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第3章 王座争奪戦

50話 開幕

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 パンッ! パンパンッ!

 晴天の空に開幕を告げる七色の煙が舞う。
 そう、今日は待ちに待った王座争奪戦開幕の日だ。

 派手な飾り付けはにぎやかで、キャンパスがお祭り色に染まる。出店でみせもたくさんあり、高次元世界の住人はもちろん、現実世界からの来客も多い。

「うおおお! たこやきでやんす! 焼きそばでやんす!」

「呪いグッズの出店も出てるよぉ!」

 赤砂寮からドクロの3人で一緒に来ていた。

 大会は全部で5日間ある。

 【1日目】
 9:30-10:00:開会式
 10:00-13:00:A~Dブロック1回戦、第1試合
 14:00-17:00:A~Dブロック1回戦、第2試合

 【2日目】
 10:00-13:00:A~Dブロック1回戦、第3試合
 14:00-17:00:A~Dブロック1回戦、第4試合

 【3日目】
 10:00-13:00:Aブロック準決勝
 14:00-17:00:Bブロック準決勝

 【4日目】
 10:00-13:00:Cブロック準決勝
 14:00-17:00:Dブロック準決勝

 【5日目】
 10:00-13:00:決勝
 14:00-14:30:閉会式
 17:00-22:00:祭り

「えーっと、開会式は9時半から。そして、幸坂くんはAブロック第1試合で、尻口くんはCブロック第1試合、俺はBブロックの第3試合か。幸坂くんたちは開会式終わったらすぐに出番だね」

「でもボクは大将だから、実際に戦うのはもうちょっと後かなぁ」

「ふっふっふ、おいらは先鋒だからすぐでやんす! 鍛えぬいた今のおいらたちは超能力者にも負けないでやんすよ! 早速、1年Cクラスのドクロバッジの意地を見せてくるでやんす!」

「二人とも頑張れ!」

『まもなく、王座争奪戦の開会式を行います。選手はメイン会場に集まってください』

「俺達も早く行かなきゃ!」

 俺達は開会式の会場へ向かった。


 ◇◇◇


 開会式。
 キャンパスに付属している大きな競技場に、全64チームが並んでいる。観客席は満員だ。

 生徒の親や高次元世界のお偉いさんが良い席に座っている。そして、この大会には競馬のように賭けの要素もあり、大勝ちするとなにやら貴重なモノが手に入れられるそうで、それ目的の人も山ほどいる。聞いた話によると、この大会の様子は高次元世界だけでなく、現実世界にもでかでかとテレビ中継されるらしい。

 校長の話にはじまり、開会式は終わりに差し掛かる。

「続いて、選手宣誓。昨年度王座争奪戦優勝チームより、6年Aクラス、時谷未来。同じく準優勝チームより、6年Aクラス、千陽朝日」

「「はい」」

 朝日さんと、紫色の髪の少女が舞台に上がる。
 二人の選手宣誓がこの大会の始まりを告げた。



 開会式が終わり、場内は騒然としている。
 俺達はチームで集まり、一ノ瀬先輩が今後の方針について指示を出した。

「俺と七道はBブロックの偵察に行くが、お前たちは自由行動してていいぞ。今日は俺達の出番はないしな」

「イエス!!」

 ジョニー先輩はどこかへ走って行った。

「俺も偵察にご一緒していいですか? 第1試合に出場する19クラスはこの目で見ておきたいんです」

「もちろんだ、五条。それじゃ、解散!」

 自由行動になったので、俺はCブロック第1試合の尻口くんの試合を見に行くことにした。


 ◇◇◇


 開会式は競技場で行われたが、実際の試合は競技場では行われず、半径1 kmのドーム内で行われる。その中は仮想空間が構築され、試合ごとにフィールドが変わる。ドーム内はあまりに広すぎるため、観客は映画館のように中継映像が見られる会場で観戦するのだ。

 とはいえ、観戦する会場も数千人が入るほどの、超特大の会場。ちなみに準決勝や決勝の会場は樫木講堂であり、数万人が入る。

 尻口くんの試合が中継されるC会場へ向かう。
 C会場の入り口では賭けのやり取りが行われていた。

 表示されているオッズは、総合結果のものと個人結果のものがある。

 【Cブロック1回戦第1試合、総合オッズ(単勝)】
 チーム33(赤):10.7
 チーム34(白):23.4
 チーム35(青):17.2
 チーム36(黄):33.4

 【Cブロック1回戦第1試合・先鋒戦、個人オッズ(単勝)】
 尻口 治虫(チーム33(赤)/1年/ランキング圏外):149.2
 筋肉 達磨(チーム33(赤)/5年/ランキング圏外):33.1
 陳々 沈々(チーム34(白)/2年/ランキング圏外):8.4
 偶々 玉々(チーム34(白)/4年/ランキング圏外):11.3
 折口 翔子(チーム35(青)/6年/ランキング圏外):48.4
 武谷 亮佑(チーム35(青)/3年/ランキング圏外):51.2
 竹中 優香(チーム36(黄)/3年/ランキング圏外):20.1
 川原 啓子(チーム36(黄)/4年/ランキング圏外):15.5

 例えば先鋒戦で尻口くんに賭け、尻口くんが最後まで生き残れば、賭けた149.2倍の景品が得られる。この数字が低いほどみんな買っていて、人気が高いことを意味する。

 賭け方は色々あり、一番オーソドックスなのは、どのチームが勝つかを当てる賭け方。そして、先鋒戦、中堅戦、大将戦で誰が勝つかを当てる個人の賭け方。他にも1、2、3位を全て当てる賭け方や、先鋒、中堅、大将を全て当てる賭け方もある。

 お金で賭け券を購入し、勝てばポイントを得られる。
 そのポイントはお金や貴重な道具に変換できるらしい。
 しかし、八百長を防ぐため、生徒の賭けは禁止だ。

 俺は席について、売店で売っていたポップコーンを食べながら、試合の開始を待った。

『Cブロック1回戦第1試合先鋒戦、開始です』

 ビーーーーーー!!!

 モニターにフィールドの様子が映し出される。
 尻口くんたちのステージは砂漠のようだ。

「うおお、暑いでやんす!」

 赤いハチマキと赤いマントのついた防具をつけた尻口くんがドアップで映る。胸には壊されてはいけない、赤色のバッジがついている。

 カメラが切り替わった。
 白チームと青チームの選手が接触したようだ。

 バンダナやマント、防具、バッジの色からチームが分かる。白色と青色ということは、この選手たちは赤色である尻口くんのチームではない。

 激しい杖の振り合いが繰り広げられる。選手の目は本気だ。
 練習とは違い、一度バッジを壊されてしまえばリタイア。

 俺はようやく公式戦の緊張感を感じ始めた。

 白色の選手が一瞬うろたえた隙に、青色の選手が白色のバッジをめがけて突く。
 
 パリン!!

『白チーム、陳々選手、脱落です』

 1回戦は実況なしだが、脱落した時はフィールド内および会場内にアナウンスされる。

 またすぐにカメラが切り替わった。
 赤色の尻口くんが、黄色の敵と戦っている。

「がんばれ! 尻口くん!!」

 尻口くんは必死に杖を振る。
 しかし黄色の敵は、それを容易くかわす。

 そして……

 パリン!!

『赤チーム、尻口選手、脱落です』

「ああっ! 尻口くんが!」

「くそうでやんす!!」

 尻口くんのパートナーも頑張っていたけど、やられてしまった。
 この後、中堅、大将と進み……

『チーム36、Cブロック2回戦進出です』

 残念ながら、尻口くんのチーム33は1回戦で脱落してしまった。

 試合後、トボトボと尻口くんのチームが出てきた。
 尻口くんは泣いており、その先輩はそれを慰めるように尻口の肩を叩いていた。

「尻口、お疲れさん! 結果は残念だったが、最後の年にお前たちとトレーニングできて楽しかったぜ!」

五里山ごりやま先輩は今年で最後だったでやんす……うっうっ」

「泣くな尻口、お前は来年も再来年もある。俺の代わりに、きっといつか王座を掴み取ってくれよな」

「五里山先輩……!! おいら……強ぐなるでやんず……! もっともっど、ずよぐなるでやんずう……!!」

「ああ。楽しみにしてるぞ!」

 尻口くんを励ましに行こうと思ったけど、今は俺が入り込むべきではないだろう。ここはクールに去ろう。

「糸くぅん……」

「わっ!! 幸坂くん!ごめん、試合見れてなかったけど、どうだった!?」

「負けたよぉ! うわぁぁぁん!!」

 幸坂くんは泣き出した。
 聞けば、先鋒・中堅と1位で進み、大将戦で2位以上をとれば2回戦進出という状況だったらしい。しかし大将戦、結果は瞬殺。一人の少女によって、一気に6人が倒され、大将戦はたったの18分で決着したという。

「あんなの強すぎるよぉ!!!」

「えっ、相手は誰だったの!?」

 トーナメント表を確認する。
 Aブロック1回戦の第一試合は……

「時谷未来だよぉ」

「時谷……! ど、どんな感じだったの?」

「スピードとかはそんなに速くないのに、ボクの動きが全部見透かされているように隙を突かれたの……」

 これは小雲先輩と同じように、おそらく未来を見て戦っているんだろう。でも、小雲先輩が言うには、時谷未来にはまだ先があるって……。なんて恐ろしいんだ。
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