感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ5

十九

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 脱衣所から奥村さんの気配が消えたので、私も出ることにした。
 束ねていた髪が少し濡れていた。ほどいて、タオルで拭き取る。
 男女の交わりがどんなことか、大体は知っていたけれど、ここまで、細部までは想像していなかった。
 触られるときの感覚も、私にはないものの感触も……。味も匂いもあらゆる物が……
 好きでもない相手であっても、いざ、始まれば、思考は停止してしまう。
 指をいれられただけで痛かったのに、あんなものが入る気はしない。
 
 もうすぐ、わたしは……
 奥村さんの言うように、今さら守るものでもない気はする。そもそも、今まで守ってきたわけでもない。
 ただ、機会がなかっただけだ。
 大学に入るために必死で勉強をして、在学中も研究室に残れるように努力して。これからだって、教授のそばで研究を続けたいから……
 教授のプライベートの実験自体も、よくわからない。研修を受けている内容の延長……
 奥村さんは、自分が計測器の役割だと言っていた。データを取ろうとしているのはわかる。
 待たせると、機嫌が悪くなる。
 一応はバスタオルを巻いて、出た。奥村さんは、ソファに座っていた。
 私に気づいて手招きをした。
 次は何をされるんだろう。
  奥村さんのそばに向かう。
 下腹部の中心をギュッと掴まれるような、へんな疼きがあった。
 前に立つと、奥村さんが私の手を取った。
「また、ソファですか?」
「そうだ」
 私が隣に座ろうとすると「違う」と言われた。
「向かいあって、俺の足に跨ってみろ」
 奥村さんは下半身にバスタオルを巻いてあるけれど……
「跨るだけだ。たいしたことないだろう」
 それでも、恥ずかしい。
「体重を気にしているのか?」
 そうではない。仕方なくソファに左膝をかけた。結構、足を開かないと跨がれない。バスタオルが外れないよう、手で押さえながら、右膝も上げた。
 ゆっくり腰を下ろす。
 奥村さんが、私の腰に両腕を回してきた。
「眼鏡を外してくれ。教授はかけていないからな」
 向かい合う私と奥村さんの距離は、すぐにも触れ合いそうなほど近い。腕を回されているせいで、体を遠ざけることもできない。
 窮屈に感じながらも腕を上にあげて、眼鏡を外す。
 片耳に柄がひっかかっている。奥村さんが自分で顔を傾けて外した。
「下手くそ」
 上手くできなかったのは、動きにくかったからだ。
 奥村さんは、私から眼鏡を取り上げた。
 残した腕で引き寄せられた。胸が押しつぶされる。体が、少し後ろに傾けられた。バランスを崩しそうで、奥村さんの腕につかまった。
 奥村さんは腕を伸ばして、テーブルに眼鏡を置いた。それから、砂時計を逆さに向けたのが音でわかった。
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