感じさせて……。

紫倉 紫

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うつつ5

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 和明が前に少しだけ屈んだ。小さく呻く。痙攣している。手を、止められた。
 ひかりの親指の付け根のあたりにできた隙間から、どろりと流れ込んでくる。手を動かすことができずにいた。急激に硬度を失っていく。落ちていくはずはないのに、ひかりは、手のひらで受け止めようとした。思わず、弄びたくなるような柔らかさと大きさになった。
 和明が手にお湯をかけてくれた。
 ひかりの手を取って、ボディーソープで指の間までを丁寧に洗ってくれている。ずっと、和明に体を押しつけたままだった。指の付け根が、くすぐったい。
「また、冷えてしまうね」
 振り返り、体に着いたボディーソープのぬめりも流してくれる。
 和明お湯をかけながら、手のひらでひかりの胸を撫でる。指先が掠めただけで、ひかりは目を閉じた。
「早く寝かせてあげないとね」
 ひかりは触れてほしいとは、言い出せなかった。 炎になりかけた火種が、消してももらえずにくすぶっている。
 和明と向かい合わせで浸かる。大人二人で入ると、お湯はずいぶんカサが増す。和明が温めのボタンを押したあとで、ひかりの膝に手を置いた。
「足が疲れたんだろう」
 問われたので頷いた。膝から先を持ち上げられた。さすってくれる。湯船に小さな波が起こり、水音がたつ。
「細い……」
 ふくらはぎに手を添えられた。さらに持ち上げられる。
 背中が滑って体勢を崩しそうになった。浴槽の縁に手をかけて支えた。
 和明はひかりの脚を下ろした。
「大丈夫? そろそろあがろうか」
 和明は取って立ち上がりひかりの手を取った。引き上げる。
「眠いのに、つきあわせてしまったね」
  
  和明が「君はそこにかけて待っておいて」とソファに座る亮の隣を指差した。
「まだ、寝てなかったんだ」
 和明と一緒にお風呂へ入っていたのは、ばれているんだろうか。座って、下着が目につかないよう背もたれとの間に隠す。
「ソファーでしばらく寝てしまっていて……」
「話し相手をしとけば良かったな」
 亮は寒くないかと訊いてきた。
 カーディガンは和明が持って行ってしまった。
「そんな薄着じゃ、暖房が効いてても……」
 亮は、突然言葉を切った。
「何か着てくれば」
 和明の用事はなんなのかもわからない。確かにまた体が冷えてしまう。
 書斎へ取りに行ってもいいだろうか。少し迷ったけれど、新しく羽織るものを出すことにした。立ち上がって、寝室へ向かう。和明が書斎から出てきた。
「どうした?」
「羽織るものを……」
「ごめん、僕が持って行ってしまったんだよね」
 書斎に置いてきたようだ。
「誘われて少しだけ顔を出した店でね。二人に寿司をお土産にと思って買ってきたんだ」
 折と小さめの瓶を持っている。
「ありがとうございます。カーディガンを取りに入って良いですか?」
「すぐ取ってきてあげるから、食べておいて」
 お寿司と日本酒を渡された。
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