上 下
62 / 67
第3章 王座争奪戦

62話 決勝の舞台

しおりを挟む
 大会最終日。
 既に会場は激しい席取り合戦が始まっている。
 入り口の賭け券の販売も大変混雑している。

 しばらくすると数万人入るという樫木講堂がほぼ満員となり、場内に実況が流れ始めた。

『おはようございます。本日は待ちに待った決勝戦が行われます。640人の生徒によって繰り広げられてきた熱戦の末に勝ちあがって来た、選ばれし4チームによる最終決戦。決勝戦の実況は私【遅口おそくち とどろき】とチューベローズの校長である元岡校長とお送りいたします。元岡校長、よろしくお願いします』

『今年もたくさんの熱戦があったからのう。ここまで上り詰めた4チームに敬意を表するとともに、素晴らしい戦いに期待しとる』

『それでは、決勝まで上りつめたチームの紹介です』

 場内の画面には昨日までの試合のハイライトが流れている。

『Aブロックからは、チーム4が出場。大将を務める時谷未来選手は、去年と一昨年でも優勝を経験しています。準決勝に繰り広げられた松蔭雪夜選手との熱戦は、非常に見ごたえがありました』

『続いて、Bブロックからは、チーム27が出場。1回戦では12 ptを獲得するという、先鋒、中堅、大将ともにバランスの取れたチームです。この決勝では唯一、複数人の能力者が所属しています』

『Cブロックからは、チーム48が出場。皆さんご存じのように、大将の千陽朝日選手は去年の準優勝チームの先鋒でした。過去を振り返っても、時谷選手以外の選手にバッジを破壊されたことはありません。昨日の弥生心乃選手との戦いは、壮絶なものでした』

『最後にDブロックからは、チーム61が出場。チームからの情報によりますと、大将を務めるフィアス選手はマナが少なく、練習も、試合でも超能力の使用をセーブしていたそうです。この決勝の舞台でその力が爆発するのか、底知れない実力に注目です』

『ここで、現時点におけるチームのオッズを見てみましょう。やはり、時谷選手が率いるチーム4が1番人気です。しかし、かなり割れているようだ』

 【決勝、総合オッズ(単勝)】
 チーム4(赤) :9.8
 チーム27(白):15.6
 チーム48(青):12.3
 チーム61(黄):16.4

『大将特化のチームが多いゆえ、先鋒、中堅の結果は鍵を握りそうじゃ』

『さあ、間もなく先鋒戦が始まります。最高のバトンを中堅へ繋ぐのはどのチームでしょうか!』

『先鋒を取れれば、一気に流れに乗れるからのう』

『こちらは、その先鋒戦のオッズです』

 【決勝・先鋒戦、個人オッズ(単勝)】
 村雨 茶佑(チーム4(赤)/1年/ランキング圏外)  :149.2
 中村 晴美(チーム4(赤)/5年/ランキング圏外)  :33.1
 二宮 菊音(チーム27(白)/2年/42位)            :5.5
 ジョナルド・シックス(チーム27(白)/5年/ランキング圏外) :102.6
 小泉 進太郎(チーム48(青)/4年/ランキング圏外):48.6
 川上 幸雄(チーム48(青)/2年/ランキング圏外) :111.2
 森下 一郎(チーム61(黄)/5年/ランキング圏外) :90.1
 大塚 雫 (チーム61(黄)/4年/ランキング圏外) :85.5

『一番人気はやはり唯一の能力者、白チームの二宮菊音!』

『二宮選手を倒せるかどうかが他のチームのポイントになりそうじゃ』

『それでは、決勝先鋒戦、スタートです!!!』

 ビーーーーーーー!!!!!

 ワァァァァァァァァァッ!!!!!!

『フィールドは泥の沼地だ! これは戦いにくいぞ!』

「足者がぐちゃぐちゃ……。それに障害物がないから、視界が開けてるわ。……えっ!?」

 菊音さんの目に、たくさんの敵が向かってくるのが映った。

『おおっと、これはまさかの展開か! 全てのチームの選手が、白チームの二宮に向かっているぞ!』

『やはり、どのチームも確実に二宮選手を倒しに来てますねぇ!』

 グチャグチャと、菊音さんの周りに敵が集結した。

『二宮選手は囲まれてしまった! 6人相手はいくら能力者であっても苦しいか!』

「二宮、特訓を思い出せ。お前は目隠ししながら、たくさんの障害物がある森の中で走り回っていたんだ」

(目で見るのではなく、感覚で辺りの空間を把握する……!)

「ふぅ……」

「隙ありだーーー!!」

 パリンッ!!!

『な、なんと二宮、後ろから来た相手に見事対応しました! 青チーム川上選手、脱落です!』

 菊音さんは落ち着いて集中し、【逆空間の次元】を読み、正確に相手の動きを見切った。

「「それなら、二人がかりだああ!!!」」

「ふっ……!! んっ……!!」

 パシッ!!パシッ!!!

 菊音さんは周りから束になって襲い掛かる敵に一人で立ち向かっている。

「二宮!! 後ろからも来てるぞ!!!」

『さあ、複数人が同時に二宮へ攻撃を続ける!』

 パリンッ! パリンッ!!!

『黄チーム森下選手、赤チーム村雨選手、脱落です!』

 菊音さんは、なんとか持ちこたえていたが、いくら相手の動きが分かっていても人数で押されてしまう。

(足場が……ぐちょぐちょで戦いにくい……っ!!! もう……だめ……!!)

 パリンッ!!!

『二宮選手、頑張りましたがここで脱落です! しかし、6人の敵のうち4人を倒すという、素晴らしい戦いを見せてくれました!』

「よっし、二宮倒したわ! ついでにあんたも!」

『生き残った赤チームの中村選手と黄チームの大塚選手の攻防が繰り広げられています!』

 パリンッ!!

『黄チーム大塚選手、脱落です!』

「はあ……はあ……。やった、先鋒戦とったーーー!!」

『おっと、中村選手は勘違いしているのか、あと1人残っているぞ!!』

 ジョニーが遅れて参上する。

「二宮サン、すみまセーン。沼にハマって遅れましタ」

「って、まだいたの!?」

「イエス!!」

 パリン!!!

『赤チーム中村選手、脱落です!! 先鋒を制したのは、白チームのジョナルド・シックス!!!』

「よっしゃああああああ!! ジョニー!!!!!!!!」

「ジョニー先輩!!!」

『先鋒戦の結果から、ポイントは以下のようになります』

【決勝】
(赤)チーム4 : 2 pt
(白)チーム27:3 pt
(青)チーム48:0 pt
(黄)チーム61:1 pt

 先鋒戦を終えて、ジョニー先輩と菊音さんが帰って来た。

「ジョニーナイスだ!! 二宮もよく戦った!!」

「次は中堅戦やね。五条くん、澪ちゃん頼んだばい!」

「「はい!」」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します

Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。 女性は従姉、男性は私の婚約者だった。 私は泣きながらその場を走り去った。 涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。 階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。 けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた! ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

追放された運送屋、僕の【機械使役】は百年先の技術レベルでした ~馬車?汽船? こちら「潜水艦」です ドラゴンとか敵じゃない装甲カチカチだし~

なっくる
ファンタジー
☆気に入っていただけましたら、ファンタジー小説大賞の投票よろしくお願いします!☆ 「申し訳ないが、ウチに必要な機械を使役できない君はクビだ」 ”上の世界”から不思議な”機械”が落ちてくる世界……機械を魔法的に使役するスキル持ちは重宝されているのだが……なぜかフェドのスキルは”電話”など、そのままでは使えないものにばかり反応するのだ。 あえなくギルドをクビになったフェドの前に、上の世界から潜水艦と飛行機が落ちてくる……使役用の魔法を使ったところ、現れたのはふたりの美少女だった! 彼女たちの助力も得て、この世界の技術レベルのはるか先を行く機械を使役できるようになったフェド。 持ち前の魔力と明るさで、潜水艦と飛行機を使った世界最強最速の運び屋……トランスポーターへと上り詰めてゆく。 これは、世界最先端のスキルを持つ主人公が、潜水艦と飛行機を操る美少女達と世界を変えていく物語。 ※他サイトでも連載予定です。

処理中です...