感じさせて……。

紫倉 紫

文字の大きさ
上 下
96 / 102
うつつ6

しおりを挟む
 亮が上がってきたようだ。先に入るように言われた。
 湯船につかりながら、あれは、夢だったのだろうかと考えた。頭を優しく撫ででくれた。それから、背中や足を……。
 和明でないのなら、亮しかいない。しかし、亮がそんなことをするようには思えなかった。和明にからかわれている気がする。
 最近、和明の考えていることがわからない。以前は、研究にしか興味がない、それだけだった。
 少し前のように寂しくはない。
 そのかわりに、落ち着かなかった。
 あまり長く入っていると、眠ってしまいそうだ。
 出ると、和明と亮がリビングで話していた。
「おやすみなさい」
 声をかけて寝室に入った。和明が続けて入ってきた。
「後で少し訊きたいことがあるんだ。すぐに戻るから待っていてほしい」
「わかりました」
 さっき少し寝たので起きてはいられる。

 ひかりは、ベッドに入り『教授の実験室』を読みながら待つことにした。毎日結構なページが追加される。ここのところ忙しく少したまっている。
 好きでもない相手と、徐々に性的な段階を進めていく過程で、少しずつ心も惹かれている気はする。女が快楽に興味を持つのは、おかしなことではない。しかし、やはり、気持ちが先にあってのことだと、ひかりは思う。早く、主人公が奥村を好きになってしまえばいい。
 最新のページに追いつく前に和明が寝室に戻ってきた。しおりを挟んでスマホの画面を消した。
「待たせたね」
 和明はひかりのベッドの端に腰かけた。ひかりが起き出そうとしていると「いいよ、このままで」と言った。
「さっき、教授を諦めさせるために、子供のことを出したけどね。君は実際はどう思ってるのか気になって」
 子供が欲しいかどうか、ひかりがどう考えているのか、和明にはわからないことに驚く。
 わざわざいらないと言わないのであれば、普通は欲しいはずだ。
「子供は授かるのであれば、嬉しいです……」
「そうなんだね。よかった」
 和明は布団の中に手を入れて、ひかりの膝に触れた。
「今日は、見られてしまうんではないかと不安だっただろう」
 聞くまででもないと思えるのに、わざわざ確認される。和明は面白がっているのか。
 和明の手は徐々に這い上がってくる。
「濡れてる?」
 さっき読んだ小説のせいかもしれない。ひかりの経験したことのない行為が書かれていた。
「最近、うちの研究室にも女性の院生や助教授が増えてきてね。時々、僕がいることに気づかずに、話をしてるのが聞こえてくるんだ」
 和明の職場に女性職員が増えている。和明は女に興味は持たない。それは、ひかりが思い込んでいるだけだ。急に不安にかられる。
「今日は、彼女達が男からされてみたいって言っていたことを、試してみようか?」
 和明は、ひかりの足下から布団をめくり上げ、ベッドに上がってきた。寝間着にしているスウェットパンツを下着ごと下げられた。驚いて間抜けな声を出してしまった。
 研究室内で一体どんな話をしていたんだろう。
 和明が、彼女たちの性的な話題に聞き耳をたてていたのかと思うと、腹立たしさを覚えた。
「寒くないかい?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...