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第2章 劣等生

34話 トパーズの瞳の男

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「えっ、なんですか……?」

「……いや、なんでもない。なんとなく、俺の好きだった人にどこか似ていたんだ」

「ホモなんですか!?」

「ちげーよ!! ……って、少年はこんな本に何の用だ。歴史好きにしてはちと内容がマニアックすぎねえか?」

「サークル活動の調べ物です。高次元世界の秘密を暴きたいんです」

「サークルねえ。立派だが、世の中には知らなくていいこと、知らない方がいいこともあるんだぜ」

「あなたは次元計について何か知ってるんですか?」

「さあな。ま、少年の探偵ごっこにこの本はもったいないから、俺が貰ってくぞ」

「貰う!? ここは資料館ですよ! 資料の持ち出しは泥棒です!!」

「はは、確かにな。大丈夫、ちょっと読んで、少年が帰ったらちゃんとここに戻すさ」

「意地悪いですね!」

「少年は帰って勉強でもしてな。もうじき中間試験だろ。じゃあな」

 黄色い髪の男は資料を持って、笑いながらどこかへ行ってしまった。

「なんだあの人。まあいいや、また愛さんや菊音さんと来よう。あれ? なんであの人中間の時期知ってたんだろう……? それに、次元計という名前についても聞き返してこなかったし……」

 まさに謎の人物。
 ただ、なんとなくあの人からは雪夜や心乃さん、朝日さんのような凄みを感じた。

 本こそ読むことが出来なかったが、次元計の手がかりを得られたことは大きな成果だ。一応、愛さんと菊音さんに連絡しておこう。



 その後、さらにいくつかの店を見て回り、外で夜ご飯を食べ、フィアスを青月館に送り届けた。

「いやー楽しかった、楽しかった。一日でも結構遊べるもんだなぁ。 ……ん? 通知が3件も来ている」

『糸くん、次元計の手がかりを見つけたって本当!? 明日行こう明日! ね、菊音いいでしょ!?』

『はいはい。じゃあ朝10時に黄泉荘前でいい?』

『オッケー!!!』

「明日!?!?」

 なんと明日も神天町に行くことになった。


 ◇◇◇


 翌日、日曜日。

「あそこの角を右です」

 俺は昨日フィアスと行った資料館へ、二人を案内していた。

「ここです」

「見かけは普通だね。早速入ってみよっか!」

 二日連続の資料館。
 中に入ると、当然昨日と同じ展示物が並べられている。

 そして、フロアの奥にひっそりある、地下へ続く階段もある……はずだった。

「あれ……?」

「どうしたの? 糸くん」

「階段が……無くなってます……」

「え?」

「昨日はここに地下の書物庫に続く階段があったんです。……ですが、今日は無くなってます」

 愛さんは周辺を観察する。

「開きそうな床もないし、フロア間違ってない?」

「いえ、昨日の今日ですし、間違いありません!」

「菊音、逆空間に何か見える?」

「……ある気がする。でも、とても遠い……。前の屋敷よりももっともっと逆空間の奥深くに隠れてるみたい。【逆空間の次元】の超能力者でもない限り、ここに入るのは無理だと思うわ」

「昨日はすんなり入れたのに……」

 もちろん、俺は【逆空間の次元】の超能力者ではない。
 一瞬、夢を疑ったが、今回は夢から覚めた記憶がない。

「ということは、その【逆空間の次元】に干渉できる誰かが糸くんが入る前に逆空間をこじ開け、糸くんが出た後に閉めた、ってことになるのかな」

「そんな人、心当たりが……」

 ある。2人も。

 1人目はフィアス。
 フィアスは全ての次元に干渉できるから、開けてくれたのかもしれない。

 でも、フィアスがそんな大がかりに次元に干渉しているとすると、大量のマナが消費され体調が悪くなるはずだ。昨日のフィアスにそんな様子はなかった。

 ということは、もしかして……

 地下に行く術がなくどうもできなかった俺達は、駅前のハンバーガー屋でポテトをしゃぶりつくした。
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