感じさせて……。

紫倉 紫

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うつつ6

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 肌寒さは感じるが我慢できる程度だ。
「大丈夫ですが……これから何を……」
「うまくできるかはわからないけどね」
 膝裏から足を持ち上げられ、開かされた。
 一体何をと思って、すぐにわかった。
 和明は、本当に淡泊で、ついこの間まで、最小限のことしかしてこなかった。それなのに、ひかりの敏感な場所に口をつけた。
 柔らかくて、温かくて……
 だけど、あの小説に書かれていたように、特別に感じはしない。
 和明が手をつかって、さらに押し広げた。
 思わず声が出てしまい、慌てて口を押さえた。
 和明がさらに強く舌を押しつけてきた。
 本当に、指でされるのとは全然違った。
 和明に、されている羞恥と、してもらっている充足とが、快感に結びついている気がした。
 亮は部屋に入ったんだろうか。リビングにいたら聞かれてしまいそうで、手の甲を口に押し当てていた。声はなんとか抑えられても、時折体がビクッと震えてしまう。
「本当に、良さそうだね」
 和明が顔を離した。ひかりは、大きく息を吸う。
「思っていたより、苦にはならない。もっと、してほしいかい?」
 して欲しいけれど恥ずかしくて言えない。
「僕は、君の考えていることがよくわからない。言ってくれないと」
 どんな言葉で伝えたらいいのかもわからない。
 もう少し続けてもらったら、もっと気持ちよくなるのかもしれない。
「あの……嫌じゃないんですか?」
「不快なニオイではないし、味も、微かだからね」
 ニオイ、味という言葉に、ひかりは続きを頼む勇気を完全に削がれた。
「もう、いいです……」
「嫌だったの?」
「そういうわけでは……声も、出てしまいそうなので……」
 和明が指で、敏感な場所をなでる。ため息が零れる。
「声は、我慢すればいい」
 言葉とともに息が、内腿にかかる。
 さっきより、激しくされて、声を抑えるのも段々と難しくなってきた。聞こえてしまうと思うのに、やめてほしくはなかった。
 ひかりは、手を伸ばし枕を引き寄せた。口を強く押しつける。時々、息を継ぐ。
 違う刺激があって、思わず和明の頭を足で挟んでしまった。体が勝手に動いてしまう。
 和明は、口を離し体を起こした。
「今夜はこのくらいにしよう。君も疲れているだろうしね」
 そんな……と、思わず口に出そうになる。
 疲れていても、かまわない。熱くなった状態で、放り出さないでほしい。
 和明は、布団だけを元に戻して「おやすみ」と言って部屋を出た。
 ひかりは、脱がされた下着を探す気にもなれずに、そのまま横たわっていた。
 触れられなくなった途端に、快感は遠ざかってしまった。もっと感じたかったという思いだけが頭の中を満たしている。
 開いたままの足の間に手を伸ばした。どうしようもなく濡れている。和明の舌がなぞった場所に指を這わせた。
 だめだ。全然違う。
 和明がその気になるか、自ら頼んでしてもらうか。そうでないとあの感覚は得られないらしい。
 暗闇にため息が溶け込んでいく。

 洗いに行くわけにもいかず、拭き取って下着をつけた。
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