感じさせて……。

紫倉 紫

文字の大きさ
上 下
80 / 102
ゆめ5

しおりを挟む
奥村さんほどの頭脳があっても、口をぽかんと開けてじっとしていれば、知性を感じさせないものだ。
 研究室内でも、見た目や態度が一番怖いくらいなのに。
 自分の腕の中にいる奥村さんが、やっぱり少し、かわいく思える。
 もう、赤ちゃんだと思うことにした。
 左の乳房を軽く持ち上げ、奥村さんの口元に合うように、体を少し前に傾けた。
 奥村さんは、口に含むと、目を閉じた。
 頭の横側をそっと撫でる。
 安心しているように見える。
 単調に吸われる分には、我慢も必要ないほどの感覚しかなかった。
 砂時計に目をやると、3分の1ほどは落ちていた。
 実際の授乳は、どのくらいの時間かかるものだろうか。考えてみれば、赤ちゃんに母乳をあげるたびに感じたら大変だ。
 
 人の体は良くできている……。
 でも、考えてみると、それ以外の時には、なんのために感じるのだろう。
 最近まで、そんな風になるなんて知らなかった。
 奥村さんの髪を撫でる手をとめた。
 右の方に、自分で触れてみた。
 さっきまで、刺激されていたから、いつもよりは敏感なのかもしれない。それでも、声が漏れるような感覚はない。
 目を閉じてみる。
 奥村さんはどんな風にしていただろうか。
 自分で触れるだけでも、かたくなってきた。
 突然、奥村さんに右手首を掴まれた。
 驚いて、目を開ける。
「そっちは、俺がしてやるから。お前は握っとけ」
 右手を下げさせられる。
「直でなくていい。動かさなくてもいい」
 奥村さんは、自分の股間に私の手を置き去りにした。
 私は、握らず……ただ、手を離すこともできずにいた。
 奥村さんから軽く指先でもてあそばれるだけで、簡単に、別の感覚にかえられてしまう。
 舌使いが、さっきまでの単調なものではなくなった。
 水気を含んだ音が、繰り返し聞こえる。
 普通に、呼吸ができなくなる。
 私は、きつく目を閉じ、口をかたく結ぶ。
 声が、鼻から、漏れてしまう。
 手のひらにあるのがタオルの手触りでも、その下で、時々、別の生き物みたいに動いている。
 指を少し折り曲げる。指先に吸い寄せられて、くる。
 おそるおそる包んでみる。
「もっと強く」
 切なげな声を聞いて、背中の産毛を撫でられたような感覚が走った。
 その直後、強く吸われながら舌先で転がされ、私は我慢できずに、深いため息をついた。
 右手に思わず力が入る。
 一度、力を入れてしまえば、ためらう理由はなくなった。
 奥村さんは、先だけでなく、周辺にも舌を這わせる。
 座っている姿勢を保つのも難しくなるほどになってきた。
 薄目を開けて、砂時計を見る。まだ、落ちきっていない。それでも
「奥村さん……もう、私、無理です……」
 奥村さんは、口にくわえたままで、目を開け、私の顔をみた。
 
 横目で視線を送りながら、強く吸ってくる。
 目を開けていられそうにない。
 名前を呼んでお願いする。
 奥村さんは、強く吸ったまま、頭を後ろにひいた。
 痛くはない。ただ、切ないような変な感覚があった。
 ようやく、口を離してくれる。
「伸びた」
 少しふやけて……本当に伸びている。
 奥村さんは体を起こした。
「まだ、握ってたいか、お前成長したな……」
 慌てて手を離した。
 奥村さんは、バスタオルの端を持って胸元まで引き上げてくれた。
 手で落ちないように押さえる。
「思っていたよりは、ずっと楽しめた」
 奥村さんが私の髪を撫でた。指が耳をかすめたとき、また、苦しくなって、私は思わず目を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...