93 / 102
ゆめ5
二十
しおりを挟む
「まず、俺の頬を両手で挟む」
こんなことでいいのかと思った。奥村さんの痩せた頬に触れる。
「次は、瞼に口づける」
腰を下ろしたままでは届かない。
「教授と俺とでは随分身長に差があるからな。少し腰を上げれば届くだろ?」
届く位置まで、腰を上げた。奥村さんに余計に近くなって胸を押し付けてしまった。
「目を閉じてください」
「ああ、そうだな」
目を閉じた奥村さんの顔が目の前にある。急に、緊張してきた。
瞼にキスをするだけなのに……。
とにかく軽く、瞼に唇で触れた。
「次は鼻の頭」
こうしてみると、鼻筋が通っている。奥村さんは怖い印象が強すぎて気づかなかったが、意外に整った顔をしている。
一度深く息を吸って、止めた。鼻先に口づける。
「右頬から、耳たぶ」
単に、軽く唇を押し付けていくだけなのに、ますます緊張してしまう。
「耳元で名前を囁く」
「奥村さん……」
「こういう時は、下の名前だろう」
下の、名前……
「まさか、知らないとか?」
奥村さんが不機嫌な声を出した。
「知ってますけど……」
なぜだか、恥ずかしすぎて言葉にできない。
ついため息が溢れる。
奥村さんがいきなり頭を遠ざけた。
「こら、耳に息を吹きかけるとは書いてない」
ため息をついただけで怒られるんだから、たまらない。
「お前さっきから息が荒いな」
奥村さんが私の首筋に指をあてた。脈を測られている。
「動悸も激しい。興奮してんのか?」
「緊張してるだけです」
つい大きな声を、出してしまった。
奥村さんに鼻で笑われた。息が首筋にかかる。一瞬、感じてしまった。
「このくらい省略しても構わないだろう。次は、バスタオルをとって胸を顔におしつける」
そんなことは、したくない。
今回、私が何かをさせられてばかりだ。
「目を、閉じておいてくださいよ」
「仕方のないやつだなあ」
バスタオルを外す。丸めて奥村さんの横に置いた。
ちゃんと目をつぶってくれている。
ひとまず、奥村さんの頭を正面から抱きしめた。すぐに押しのけられた。
「殺す気か!」
息ができなかったようだ。
「もう少し、こう、あれだ。男を誘うつもりで」
そんなことを言われても、誘い方なんか知らない。
「胸は軽く押し付ける程度にして、腰をくねらせとけ」
腰をくねらす?
「さっぱり、どうすればいいのかわかりません……」
「時間もないしな。お前は、俺の首の後ろに腕を回して、じっとしとけばいい」
言われた通りにする。
奥村さんが、私の背中を手のひらで撫で下ろした。腰を軽く押さえられただけで、力が入らなくなって、奥村さんにしがみつく。
手は、そのまま、お尻から太ももの裏側までおりて行った。
付け根を揉まれているだけなのに、足の間がヒリヒリと熱くなり始めた。
「これだけ濡れていれば、大丈夫だろう」
何がどう、大丈夫なのか……
「次は『あなた、抱いてください』だ」
「言えって意味ですか?」
「ほかにどんな解釈ができる?」
何も思いつかない。
「あなた……だ…ぃ……」
「聞こえない」
触られたりするよりも、言葉にする方が、かえって難しい。言うまで許してもらえそうにない。
こんなことでいいのかと思った。奥村さんの痩せた頬に触れる。
「次は、瞼に口づける」
腰を下ろしたままでは届かない。
「教授と俺とでは随分身長に差があるからな。少し腰を上げれば届くだろ?」
届く位置まで、腰を上げた。奥村さんに余計に近くなって胸を押し付けてしまった。
「目を閉じてください」
「ああ、そうだな」
目を閉じた奥村さんの顔が目の前にある。急に、緊張してきた。
瞼にキスをするだけなのに……。
とにかく軽く、瞼に唇で触れた。
「次は鼻の頭」
こうしてみると、鼻筋が通っている。奥村さんは怖い印象が強すぎて気づかなかったが、意外に整った顔をしている。
一度深く息を吸って、止めた。鼻先に口づける。
「右頬から、耳たぶ」
単に、軽く唇を押し付けていくだけなのに、ますます緊張してしまう。
「耳元で名前を囁く」
「奥村さん……」
「こういう時は、下の名前だろう」
下の、名前……
「まさか、知らないとか?」
奥村さんが不機嫌な声を出した。
「知ってますけど……」
なぜだか、恥ずかしすぎて言葉にできない。
ついため息が溢れる。
奥村さんがいきなり頭を遠ざけた。
「こら、耳に息を吹きかけるとは書いてない」
ため息をついただけで怒られるんだから、たまらない。
「お前さっきから息が荒いな」
奥村さんが私の首筋に指をあてた。脈を測られている。
「動悸も激しい。興奮してんのか?」
「緊張してるだけです」
つい大きな声を、出してしまった。
奥村さんに鼻で笑われた。息が首筋にかかる。一瞬、感じてしまった。
「このくらい省略しても構わないだろう。次は、バスタオルをとって胸を顔におしつける」
そんなことは、したくない。
今回、私が何かをさせられてばかりだ。
「目を、閉じておいてくださいよ」
「仕方のないやつだなあ」
バスタオルを外す。丸めて奥村さんの横に置いた。
ちゃんと目をつぶってくれている。
ひとまず、奥村さんの頭を正面から抱きしめた。すぐに押しのけられた。
「殺す気か!」
息ができなかったようだ。
「もう少し、こう、あれだ。男を誘うつもりで」
そんなことを言われても、誘い方なんか知らない。
「胸は軽く押し付ける程度にして、腰をくねらせとけ」
腰をくねらす?
「さっぱり、どうすればいいのかわかりません……」
「時間もないしな。お前は、俺の首の後ろに腕を回して、じっとしとけばいい」
言われた通りにする。
奥村さんが、私の背中を手のひらで撫で下ろした。腰を軽く押さえられただけで、力が入らなくなって、奥村さんにしがみつく。
手は、そのまま、お尻から太ももの裏側までおりて行った。
付け根を揉まれているだけなのに、足の間がヒリヒリと熱くなり始めた。
「これだけ濡れていれば、大丈夫だろう」
何がどう、大丈夫なのか……
「次は『あなた、抱いてください』だ」
「言えって意味ですか?」
「ほかにどんな解釈ができる?」
何も思いつかない。
「あなた……だ…ぃ……」
「聞こえない」
触られたりするよりも、言葉にする方が、かえって難しい。言うまで許してもらえそうにない。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる