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第3章 王座争奪戦

57話 鬼ごっこ

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『Bブロック準決勝は中堅戦を終え、現在のポイントはこのようになっています!! 大将戦のオッズと共にご覧ください!』

 【Bブロック準決勝】
 チーム19(赤):4 pt
 チーム22(白):3 pt
 チーム27(青):5 pt
 チーム31(黄):0 pt

 【Bブロック準決勝・大将戦、個人オッズ(単勝)】
 蒸川 虫彦(チーム19(赤)/4年/11位)        : 7.2
 机原 淳史(チーム19(赤)/1年/ランキング圏外)   :105.9
 椅子島 奏(チーム22(白)/6年/ランキング圏外)   :39.1
 棚岡 雄平(チーム22(白)/2年/ランキング圏外)   :60.9
 七道 小雲(チーム27(青)/6年/7位)       :3.4
 九重 糸 (チーム27(青)/1年/ランキング圏外)   :122.5
 小金井 拓斗(チーム31(黄)/3年/ランキング13位): 9.1
 床崎 守 (チーム31(黄)/6年/ランキング圏外)    : 21.8

『御覧の通り、赤チームから能力者ランキング11位の蒸川むすかわ虫彦むしひこ、青チームから能力者ランキング7位の七道小雲、黄チームから能力者ランキング13位の小金井こがねい拓斗たくとが登場します! Aブロックの大将戦に劣らない、ハイレベルな能力者対決に期待しましょう! それでは決勝への切符をかけた運命の大将戦、スタートです!!』

 ビーーーーーーー!!!!!

 ワァァァァァァァァァッ!!!!!!

『フィールドはジャングルだ!! さあ、真っ先に攻め込んでいったのは、黄チームの小金井拓斗!』

『黄チームは勝利するためには1位と2位の独占が必要ですからねぇ! どんどん攻めていく必要がありますねぇ!』

『松蔭に次ぐ【闇の次元】No. 2の実力を持つ小金井! 早速白チームの椅子島を倒したぞ!!』

『白チーム、椅子島奏、脱落です』

 フィールド内にアナウンスが流れる。

『さあ、黄チームの小金井選手は早くも二人目の相手を捉えたぞ!』

 パリンッ!!

『赤チーム、机原淳史、脱落です』

「ほう、うちのチームを倒してくれたというのかね。はっはっは、良い度胸だ! 見せてあげよう、私を怒らせたらどうなるのかを!!」

 パリンッ!!!

『黄チーム、床崎守、脱落です』

『すかさず赤チームの蒸川選手もやり返す!! そしてこの瞬間、黄チームの決勝進出はなくなりました!』

(もう3人目か、めっちゃ早いな……。小金井と蒸川が倒しまくってるんかな。糸くんはまだ生きてるみたいやし、私が動かんと)

 小雲先輩はジャングルの中央へと駆けて行った。

『さあ、残る選手は5人。そのうち3人がジャングルの真ん中にある広場に集まってきたぞ! しかも蒸川、小金井、七道の能力者の3人だ!』

「ったく、俺様のチームメイトはザコばっかでなんか腹立ってきたぜ。せめてここで鬱憤を晴らせてもらおうか!!」

 小金井は小雲先輩と蒸川に向けて杖を振った。

 ゴゴゴゴゴ……!!

(……なんや、なんかめっちゃ心が……心が暗くなってくるばい……!!)

『おおっと! 七道と蒸川が深刻な表情で下を向いているぞ! 一体何があったんだ!?』

『おそらく小金井選手が、相手の心に闇を覆わせているのでしょうねぇ!』

「何をする!! 悪い感情に心が支配されるではないか……っ!!」

「ハハハ、良いザマだ。せいぜい苦しめ!!」

(あかん……心がやられる前にまず小金井を倒さんと……!!)

 小雲先輩は闇に飲み込まれそうな心を抑え、なんとか攻撃を仕掛けた。

 パリン!!

「チッ、まだ心が闇に染まり切ってなかったか」

『黄チーム、小金井選手、脱落です!! 心が闇に覆われる中、七道選手がなんとかバッジを破壊したぞ!!』

 その頃、俺も白チームの片割れと戦闘を行っていた。

「くっ!! なんで! お前も無能力者のくせにそんないい杖持ってるんだよ!!」

「いいだろ! 心乃さんから貰った自慢の杖だ!」

「ちくしょおおお!! うらやましい!!」

 パリン!!

『白チーム、棚岡雄平、脱落です』

(糸くん……最後の一人も倒してくれたんやね……)

『残っているのは赤チームの蒸川と、青チームの七道と九重の3人だ!! ここで1位をとった人のチームが決勝へと進めます!!』

「はあ……はあ……。勝つためなら……勝つためなら何をやってもいいのだ……!! はっはっはっは!!!」

(なんや、蒸川の雰囲気が変わったばい……闇に心が支配されてしまったんか……?)

 タッタッタッ!

 蒸川は小雲先輩に襲い掛かった。

(大丈夫や、これなら未来見て倒せる!)

 シュンッ!!! ビュン!!!!!

「……ぅあっ!!」

『おおっと!! 【エネルギーの次元】に干渉した蒸川の振った杖から鋭い風がなびき、七道の足首をえぐるように直撃したぞ!!! これはルール的にどうなんだ!?』

『能力を用いた攻撃は人道に反しますが、ワンディングのルール的には違反ではありませんねぇ!』

『七道選手は足を抑えてうずくまっている!! 大丈夫かーー!?!?』

「うう……ああ……!!!」

「はっはっは!! もがく姿がゴミのようだ!!」

『蒸川選手は動けなくなった七道選手のバッジに向かって杖を突こうとしている!!』

「はっはっは!!」

 すうーーーっ

「糸くん!!!!! 逃げて!!!!!!」

 パリン!!!!

 小雲先輩は、痛みを我慢して力の限り声を出し、自分の杖で自分のバッジを破壊した。

『青チーム、七道小雲、脱落です』

(遠くから小雲先輩の声が聞こえた。そして、脱落のアナウンス。これが意味することは……)

『な……なんと! 七道選手、大声を出した後、自らバッジを破壊しました!! これは一体どういうことだ!!』

『ワンディングでは、30分間誰のバッジも破壊できなければリタイアとなってしまいますねぇ。すなわち、蒸川選手よりも九重選手の方が後に相手のバッジを破壊していますので、このまま九重選手が逃げきれれば、蒸川選手の負けになりますねぇ』

『なるほど! 蒸川選手にバッジ破壊の特権を与えないために七道選手は蒸川選手にバッジを破壊させなかったんですね! さあ、蒸川選手が最後に相手のバッジを破壊してから既に21分! つまり、九重選手はあと9分逃げ切られれば勝ちとなります!!』

「九重!! 逃げろ!!!!!」

「糸くん!!!」

「ココノエ!! ランナウェイ!!」

 控室でチームの皆が叫んでいる。

「はっはっは。無駄なことを!」

 蒸川はジャングルの中、杖を構えてエネルギーを読み、九重を探す。

 はっ……はっ……!!

 俺は必死に逃げる。
 とにかく静かに、良い隠れ場所を探す。

『あと7分!! しかし、徐々に二人の距離は近づいてきたぞ!!』

 俺は木の根が絡まった草陰を見つけ、じっとする。

『あと5分!! 蒸川は【エネルギーの次元】を認識して、九重選手を捜索しているようだ!』

 カサ……ッ!!

「この辺りにいることは分かっている。おとなしく出てきたまえ、いい子だから!」

 背筋が凍る。
 鼓動が速くなり、呼吸も粗くなる。

『あと3分です!!』

「ほう、そこか!!」

 ビュンッ!!!
 バキッ!!!!

「うわっ!!!!」

『蒸川選手が九重選手を見つけ、【エネルギーの次元】による風で木の根を破壊したぞ! 九重は風圧で飛ばされて転んでいるが、バッジは無事だ!!』

「さあ、鬼ごっこは終わりだ!!」

『あと2分です!! 蒸川選手はひざまずいている九重選手に杖を向けてトドメを刺そうとしているぞ!!』

「九重!!」

「糸くん……!!」

 チームのみんなは、必死に祈っている。

 蒸川は俺に向けて杖を振り、また俺を風圧で弾き飛ばした。

 ブオンッ!!!

「うわっ!!!!!」

 俺はなんとかバッジを護りながら、ジャングルの地に転がる。
 バッジは無事だったが、杖が遠くへ飛ばされてしまった。

『あと1分を切りました!!』

 蒸川はゆっくりと近づいてくる。

「時間だ。トドメを刺そう!!」

『のこり30秒!!』

 地面に尻もちをついている俺にまたがる蒸川。
 杖を振りかぶり、至近距離で物理的に突いてきた。
 そしてその瞬間、俺は秘密兵器を繰り出した。

 プシュッ!

「目があああああああ!! 目がああああああああ!!!」

『な、なんと!!九重選手、拾ったキノコで胞子を蒸川選手の顔に吹きかけたぞ!!』

『赤チーム、蒸川選手、脱落です」

『ここで終了だ!!!! 蒸川選手、タイムリミットのため脱落です!! 勝者は青チームの九重糸!! したがって、チーム27、決勝進出です!!!』

 ビーーーーーーー!!!!!

 ワァァァァァァァァァッ!!!!!!

「「「やったあああああああああああ!!!」」」

 控室には喜びの叫びがこだましている。

「糸くん……ありがとう……!!」

 小雲先輩も足を抑えながら、しっかりと見てくれていた。

『いやあ、まさかキノコを拾って隠し持ってるとは思いませんでしたねぇ! フィールドを生かした、素晴らしい戦いでしたねぇ』

『さあ、明日はCブロックとDブロックの準決勝をお届けします。お楽しみに!!』
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