愛すべき『蟲』と迷宮での日常

熟練紳士

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第二十八章

第百二十七話:(幻想蝶外伝)実家に帰らせていただきます(2)

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時間が色々空いてしまい申し訳ありません><

◆一つ目:幻想蝶
◆二つ目:瀬里奈
********************************************



 瀬里奈様が公的な場で利用する人型模型をお借りしているので、あちこちから熱い視線が送られてくるのがよく分かる。ガイウス皇帝陛下プレゼンツという事もあり、作られた美という面では最高峰でしょうか。

 だけど!! 私の姿の方が美しい。美しいです…大事なことだから二回言いました。だけど、今は帽子にすっぽり隠れてその姿を見せることが出来ない。最近では、蟲が人を操る事が当たり前の事となりつつあるので、私が着いているのがバレたら色々と事態が面倒な事になる。

 それはそうとして…今の私は何も知らない人から見れば、誰もがうらやむ絶世の美少女。知る者がみれば、公的の場に出ることが極めて少ないセリナ・アーネスト・ヴォルドーと言うことになるわね。本来なら、沢山の人達が声を掛けてきそうなのですが…瀬里奈様が放つ威圧感から誰もが萎縮している。

「やはり、人との友好を広めるには容姿も大事でしょうかね」

 うーーん、にしても落ち着かないわ。

 一応、肉体操作系の訓練はつんでおりますが…瀬里奈様が公的の場でお使いになるこの人型模型はワンオフなので、他の物とは性能が段違い。その為、操作慣れするまでは扱いに困りそうです。実際、何度か躓いて転びそうになったところを瀬里奈さんが助けてくれている。

 もうしばらく使えばなれるでしょうが、性能が良すぎるのも考え物です。

ギッギ『ついに、やってきたわレイアちゃんのホームグランド!! さて、冒険者として申請してこようかしらね』

「瀬理奈様!! 冒険者になるのではなく、依頼する側ですよ!!」

 小声で瀬里奈様の行動を妨害した。

 しかし、瀬里奈様の圧倒的パワーを前にして止められるはずもなく、ネームレス『筋肉教団』本部へと向かうことになってしまった。ある意味、予定通りの行動スケジュールとなった。

 良い冒険者の方が滞在していたら幸運なのですが、こればかりは期待するほかありません。後は時間との勝負ですね…お父様が置き手紙を読んできっと追いかけてきてくれるでしょうから、それまでに『モロド樹海』59層まで急がねば行けません。道程は遠いわね。

 しかし、『モロド樹海』59層ともなれば瀬理奈様とはいえ、手こずる可能性があります。それに加え、今回は足手まといになるこの私を連れての行動ですのでその可能性は極めて高い。色々と秘密兵器を持ってこられているようですが、不安が残ります。

 特に!! 蛆蛞蝓ちゃんが管理している倉庫から持ち出し厳禁とかかれた謎の液体が多数あるのがとても不安です。

 『筋肉教団』の看板を付けたネームレス本部に入ると一斉に注目を集めてしまった。当然、この私に注目したわけではなく後ろにいる瀬里奈様を警戒してのことでしょう。町中を高ランクモンスターである瀬理奈様が歩かれていれば誰だって警戒は致しますからね。

 ですが、ここに来るまでに大きな混乱も無かったのは、やはりヴォルドー家の家紋が刺繍されているマントを着けていることでしょう。このマントが意味する事は、「これを付けた者が起こした全ての罪をヴォルドー家が請け負う」と言う物だ。要するに、当主である者がその責を負うとの事で大変重要な物である。

 お父様から聞いた話では、ヴォルドー家の家紋がはいったマントを偽造して悪事を働こうとした者達が『ウルオール』にいたとかで、『ウルオール』の国軍によって綺麗に掃除された事もある。

「……お嬢ちゃん。その~、なんだ…お嬢ちゃんは、ヴォルドー家の者で合っているか?」

 この場合なんと名乗るべきなのでしょうか。瀬理奈様に助言を頂こうとおもったら、既に店内のバーに移動して、お酒を注文していた。冒険者と言えば、お酒で間違いはありませんが、お待ちになってください!! 

 楽しそうな瀬里奈様を無理に此方に呼ぶのも忍びないので…仕方ありません。

「はい、セリナ・アーネスト・ヴォルドーと言います。以後よしなに」

 スカートの裾をつまんで軽くお辞儀をした。そして、にっこりと笑顔を振りまく。これが、瀬里奈様が教えてくれた対人の処世術だ。このやり方については、人もモンスターも同じですね。

 ガタガタガタ

 店内の雰囲気が一転したのが分かった。

「あの『蟲』の使い手の母親だと!? 」

「帝都で噂は聞いていたが、アレは本当だったのか」

 色々な言葉が飛び交っているが概ね驚愕の事実がといった所ですかね。無理もありません…お父様のご年齢から考えても瀬里奈様の人型模型は若すぎます。母親と言うより、妹と言った方が通じると言えるでしょう。

 しかし、それとは別に意味で驚愕している受付嬢(蟲)の数名が口を大きく開けている。瀬里奈様がこの場に来る事は流石に予想外だったのでしょう。大丈夫です!! この私ですらこの展開になるとは予想外でした。

 いそいそと仲間が受付をしている場所へと足を運んだ。言われた第一声が…。

「何をなさっているのですか…」

 当然よね。だけど、もう引き返せないの!! いい女は振り返らないものだと瀬里奈様も言っていたわ。

「家で色々あって、家出中です!! というわけで、『モロド樹海』に行くので護衛の依頼をしたいので手配をお願いできますか」

「どなたの発案でしょうか?」

 瀬里奈様をそっと指さした。この私の独断でここまでの行動を起こせば間違いなく仲間に捕縛されるでしょう。お父様にご心配を掛けるなど言語道断。だけど、それを許容させる事が可能な数少ない人物である瀬里奈様のご意向ともなれば無碍にはできない。

 きっと、またか…と思っているでしょう。そう、またなのです!!

「観光ですか?それでしたら、あのお方がいらっしゃるので下層でも問題無いと思われますが」

「いいえ、実家のある59層まで」

………
……

 
 此方に聞き耳を立てていた者達の顔が面白いさまになっている。お父様…じゃなかったわ、瀬里奈様の情報を何処かに売ろうと必死なのでしょうか。瀬里奈様の情報はお名前以外は殆ど世に知られていませんから、売る場所によっては高値が付くでしょう。

「ご希望に応えたいのは山々なのですが、流石にそこまで潜れる方はここにはおりません」

 むむ。お父様クラスの方が沢山いれば行けるでしょう。お金なら沢山あるわよ!! 瀬里奈様のポケットマネーが!!

「エーテリア様とジュラルド様は? 確か、ネームレスが拠点だったと思いましたが…」

「現在、セリナウェポンの実地テスト及び神器テミスを用いた最大火力テストをするとのことで人気の無いどこぞの山奥までお出かけになっております。しばらくは、戻られないそうです」

 一番期待出来た方々がいらっしゃらないなんて…仕方ないわ。

 このような事態になるならば、グリンドール様にお願いしてくれば……いいえ、それはダメね。グリンドール様は防衛の要です。大事なお子様達を守るためにもこの程度の事で出張させてしまっては申し訳が立たない。

 うーーん、どうしましょうかね。

ギィ『仕方ないわ。今日は、依頼を出して宿に泊まりましょう。レイアちゃんが懇意にしていた宿があるみたいだから是非とも泊まるわよ』

 なんとなく瀬里奈様の思惑が分かってきた気がしたわ。

 私の家出に便乗して、お父様の活動拠点の見学や迷宮で遊ぶ気なのではないだろうか…いいえ、そんな事はありませんよね。瀬里奈様は、親身になって相談に乗ってくれただけでは無く私一人じゃ危ないからと言って率先して着いてきてくれたんです。それを疑うなんて、なんと失礼な事を思ってしまったのでしょうか。

「そうですね。では、とりあえず依頼書だけ書いておきます。引き続き人の手配お願い致します。報酬額は、どうしましょうか」

 瀬里奈様に尋ねると、ペンを取りサラリと300億セルと書き込んだ。瀬里奈様の資産的にお小遣い程度になるのでしょうか。そんなべらぼうな金額を即金で出せる人など滅多に居ないでしょうに。

ギッギ『換金用の貴金属を持ってきているわ。依頼料は前払いと聞いているから、渡して置くわね』

 ですが、そんな大金をこの場で支払うとですね…後で襲撃されちゃいますよ。金に目のくらんだ亡者達は、お父様にすら立ち向かう無謀者なんです。ですが、それも醍醐味として楽しむおつもりなのですね瀬里奈様~。

………
……


ギッギー『こんなの絶対おかしいわ!! なんで、襲撃してこないの!? あれだけの大金を人目に付くように渡したのよ。金に汚い冒険者が襲ってくるべきパターンでしょう!!』

「それは、ヴォルドー家の家紋を付けている私達を襲おうなど、頭の残念な人が居ないと言うことではありませんか。お父様が襲われた時期と今では地位も権力も段違いですから」

 今の私は仮の姿とは言え、セリナ・アーネスト・ヴォルドーとなっているのでその身に何かあれば間違いなく国が動くレベルの事態になる。国家の威信にかけて、犯人を地の果てまででも追いかけることになるでしょう。今の瀬里奈様は、それほどまでの地位にいらっしゃるのです。

 蟲達によって凄まじい生産量を誇る農作物を多方面に売りさばき、潰した農家の数は数知れず…今では、ヴォルドー家からの輸入が止まれば食料輸入に頼り切っている小国などは飢饉に陥るでしょう。

 当然、それで得たお金をプールしているわけではありません。経済が回るように、資源を買い集めたり、赤字覚悟のウ=ス異本のイベントを自費で開催したり、『筋肉教団』のスポンサーをしたりと頑張っているのだ。

 よって、大国のトップと同レベルの重要人物となっているのだ。

ギェギィ『この日のために、沢山持ってきたのに…くずん。まぁいいわ、じゃあ一緒に寝ましょうね幻想蝶ちゃん』

 まったく、瀬里奈様はいつまでも子離れできないんですから、いけませんね。ちゃんと、お父様の昔話を聞かせてくださいね。そうで無いと、拗ねちゃいますよ。

 瀬里奈様が先にベッドに入り込み横をポンポンと叩いている。どうやら、そこで寝なさいとの事でしょうか…しかし、人が寝る事を想定して作ってあるベッドなので当然こうなる。

「仕方ありませんね。…瀬里奈様、毛布を取り過ぎです!!」

 それから、瀬里奈様から昔話を聞きながら一緒に寝た。

………
……


 ムクリ

隣で、瀬里奈様が立ち上がったのが分かった。

「どう致しましたか瀬里奈様」

ギッギ『ちょっと、はなを摘みに』

「まったく、大人なんですから寝る前におトイレは必須ですよ」

 瀬里奈様が手を振って部屋の外にまで出て行った。

 全く、お手洗いならお部屋にもあるというのに…この私に気を遣ってくれたのでしょう。私では感知できておりませんが、恐らく不届き者が近くにいる。それを瀬里奈様が排除に向かわれた。

 お手伝いしたいのですが、邪魔になってしまいそうです。こういう場合は、素直に大人しく待つのが良いでしょう。この私が万が一捕まって、瀬里奈様の足手まといになるような事になればどうしようもありません。

 命がけの冒険をするのが冒険者なのですが、どうしてこのような暴挙にでれるか未だに理解できません。世間に悪い評判もないヴォルドー家の当主である瀬里奈様を襲いに来るとか何を考えているのでしょうね。

 …いいえ、むしろ世の中が混乱する事を望まれるのでしたら、瀬里奈様を狙う事は効果抜群でしょう。そういう人達がいる事が悲しくてなりません。




 キターー!!

 受付嬢(蟲)にお願いして見事冒険者デビューを果たしたからにはこういうイベントは必須よね。襲ってくる…いいえ、襲ってきてくれる刺客を撃退する!! これぞ待っていたイベントだわ。

 ネームレス『筋肉教団』本部にいた冒険者達の実力は、明らかにレイアちゃん達より劣っていた。そして、この私よりも。それなのに、襲ってくると言うことは勝てる算段があちら側にはあるはずだ。よって、この難所を乗り切ることで更に高みに登ることが出来る!!

 孫達の未来を守るため、もっと力が必要なのよ!!

 蛆蛞蝓ちゃんの研究施設にあった『混ぜるな危険!!』とかかれたこの二つの液体…あれよね…こう『絶対に押すな』と書かれていると押したくなるタイプなのよね。他にも注意事項が書かれているわ。

 『瀬里奈様へ、混ぜる際は地下にある火山口に廃棄できる場所でお願いします』

 ば、ばれていただと…ゴクリ。

 決して蛆蛞蝓ちゃんに行動が読まれたからじゃ無いわ。可愛い子供達もいるから、町中でこれを混ぜるのは辞めておきましょう。広範囲で大惨事が起きる気がする。人に迷惑を掛けるのは良くないわ!!

 他にも、文字がかすれてしまってうまく読めないけど、VZなんとかと書かれた緑色をしたスーパーボールみたいな物もしまっておきましょう。

ギーー『仕方ないわね。部屋に戻るわけにも行かないから…他の手持ちと自力でなんとかしましょう』

 部屋の階段から足音を立てずに最上階にあるスイートルームに着た冒険者が各々の得物を構えた。あちら側は、騒ぎを立てられる前に事を片付けたいのでしょう。

 この宿は、高ランク冒険者が警備として常駐しているので何かあればすぐに来るはず。まぁ、この異常を察知できていないので警備をしている高ランク冒険者より格上と言うことでしょう。

 しかし、随分と手慣れているわ。

 音を立てない動きといい、この私を視認した時の判断力…悪くないわ。『風』の魔法を使って、音をかき消すとかまさに定石通りのやり口だわ。

「言葉が理解出来ないとは思っていない。大人しくしていれば、貴様の命はとらん。セリナ・アーネスト・ヴォルドーを此方に引き渡せ」

 このような交渉を持ち出してくると言うことは、私が『蟲』の魔法の洗脳下にいないと理解しているのだろう。『蟲』の魔法によって洗脳下におかれた蟲達は全員アルビノになるという事は周知の事実。

 アルビノで無いこの私ならば、交渉の余地があると考えたのね。

ギィギ『幻想蝶ちゃんが、ウ=ス異本みたいな事されちゃうの!? 私の可愛い幻想蝶ちゃんに手を出そうなんて』

 有罪!!

 幸い、音の方は向こうが消してくれているから本気を出そうかしら。実は、この瀬里奈…レイアちゃんにも黙っていたけど脱げば脱ぐほど強くなるのよ!!

 アーマーキメラアントクィーンと希少種モンスターとしての名を持っているけど、そんな私でも自身の身体にこんな変化が起こるとは予想外だったわ。最近めきめきと力が付いた事が原因か分からないけど、脱皮したのよ!! 身体が痒いなと思ってお風呂場でゴシゴシこすっていたら、ずるりと…あの時は、思わず叫んじゃったわ。

 捉えようによっては、アーマーを脱いだのだから今後はキメラアントクィーンとでも名乗りましょうかね。そして、近い将来全ての蟻の頂点に立つアイドルになるのよ。

  ちなみに、脱皮した後の抜け殻で鎧を作って着込んでいるので見た目は全くかわっていない。だが、重い上に動きが制限されるから拘束具的な役割になって力加減がしやすいから重宝している。力加減が出来ないと、原稿用紙が簡単に破れて困るのよ。

 ヌギヌギ

 後でまた着るので少し後ろに下がって丁寧に脱いでいると何を勘違いしたのか、この私が幻想蝶ちゃんを売ったと思い冒険者達が武器をしまい此方に歩み寄ってきている。

「その蟻は始末しないのかしら」

「無駄な戦闘は避けたい。それに、契約ではセリナ・アーネスト・ヴォルドーだけが目的のはずだ」

「蟲系のモンスターである以上、殺しておかなければ情報が漏れる可能性が高いわ。殺しなさい。その方が貴方達も安全でしょう。金が必要なら追加で出すわ」

 うーーーん、どっかで見たことがあるような女性が何やら物騒な話をしている。どこでみたんだったかしら、思い出せない。

 まぁ、細かいことはいいわ。生きて捕まえたら、連れてきたブレインウォーカーで口を割らせましょう。

 ではでは、最初から全力全開でやりましょう。奥の手は最後まで隠しておけと言われる事もあるけど、この私に言わせて貰えれば逆だわ。相手だって奥の手を持っている可能性もあるし、それが使われる前に殺してしまえば何にも問題は無い。それに…奥の手を見られたところでマネできない技術や生きて返さなければ問題にならないかしらね。

 可愛い子供達を守るために鍛え抜いたこの瀬里奈の実力は、ようやくレイアちゃんの第一段階に比肩する物となった!! 状況に応じてあらゆる蟲の能力を駆使できるレイアちゃんの方が若干有利ではあるけど、自作した武器や蛆蛞蝓ちゃんの倉庫から勝手に持ち出した物を使えば遅れは取らない。

 更に!!

 蛆蛞蝓ちゃんにできてこの瀬里奈にできないわけがない!! と思っていたら本当に出来てしまった生体電流を用いた物理雷遁の術!! やっぱり、一度電気ショックで蘇生して貰ったのが原因かしらね。死地からよみがえると強くなるとかどこぞの戦闘民族かしら。

 これで腕力で岩を投げる物理土遁の術、体液を高圧で噴射する物理水遁の術、メタンガスを手に集めて着火する物理火遁の術、オリハルコン繊維を使った物理風遁の術と…もう一流の忍といっても過言じゃないはず。

早く、孫達に瀬里奈流忍術…セリナ・アーツを伝授しなければ。まずは、レイアちゃんの義弟達に仕込もうかしらね。そうすれば一気に流行の最先端になるわ。

「手を抜くな。確実に首をおとせ」

「分かっているわ」

「承知した。希少種らしいから売れば相当の金額になるなアレは」

 目つきの悪いおじさんの一言で、部下らしい二人が狭い通路だというのに同時に分かれての素早い行動。壁や天井を巧みに使った移動手段だ。この私だと重量の関係から難しいわ。この宿の強度的な問題でマネは出来ない。家に帰ったら動きをまねしてみようかしら。

 流石にレベルの高い冒険者だけあって、刀身部分がオリハルコン製の武器。狙い所によっては首が本当に落とされかねない。だけど、この瀬里奈の首を取るつもりなら今の戦力の10倍は持ってきて欲しいわね。

 オリハルコン繊維を使った物理風遁の術を駆使して、狭い通路に文字通り網を張った。

「構うな。切断しろ…俺が突っ込む」

 そのまま速度を落とさず此方との距離を詰めてきた。蟲系モンスターが使う糸程度ならばオリハルコン製の武器で切断できると思ったのだろうが…同じ素材なのだ。簡単に切れると思わないで欲しいわ!!

「はぁ!!」

 女が振るった短剣の動きがオリハルコン繊維によって止められた。音が消されてなければ、よい金属音がしたのだろうが…男の方は、当然きれた前提で此方に突っ込んできた。そして、男の方は見事にミンチになってしまった。

 ブツブツブツブツブシャー

 ………これ、床の弁償代って私持ちかしらね。

「普通の糸じゃ無いな…撤退するぞ」

 スポンサーらしき女性と、目つきの悪いおじさんと数名が即座にこの場から離脱を始めた。残された女冒険者の方もすぐに撤退行動に入ったようだけど遅いわ!!

 オリハルコン繊維の網を解除して、足に力をいれて0距離まで詰める。懐に入り込み、しっかりと重心を据えて、身体を振る遠心力と併せて手の甲を冒険者の腹部へ押し込んだ。

 押し込んだ…ずぶりと反対側まで押し込んでしまうとは想定外だった!! 

「ゴフゥ…蟲なのに強いわね」

ギィィ『時間稼ぎなんてさせないわよ』

 柔らかすぎる!! ゴリフリーテさんだと、ビクともしないのよ!! この私のようなか弱い女性に負ける熟練の冒険者が残念極まりない。でも考えようによっては、デビュー初日で先輩冒険者を倒すってイベントもあるにはあるわよね。

 まぁ、いいわ。電流も流して脳細胞まで焼き切っておきましょう。何かの拍子で蘇生しても困りますからね。

 貫通した腕を抜き取り、再度崩れ落ちる女冒険者にトドメを刺す。

ギッ『電○発勁!!』

 全力で生体電流を流し込んだら目玉などが弾け飛んで壁まで汚してしまった。一体、クリーニング代金で幾らかかるのだろうか。

 ………ぼ、冒険者って本当にお金がかかる職業なのね。
************************************************
短編の外伝のはずが、普通に5.6話いくかもしれないw

次の投稿は再来週くらいになるかもしれません><
レイアの現状と初めての迷宮とかそんな話の予定です。
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