感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ4

十一

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 もうすぐ23時になる。
 眠気はある。
 それなのに、寝付けない。
 奥村さんにとうとう、全裸をみられてしまった。
 どうせ、あちこち触られているのだから……
 どう言い聞かせても、恥ずかしさがよみがえる。
 私は砂時計をみた。砂が落ちきっている。
 明かりを完全に消した。
 暗闇で目を閉じると、体の疲れに意識がむいた。
 しばらく眠っていた。奥村さんが入ってくる気配で目を覚ました。
 何時なのかわからない。
 ちょうど、奥村さんが横になる側に背を向けていた。
 背中に、体温が触れる。呼吸の音が聞こえてくる。
 頭を撫でられる。
 その手の優しさが、普段の奥村さんのイメージとは、かけ離れている。
 寝ていると思われているはずだ。動くわけにはいかない。
 奥村さんは、ただ、頭をなで続ける。
 ペットのように思われているのかもしれない。
「あんな変態の、どこがいいんだ?」
 問いかけられた。
 起きているのがばれてる?
 変態って、教授のこと?
 戸惑っているうちに、奥村さんの寝息が聞こえ始めた。

 目覚めた。何時かはわからないけれど、頭がすっきりしている。
 スマホを手にとった。5時少し前だ。
 奥村さんに気づかれないようそっと抜け出す。
 逆らうと不機嫌になって面倒だから、7時前には戻らないといけない。
 パジャマにエプロンをかけた。
 弁当を作り終え、自分だけ先に朝食を取った。
 夕食の用意も中途までしておく。
 気がつくと6時半を回っていた。
 今日の引き継ぎについて、頭の中でまとめようと思い、早めだがベッドに戻った。
 カーテンは閉めてあっても、部屋は薄明るくなっている。
 まだぐっすり眠っているようだ。そっと隣に入る。
 人の体温のある布団は、何ともいえず心地いい。子供の頃は親と寝る日もあったと思うがすっかり忘れていた。
 奥村さんが寝返りをうって、腕が腰のあたりにのっかった。
 首筋に髪が触れてくすぐったい。
 部屋の掛け時計をみる。後10分で7時になる。
 目が覚めかけているのか、奥村さんが何かと動く。
 あちこちムズムズするが少しの我慢だ。
 突然、腕が腰にからんできて、引き寄せられた。
 肩のあたりに頭をこすりつけられる。
 思わず声がもれてしまったけれど、奥村さんのうなり声がかき消してくれた。
「忠実でよろしい……」
 首に息がかかる。どうにか耐える。
「あの、朝食もあるのでそろそろ起きないと……」
 ギリギリだ。
 私も、もう着替えたい。
「もう少し、味わってから……」
 味わうって一体何を……。
「抱き枕としての機能が、一番優秀」
 さすがにむっとした。
 時間の無駄だと思いつつも、要望にこたえたのに、抱き枕扱いだ。
 もう起きたようだし、布団から出ようと体を動かした。
 奥村さんが腕の力を強めたから、身動きがとれない。それでも抵抗を試みる。
「あんまり動くな。もよおす」
 そんないちゃもんをつけるなら、さっさと起きて用をたせばいいのに。
 腕を少し緩めてくれた。
「今日の朝食ってなんだ?」
「時間もあったので、和食にしてみましたよ。白ご飯の方が、炭水化物を取りやすいかと思って」
 また締め付けられた。気にくわなかったのだろうか。好きも嫌いもないと言っていたから、前もってきいておかなかった。
「あー、はやく食いたい」
「そう思うなら、はやく起きてください」
「今日でやっと四日目か……」
 奥村さんが不満そうに呟いた。
「今日ははやく帰る。昨日減らしたから、四日分終わらす」
 研修の内容についてらしい……
「土日には、コマを増やそう」
「予定を前倒しにするんですか?」
「そういうこと」
 耳元で囁かれた。
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