一年後に女子高校生になる俺

12ヶ月後に女子高校生になる俺

　俺にあてがわれたドアを開けると、そこはピンクのカーペットに白のカーテン。花柄の掛布団がかかったベッド。まんま俺の姉貴の部屋みたいだった。この施設で女になる為に一年間世話になる俺の個室。
　女の世界も悪くないと思って半分冗談で受けた適性検査に、他の４人と共に何故か受かっちまった。今少子化だから男を女にする施設が秘密裏に出来ている。女になったら結婚して子供を二人以上産むというのが条件だけど、学校や就職まである程度保証されているからこんないい話はなかなか無い。
　入所初日のオリエンテーション。他のクラスメイトと一緒にここの施設で暮らすにあたっての規則と心構えとか結構長い説明受けた。
　今月は俺達に本当に女になれる素質があるかの見極めと、来月から投与されるホルモン剤を体になじませる為の体質改善の女性ホルモン剤の投与らしい。もし素質が無かったら来月にここを出て一カ月程の男性ホルモン剤の投与と体力回復のトレーニングを行えば元に戻れる。
更に一年間中卒浪人になって来年高校受験になるけど。それはこの施設に入ったとしても同じだ。
オリエンテーションの後早速女性用のコスメとか下着の説明を受ける。下着は普通のシンプルなピンクの女用の綿パンとキャミソールと言われる、丸み帯びたレースのフリンジの付いたデザインのランニングシャツみたいなもの。
下着はいいとしても女用の洗顔とスキンケアの種類の多さとその匂いに少し驚く。女って毎日こんな事してるんだ。俺の姉貴が毎朝早く起きてた訳がなんとなくわかった。

翌日から早速女になる為の基礎トレーニングが始まる。
実は他の四人とは体を使う時は殆ど顔を合わせない配慮がされていた。そりゃ男丸出しで女になるトレーニング受けてる奴同士はなんとなく恥ずかしくて顔合わせられないもんな。
女性のトレーナーさんが交代で一日中付き添ってくれるんだけど、そのうち何人かは俺みたいに元男だってのには正直驚いた。
朝の洗顔一つでも男みたいに雑にやるんじゃなくて細部まで丁寧に指導され、浅黒い肌にニキビとかシミだられの俺の顔に乳液とかコスメの薬品とか。最初は突っ張ったりひりひりしたりもした。
食事の仕方も女の仕草を教えられる。というか、女っぽくではなく他から見て上品に、しかも美味しそうに少しずつってのが基本。
肩すぼめて、両手使って、食事を楽しみながらゆっくりと。慣れるのに少し時間かかった。
午前中は中学の授業の復習。一年後に女子高校生として秘密裏にとある共学の高校に入る為の推薦枠取る為にしっかり勉強しなきゃいけない。
午後はちょっと楽しい女トレーニングが始まる。やっぱり女になるのがつらくなって一カ月後に辞めても支障が出ない様に体力維持と座学が中心。
投与されるホルモン剤は来月からの特殊な女性ホルモンの薬に備えての体質改善用といっても一種の女性ホルモンだからどうしても体力の低下は避けられないのでその予防の為。
そして座学もそう。この時と体育の時は他の四人と顔合わせられる
女なら知っておかなければならない事。服や下着の種類とブランド名。どんな時にどんなの着ればいいかとか。他にコスメと化粧品の種類と香り。男女芸能人の名前と顔。
一週間に三回、各一時間程度の運動だけど、ランニングと柔軟体操中心。その中で猫背の矯正の為の懸垂、そして女の動作の基礎を築く為に新人の相撲取りがやらされる股割。これが大変だった。
もっとハードに女仕込まれるかと思ったけどそうじゃなかった。但し座学の合間にある女の社会のタテマエと本音を嫌という程聞かされるのが辛い。俺も正直正直何度やっぱりやめようかって思っただろう。
女性差別の事。体力が極端に落ちる事。常に体に痛んだり鬱になったりする事。男の数倍難しい女同士のコミュニケーションの事。のりが悪いとすぐ仲間外れにされたりする事。理屈が通らない女の世界の事。トイレとかは買い物行く位めんどくさくなる事。朝の身支度とか最低三十分はかかる事。
男の前ではいつも綺麗でか可愛くふるまわねばならない事や、メイク・ヘアメイク・スキンケアに手間がかかり、お金はその為のコスメと服と食費に殆ど消えてしまう事。
でも一番悩んだのは対男性に対する事だった。
可愛がる方から可愛がられる方になる。する方からされる方になる。入れる方から入れられる方になる。その後に待っている妊娠と出産と子育ての辛さ。
好きになった男に抱かれて、ベッドの上であえぎ声出せるかと言われて正直絶句した。体が女になっていくにつれてそうなるんだって言われても、今の俺には恐怖でしかない。

一カ月後に辞退する奴が少なくないからなのか。まあそれでも今間での話とか聞くと男に戻っても支障の無い様、むしろちょっとイケメンになって女の事を十分知ってる男として、逆に女受けする男になれるケースが多いと聞いた。女になるか男に戻るかは一カ月後に決めればいいや。