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第3章 王座争奪戦
67話(終) 夏祭り
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閉会式が終わった。
生徒たちは一度解散し、5時頃から始まるお祭りに備える。
「俺も一度シャワーを浴びに赤砂寮へ帰ろうかな」
タッタッタッタッ
「糸くん、やったでやんすうううう!!!!」
「おめでとぉ~~~~!!!」
赤砂寮へと帰ろうとグラウンド周りをうろうろしていたら、尻口くんと幸坂くんが抱きついてきた。
「わあっ! 尻口くん、幸坂くん!! ありがとう!!!」
「おいら感動したでやんすうううう!!」
「ボクも!! 仇をとってくれてありがとぉ!!」
「そうだ、この後の祭りはこの3人で回るでやんす! いっぱいご馳走食べるでやんす!」
「ボクも一緒に回りたいけど、多分今日の糸くんはひっぱりだこなんじゃないかなぁ」
「ひっぱりだこ?」
俺も尻口くんもその意図がよくわかっていなかった。
「………九重」
「はい…って、あなたは、時谷未来!?」
なんと、そこには先程戦った好敵手がいた。
「一応先輩。普通は時谷さん、呼び捨てたいなら未来。九重は、お祭り行くの?」
「はい、もちろんです!」
「……そう」
それだけ言うと、時谷さんはセトル・ブルーオーシャンの方へ歩いて行った。
「な、なんだったんだろう」
「んー、試合後の挨拶に来たはいいけど、何話せばいいか分からなかったんじゃないでやんすか?」
「ふふ、チャンピオンは意外とシャイなんだねぇ」
その後、尻口くんと幸坂くんは赤砂寮へ戻り、俺は保健室に連れて行かれたフィアスの様子を見に行った。
「フィアス、体調どうだ?」
「大丈夫、ちょっと前の状態に戻っただけだよ。でも、お祭りはいけそうにないかな……ちょっと残念」
フィアスは以前のように髪色が黒く変色しており、弱弱しくベッドで寝ていた。
「俺がおんぶとか車いすで連れて行ってもだめか?」
「え、本当……!? ……でも、今日は糸が主役だもん。私が邪魔しちゃ悪いよ」
「何言ってんの。フィアス閉会式出てないから知らないかもしれないけど、MVPに選ばれたんだよ! 立派な主役じゃないか」
「そうなの? じゃあ、糸がどうしてもっていうなら甘えようかな~」
「うん! まかせといて」
「それより、ここ飽きた。ちょっとくらいおしゃれしたいし、一回青月館に連れってって!」
「わかった」
というわけで、俺はフィアスを青月館へ届けた後、家でシャワーを浴び、2時間ほど部屋で休憩してからもう一度尻口くんたちと集合。
尻口くんは持ち前のリーゼントをガチガチに固め、幸坂くんは呪いの人形を持ってきて、どちらも気合が入っている。
一方で俺はただの私服。もう少しおしゃれすれば良かったかな……。
青月館でフィアスを拾い、車いすに乗せる。
やはりフィアスも、謎の麦わら帽子を被って来た。
そして、当然雪夜にも声をかける。
コンコン
「雪夜、俺だけど、一緒にお祭り周らない?」
「糸ですの!? ちょ、ちょっとお待ちください!!」
ドア越しに雪夜の声が聞こえる。
「憧れの松蔭さんの部屋だぁ!」
「こんなことならもっとリーゼント固めてくればよかったでやんす!」
ガチャ
「わあ! 綺麗!!」
「おおおおおおおおお!! 可愛いでやんす!!!」
浴衣姿の雪夜が出てきた。
「ありがとうございます。糸、こちらの方々は?」
「俺のクラスメイトだよ。すまんが、ちょっとだけいさせてやってくれ」
「クールビューティーなフィアスちゃんに浴衣姿の松蔭さん!! 最高でやんすうううう!!」
「よろしくねぇ!」
17時。
学校に到着。
「わぁぁぁぁ!! すごいすごい!!」
「祭りでやんす! 祭りでやんす!!!」
いつもの校舎が一変してお祭りムード。
祭りの提灯がずらっと並び、出店が沢山出ていて、学生や観客の人々までかなりの人がいる。この夏祭り自体が大会と同じくらい有名で、高次元世界の一大イベントとして大人気らしい。
日はまだ浅い。
俺達は色んな出店を周って遊んだ。
出店に力を入れていたサークル等も多く、高次元世界ならではの遊びが沢山ある。車いすのフィアスは少し体調は悪そうだったが、顔には笑顔が溢れて楽しそうにしていた。
「あっ九重! 貴様、俺が誘いの連絡を送ったというのに無視しやがって!!」
「優勝者のお主はわっちらにも目をくれんのか。偉くなったのう」
ばったり出会ったのは、浴衣姿の成瀬と沖田。
「連絡? なんのことだ」
「とぼけるな! 1時間前くらいに連絡しただろ! 携帯を見ろ!」
確かに、成瀬のお誘いの連絡が来ていた。
「すまん。寝てて気づかなかった」
「まあいい。色んな出店で勝負だ! 丁度いい、お前にもリベンジさせてもらう!」
成瀬は車いすのフィアスに指さす。
「おい! フィアスは今体調悪いんだって!」
「いいよ? 最強の私にまたコテンパンにされたいんだね」
「ほう、このわっちが二度も同じ相手に負けるわけがなかろう」
「待ちなさい、それには私も参戦するわ!」
どこから会話を聞きつけたのか、浴衣姿の苺が現れた。
売り言葉に買い言葉が続き、Dブロック準決勝で戦った1年軍団が再び燃え上がる。
「よし! まずはあっちの射的で勝負だ!」
成瀬は俺に代わってフィアスの車いすを押し、4人はどこかへ走って行った。
「なぜお祭りで勝負になるんですの!!」
「ま、まあフィアスが元気そうでよかったよ。あっ! 今何時だろ!」
「もうちょっとで18時でやんす」
「よかった。ごめん! 俺今からチームのみんなに会う約束してるんだ!」
「すみません、私もです。18時からご飯の屋台がどんどん出始めるそうで、晩御飯を一緒にと」
「うーん、おいらのチームからはお声が掛かってないでやんすねぇ。あ! 幸坂くん、ここらでやっちゃうでやんすか?」
「やっちゃおっかぁ!」
「何を?」
「「ナンパ!! いやっほおおおおおおおおい!!!」」
尻口くんと幸坂くんもどっかへ走り出した。
「まったく、あいつらは……」
「ふふ、元気ですわね。では糸、また会えましたら」
「うん!」
俺はチームで決めていた約束の場所へと向かった。
「おっ!! 主役の登場だぞ!!」
「よっ!! 俺達の大将!!」
待ち合わせの屋台には、すでに酔っぱらった先輩方がいた。
そして、病院から帰ってきた小雲先輩も、足をギプスで固定し、一緒に座っていた。
「糸くん、こっち」
小雲先輩が空いている隣の席をポンポンとたたく。
「小雲先輩!!」
俺はたくさん話したいことがあったので、小雲先輩の隣に座った。
その瞬間――
ぎゅううううう!!!
「えっ!? 小雲先輩!?」
「糸くん、ありがとうっ!! 私、最後に報われた。今日まで頑張ってきて良かった。糸くんと……そしてみんなと同じチームになれて本当に良かった……!!」
小雲先輩は俺を精一杯抱きしめる。
「えっ!! ……あっ……あのっ……こちらこそっ!!」
「一ノ瀬先輩! まだ飲んでいない九重大将の顔が真っ赤になってます!」
「それはおかしいな。どうしたんだ九重?」
チームのみんなが小雲先輩に抱きしめられてあたふたしてる俺を見て笑ってからかっている。
「あはは!! ごめんな、糸くん。先始めさせてもらってるばい。あ、おっちゃん生とレシスぺ1つずつ!! 糸くん、レシスぺでええよな?」
「は、はひ……」
な、なんだったんだ今の。もしかして、からかわれただけ!?
「あいよ!!」
コトッ
「では、皆揃ったので、改めてチーム27の優勝を称して!!」
「「かんぱーーーい!!!」」
「そっか、小雲先輩と一ノ瀬先輩は二十歳超えてるからお酒が飲めるんですね!」
「ふっふっふ! 糸くんも大きくなったら飲もね~!」
「レシスぺめっちゃデリシャス!!!」
「いやあそれにしても、まさか本当に優勝しちまうなんてな。俺は今年で卒業だが、最高の思い出になったよ。ありがとう、みんな。うっうっ」
あの一ノ瀬先輩が男泣きしている。
「一ノ瀬先輩の熱心なご指導のおかげですよ。私は一ノ瀬先輩のご指導がなければ、勝てなかったと思いますもの」
「菊音ちゃん、最初はダッシュとかついてこられへんかったのに、ようやりきったばい。決勝の先鋒戦とかちょっと感動してもたわ」
「えっ!? 菊音ちゃん、最初はリタイアしてたの!? 私菊音ちゃんが普通について行くから、先輩としてリタイアできなくて必死だったんだよ!?」
「そっか、最初の最初は七道と二宮と九重しか練習に来なかったもんな。あれ、そういえばジョニーは最初の練習なんで来なかったんだ? その後もボチボチ休んでいたが……」
「授業中寝てたら、怒られて補習受けてマシタ!」
「補習かよ! わははは!!!」
特訓のこと、合宿のこと、大会のこと。
色んなことを振り返り、飲みながら楽しく語りあい、1時間が過ぎた。
「うへええ! もう飲めまへーん!」
「三橋! あそこの屋台にレシスぺの夏祭り限定味が売ってるぞ!」
「夏祭り限定味~!? それは飲むしかないでふね!!」
五条先輩と三橋さんは屋台にお買い物にいった。
だんだん俺達も酔っぱらってカオスになってきたその頃、まさかの刺客が訪れてきた。
「おい……あれって……!」ざわざわ
「浴衣来てるよ! 可愛い!!」ざわざわ
なんと、屋台の前には浴衣を着た時谷さんが立っていたのだ。
「九重、見つけた。一緒に周ろう」
「と、時谷さん!?」
「と、ときたに~!? なんでここにおると!?」
「しばらく九重は借りていく。七道はお酒でも飲んでて」
「ああん!? 大事な糸くん渡すわけないやろ。てか時谷って毎年祭りには来んことで有名やったやんか。なんで今年は来たと?」
「九重が来るって言ったから。九重、酔っ払いは放っておいて行こう」
「え!? あ、ええ!?」
「糸くううん!!! 行かんとってええええ!!!」
小雲先輩は松葉杖で俺をひっかけようとしたが、それもむなしく、俺は時谷さんに連れていかれてしまった。
カタカタ……
「初めて履いたけど、下駄って履きにくいね」
「時谷さん、お祭りあまり参加されたことないんですか?」
「うん。私が行くと、倒した相手にどう思われるか分からなかったから。でも、今年は私は敗者」
時谷さんは着物をさすっている。
「だから、着物も初めて着たんだ。着てたらこんな時間になった」
まさか、俺と別れた後ずっと着物を着ていたのか!? 意外と不器用なのかも……。
「でも、とても似合ってますよ!」
「……ありがとう。九重、案内してよ」
「はい!!」
俺達は遊びや屋台を色々周った。
この大会の顔とも呼べる有名人の時谷さんは行く先行く先周りに反応されるが、動揺はしていなかった。
周っているうちにだんだんとお互いの緊張が解けてきて、色んなお話をしてくれるようになった。
ごくごく
「……すごい。レシスぺって本当に酔うんだ。空原はよくこんなの思いつくよね」
時谷さんはレシスぺを飲んで少し火照る。
「空原さんってどんな人なんですか? 大会には出ていなかったみたいですが」
「空原はね、何事も余裕そうにかっこつけて話すの。でも、どんな時も笑ってごまかしているから、本当の心は分からない。あと、心乃も千陽も分からない。何も考えずに生きている私とは違って、みんなずっと何かを考えていて、企んでいて、背負いこんでいる。お互いを牽制しあうように、私達は表面上でしか付き合えないんだ」
時谷さんはたこ焼きを頬張りながら少し悲しい表情で教えてくれた。
「だからあの三人とは友達になれない。そして、他の生徒は私を目の仇にしているから仲良くなれない。だから九重、私と仲良くして」
はむっ
「!?」
時谷さんは俺の口にたこ焼きを入れた。
「九重は私に勝ったんだから、憎んでいないでしょ」
「もごもご……。もちろんですよ。それに、誰も時谷さんを憎んではいません。色んな人の大会にまつわる話を聞くと、時谷さんの話題は良く出てきます。でも、それは悪い意味ではなく、目標としてです。時谷さんという絶対的な存在がいたから、みんなそれを目標に頑張れたし、大会も盛り上がったんだと思います。雪夜も戦えて良かったって言ってましたし」
「……ん、九重、松蔭と知り合いなの?」
「え、はい……」
「言っておいて、準決勝のあれはやりすぎ。ちょっとでも【時間の次元】への干渉を緩めていたら、私の心は壊れていたかもしれない。怖かった」
「は、はいっ、言っておきます」
「でもありがとう。勝つ意味ってなんだろうって思っていたけど、もしかしたら九重の言う通り、誰かの目標になれていたのかもね」
ヒューーーーー……ドカン!!!!
「わあ! 花火だ!」
ヒューーーーー……ドカン!!!!
「……」
アメジストのような時谷さんの目には、生まれて初めての花火の光が映った。
見とれるような、でもどこか儚い表情で満開に弾ける空を眺めていた。
ヒューーーーー……ドカン!!!!
ヒューーーーー……ドカン!!!!
「……私は九重が羨ましい。そんなに強い力を持っているのに、大きなコミュニティの中にいる。孤独な私と違って……」
「時谷さん……。いいえ……それは間違ってますよ。俺は弱いんです。どうしようもなく弱いから、みんなに助けてもらわないと戦えません。だから、みんなと努力して、協力して、一丸となって戦いました。時谷さんを倒せたのは、決して俺一人の力ではありません」
「そうなんだ」
ヒューーーーー……ドカン!!!!
ヒューーーーー……ドカン!!!!
この花火は長かった大会の終わりを告げる。
五条先輩と三橋さんは新種のレシスぺを飲みながら並んで見ている。
小雲先輩は例の先輩と。成瀬らの1年軍団も、この時間は一時休戦のようだ。
必死に頑張ったこの2か月間は花火のように消えてゆくけれど、より大きくなろうと努力したものほど思い出として残り続ける。
ヒューーーーー……ドカン!!!!
ヒューーーーー……ドカン!!!!
時谷さんは微笑んで、俺の手を握った。
「えっ……!?」
「九重、今日はありがとう。人生で初めての体験がたくさんできて、楽しかった」
まさか、目標としていた敵にお礼を言われるとは思ってはいなかった。
でも、その気持ちはよくわかる。
一緒に特訓したチームのみんな。
尻口くんや幸坂くん、成瀬や沖田、苺など、俺の周りで努力してくれたライバル。
そして、大きな壁として立ちはだかってくれたたくさんの強敵。
みんながいたから、俺はこんなに充実して成長できたんだ。
最初はたかがスポーツの大会、くらいにしか思っていなかったけど、今となればその考えを全力で撤回しよう。
「俺もこの大会に参加できて本当に良かったです! ありがとうございました!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第3章もお付き合いいただきありがとうございました。
閲覧数が限られている中、ここまでついてきてくださった親愛なる読者さまには心から感謝申し上げます。
本来は、ここから私がずっと作りたかった物語の中核へと進んでいき、次元計や心乃と理事長の本当の目的など、散りばめておいた伏線をどんどん回収していく予定でした。しかし、実際に投稿してみて力不足に気づき、これまでの物語の進め方や文章が下手くそだったな、と今更ながら反省しています。したがって、このまま進むのは私も、そしておそらく皆様も納得しないと思いますので、もう一度最初から見直し、テンポや話が分かり易くなるようにじっくり考えて一から組み立て直そうと考えました。
つまるところ打ち切りです。ここまで読んでくださった皆様にはご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ございません。いつか数段レベルアップして転生できるように努めますので、もうしばらくお時間をください。
重ね重ねになりますが、皆様のおかげで、色々考えながら投稿してきた毎日がとても楽しかったです。本当にありがとうございました。
生徒たちは一度解散し、5時頃から始まるお祭りに備える。
「俺も一度シャワーを浴びに赤砂寮へ帰ろうかな」
タッタッタッタッ
「糸くん、やったでやんすうううう!!!!」
「おめでとぉ~~~~!!!」
赤砂寮へと帰ろうとグラウンド周りをうろうろしていたら、尻口くんと幸坂くんが抱きついてきた。
「わあっ! 尻口くん、幸坂くん!! ありがとう!!!」
「おいら感動したでやんすうううう!!」
「ボクも!! 仇をとってくれてありがとぉ!!」
「そうだ、この後の祭りはこの3人で回るでやんす! いっぱいご馳走食べるでやんす!」
「ボクも一緒に回りたいけど、多分今日の糸くんはひっぱりだこなんじゃないかなぁ」
「ひっぱりだこ?」
俺も尻口くんもその意図がよくわかっていなかった。
「………九重」
「はい…って、あなたは、時谷未来!?」
なんと、そこには先程戦った好敵手がいた。
「一応先輩。普通は時谷さん、呼び捨てたいなら未来。九重は、お祭り行くの?」
「はい、もちろんです!」
「……そう」
それだけ言うと、時谷さんはセトル・ブルーオーシャンの方へ歩いて行った。
「な、なんだったんだろう」
「んー、試合後の挨拶に来たはいいけど、何話せばいいか分からなかったんじゃないでやんすか?」
「ふふ、チャンピオンは意外とシャイなんだねぇ」
その後、尻口くんと幸坂くんは赤砂寮へ戻り、俺は保健室に連れて行かれたフィアスの様子を見に行った。
「フィアス、体調どうだ?」
「大丈夫、ちょっと前の状態に戻っただけだよ。でも、お祭りはいけそうにないかな……ちょっと残念」
フィアスは以前のように髪色が黒く変色しており、弱弱しくベッドで寝ていた。
「俺がおんぶとか車いすで連れて行ってもだめか?」
「え、本当……!? ……でも、今日は糸が主役だもん。私が邪魔しちゃ悪いよ」
「何言ってんの。フィアス閉会式出てないから知らないかもしれないけど、MVPに選ばれたんだよ! 立派な主役じゃないか」
「そうなの? じゃあ、糸がどうしてもっていうなら甘えようかな~」
「うん! まかせといて」
「それより、ここ飽きた。ちょっとくらいおしゃれしたいし、一回青月館に連れってって!」
「わかった」
というわけで、俺はフィアスを青月館へ届けた後、家でシャワーを浴び、2時間ほど部屋で休憩してからもう一度尻口くんたちと集合。
尻口くんは持ち前のリーゼントをガチガチに固め、幸坂くんは呪いの人形を持ってきて、どちらも気合が入っている。
一方で俺はただの私服。もう少しおしゃれすれば良かったかな……。
青月館でフィアスを拾い、車いすに乗せる。
やはりフィアスも、謎の麦わら帽子を被って来た。
そして、当然雪夜にも声をかける。
コンコン
「雪夜、俺だけど、一緒にお祭り周らない?」
「糸ですの!? ちょ、ちょっとお待ちください!!」
ドア越しに雪夜の声が聞こえる。
「憧れの松蔭さんの部屋だぁ!」
「こんなことならもっとリーゼント固めてくればよかったでやんす!」
ガチャ
「わあ! 綺麗!!」
「おおおおおおおおお!! 可愛いでやんす!!!」
浴衣姿の雪夜が出てきた。
「ありがとうございます。糸、こちらの方々は?」
「俺のクラスメイトだよ。すまんが、ちょっとだけいさせてやってくれ」
「クールビューティーなフィアスちゃんに浴衣姿の松蔭さん!! 最高でやんすうううう!!」
「よろしくねぇ!」
17時。
学校に到着。
「わぁぁぁぁ!! すごいすごい!!」
「祭りでやんす! 祭りでやんす!!!」
いつもの校舎が一変してお祭りムード。
祭りの提灯がずらっと並び、出店が沢山出ていて、学生や観客の人々までかなりの人がいる。この夏祭り自体が大会と同じくらい有名で、高次元世界の一大イベントとして大人気らしい。
日はまだ浅い。
俺達は色んな出店を周って遊んだ。
出店に力を入れていたサークル等も多く、高次元世界ならではの遊びが沢山ある。車いすのフィアスは少し体調は悪そうだったが、顔には笑顔が溢れて楽しそうにしていた。
「あっ九重! 貴様、俺が誘いの連絡を送ったというのに無視しやがって!!」
「優勝者のお主はわっちらにも目をくれんのか。偉くなったのう」
ばったり出会ったのは、浴衣姿の成瀬と沖田。
「連絡? なんのことだ」
「とぼけるな! 1時間前くらいに連絡しただろ! 携帯を見ろ!」
確かに、成瀬のお誘いの連絡が来ていた。
「すまん。寝てて気づかなかった」
「まあいい。色んな出店で勝負だ! 丁度いい、お前にもリベンジさせてもらう!」
成瀬は車いすのフィアスに指さす。
「おい! フィアスは今体調悪いんだって!」
「いいよ? 最強の私にまたコテンパンにされたいんだね」
「ほう、このわっちが二度も同じ相手に負けるわけがなかろう」
「待ちなさい、それには私も参戦するわ!」
どこから会話を聞きつけたのか、浴衣姿の苺が現れた。
売り言葉に買い言葉が続き、Dブロック準決勝で戦った1年軍団が再び燃え上がる。
「よし! まずはあっちの射的で勝負だ!」
成瀬は俺に代わってフィアスの車いすを押し、4人はどこかへ走って行った。
「なぜお祭りで勝負になるんですの!!」
「ま、まあフィアスが元気そうでよかったよ。あっ! 今何時だろ!」
「もうちょっとで18時でやんす」
「よかった。ごめん! 俺今からチームのみんなに会う約束してるんだ!」
「すみません、私もです。18時からご飯の屋台がどんどん出始めるそうで、晩御飯を一緒にと」
「うーん、おいらのチームからはお声が掛かってないでやんすねぇ。あ! 幸坂くん、ここらでやっちゃうでやんすか?」
「やっちゃおっかぁ!」
「何を?」
「「ナンパ!! いやっほおおおおおおおおい!!!」」
尻口くんと幸坂くんもどっかへ走り出した。
「まったく、あいつらは……」
「ふふ、元気ですわね。では糸、また会えましたら」
「うん!」
俺はチームで決めていた約束の場所へと向かった。
「おっ!! 主役の登場だぞ!!」
「よっ!! 俺達の大将!!」
待ち合わせの屋台には、すでに酔っぱらった先輩方がいた。
そして、病院から帰ってきた小雲先輩も、足をギプスで固定し、一緒に座っていた。
「糸くん、こっち」
小雲先輩が空いている隣の席をポンポンとたたく。
「小雲先輩!!」
俺はたくさん話したいことがあったので、小雲先輩の隣に座った。
その瞬間――
ぎゅううううう!!!
「えっ!? 小雲先輩!?」
「糸くん、ありがとうっ!! 私、最後に報われた。今日まで頑張ってきて良かった。糸くんと……そしてみんなと同じチームになれて本当に良かった……!!」
小雲先輩は俺を精一杯抱きしめる。
「えっ!! ……あっ……あのっ……こちらこそっ!!」
「一ノ瀬先輩! まだ飲んでいない九重大将の顔が真っ赤になってます!」
「それはおかしいな。どうしたんだ九重?」
チームのみんなが小雲先輩に抱きしめられてあたふたしてる俺を見て笑ってからかっている。
「あはは!! ごめんな、糸くん。先始めさせてもらってるばい。あ、おっちゃん生とレシスぺ1つずつ!! 糸くん、レシスぺでええよな?」
「は、はひ……」
な、なんだったんだ今の。もしかして、からかわれただけ!?
「あいよ!!」
コトッ
「では、皆揃ったので、改めてチーム27の優勝を称して!!」
「「かんぱーーーい!!!」」
「そっか、小雲先輩と一ノ瀬先輩は二十歳超えてるからお酒が飲めるんですね!」
「ふっふっふ! 糸くんも大きくなったら飲もね~!」
「レシスぺめっちゃデリシャス!!!」
「いやあそれにしても、まさか本当に優勝しちまうなんてな。俺は今年で卒業だが、最高の思い出になったよ。ありがとう、みんな。うっうっ」
あの一ノ瀬先輩が男泣きしている。
「一ノ瀬先輩の熱心なご指導のおかげですよ。私は一ノ瀬先輩のご指導がなければ、勝てなかったと思いますもの」
「菊音ちゃん、最初はダッシュとかついてこられへんかったのに、ようやりきったばい。決勝の先鋒戦とかちょっと感動してもたわ」
「えっ!? 菊音ちゃん、最初はリタイアしてたの!? 私菊音ちゃんが普通について行くから、先輩としてリタイアできなくて必死だったんだよ!?」
「そっか、最初の最初は七道と二宮と九重しか練習に来なかったもんな。あれ、そういえばジョニーは最初の練習なんで来なかったんだ? その後もボチボチ休んでいたが……」
「授業中寝てたら、怒られて補習受けてマシタ!」
「補習かよ! わははは!!!」
特訓のこと、合宿のこと、大会のこと。
色んなことを振り返り、飲みながら楽しく語りあい、1時間が過ぎた。
「うへええ! もう飲めまへーん!」
「三橋! あそこの屋台にレシスぺの夏祭り限定味が売ってるぞ!」
「夏祭り限定味~!? それは飲むしかないでふね!!」
五条先輩と三橋さんは屋台にお買い物にいった。
だんだん俺達も酔っぱらってカオスになってきたその頃、まさかの刺客が訪れてきた。
「おい……あれって……!」ざわざわ
「浴衣来てるよ! 可愛い!!」ざわざわ
なんと、屋台の前には浴衣を着た時谷さんが立っていたのだ。
「九重、見つけた。一緒に周ろう」
「と、時谷さん!?」
「と、ときたに~!? なんでここにおると!?」
「しばらく九重は借りていく。七道はお酒でも飲んでて」
「ああん!? 大事な糸くん渡すわけないやろ。てか時谷って毎年祭りには来んことで有名やったやんか。なんで今年は来たと?」
「九重が来るって言ったから。九重、酔っ払いは放っておいて行こう」
「え!? あ、ええ!?」
「糸くううん!!! 行かんとってええええ!!!」
小雲先輩は松葉杖で俺をひっかけようとしたが、それもむなしく、俺は時谷さんに連れていかれてしまった。
カタカタ……
「初めて履いたけど、下駄って履きにくいね」
「時谷さん、お祭りあまり参加されたことないんですか?」
「うん。私が行くと、倒した相手にどう思われるか分からなかったから。でも、今年は私は敗者」
時谷さんは着物をさすっている。
「だから、着物も初めて着たんだ。着てたらこんな時間になった」
まさか、俺と別れた後ずっと着物を着ていたのか!? 意外と不器用なのかも……。
「でも、とても似合ってますよ!」
「……ありがとう。九重、案内してよ」
「はい!!」
俺達は遊びや屋台を色々周った。
この大会の顔とも呼べる有名人の時谷さんは行く先行く先周りに反応されるが、動揺はしていなかった。
周っているうちにだんだんとお互いの緊張が解けてきて、色んなお話をしてくれるようになった。
ごくごく
「……すごい。レシスぺって本当に酔うんだ。空原はよくこんなの思いつくよね」
時谷さんはレシスぺを飲んで少し火照る。
「空原さんってどんな人なんですか? 大会には出ていなかったみたいですが」
「空原はね、何事も余裕そうにかっこつけて話すの。でも、どんな時も笑ってごまかしているから、本当の心は分からない。あと、心乃も千陽も分からない。何も考えずに生きている私とは違って、みんなずっと何かを考えていて、企んでいて、背負いこんでいる。お互いを牽制しあうように、私達は表面上でしか付き合えないんだ」
時谷さんはたこ焼きを頬張りながら少し悲しい表情で教えてくれた。
「だからあの三人とは友達になれない。そして、他の生徒は私を目の仇にしているから仲良くなれない。だから九重、私と仲良くして」
はむっ
「!?」
時谷さんは俺の口にたこ焼きを入れた。
「九重は私に勝ったんだから、憎んでいないでしょ」
「もごもご……。もちろんですよ。それに、誰も時谷さんを憎んではいません。色んな人の大会にまつわる話を聞くと、時谷さんの話題は良く出てきます。でも、それは悪い意味ではなく、目標としてです。時谷さんという絶対的な存在がいたから、みんなそれを目標に頑張れたし、大会も盛り上がったんだと思います。雪夜も戦えて良かったって言ってましたし」
「……ん、九重、松蔭と知り合いなの?」
「え、はい……」
「言っておいて、準決勝のあれはやりすぎ。ちょっとでも【時間の次元】への干渉を緩めていたら、私の心は壊れていたかもしれない。怖かった」
「は、はいっ、言っておきます」
「でもありがとう。勝つ意味ってなんだろうって思っていたけど、もしかしたら九重の言う通り、誰かの目標になれていたのかもね」
ヒューーーーー……ドカン!!!!
「わあ! 花火だ!」
ヒューーーーー……ドカン!!!!
「……」
アメジストのような時谷さんの目には、生まれて初めての花火の光が映った。
見とれるような、でもどこか儚い表情で満開に弾ける空を眺めていた。
ヒューーーーー……ドカン!!!!
ヒューーーーー……ドカン!!!!
「……私は九重が羨ましい。そんなに強い力を持っているのに、大きなコミュニティの中にいる。孤独な私と違って……」
「時谷さん……。いいえ……それは間違ってますよ。俺は弱いんです。どうしようもなく弱いから、みんなに助けてもらわないと戦えません。だから、みんなと努力して、協力して、一丸となって戦いました。時谷さんを倒せたのは、決して俺一人の力ではありません」
「そうなんだ」
ヒューーーーー……ドカン!!!!
ヒューーーーー……ドカン!!!!
この花火は長かった大会の終わりを告げる。
五条先輩と三橋さんは新種のレシスぺを飲みながら並んで見ている。
小雲先輩は例の先輩と。成瀬らの1年軍団も、この時間は一時休戦のようだ。
必死に頑張ったこの2か月間は花火のように消えてゆくけれど、より大きくなろうと努力したものほど思い出として残り続ける。
ヒューーーーー……ドカン!!!!
ヒューーーーー……ドカン!!!!
時谷さんは微笑んで、俺の手を握った。
「えっ……!?」
「九重、今日はありがとう。人生で初めての体験がたくさんできて、楽しかった」
まさか、目標としていた敵にお礼を言われるとは思ってはいなかった。
でも、その気持ちはよくわかる。
一緒に特訓したチームのみんな。
尻口くんや幸坂くん、成瀬や沖田、苺など、俺の周りで努力してくれたライバル。
そして、大きな壁として立ちはだかってくれたたくさんの強敵。
みんながいたから、俺はこんなに充実して成長できたんだ。
最初はたかがスポーツの大会、くらいにしか思っていなかったけど、今となればその考えを全力で撤回しよう。
「俺もこの大会に参加できて本当に良かったです! ありがとうございました!!」
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第3章もお付き合いいただきありがとうございました。
閲覧数が限られている中、ここまでついてきてくださった親愛なる読者さまには心から感謝申し上げます。
本来は、ここから私がずっと作りたかった物語の中核へと進んでいき、次元計や心乃と理事長の本当の目的など、散りばめておいた伏線をどんどん回収していく予定でした。しかし、実際に投稿してみて力不足に気づき、これまでの物語の進め方や文章が下手くそだったな、と今更ながら反省しています。したがって、このまま進むのは私も、そしておそらく皆様も納得しないと思いますので、もう一度最初から見直し、テンポや話が分かり易くなるようにじっくり考えて一から組み立て直そうと考えました。
つまるところ打ち切りです。ここまで読んでくださった皆様にはご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ございません。いつか数段レベルアップして転生できるように努めますので、もうしばらくお時間をください。
重ね重ねになりますが、皆様のおかげで、色々考えながら投稿してきた毎日がとても楽しかったです。本当にありがとうございました。
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