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第3章 王座争奪戦

59話 決勝への最後の切符

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『1時間の休憩の後、Dブロックの準決勝をお送りします』

 Cブロックの準決勝が終了し、会場は1時間の休憩タイム。俺は会場で、モニターに映されている次の試合の出場チームを眺めていた。

「えーっと、Dブロック準決勝に出るのは、チーム49、55、57、61か。どれどれ……」

 それぞれのチームの選手をパンフレットで確認したところ、俺の良く知っている名前がズラリと並んでいた。

「49には沖田、55には苺、57には成瀬、61にはフィアスだって!? しかも、みんな大将じゃないか!」

 パンフレットを見て驚いていると、後ろから必死に人を探している声が聞こえてきた。
 
「おい! 見つかったか?」

「いません! 電話にも出ません!」

「ったく、どこまで自由なんだあいつは! もう試合始まっちまうぞ!」

 なんだか嫌な予感がしたので、声をかけてみた。

「あの、どうされたんですか?」

「俺達、次の試合に出場するんだけどさ、チームの一人が行方不明なんだよ。まったく、困っちまうぜ」

 大事な準決勝の当日に行方不明になりそうな人物なんて、俺の知る限り一人しかいない。

「あの……それってもしかして……1年Aクラスのフィアスですか?」

「そうそう! もしかして君、あいつの居場所を知っているのか!?」

 あちゃー……やっぱり軍曹だったか。

「分かりませんが、お手伝いさせてください!」

「分かった。最悪あいつは大将だから、それまでに見つけてくれたら助かる!」

 分かりませんとは言ったが、フィアスがいる場所の心当たりならある。なんのことはない、彼女の部屋のベッドの中だ。

 というわけで、俺は会場を出て青月館へ行き、合い鍵でフィアスの部屋に入る。

「やっぱりいた」

 軍曹はぐーすかと寝ていた。

「ちょっとフィアス、起きて。もう試合始まっちゃうよ」

「ん……? ああ、糸か。おはよう」

「まったく、頼むよ。チームメイトの人達が目を血眼ちまなこにして探していたよ」

「ほんとだ、着信履歴がこんなに。そっか、今日は私の準決勝だったんだね」

「ほら、きっともう先鋒戦が始まってるよ、早くいこう」

「ごはんは?」

「ぬき!!!」

「えええええ」

 こうして俺はフィアスを会場へ連れて行き、なんとか大将戦に間に合わせることができた。


 ◇◇◇


『さあ、Dブロック準決勝も中堅戦が終了! 現時点で、4チームとも3 ptで並ぶという大接戦が繰り広げられている! さあ、決勝の最後の切符を掴み取るのはどのチームなのか!! 星野先生、大将戦の見どころはずばりどこでしょう!』

『大将戦に全てのチームから1年生が出場しているのが興味深いですねぇ! これらの1年生は1回戦で大活躍していますし、若い対決が見ものですねぇ!』

『さあ、オッズを見て見ましょう!』

 【Dブロック準決勝・大将戦、個人オッズ(単勝)】
 沖田 桜 (チーム49(赤)/1年/ランキング圏外):42.4
 武理 苫藍(チーム49(赤)/3年/ランキング圏外):112.4
 浜地 旨居(チーム55(白)/6年/ランキング圏外):105.8
 千陽 苺 (チーム55(白)/1年/ランキング圏外):43.1
 間黒 食対(チーム57(青)/5年/ランキング圏外):140.8
 成瀬 信長(チーム57(青)/1年/37位)        :12.8
 フィアス (チーム61(黄)/1年/6位)            :3.2
 味 伊井根(チーム61(黄)/3年/ランキング圏外):135.1

『星野先生の言うように、1年生4人が人気の上位を独占するという珍事が起こっています! 中でも注目は全ての次元に干渉できるという謎多き1年生、フィアス選手! 1回戦では目立った活躍は見せていませんが、2回戦ではどその力を見せてくれるか期待しましょう! それでは、大将戦、スタート!!!』

 ワァァァァァァァァァッ!!!!!!
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