの聞いた事あるけど、そんなのこの機械に必要なの?他で別個にやってくんない?それとさ…」
いくつかの質疑応答の後、最後に一番重要な事を聞くあたし。
「それでさ、これ一番疑問に思ってるんたげど、テストとか試験とかどこまでやったの?え?理論上可能ってさ、何、一度もやってないの?え?テストはお前んとこの仕事だって…あんたも言う様になったわね!こんな恐ろしい機械に誰が実験台になろうって言うのよ!え?何あんた酔っぱらってるの?もういいわよ!」
何か訳のわからない事言い始めたのであたしはため息をついてアイフォンを切った。
その時秘書のまゆみちゃんが、遅れて届いた操作マニュアルなる物を届けてくれる。文字ばかりの仕様書とは異なり、マニュアル作成専門部署が作ったんであろう図解だらけのそれを読む事でようやくシステムの全貌は見えたが、それでもあたしは頭を抱えっぱなしだった。
空中元素固定装置…。そう言えばあのバカ、少し前に女の下着のフリンジの数とかレースのデザインとか形状に何か法則はあるのかって妙な事聞いて来たから、あるわけないでしょ!バカ!って言ってやった事あったっけ。
この装置もそのまま飾り物になるかと思っていたけど、意外に早くその時はやってきた。
程なく当施設にてある事件が起きる。レディーストレーニング中の元男の子だった女の子が就寝中に、どこからか忍び込んだ男に襲われるというもの。中にはレイプされた子も。まあ、まだ初潮が来ていない娘だったから妊娠はしていないけど、多分犯人はそういう事情を知ってかやりたい放題の様子。
調べていくとどうやら通風口とかダクトを使って侵入したり逃げたりしているらしい。
そして遂にその犯人が捕まった。
当施設には武道や格闘技の心得のある元男の子だった女の子が少数、施設の警備に就いている。連絡を受けて二人の警備の娘がそいつを引き連れてきた。
「姫先生、こいつです」
ダブルスティックを持った赤いチャイナ風の警備のユニフォーム着た女の子の後ろで、もう一人がヌンチャクをその男の首に巻き付けて引っ張りつつ入って来た。
そいつには見覚えがある。配管と配電工事を担当している当施設では数少ない男性従業員だった。聞けば昨日の夜も一人に手出ししてそのまま排気口に隠れていたのを発見されたらしい。
ジャージ姿のそいつはひょろっとした体格で元ホストだったと聞いた事がある。確かに顔にはそんな面影が有った。
あたしのデスク前に連れてこられたそいつを睨みつつ、性転換装置のマニュアルを閉じるあたし。
「あんた、何やったの?」
「いや、みんなの喜ぶ事やったまでっすよ」
あたしの問いにそいつは首にヌンチャク巻きつけられたまま返事をした。
「だから何やったんだって聞いてんだよ?」
怒り口調で言ってもそいつは全くひるまない。元は男だけどあたしを女だと思って舐めているのか。
「いやあ、和之さんているじゃん?伝説のトレーナーのさ。あの人と同じ事をみんなにやってあげてるだけっすよ」
口元に笑みうかべながらの舐めた口の利き方。
「奴の場合はみんなもう一度エッチしたいってみんな言うけどさ、おめーの場合は苦情しか来てねーんだよ。しかもドアからじゃなくて泥棒みたいに空調とか配電のダクトとかから忍び込んでさ」
頬杖つきつつあたしが言うけど、そいつはへらへら笑いっぱなしだった。
「んで、将来有望な未来有る俺をどうするんすか?警察っすか?マスコミが駆け付けたら騒ぎになるっすよ。あと俺も今までエッチした女の子の事をそいつらの前でいろいろ喋っていいっすか?親に内緒でここに来た政府高官の息子とか、あ、今は娘っすか」
この施設はいろいろ秘密事項があり、有名人の子息も何人かいる。内情をこいつにマスコミとかにばらされてもいろいろ困る事がある。
じっと睨みつけているあたしの前に奴は一歩踏み出した。
「あ、俺、元ホストなんで、おばさんもいけるっすよ」
小声で意地悪くつぶやくそいつに向かって、あたしは持っていた安物のボールペンをへし折って投げつけた。
「あんたの運命。これで決まったわ!」
そう叫んで机の手元の真新しく設置したボタンを押すあたし。と、壁の一つが大きく開いて。例の真新しい巨大な金魚鉢の様な性転換装置が現れる。
「警備の人、もう戻っていいから、帰り際にこいつをその中にぶち込んでやって」
あたしの言葉にダブルスティック持った娘が、
「あ、これって、まさか?」
「そう、そのまさかよ」
口元に笑みを浮かべて答えるあたし。
「あー、そういう事ね」
ヌンチャクでその男を拘束しているもう一人の警備の娘がそう言って、そのホスト崩れをその装置の前まで引っ張って行こうとすると、やはりその男も何か感づいて抵抗を始めた。
「暴れんなっつーの!」
警備の娘が抵抗しているそいつの両膝裏のツボらしき所につま先で蹴りを入れると、男の足は力なくした様にだらんとなった。そこへもう一人の警備の娘も加勢して。そいつを大きな金魚鉢の様な強化アクリルの容器の開いた所に引きずって行く。
「何すんだよ!やめろ!バカ!」
多分その強制猥褻男も薄々感づいていたらしい。
「やめろって!やめろ!正気かよ!」
二人の警備の娘がそいつをアクリル容器の開口部にに投げ入れる様に放り込んで、とどめに足で蹴り入れると、そいつは容器の中に転がり、瞬時にその開口部分が閉まり、わめいていた男の声もシャットダウンされた。
「大丈夫よ。酸素はちゃんと供給されるし、命までは取らないから。まあ、うまくいけばの話だけどね…」
もし死んだらどうしようかと思いつつ、
「服のままで放り込んでいいんだよねー…」
操作マニュアルの該当ページを確認しつつ、デスク横の真新しい操作盤のスイッチを入れると、まるでMRIを始動させたみたいな音が部屋に鳴り響いた。
中でアクリルの壁に体当たりしたり蹴ったりして大暴れしているそいつに、あたしはインカム越しに話しかける。
「あのさ。今までのは女になるのに二日かかったけど。これ新型の試作機でさ、一時間か二時間で女になるみたいだから…、まあまだテストもしてないけど、うまくいく事祈ってなさい」
と、突然奴の着ていたジャージが一瞬にしてボロボロと崩れ、粉末状になって竜巻みたいに舞い上がって、容器の上部に吸い込まれていく。
マッパになったそいつは、それでもあらん限りの悲鳴を上げて。容器の内側を蹴とばしている。
「やめなさい、それ水族館の巨大水槽並みの強度あるからさ、無駄よ無駄…」
そう言ったあたしの目に信じられない光景が映る。いくつかのレーザーポインタみたいな光が裸になった奴の体に当たったかと思うと、何本かの触手みたいな物が床から現れ、瞬く間に彼を床に仰向けに縛り付ける。昔のアニメに出てきそうなその光景。操作マニュアルでそれは知ってたけど、実際自分の目でそれをみて観たら…。
「何…、これから毎回こんなバカげたシーン観なきゃなんないの?」
独り言をつぶやくあたし。さらに今度は容器の天窓が開いて、そこから二つの機械みたいな物がアームにぶら下がって降りて来る。比較的小さくて吸盤みたいな物が付いた機械は彼の胸の上に。そして大き目の機械は彼のお腹の上に降り、付属のアームで彼の腰をがっしりと固定。
彼の断末魔みたいな悲鳴がインカムから聞こえて来たその時、
「あーあ、本当にやりやがった…」
なんと彼の口元にやはり天井から降りて来た、金属の触手みたいな物の先に付いた小さな棒状の器具。それはまさに男性器そのものの形をしていて、それが彼の口にガシガシと強く当てられる。悲鳴上げながら抵抗する彼の口に程なくそれは突っ込まれてしまった。
「あのバカ、どんな顔してこんなの設計したのよ…」
どうやらファーストステップの準備はこれでOKらしい。轟音を立てていた性転換装置の音が一瞬止まると、今度は少し小さな音が鳴り響く。とうとう奴を女にする処置が始まった。
薬品を経口で流される彼の口から苦しそうなうめき声が聞こえ、あたしは咄嗟に操作パネルを脳波測定の画面に切り替えて、苦痛が有るかどうか調べたけど。
「嫌がってるだけか。そりゃ男があんなもの口に含まされれば屈辱でしょうね…」
他人事みたいに、というか実際そうなんだけど、あきれた様にあたしは呟いた。
印象に残っている一輝ちゃんがまゆみちゃんになったあの時の事からもう5年。あたしは遂に手術部門の総責任者になり、管理業務の傍ら女性化希望の特に問題児の対応に毎日追われている。
あの時のあたしのアシスタントだった聡美ちゃんは、この施設に残る事なく、特殊任務の和之と結婚して退職し、今や一児の母親に。元男の子でもちゃんと子供生めるんだと改めて自分の仕事の重要さを認識した。
そして今のあたしのアシスタント、というか秘書的役割をしてくれるのは…。
「おはようございます姫先生、仕様書届いてます」
秘書の目印の白地に役員担当の金色のストライプの入ったスカーフの娘があたしに挨拶して数冊のバインダーを渡してくれる。胸もヒップも大きな可愛いロングヘアの娘は、まさにあの時まゆみちゃんになった一輝クンだった。あれから高卒であたし達の組織にはいった彼、いや彼女は成績優秀で今年の春からあたしの推薦もあったんだけど、秘書に抜擢されてあたしの担当になった。
その仕様書は新型の性転換装置。実は昨日の夜から試作機をあたしの部屋の傍らに設置する為の工事が進められていた。
「おはよう、ありがと」
コーヒーメーカーを操作しながら彼女からそれを受け取るあたし。
今までの装置は実績は相当あるんだけど、改良増設を繰り返してきた古いもので、手術完了まで二日かかるし、途中で人手を介入した方が良い結果が出る事もわかり。結構めんどくさい物だったけど。なんでも新しいこの装置は人によるけどわずか一時間か二時間で完了するというとんでもない物らしい。
「じゃ、機械設置の手伝いしてきます」
そう言って部屋から出ていこうとするまゆみちゃんに軽く目礼して、コーヒーメーカーからコービーを手に取り、あたしは新型装置の仕様書に目を通し始めた。
グラフや図解など全くない英文の羅列だけの仕様書を全て読み終えたのは夕方近く。サンドイッチの昼食タイムは有ったが、そま間にあたしは何度声を上げ、仕様書を叩き、髪を手でむさぼった事か。
「誰よ!こんなバカげた物作ったのは!」
全て読み終えた時そう叫んで、奥付の開発陣の氏名の総責任者の名前を見て声を上げて両手で顔を覆うあたし。
「何!あいつが作ったの!?」
その名前の奴はあたしも良く知っている。仕事中に突然歌って踊りだし、腰には若い時の織田信長みたいに自作の変なドリンクや携帯食をぶら下げている変な奴だけど。何十桁の四則演算や方程式、関数を瞬時に解いてしまういわば天才。バカみたいな行動もしばしば。過去に自分そっくりのアンドロイドを作って施設内に放ち、皆を恐怖に陥れたマッドサイエンティスト。
当然ながら友人なんてものは殆どいなくて、仕方ないからあたしが時々話し相手になってやってる奴だった。
そんなあいつもいつのまにか開発の総責任者になってしまったらしい。思い切った人事だこと。気を取り直してあたしはアイフォンを取り出しそいつに連絡を入れた。
「あれ、ケイちゃん?だよね?何あのバカの秘書になったの?えーかわいそう…毎日大変…え?毎日楽しいって?そう。それならいいけど。あたしも部門の総責任者になったからあんまりあのバカの相手してらんなくなったからさ。話し相手になってあげてよね。ねえ?あのバカいる?代わって」
アイフォンからは奇妙な音楽が聞こえて来る所見るとまた踊っているらしい。まあ奴としては無事装置が納品されたから浮かれているんだろうけど。
「よう、バカ。元気かバカ。楽しそうじゃん。…え?今設置作業中よ。…いやそれはあとで…あのさ、あんたの作ったあの装置の夢物語みたいな英文だけの仕様書読んだんだけどさあ…」
そう言いつつ、頬と肩でアイフォンを挟み、仕様書の該当ページをめくり始めるあたし。
「空中元素固定装置って何よ?昔のアニメでそういうの聞いた事あるけど、そんなのこの機械に必要なの?他で別個にやってくんない?それとさ…」
いくつかの質疑応答の後、最後に一番重要な事を聞くあたし。
「それでさ、これ一番疑問に思ってるんたげど、テストとか試験とかどこまでやったの?え?理論上可能ってさ、何、一度もやってないの?え?テストはお前んとこの仕事だって…あんたも言う様になったわね!こんな恐ろしい機械に誰が実験台になろうって言うのよ!え?何あんた酔っぱらってるの?もういいわよ!」
何か訳のわからない事言い始めたのであたしはため息をついてアイフォンを切った。
その時秘書のまゆみちゃんが、遅れて届いた操作マニュアルなる物を届けてくれる。文字ばかりの仕様書とは異なり、マニュアル作成専門部署が作ったんであろう図解だらけのそれを読む事でようやくシステムの全貌は見えたが、それでもあたしは頭を抱えっぱなしだった。
空中元素固定装置…。そう言えばあのバカ、少し前に女の下着のフリンジの数とかレースのデザインとか形状に何か法則はあるのかって妙な事聞いて来たから、あるわけないでしょ!バカ!って言ってやった事あったっけ。
この装置もそのまま飾り物になるかと思っていたけど、意外に早くその時はやってきた。
程なく当施設にてある事件が起きる。レディーストレーニング中の元男の子だった女の子が就寝中に、どこからか忍び込んだ男に襲われるというもの。中にはレイプされた子も。まあ、まだ初潮が来ていない娘だったから妊娠はしていないけど、多分犯人はそういう事情を知ってかやりたい放題の様子。
調べていくとどうやら通風口とかダクトを使って侵入したり逃げたりしているらしい。
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「姫先生、こいつです」
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そいつには見覚えがある。配管と配電工事を担当している当施設では数少ない男性従業員だった。聞けば昨日の夜も一人に手出ししてそのまま排気口に隠れていたのを発見されたらしい。
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あたしのデスク前に連れてこられたそいつを睨みつつ、性転換装置のマニュアルを閉じるあたし。
「あんた、何やったの?」
「いや、みんなの喜ぶ事やったまでっすよ」
あたしの問いにそいつは首にヌンチャク巻きつけられたまま返事をした。
「だから何やったんだって聞いてんだよ?」
怒り口調で言ってもそいつは全くひるまない。元は男だけどあたしを女だと思って舐めているのか。
「いやあ、和之さんているじゃん?伝説のトレーナーのさ。あの人と同じ事をみんなにやってあげてるだけっすよ」
口元に笑みうかべながらの舐めた口の利き方。
「奴の場合はみんなもう一度エッチしたいってみんな言うけどさ、おめーの場合は苦情しか来てねーんだよ。しかもドアからじゃなくて泥棒みたいに空調とか配電のダクトとかから忍び込んでさ」
頬杖つきつつあたしが言うけど、そいつはへらへら笑いっぱなしだった。
「んで、将来有望な未来有る俺をどうするんすか?警察っすか?マスコミが駆け付けたら騒ぎになるっすよ。あと俺も今までエッチした女の子の事をそいつらの前でいろいろ喋っていいっすか?親に内緒でここに来た政府高官の息子とか、あ、今は娘っすか」
この施設はいろいろ秘密事項があり、有名人の子息も何人かいる。内情をこいつにマスコミとかにばらされてもいろいろ困る事がある。
じっと睨みつけているあたしの前に奴は一歩踏み出した。
「あ、俺、元ホストなんで、おばさんもいけるっすよ」
小声で意地悪くつぶやくそいつに向かって、あたしは持っていた安物のボールペンをへし折って投げつけた。
「あんたの運命。これで決まったわ!」
そう叫んで机の手元の真新しく設置したボタンを押すあたし。と、壁の一つが大きく開いて。例の真新しい巨大な金魚鉢の様な性転換装置が現れる。
「警備の人、もう戻っていいから、帰り際にこいつをその中にぶち込んでやって」
あたしの言葉にダブルスティック持った娘が、
「あ、これって、まさか?」
「そう、そのまさかよ」
口元に笑みを浮かべて答えるあたし。
「あー、そういう事ね」
ヌンチャクでその男を拘束しているもう一人の警備の娘がそう言って、そのホスト崩れをその装置の前まで引っ張って行こうとすると、やはりその男も何か感づいて抵抗を始めた。
「暴れんなっつーの!」
警備の娘が抵抗しているそいつの両膝裏のツボらしき所につま先で蹴りを入れると、男の足は力なくした様にだらんとなった。そこへもう一人の警備の娘も加勢して。そいつを大きな金魚鉢の様な強化アクリルの容器の開いた所に引きずって行く。
「何すんだよ!やめろ!バカ!」
多分その強制猥褻男も薄々感づいていたらしい。
「やめろって!やめろ!正気かよ!」
二人の警備の娘がそいつをアクリル容器の開口部にに投げ入れる様に放り込んで、とどめに足で蹴り入れると、そいつは容器の中に転がり、瞬時にその開口部分が閉まり、わめいていた男の声もシャットダウンされた。
「大丈夫よ。酸素はちゃんと供給されるし、命までは取らないから。まあ、うまくいけばの話だけどね…」
もし死んだらどうしようかと思いつつ、
「服のままで放り込んでいいんだよねー…」
操作マニュアルの該当ページを確認しつつ、デスク横の真新しい操作盤のスイッチを入れると、まるでMRIを始動させたみたいな音が部屋に鳴り響いた。
中でアクリルの壁に体当たりしたり蹴ったりして大暴れしているそいつに、あたしはインカム越しに話しかける。
「あのさ。今までのは女になるのに二日かかったけど。これ新型の試作機でさ、一時間か二時間で女になるみたいだから…、まあまだテストもしてないけど、うまくいく事祈ってなさい」
と、突然奴の着ていたジャージが一瞬にしてボロボロと崩れ、粉末状になって竜巻みたいに舞い上がって、容器の上部に吸い込まれていく。
マッパになったそいつは、それでもあらん限りの悲鳴を上げて。容器の内側を蹴とばしている。
「やめなさい、それ水族館の巨大水槽並みの強度あるからさ、無駄よ無駄…」
そう言ったあたしの目に信じられない光景が映る。いくつかのレーザーポインタみたいな光が裸になった奴の体に当たったかと思うと、何本かの触手みたいな物が床から現れ、瞬く間に彼を床に仰向けに縛り付ける。昔のアニメに出てきそうなその光景。操作マニュアルでそれは知ってたけど、実際自分の目でそれをみて観たら…。
「何…、これから毎回こんなバカげたシーン観なきゃなんないの?」
独り言をつぶやくあたし。さらに今度は容器の天窓が開いて、そこから二つの機械みたいな物がアームにぶら下がって降りて来る。比較的小さくて吸盤みたいな物が付いた機械は彼の胸の上に。そして大き目の機械は彼のお腹の上に降り、付属のアームで彼の腰をがっしりと固定。
彼の断末魔みたいな悲鳴がインカムから聞こえて来たその時、
「あーあ、本当にやりやがった…」
なんと彼の口元にやはり天井から降りて来た、金属の触手みたいな物の先に付いた小さな棒状の器具。それはまさに男性器そのものの形をしていて、それが彼の口にガシガシと強く当てられる。悲鳴上げながら抵抗する彼の口に程なくそれは突っ込まれてしまった。
「あのバカ、どんな顔してこんなの設計したのよ…」
どうやらファーストステップの準備はこれでOKらしい。轟音を立てていた性転換装置の音が一瞬止まると、今度は少し小さな音が鳴り響く。とうとう奴を女にする処置が始まった。
薬品を経口で流される彼の口から苦しそうなうめき声が聞こえ、あたしは咄嗟に操作パネルを脳波測定の画面に切り替えて、苦痛が有るかどうか調べたけど。
「嫌がってるだけか。そりゃ男があんなもの口に含まされれば屈辱でしょうね…」
他人事みたいに、というか実際そうなんだけど、あきれた様にあたしは呟いた。
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