感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ2

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「どっちの意味だ?」
 奥村さんに訊かれた。
「シャワーを、お借りします」
「悪いようにはしない。研究チームでの立場も、俺にできるだけの配慮はさせてもらう」
「ありがとうございます」
 Tシャツを渡された。
「さすがに下着の替えはない」
 俯いたまま、バスルームに向かった。
 今日はどこまでされるんだろう。また、見られるんだろうか。
 体中をなんどもスポンジでこする。長引かせてもかわらない。
 あきらめて、シャワーを終えた。
 脱衣スペースに出ると、いつの間にか洗濯機が回っていた。着ていた下着類が見当たらない。置いておいた場所には、借りたTシャツだけ。
 体をふいて頭からTシャツをかぶった。大きめなので、太ももは半分ほど隠れた。
「おい、まだか」
 ドアが開いた。
「あの、下着が……」
「洗ってる」
 いつの間に、脱衣スペースに入ったのだろう。
 勝手なことをされたら困る。下着は手洗いするのに。
「髪が濡れてるな……うちにはドライヤーはないから、よく拭いておけよ」 
 奥村さんが別のタオルを出してくれた。
 ソファで待っておくように言われた。
 奥村さんは、5分ほどで出てきた。部屋着だと、少し印象が柔らかかった。髪をおろしているせいかもしれない。
「早速、始める」
 俯いたまま、奥村さんについてベッドルームに入った。
 緊張しすぎて、はきそうだ。
「まあ、座れ」
 ベッドの端に並んで腰かけた。
「俺は、お前のことを結構かっている。教授もな、評価している」
 だから、我慢をしろということか。
「もう、覚悟はできています」
 奥村さんが部屋の明かりを消した。自分の心臓の音がうるさい。
 ベッドの上で正座をするように指示された。
「まずは、寝床の上で、正座をして向き合った。暗がりに妻の息遣いが聞こえる。とりあえず肩に触れた」
 奥村さんがわたしの左肩に右手を載せた。ついビクッとしてしまう。
「妻は肩をすくめた。私は『いいね』と問いかけた。小さく『はい』と答えた」
 奥村さんが話しているのは、教授の記録の内容だろうか。見合いでと言っていた。この日まで、一度も体の関係を持たなかったのか。教授は、わたしより15歳ほど上なだけで、昭和初期の人ではない。
「初めて唇を重ねた」
 キスされてしまう。暗くて何も見えないのに目をきつく閉じる。頬が震えている。
 唇が重なった。柔らかいけれど、冷たい。わたしは離されるまで息を止めていた。
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