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ゆめ5
三
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私は、顔を上げて奥村さんを見た。
「終わらせて、欲しいか?」
苦しげな顔をしている。なぜか、頷けなかった。
目眩でもない。
熱に浮かされるのに近い。
「お前は、男がわかってない」
わかるはずがない。
「その顔は、誘ってるようにしか見えない」
自分がどんな顔をしているのか知らない。
ただ、頭の中心がしびれて、何も言葉にできなかった。
奥村さんは、私の手ごと強く握った。
切なげに見詰められ、目を離せなくなった。
奥村さんが目を閉じた。
手に、わずかな振動が伝わった。
数度、波打った。
奥村さんの腕が、胸が、ほんの短く震えた。深く息を吐いた後で、脱力した。
私も、呼吸を落ち着かせる。
手の中のものが、徐々に形をかえていく。私はどうして良いのかわからず、そのまま包んでいた。
奥村さんは、私の腰から手を離し、シャワーを出した。湯船に激しい水音がたち、私の意識を呼び覚ましてくれた。
奥村さんが私の手を引き上げた。お湯がかかる。
ボディーソープを濡れた手のひらに注がれる。
「残ってるとパリッパリになるから、ちゃんと落としてくれよ」
まだ、私が洗わなければいけないのか。
「一度触れば、二度も三度も変わらんだろ」
それは乱暴過ぎる。
「逃げてないで、見てしまえ」
遅かれ早かれとみることになるとしても、できるだけ先延ばしにしたかった。
それが無意味でも。
「変なところは強情だな」
奥村さんがあきれ顔で笑った。
「それでも、教授の記録どおり、隅々まで洗ってはくれるんだろう?」
手が導かれる。
私のより、深い茂みに指先が迷い込む。
「あっ」
思わず声が出る。
どうしてここまで変われるのか。
不思議過ぎてつい目を、手元へ向けてしまった。
見てしまった。思っていた色と違い、すぐに目をそらす。
「なんだ?」
「あんまり、小さいからびっくりして……」
「はああ?」
奥村さんが不機嫌な声を出す。
「それに、柔らかいし……」
いきなり胸をわしづかみにされた。
「痛っ」
「でかいからって、調子に乗るなよ」
何かと邪魔だし肩がこるだけ。何も良いことはない。
急に怒り出すなんて、訳がわからない。
「この後、もう、容赦しないからな……」
どんなことをさせられるのか、不安になる。
「まあ、その前に、湯に浸かって温まるか」
奥村さんが、スポンジで泡立てた。簡単に全身を撫でられた。
「髪は、二回目の時に洗えば良いだろ?」
今日は、後三回入るんだった。
シャワーで泡を流してくれる。
先に入るように言われた。奥村さんも泡を落として入ってくる。
向かい合うものだと思っていたのに、私の後ろ側に割り込んでくる。
足の間に座らされた。
「そっちなんですね」
なんだか奥村さんに囲われて落ち着かない。
「そっちとは?」
「向かい合うのかと……」
「それは、見て欲しいってことか?」
奥村さんなりに考えてこの座り方なのか。どちらがましか考える。もたれて座りたいけれど、今は、体育の授業中のようにして座っている。
向かい合って、背中はもたれられたとしても、結局、体を縮めて座るのは変わらないと結論が出た。
「このままで」
奥村さんが手で、私の肩にお湯をかけてくれる。
「出てからは15分でも、そんなにゆっくりしてられない」
さっきので、終わりじゃなかったんだ。
「しかし、一緒に風呂って……悪くないな……」
突然、後ろから腕を回され引き寄せられる。
驚いたせいで、湯船が激しく波立つほど足を動かしてしまった。
完全に奥村さんの胸にもたれかかった。心臓は早鐘を打つ。
「早く俺に慣れろ」
耳のすぐ近くで奥村さんの声が響く。
余計に苦しくなって、私は、硬く目を閉じてうつむいた。
「やっぱり、お前はそのままでいい」
奥村さんがさらに腕に力を込めるから、締め付けられて、目眩がした。
「終わらせて、欲しいか?」
苦しげな顔をしている。なぜか、頷けなかった。
目眩でもない。
熱に浮かされるのに近い。
「お前は、男がわかってない」
わかるはずがない。
「その顔は、誘ってるようにしか見えない」
自分がどんな顔をしているのか知らない。
ただ、頭の中心がしびれて、何も言葉にできなかった。
奥村さんは、私の手ごと強く握った。
切なげに見詰められ、目を離せなくなった。
奥村さんが目を閉じた。
手に、わずかな振動が伝わった。
数度、波打った。
奥村さんの腕が、胸が、ほんの短く震えた。深く息を吐いた後で、脱力した。
私も、呼吸を落ち着かせる。
手の中のものが、徐々に形をかえていく。私はどうして良いのかわからず、そのまま包んでいた。
奥村さんは、私の腰から手を離し、シャワーを出した。湯船に激しい水音がたち、私の意識を呼び覚ましてくれた。
奥村さんが私の手を引き上げた。お湯がかかる。
ボディーソープを濡れた手のひらに注がれる。
「残ってるとパリッパリになるから、ちゃんと落としてくれよ」
まだ、私が洗わなければいけないのか。
「一度触れば、二度も三度も変わらんだろ」
それは乱暴過ぎる。
「逃げてないで、見てしまえ」
遅かれ早かれとみることになるとしても、できるだけ先延ばしにしたかった。
それが無意味でも。
「変なところは強情だな」
奥村さんがあきれ顔で笑った。
「それでも、教授の記録どおり、隅々まで洗ってはくれるんだろう?」
手が導かれる。
私のより、深い茂みに指先が迷い込む。
「あっ」
思わず声が出る。
どうしてここまで変われるのか。
不思議過ぎてつい目を、手元へ向けてしまった。
見てしまった。思っていた色と違い、すぐに目をそらす。
「なんだ?」
「あんまり、小さいからびっくりして……」
「はああ?」
奥村さんが不機嫌な声を出す。
「それに、柔らかいし……」
いきなり胸をわしづかみにされた。
「痛っ」
「でかいからって、調子に乗るなよ」
何かと邪魔だし肩がこるだけ。何も良いことはない。
急に怒り出すなんて、訳がわからない。
「この後、もう、容赦しないからな……」
どんなことをさせられるのか、不安になる。
「まあ、その前に、湯に浸かって温まるか」
奥村さんが、スポンジで泡立てた。簡単に全身を撫でられた。
「髪は、二回目の時に洗えば良いだろ?」
今日は、後三回入るんだった。
シャワーで泡を流してくれる。
先に入るように言われた。奥村さんも泡を落として入ってくる。
向かい合うものだと思っていたのに、私の後ろ側に割り込んでくる。
足の間に座らされた。
「そっちなんですね」
なんだか奥村さんに囲われて落ち着かない。
「そっちとは?」
「向かい合うのかと……」
「それは、見て欲しいってことか?」
奥村さんなりに考えてこの座り方なのか。どちらがましか考える。もたれて座りたいけれど、今は、体育の授業中のようにして座っている。
向かい合って、背中はもたれられたとしても、結局、体を縮めて座るのは変わらないと結論が出た。
「このままで」
奥村さんが手で、私の肩にお湯をかけてくれる。
「出てからは15分でも、そんなにゆっくりしてられない」
さっきので、終わりじゃなかったんだ。
「しかし、一緒に風呂って……悪くないな……」
突然、後ろから腕を回され引き寄せられる。
驚いたせいで、湯船が激しく波立つほど足を動かしてしまった。
完全に奥村さんの胸にもたれかかった。心臓は早鐘を打つ。
「早く俺に慣れろ」
耳のすぐ近くで奥村さんの声が響く。
余計に苦しくなって、私は、硬く目を閉じてうつむいた。
「やっぱり、お前はそのままでいい」
奥村さんがさらに腕に力を込めるから、締め付けられて、目眩がした。
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