感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ4

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 奥村さんの家は徒歩圏内だ。でも、勝手にはいるのは抵抗を感じる。
「奥村さんに合わせます」
「いや、待たれない方が余計な気をつかわずにすむ」
 確かにそうかもしれない。
「じゃあ、そうします」
 手のひらの鍵を改めてみる。奥さんが使っていた鍵かもしれないと思った。
 出勤も別で行くことになった。
「自分の家には自由に戻っていいが、俺が帰る前には来ておいてくれ」
 帰宅時間の目安は教えてくれるらしい。
 奥村さんには、別のキャンパスへの出張もある。
「夕食を作っておきます」
「楽しみにしてる」
 奥村さんの言葉がくすぐったい。
 今朝は私の方が先に出た。
 大学についてすぐに白衣を羽織った。教授室に挨拶へ行った。
「順調かな?」
 顔を合わすなり問われる。
 多分、奥村さんとの研修について気にされている。順調かどうかはわからなかった。
「徐々になれたいと……」
 曖昧に返す。ふと、今まで奥村さんにされたことが、教授と奥さんの行為そのものだということを思い出した。急に頬が熱くなる。
「準備もありますので失礼します」
 さっさと研究室に戻ろうとしていた。教授室の前で、奥村さんと出くわした。目が合う。
「おはようございます」
 今日会うのははじめてのふりで挨拶をした。
「どうした? 顔が赤いぞ」
 指摘されてますます火照ってしまう。
「今から教授に報告がある。後で呼ぶから……」
 何かわからないが、頷いてその場を立ち去った。 
 まずは、昨夜分のデータに目を通そうと思った。
 機械から吐き出された紙が、山折谷折で重なっている。手に取る。薄っぺらい紙に薄いインクで数字が印字されている。
 最新の分までをミシン目で切り離す。ペリリと小さな音がでる。わたしはこの音が結構好きだった。
 数字には、特に気になる変化はない。
 背後から誰かが紙をのぞき込んできた。
 てっきり奥村さんだと思ったのに、違った。
「おはようございます」
 先に声をかけてくれればこれほど驚かずにすんだ。
 時々みかけていた院生だった。
 距離が近すぎて焦る。
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