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第二十八章
第百二十六話:(幻想蝶外伝)実家に帰らせていただきます(1)
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いつもありがとうございます。
作者です!!
本編は完了いたしましたが、引き続き外伝をやります><
第一弾として幻想蝶外伝を@@
第二弾で蛆蛞蝓外伝の予定です。
◆一つ目:幻想蝶ちゃん
◆二つ目:幻想蝶ちゃん
※本外伝の時系列についてですが、エピローグ後になります。
********************************************
◆
今日も朝からよく働いたわ。
瀬里奈様と一緒に執筆しているウ=ス異本が世の中に一冊でも多く出回って、人と蟲が一緒に住める平和の架け橋になりますようにと願いを込めて一冊一冊丁寧に書き上げている。
最初こそ、瀬理奈様に騙されたと思っていましたが…読者の方からのファンレターなどが届くようになって、瀬里奈様が言ったことが正しかったと理解出来たわ。世の中、まだまだ私の知らない事も多いのよね。
美少年の蟲姦が流行るとは…瀬理奈様の先見の明には脱帽です。そのおかげで蟲系モンスターである私達への嫌悪感も少しずつ緩和されるでしょう。お父様が始めた孤児の活用した新事業も大盛況になっている。需要と供給がマッチしたおかげで、事務系能力が優れた子達が続々と『筋肉教団』にお仕事に出かけている。
宿主の方も大変喜ばれて、一緒に暮らしている子も多い。そして、そのまま蟲系亜人となりゴールインするゴールデンプランまで用意されているのだから、お父様の知恵にも脱帽です。
モッモキュ(今日は、ハロウィン~!! 流石、瀬里奈様です。こんな素晴らしいイベントを企画するなんて…何処までもついて行きますわ。皆、準備できたかな?)
モキュ(えっと、確かTrick or Treat!! だったわよね。では、突撃~)
ビッビ(美味しいイベントは大歓迎!!お父様~今すぐに行きますよ)
何やら、絹毛虫ちゃん達を筆頭に沢山の蟲達が仮装して廊下を歩いている。飾り付けもされていることから、イベントでも行っているのかしらね。向かう方向からするとお父様のお部屋かしら…何をしているか聞きたいけど、今は眠気の方が優先だわ。
昨日から徹夜なのよね。
睡眠不足はお肌に良くない。お父様の影に戻るのも良いけど、遠いわね。今日は、瀬里奈様のお部屋でお休みさせて貰いましょう。この間のお父様の昔話も聞かせて頂きたいから、ちょうどよいわ。
………
……
…
それから、瀬里奈様のお部屋に着いた。
珍しく仲間が誰も居ない。きっと、瀬理奈様もいらっしゃらないのにお手伝いでかり出されているのでしょうかしら。最近は、色々と手広くやっているようですし、本当に引き出しの多いお人です。流石は、お父様のお母様です。
ピーー(はぁ~眠いわ。明日は三頁もネームをやらないといけないのよね)
お父様が一人、お父様がお二人、お父様が…沢山!! 幸せ~。
………
……
…
バタン!!
部屋の扉が開いたと思ったら、瀬里奈様と一郎様か。お二人とも、甘い匂いがする。きっと、厨房でお菓子を漁ってきたのでしょうか。全く、太ってしまっても知りませんよ。
ギギィィ『ふぅ、お菓子を配るのも大変よね。本当なら配る側じゃなくて貰う側で参加したかったのだけど、レイアちゃん一人じゃ辛いから仕方なかったわ。悪いわね、一郎にもお手伝いお願いして』
ギェギ(お父様の為なら、例え火の中水の中!! …ところで~、お約束のアレが欲しいなお母さん!!)
ギッギィ『あら、お母さんなんて懐かしい言葉で嬉しいわね。じゃあ、お手伝いしてくれたお礼のメロンよ。レイアちゃんには内緒よ』
ギーー(メロン~、メロン~。それにしてもみんな、お菓子よりお父様にイタズラしたいなんて変わっているな)
………お、お父様にイタズラ!?
落ち着くのよ、きっと聞き間違いに決まっているわ。お父様にイタズラするイベントなんてあり得るはずがないわ。後半部分が聞き間違いで、前半のお菓子が貰える…イベントに違いないわ。
モッキュウ(今日は、瀬理奈様と一緒に寝に来ました~)
モッキュ(同じく!! 今日は、こんな素晴らしいイベントのお礼に朝までもふもふしても良いんですよ)
モキュ(お父様にあーんな事やこーんな事ができるなんて夢のようでした)
待ちなさい!! あーんな事とかこーんな事ってどういうことよ!! はっ!? もしかして、いつも居る仲間が居ないのはそのせいなのね。
むくり
傾国のモンスターと名高い美貌を持つこの私をここまで狂わすなんてお父様は何て罪のお方なんでしょうか。お父様!! 今、わたくしも参りますわ。
ピッピ(瀬里奈様~、ハロウィンというイベントについてもう少し詳しく教えて頂けませんか)
ギィィ『幻想蝶ちゃん、起きてたの。ハロウィンイベントを知らないと言うことは、ずっと作業室に籠もっていたのね。お仕事もいいけど、しっかり休まないと駄目よ』
でも、そうといいつつ瀬理奈様が明日までにお願いねと言ってお仕事を振り分けていた気が致します。でも、今はそんな事はどうでもいいの!! 早く、イベントの詳細を教えてください瀬理奈様。
ギギィ『ハロウィンはね、子供が大人にお菓子をねだるイベントなの。だから、子供はお菓子をくれないとイタズラしちゃうぞって仮装して脅かすのよ。Trick or Treat!! と言ってね』
ピーー(瀬里奈様、仮装するのでお手伝いしてください!!)
そこまで分かれば十分だわ。後は、お父様のお部屋に突撃して、イタズラしちゃう。ほっぺにチューしたりしてもいいんだよね!! 待っていてください、お父様。
◇
ハロウィンイベント…瀬里奈さんが思いついたかのように企画したイベントなのだが、想像を絶する程大変だ。よくよく考えれば、私の蟲が何匹居ると思っているんだ。幸いなことに、皆が皆、このイベントに興味があるわけではなかったのが救いだ。
だが、それでも、朝から絶え間なく私の部屋に突入してくる蟲達の対応に目眩がしそうだ。企画したのが瀬里奈さんだけあって、事前に配るお菓子が大量に用意されていた手際の良さには助かっている。しかし、大食らいな子達がお菓子が足りないといって周回プレイを始めたのだ。
よって、お菓子が足りなくなってきて厨房のお菓子製造部隊の子達は、修羅場だっただろう。後で労をねぎらいに行かないとな。
「朝から配り始めて12時間…やっと、休める」
配る側に瀬里奈さんと一郎が加わってくれてなんとか回しきったぞ。蟲達に喜んで貰える結果になって何よりだ。しかし、絹毛虫ちゃん達は、主食が野菜だからお菓子配布のイベントだと落ち込むかと思ったけど、逆に活き活きしていたな。
チクチク
全身に抱きつかれたので、絹毛虫ちゃんの抜け毛で若干チクチクする。髪の毛にも混ざり込んでいるな…後でお風呂で綺麗に流しておくか。
ピッピ(お父様~、まだいらっしゃいますか)
大浴場で疲れを癒やそうと思ったら、幻想蝶ちゃんが可愛らしい帽子を頭に付けて必死で此方に飛んできたのが見えた。幻想蝶ちゃんのスペック的に1cm程の帽子であっても相当重たいだろうに、頑張ったね。
すぐに、幻想蝶ちゃんを手の上に誘導した。そして、重たそうだったので帽子を取ってあげた。
「ハロウィンイベントが楽しいからって、あまり無理をしたらダメだよ。帽子の重さで墜落したらどうするんだい」
まぁ、家の中だからすぐに他の蟲達が救い出してくれるだろうけどさ。
ピッピピー(ごめんなさいお父様。…あのですね~、その~えーっと)
おやおや、もじもじと可愛いね。どうしたのかな…ふっふっふ、分かっていますよ。『ウルオール』から直送されたヴァーミリオン王家でも口にすることが滅多に出来ない一品であるゴリの花の蜂蜜!! それが欲しいのでしょう。ゴリフターズの名前にも使われるほどの神聖な花の蜜なのだ。
瀬里奈さんが、この日のためにヴァーミリオン王家と交渉を行い蟲達を派遣して集めたのだ。一年に一度しか咲かないというのに、一体何時から計画していたのだろうね。
いけないいけない、危うく先に蜂蜜を出してしまうところだった。それでは、このイベントの意味が無い。
「どうしたんだい。幻想蝶ちゃん」
ピッピ(Trick or Treat!! お菓子をくれないと、い…イタズラしちゃうぞ~)
全く、可愛いな。そんなに恥ずかしがらなくても、幻想蝶ちゃん達全員が食べる分くらいはあるから安心していい。それとも傾国のモンスターと言われるくらいだから、スタイルを気にしているのかな。蜂蜜のようなカロリーの高い物を食べたら大変だもんね。
でも今日くらいは良いと思うよ。
「ほら~、幻想蝶ちゃん達にも大好評だった。ゴリの花から集めた蜜だよ」
スプーンで軽く掬って、幻想蝶ちゃんに食べさせてあげようと試みる。しかし、幻想蝶ちゃんが動かない。もしかして、この蜂蜜じゃなくて他のが良かったのかな。でも幻想蝶ちゃんが食べれるとなると選択肢は多くは無い。
………
……
…
こちらを見つめてくる幻想蝶ちゃん。何かを訴えるかのようなその瞳には、うっすらと涙のような物が見える。
お、落ち着け。落ち着くんだ。今の対応で何か間違いがあったかを脳内で再度シュミレーションを行ったが、問題らしき問題はなかった。ただ、高カロリーな蜂蜜だという事だ。しかし、蝶である幻想蝶ちゃんの主食は花の蜜だ。よって、間違った対応でも無いはずだ。
ピ~(と、Trick or Treat…)
幻想蝶ちゃんが先ほどまでと比べものにならないほど、落ち込んだ声をしている。お父様として、一度の失敗はゆるされよう。だが、二度目の失敗は許されないであろう。
よって、必死に考えた。
このハロウィンイベントに参加したと言うことは、この私の部屋に来ればお菓子が貰えると考えいたはずだ。よって、この部屋にある物が貰えると考えるのが普通。この希少な蜂蜜より高価なお菓子は、ない…だが!! ゴリフターズが作ってくれたクッキーがある。
これしかあるまい。
材料は当然厳選され更に、『聖』の魔法で浄化まで施され、ゴリフターズが手作りしてくれた一品なのだ。ちなみに、ゴリの花から集めた蜂蜜も当然使っている。引き出しに奥深くに隠して厳重に蓋をする事で食いしん坊である一郎にすら隠し通せたというのに、何故バレたのだろうか。
クッキーの箱を開けて、一枚を幻想蝶ちゃんにさしだした。
自身の身体より重たいクッキーをどうやって持って帰るか、困りそうなのでこの私が瀬里奈さんの所まで送ってあげるとしよう。量があるので仲間と分けて食べるといい。
「幻想蝶ちゃんのお待ちかねのクッキーだよ。重たいから、一緒に持って行って…あれ」
ピ(とりっく…おあ…くずん)
幻想蝶ちゃんがついに泣き始めてしまったぞ。いったい、どういうことだ。この事態を解明できる物がいたら、幾らでも金を積むぞ!! 私の可愛い幻想蝶ちゃんが泣いているのだ。早く誰か助けに来るんだ。その、入り口で此方を見ているステイシスとか、絹毛虫ちゃんとか!!
入り口で此方を見ている蟲達の視線が私のクッキーにロックオンされている。
「げ、幻想蝶ちゃん…」
ピッピ(お父様は…お父様は、私の気持ちが分からない)
幻想蝶ちゃんが、ついに涙を流して飛んで行ってしまった。
「まって~、幻想蝶ちゃん。一体、どうして!?」
幻想蝶ちゃんが、泣きながら去って行く背中を見送る事しかできなかった。
この私が、幻想蝶ちゃんを泣かせてしまうなんて何という事だ。心にグサってくる痛みは半端ない。のし掛かる罪悪感で死にたくなる。一体、何処で何を間違ったのか見当もつかない。
本来であれば追いかけるべきだったのが、身体の大きな蟲達がワラワラをその道をふさぎ、お菓子をねだってくる。どちらも大切な子達なのだから無碍には出来ず、後で謝りに行こうと思った。
◆
ひ、酷いですお父様。
お菓子が欲しいわけじゃないんです、私だってたまには恥も外聞も無くお父様に甘えたいときだってあります。お父様なら、それを察してくれると信じていたのに。
ぽすん
誰かにぶつかってしまった。
ギギ『あら、幻想蝶ちゃん…どうしたのそんなに泣いて!? いったい、誰に虐められたの!? この瀬里奈に相談しなさい。虐めた子をすぐに叱ってくるわよ』
瀬里奈様!!
瀬理奈様ならこの気持ちきっと分かってくれるはずだわ。
ピーー…(実は…)
………
……
…
瀬理奈様に事の詳細を説明した。
ギィィ『レイアちゃんが悪いわ!! そんなの当然察して、イタズラされた上でお菓子をあげるのが当然でしょうに…』
両方は欲張りすぎかと思います瀬理奈様。しかし、流石は瀬理奈様です。ほんの少しお話ししただけで全て察して頂けるなんて。もう、明日からもネーム頑張っちゃいます!!
ピッピ(でも、どうしましょうか。お父様の部屋を泣いて飛び出してしまい…戻るに戻りづらくて)
本当ならすぐにでもお父様に謝りに行きたいけど、なんと言えばいいか思いつかない。
ギッギー『ダメよ!! いい女が先に謝っては!! ここは、実家に帰って男が迎えにくるのをじっと待つのが正しい選択なのよ!!………という事で、実家に帰るわよ』
お父様が、私を迎えに来てくれる…素晴らしいシュチエーションだわ。でも、それには一つ大きな問題が。
ピッピ(瀬理奈様、でも私の実家は)
ギギ『大丈夫よ!! 私の部屋で』
ピピー(いいえ、大変言いにくいことなのですが…私…実は、最初の一匹目でして…その実家となると『モロド樹海』59層になります)
懐かしいです…お父様が私を助けてくれたあの日の事が。覚えられているか分かりませんが、実はお父様に『君が欲しい』と言われたこともあるんです!! 他の子には嫉妬されそうなので内緒ですけどね。
ギッギ『お、女に二言は無いわ!! この瀬里奈に任せなさい!!『モロド樹海』59層だろうが、地獄の底だろうが連れてってあげるわ』
なにやら、話が壮大になってきている気が致します。
ピピ(瀬理奈様にそこまでして頂かなくても…)
ギ『レイアちゃんが迎えにきて、その胸に飛び込むシーンを考えてみなさい』
………素晴らしいです!!
ピッピ(最高です!! そうですよね。やっぱり、いい女は実家でお父様がお迎えにくるのを待つべきですよね)
ギッギ『そうよ!! その通りよ!! 決して、私が迷宮で遊びたいなんてこれっぽっちもないんだからね。さて、早速必要物資を準備するわよ!!』
お供致します!! 瀬理奈様。
************************************************
二部構成にしたかったのだけど…どう考えても二部で終わらない気がしてきたぞw
というか、なぜか、瀬里奈さんの迷宮デビュー編みたいにもなってしまった…だけど、細けーことはいいんだよという基本方針でいきます!!
迷宮に行くと言うことは、誰か雇った方がいいよね!!
さて、戦力として頼りになる最強の自宅警備員…サポータとして優秀?の駄目猫とか筋肉とか…いやいや、何故かマーガレット嬢がとか!! 色々検討中。
作者です!!
本編は完了いたしましたが、引き続き外伝をやります><
第一弾として幻想蝶外伝を@@
第二弾で蛆蛞蝓外伝の予定です。
◆一つ目:幻想蝶ちゃん
◆二つ目:幻想蝶ちゃん
※本外伝の時系列についてですが、エピローグ後になります。
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◆
今日も朝からよく働いたわ。
瀬里奈様と一緒に執筆しているウ=ス異本が世の中に一冊でも多く出回って、人と蟲が一緒に住める平和の架け橋になりますようにと願いを込めて一冊一冊丁寧に書き上げている。
最初こそ、瀬理奈様に騙されたと思っていましたが…読者の方からのファンレターなどが届くようになって、瀬里奈様が言ったことが正しかったと理解出来たわ。世の中、まだまだ私の知らない事も多いのよね。
美少年の蟲姦が流行るとは…瀬理奈様の先見の明には脱帽です。そのおかげで蟲系モンスターである私達への嫌悪感も少しずつ緩和されるでしょう。お父様が始めた孤児の活用した新事業も大盛況になっている。需要と供給がマッチしたおかげで、事務系能力が優れた子達が続々と『筋肉教団』にお仕事に出かけている。
宿主の方も大変喜ばれて、一緒に暮らしている子も多い。そして、そのまま蟲系亜人となりゴールインするゴールデンプランまで用意されているのだから、お父様の知恵にも脱帽です。
モッモキュ(今日は、ハロウィン~!! 流石、瀬里奈様です。こんな素晴らしいイベントを企画するなんて…何処までもついて行きますわ。皆、準備できたかな?)
モキュ(えっと、確かTrick or Treat!! だったわよね。では、突撃~)
ビッビ(美味しいイベントは大歓迎!!お父様~今すぐに行きますよ)
何やら、絹毛虫ちゃん達を筆頭に沢山の蟲達が仮装して廊下を歩いている。飾り付けもされていることから、イベントでも行っているのかしらね。向かう方向からするとお父様のお部屋かしら…何をしているか聞きたいけど、今は眠気の方が優先だわ。
昨日から徹夜なのよね。
睡眠不足はお肌に良くない。お父様の影に戻るのも良いけど、遠いわね。今日は、瀬里奈様のお部屋でお休みさせて貰いましょう。この間のお父様の昔話も聞かせて頂きたいから、ちょうどよいわ。
………
……
…
それから、瀬里奈様のお部屋に着いた。
珍しく仲間が誰も居ない。きっと、瀬理奈様もいらっしゃらないのにお手伝いでかり出されているのでしょうかしら。最近は、色々と手広くやっているようですし、本当に引き出しの多いお人です。流石は、お父様のお母様です。
ピーー(はぁ~眠いわ。明日は三頁もネームをやらないといけないのよね)
お父様が一人、お父様がお二人、お父様が…沢山!! 幸せ~。
………
……
…
バタン!!
部屋の扉が開いたと思ったら、瀬里奈様と一郎様か。お二人とも、甘い匂いがする。きっと、厨房でお菓子を漁ってきたのでしょうか。全く、太ってしまっても知りませんよ。
ギギィィ『ふぅ、お菓子を配るのも大変よね。本当なら配る側じゃなくて貰う側で参加したかったのだけど、レイアちゃん一人じゃ辛いから仕方なかったわ。悪いわね、一郎にもお手伝いお願いして』
ギェギ(お父様の為なら、例え火の中水の中!! …ところで~、お約束のアレが欲しいなお母さん!!)
ギッギィ『あら、お母さんなんて懐かしい言葉で嬉しいわね。じゃあ、お手伝いしてくれたお礼のメロンよ。レイアちゃんには内緒よ』
ギーー(メロン~、メロン~。それにしてもみんな、お菓子よりお父様にイタズラしたいなんて変わっているな)
………お、お父様にイタズラ!?
落ち着くのよ、きっと聞き間違いに決まっているわ。お父様にイタズラするイベントなんてあり得るはずがないわ。後半部分が聞き間違いで、前半のお菓子が貰える…イベントに違いないわ。
モッキュウ(今日は、瀬理奈様と一緒に寝に来ました~)
モッキュ(同じく!! 今日は、こんな素晴らしいイベントのお礼に朝までもふもふしても良いんですよ)
モキュ(お父様にあーんな事やこーんな事ができるなんて夢のようでした)
待ちなさい!! あーんな事とかこーんな事ってどういうことよ!! はっ!? もしかして、いつも居る仲間が居ないのはそのせいなのね。
むくり
傾国のモンスターと名高い美貌を持つこの私をここまで狂わすなんてお父様は何て罪のお方なんでしょうか。お父様!! 今、わたくしも参りますわ。
ピッピ(瀬里奈様~、ハロウィンというイベントについてもう少し詳しく教えて頂けませんか)
ギィィ『幻想蝶ちゃん、起きてたの。ハロウィンイベントを知らないと言うことは、ずっと作業室に籠もっていたのね。お仕事もいいけど、しっかり休まないと駄目よ』
でも、そうといいつつ瀬理奈様が明日までにお願いねと言ってお仕事を振り分けていた気が致します。でも、今はそんな事はどうでもいいの!! 早く、イベントの詳細を教えてください瀬理奈様。
ギギィ『ハロウィンはね、子供が大人にお菓子をねだるイベントなの。だから、子供はお菓子をくれないとイタズラしちゃうぞって仮装して脅かすのよ。Trick or Treat!! と言ってね』
ピーー(瀬里奈様、仮装するのでお手伝いしてください!!)
そこまで分かれば十分だわ。後は、お父様のお部屋に突撃して、イタズラしちゃう。ほっぺにチューしたりしてもいいんだよね!! 待っていてください、お父様。
◇
ハロウィンイベント…瀬里奈さんが思いついたかのように企画したイベントなのだが、想像を絶する程大変だ。よくよく考えれば、私の蟲が何匹居ると思っているんだ。幸いなことに、皆が皆、このイベントに興味があるわけではなかったのが救いだ。
だが、それでも、朝から絶え間なく私の部屋に突入してくる蟲達の対応に目眩がしそうだ。企画したのが瀬里奈さんだけあって、事前に配るお菓子が大量に用意されていた手際の良さには助かっている。しかし、大食らいな子達がお菓子が足りないといって周回プレイを始めたのだ。
よって、お菓子が足りなくなってきて厨房のお菓子製造部隊の子達は、修羅場だっただろう。後で労をねぎらいに行かないとな。
「朝から配り始めて12時間…やっと、休める」
配る側に瀬里奈さんと一郎が加わってくれてなんとか回しきったぞ。蟲達に喜んで貰える結果になって何よりだ。しかし、絹毛虫ちゃん達は、主食が野菜だからお菓子配布のイベントだと落ち込むかと思ったけど、逆に活き活きしていたな。
チクチク
全身に抱きつかれたので、絹毛虫ちゃんの抜け毛で若干チクチクする。髪の毛にも混ざり込んでいるな…後でお風呂で綺麗に流しておくか。
ピッピ(お父様~、まだいらっしゃいますか)
大浴場で疲れを癒やそうと思ったら、幻想蝶ちゃんが可愛らしい帽子を頭に付けて必死で此方に飛んできたのが見えた。幻想蝶ちゃんのスペック的に1cm程の帽子であっても相当重たいだろうに、頑張ったね。
すぐに、幻想蝶ちゃんを手の上に誘導した。そして、重たそうだったので帽子を取ってあげた。
「ハロウィンイベントが楽しいからって、あまり無理をしたらダメだよ。帽子の重さで墜落したらどうするんだい」
まぁ、家の中だからすぐに他の蟲達が救い出してくれるだろうけどさ。
ピッピピー(ごめんなさいお父様。…あのですね~、その~えーっと)
おやおや、もじもじと可愛いね。どうしたのかな…ふっふっふ、分かっていますよ。『ウルオール』から直送されたヴァーミリオン王家でも口にすることが滅多に出来ない一品であるゴリの花の蜂蜜!! それが欲しいのでしょう。ゴリフターズの名前にも使われるほどの神聖な花の蜜なのだ。
瀬里奈さんが、この日のためにヴァーミリオン王家と交渉を行い蟲達を派遣して集めたのだ。一年に一度しか咲かないというのに、一体何時から計画していたのだろうね。
いけないいけない、危うく先に蜂蜜を出してしまうところだった。それでは、このイベントの意味が無い。
「どうしたんだい。幻想蝶ちゃん」
ピッピ(Trick or Treat!! お菓子をくれないと、い…イタズラしちゃうぞ~)
全く、可愛いな。そんなに恥ずかしがらなくても、幻想蝶ちゃん達全員が食べる分くらいはあるから安心していい。それとも傾国のモンスターと言われるくらいだから、スタイルを気にしているのかな。蜂蜜のようなカロリーの高い物を食べたら大変だもんね。
でも今日くらいは良いと思うよ。
「ほら~、幻想蝶ちゃん達にも大好評だった。ゴリの花から集めた蜜だよ」
スプーンで軽く掬って、幻想蝶ちゃんに食べさせてあげようと試みる。しかし、幻想蝶ちゃんが動かない。もしかして、この蜂蜜じゃなくて他のが良かったのかな。でも幻想蝶ちゃんが食べれるとなると選択肢は多くは無い。
………
……
…
こちらを見つめてくる幻想蝶ちゃん。何かを訴えるかのようなその瞳には、うっすらと涙のような物が見える。
お、落ち着け。落ち着くんだ。今の対応で何か間違いがあったかを脳内で再度シュミレーションを行ったが、問題らしき問題はなかった。ただ、高カロリーな蜂蜜だという事だ。しかし、蝶である幻想蝶ちゃんの主食は花の蜜だ。よって、間違った対応でも無いはずだ。
ピ~(と、Trick or Treat…)
幻想蝶ちゃんが先ほどまでと比べものにならないほど、落ち込んだ声をしている。お父様として、一度の失敗はゆるされよう。だが、二度目の失敗は許されないであろう。
よって、必死に考えた。
このハロウィンイベントに参加したと言うことは、この私の部屋に来ればお菓子が貰えると考えいたはずだ。よって、この部屋にある物が貰えると考えるのが普通。この希少な蜂蜜より高価なお菓子は、ない…だが!! ゴリフターズが作ってくれたクッキーがある。
これしかあるまい。
材料は当然厳選され更に、『聖』の魔法で浄化まで施され、ゴリフターズが手作りしてくれた一品なのだ。ちなみに、ゴリの花から集めた蜂蜜も当然使っている。引き出しに奥深くに隠して厳重に蓋をする事で食いしん坊である一郎にすら隠し通せたというのに、何故バレたのだろうか。
クッキーの箱を開けて、一枚を幻想蝶ちゃんにさしだした。
自身の身体より重たいクッキーをどうやって持って帰るか、困りそうなのでこの私が瀬里奈さんの所まで送ってあげるとしよう。量があるので仲間と分けて食べるといい。
「幻想蝶ちゃんのお待ちかねのクッキーだよ。重たいから、一緒に持って行って…あれ」
ピ(とりっく…おあ…くずん)
幻想蝶ちゃんがついに泣き始めてしまったぞ。いったい、どういうことだ。この事態を解明できる物がいたら、幾らでも金を積むぞ!! 私の可愛い幻想蝶ちゃんが泣いているのだ。早く誰か助けに来るんだ。その、入り口で此方を見ているステイシスとか、絹毛虫ちゃんとか!!
入り口で此方を見ている蟲達の視線が私のクッキーにロックオンされている。
「げ、幻想蝶ちゃん…」
ピッピ(お父様は…お父様は、私の気持ちが分からない)
幻想蝶ちゃんが、ついに涙を流して飛んで行ってしまった。
「まって~、幻想蝶ちゃん。一体、どうして!?」
幻想蝶ちゃんが、泣きながら去って行く背中を見送る事しかできなかった。
この私が、幻想蝶ちゃんを泣かせてしまうなんて何という事だ。心にグサってくる痛みは半端ない。のし掛かる罪悪感で死にたくなる。一体、何処で何を間違ったのか見当もつかない。
本来であれば追いかけるべきだったのが、身体の大きな蟲達がワラワラをその道をふさぎ、お菓子をねだってくる。どちらも大切な子達なのだから無碍には出来ず、後で謝りに行こうと思った。
◆
ひ、酷いですお父様。
お菓子が欲しいわけじゃないんです、私だってたまには恥も外聞も無くお父様に甘えたいときだってあります。お父様なら、それを察してくれると信じていたのに。
ぽすん
誰かにぶつかってしまった。
ギギ『あら、幻想蝶ちゃん…どうしたのそんなに泣いて!? いったい、誰に虐められたの!? この瀬里奈に相談しなさい。虐めた子をすぐに叱ってくるわよ』
瀬里奈様!!
瀬理奈様ならこの気持ちきっと分かってくれるはずだわ。
ピーー…(実は…)
………
……
…
瀬理奈様に事の詳細を説明した。
ギィィ『レイアちゃんが悪いわ!! そんなの当然察して、イタズラされた上でお菓子をあげるのが当然でしょうに…』
両方は欲張りすぎかと思います瀬理奈様。しかし、流石は瀬理奈様です。ほんの少しお話ししただけで全て察して頂けるなんて。もう、明日からもネーム頑張っちゃいます!!
ピッピ(でも、どうしましょうか。お父様の部屋を泣いて飛び出してしまい…戻るに戻りづらくて)
本当ならすぐにでもお父様に謝りに行きたいけど、なんと言えばいいか思いつかない。
ギッギー『ダメよ!! いい女が先に謝っては!! ここは、実家に帰って男が迎えにくるのをじっと待つのが正しい選択なのよ!!………という事で、実家に帰るわよ』
お父様が、私を迎えに来てくれる…素晴らしいシュチエーションだわ。でも、それには一つ大きな問題が。
ピッピ(瀬理奈様、でも私の実家は)
ギギ『大丈夫よ!! 私の部屋で』
ピピー(いいえ、大変言いにくいことなのですが…私…実は、最初の一匹目でして…その実家となると『モロド樹海』59層になります)
懐かしいです…お父様が私を助けてくれたあの日の事が。覚えられているか分かりませんが、実はお父様に『君が欲しい』と言われたこともあるんです!! 他の子には嫉妬されそうなので内緒ですけどね。
ギッギ『お、女に二言は無いわ!! この瀬里奈に任せなさい!!『モロド樹海』59層だろうが、地獄の底だろうが連れてってあげるわ』
なにやら、話が壮大になってきている気が致します。
ピピ(瀬理奈様にそこまでして頂かなくても…)
ギ『レイアちゃんが迎えにきて、その胸に飛び込むシーンを考えてみなさい』
………素晴らしいです!!
ピッピ(最高です!! そうですよね。やっぱり、いい女は実家でお父様がお迎えにくるのを待つべきですよね)
ギッギ『そうよ!! その通りよ!! 決して、私が迷宮で遊びたいなんてこれっぽっちもないんだからね。さて、早速必要物資を準備するわよ!!』
お供致します!! 瀬理奈様。
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二部構成にしたかったのだけど…どう考えても二部で終わらない気がしてきたぞw
というか、なぜか、瀬里奈さんの迷宮デビュー編みたいにもなってしまった…だけど、細けーことはいいんだよという基本方針でいきます!!
迷宮に行くと言うことは、誰か雇った方がいいよね!!
さて、戦力として頼りになる最強の自宅警備員…サポータとして優秀?の駄目猫とか筋肉とか…いやいや、何故かマーガレット嬢がとか!! 色々検討中。
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PS
2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。
とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。
伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。
2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。
以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、
1章最後は戦闘を長めに書いてみました。
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

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「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

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ねこねこ大好き
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新庄麗夜は身長160cmと小柄な高校生、クラスメイトから酷いいじめを受けている。
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召喚された勇者は強力なギフト(ユニークスキル)を持っているから大丈夫とのこと。
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対して麗夜のユニークスキルはただ一つ、「モンスターと会話できる」
それ以外はステータス補正も無い最弱状態。
クラスメイトには笑われ、王からも役立たずと見なされ追放されてしまう。
酷いものだと思いながら日銭を稼ごうとモンスターを狩ろうとする。
「ことばわかる?」
言葉の分かるスキルにより、麗夜とモンスターは一瞬で意気投合する。
「モンスターのほうが優しいし、こうなったらモンスターと一緒に暮らそう! どうせ役立たずだし!」
そうして麗夜はモンスターたちと気ままな生活を送る。
それが成長チートや生産チート、魔力チートなどあらゆるチートも凌駕するチートかも分からずに。
これはモンスターと会話できる。そんなチートを得た少年の気ままな日常である。
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