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第二十六章
第百二十話:鎮魂歌(10)
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ドッペルゲンガーの特性が未だに不明ではあるが・・・モンスターは魔法を扱う事ができないという大前提を覆す事は出来ない。その裏付けは、蛆蛞蝓ちゃんによる調査結果だ。それは、ランクA級のモンスターであるテスタメントにも言えることなので例外は無いのだろう。
仮に、ドッペルゲンガーが姿形だけゴリフターズを模倣したとしても障害にもならない。魔法が使えないゴリフターズであれば私の敵ではないし、当然ゴリフターズにとっても同じだ。自分の分身が『聖』の魔法を行使出来ないのならば的でしかない。
それを理解しているかいキース・グェンダル。
「聞くまでも無い事だが、どちらが勝つと思う?キース・グェンダル」
二人が死闘を繰り広げる最中、私はキース・グェンダルの元へと赴いた。当然、第三形態に変身してだ!! いかなる状況にも対応するために手は抜かない。
「それを今の私に聞くのか・・・間違いなくお前達が勝つだろう」
「なんだ、現状分析は出来ているじゃ無いか。ならば、素直に殺されればよいのにね。あんなモンスターなどを表に出して私達の怒りを買うなど愚かな判断ではないのかな?」
「この私がいかなる謝罪を行っても殺すのであろう。ならば、可能性に掛けるのは悪くはあるまい。うまくいけば、貴様等の誰かを道連れにできるやもしれない」
なるほど、この私に対しての分析も正しい。いかなる謝罪が行われても、キース・グェンダルという存在を許しはしない。だが、貴様が述べた道連れについては、完全に否定させて貰うよ。
「どのような根拠で道連れにできると考えたかは知らないが・・・私の妻達は、貴様等ギルドが知る時より遙かに強くなっている。その証拠に見てみるが良い」
眼下で死闘を行っているゴリフターズに眼をやった。
『聖』の魔法のヤバさを直感したのだろう・・・回避に重点を置いたドッペルゲンガーの立ち振る舞いは見事である。だが、その拮抗も直ぐに崩れた。そもそも、物理攻撃手段しか持ち合わせていないドッペルゲンガーが『聖』の魔法を突破するのは酷な事なのだ。
更に言えば、こちらは二人なのだ。どうしても回避出来ない場合には、攻撃を相殺するために手を出すしか無いのだ。それが、危険な事であっても直撃するよりかは幾分かマシである。
ドッペルゲンガーがゴリフリーナの攻撃を相殺する為に、右ストレートを打ち出した。その瞬間、ゴリフリーナの体が大きく後ろに仰け反った。
「『聖』の魔法を纏っている状態のゴリフリーナの攻撃を打ち返すだけでなく、仰け反らせるとはね。だが、その代償は大きかったようだな」
「ば、馬鹿な!? 右腕が崩れ落ちた!! 奴の肉体は、オリハルコン並みなんだぞ!?」
・・・なにそれ、完全に化け物じゃ無いか!!
何も知らなければ、何を馬鹿なことを言っていると笑い飛ばしただろうが殺し合いをした仲であるのでそれが事実であると理解できる。
「だが、オリハルコン未満なのだろう。貴様がどのような基準で驚いたかは知らないが・・・もし、数年前の剣魔武道会でみた事実を元で戦力計算をしているのならば情報が古すぎる」
「あれでは、『闇』と同じでは無いか」
「馬鹿を言うな・・・『闇』はあれの更に上位だ。ゴリフリーナとゴリフリーテには、『聖』の魔法の特性をより理解して貰ったのだ。魔法とは、理解が深まるにつれ効力や効率が上昇するのだよ」
「特別な属性の研究など、進んでいなかったはずだぞ」
『ウルオール』でもゴリフターズの『聖』の魔法については、研究成果は殆どあげられていない。だが、私の蟲達によって解明されたのだよ。その情報まではギルドに渡っていないだろうがね。
「そこまで教える義理はないね。冥途の土産をくれてやるほど私は優しくは無い。何かの間違いで貴様が生き残った場合に、見聞きした情報が露見しては困るからな」
「生き残る可能性ね・・・あると思っても良いのだろうな」
ない!! 間違いなくない!! 可能性を0%という事を宣言するのは嫌いなのだが、こればかりは間違いなく0%である。
「私としても丸腰の貴様を相手に本気でやるのは些か心苦しい。これを使え」
懐からオリハルコン製の短剣を投げ渡した。キース・グェンダルがソレをキャッチする。
プス
「随分と紳士的でな。もしかしたら、これが敗因となるかもしれないぞ」
「紳士なのは当然だろう。今更、そのような事をギルド幹部に言われてもうれしくも無いわ。で、敗因になると言ったな。それは、正しい認識だ」
しかし、理解できないな。敗因となると分かっていて何故、敵から渡された物を平然と受け取るのだ。圧倒的優位にいるこの私が、最後くらい相手に花を持たせてやろうと施しを行ったとでも勘違いしているのだろうか。
まぁ、おかげで楽に勝負が付いたがね。
「そうそう、言いそびれたが・・・その短剣ね。握る場所に毒針を仕込んであるんだ」
その言葉を聞いた瞬間、受け取った短剣の確認し始めた。指に小さな穴が開いており紫に変色しているのが確認できたようだが、なぜか顔が真っ赤になり始めた。おかしいな・・・普通、死に達する毒に犯されたら顔が真っ青になるはずなのに。
「貴様は!! 貴様は!! 一体、人をどこまでこけにすれば気が済む!? 」
「至って真面目だ。安全且つ確実に貴様を排除する為ならば、どのような方法でも使う。安心しろ・・・死んだ後は、骨も残らない様に溶解させて迷宮の養分にしてやる。蟲達も貴様を食べると食あたりをおこしかねんからね」
ボタボタボタ
キース・グェンダルの口から血が零れ始めた。予定より早いのは、無駄に興奮したせいで血流の巡りが良くなったのだろう。愚かの極みだ。
「お、おばえざえ・・・おまえざえ居なければあぁぁぁぁぁ」
「おぃおぃ、先に手を出してきたのはソッチだろう。むしろ、今まで謙虚にしていたのだから、感謝されど恨まないで欲しいな」
窮鼠猫を噛むみたいな展開は御免である。キース・グェンダルを中心に『火』の魔法が展開され始めているのが眼で確認できた。第三形態になったこの私の装甲を貫通できないのは分かりきっているが、死に際の最後の一撃なんぞやらせるものか!!
最後まで悔いを残して死ぬが良い。
「死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「お前がな」
キース・グェンダルの魔法が発動するより早く両手のひらから溶解液を噴射した。金属すら溶かす蟲産の溶解液をシャワーを浴びるようにその身に受けたキース・グェンダルがどうなるかは、簡単だ。
「ぐあ゛あ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・」
「完全に肉体が無くなるまで、浴びせるのを止めない」
ジュワジュワジュワ
溶ける溶ける!! あまりに効果がありすぎて鉄製の床まで溶けて穴を開け始めた。しかし、腕の立つギルド幹部と言うことで多少の戦闘行為はあると考えていたのだが・・・存外、つまらない最後であったな。
完全消滅を確認した。
さて、ゴミは片づけたのでこの私もドッペルゲンガー討伐に乗り出そうじゃないか。
◇
ゴミ掃除を終えて、ゴリフターズが戦う場所に来てみれば・・・殆ど仕事が無い事実に気がついた。ガチで本気のゴリフターズが後先考えずに魔力全開で『聖』の魔法を行使しているのだ。
ドッペルゲンガーは、攻撃や防御を行うたびに肉体を欠損させる。だが、モンスターだからなのだろう・・・肉体の欠損を数秒で復元しているのだ。
「だが、ノーリスクじゃ無いな」
身体的スペックに低下こそ見られないが、再生する度に魔力を消費している。ゴリフターズもそれに気がついているはずだ。この調子でいけば、後数分で再生不能に陥るだろう。元よりドッペルゲンガーは万全な状態では無かったようだしな。
さて、腕を弓状に変化させたのだが・・・いかにホーミング機能付きの蟲矢でも正確無比にドッペルゲンガーだけ射抜けるかと言われれば無理だ。邪魔になり、もしかしたらゴリフターズに致命的な隙を与える事になりかねない。
ままならないね。
ゴンゴンゴンゴーーーン
ドッペルゲンガーがゴリフターズの攻撃を相殺する音が響く。ドッペルゲンガーは素手だというのに衝突音がおかしいよな。オリジナルと戦った事があるから言えるのだが人類を超越した存在だった。
ドッペルゲンガーがゴリフリーテのハンマーに殴られて、私の10m程横の壁に激突した。こちらに飛ばされている間に再生を始めているとはね。この私も治癒能力に関しては自信があったのだが・・・これには勝てない。
「ドッペルゲンガーにとって、二人は相性最悪だな。物理攻撃しか手段を持たぬ貴様に二人は倒せぬよ。で、私の手伝いは必要かな? 二人とも」
「旦那様!! あぶなーーーい」
ズオゥーーーン
ドッペルゲンガーに追い打ちを掛けるかのごとく、ゴリフリーナのトゲ棍棒が投擲された。肉体を完全に再生を終えていないドッペルゲンガーは、それを避ける事ができず再生途中の肉体を打ち抜かれた。そして、ゴリフリーナのトゲ棍棒は施設をぶち抜き遙か後方まで飛んでいった。
この私の身を案じての攻撃だったのだろうが、万が一今の攻撃が私に当たっていたら上半身と下半身が泣き別れになっていただろう。いや、本当にあぶないよね!!
「ご安心ください旦那様。確かに、アレは強いですが・・・決して勝てない相手ではありません」
「そうか、ゴリフリーテ。ならば安心した」
ゴキゴキ
二人が手の骨をいい音でならす。その姿は、全くもって頼もしい限りだ。肉体も合わさって、本当にほれぼれする逞しさである。
「戦闘開始からアレは7回再生しております。再生の度合いで消耗される魔力は異なりますが・・・全身を再生できるのは後3回が限度というところでしょうか」
「ならば、最後まで気を抜かずに確実に仕留めるだけだな。それと、治癒薬は服用しておくんだぞ。直撃こそしていないが、ソレなりに良い攻撃を貰っているだろう」
奴の攻撃は、衝撃が凄まじい。鎧越しであっても、内臓器官へのダメージは溜まる。ゴリフターズは、今でこそアドレナリンが全開で有るため、少々の痛みなど感じていないが、そういう状態は好ましくない。
「があ゛ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
夫婦の会話に横入りしてくるとは礼儀がなっていないな。再生したドッペルゲンガーが我々の前に立っている。何を考えているか、分からないが・・・理性を失っているという様子はない。
この私を見て嘲笑っているようだからな。
まぁ、大体なにを考えているのか分かる。この状況を打破する為の望みが見えたのだろう。ドッペルゲンガーとて、殺し合って理解したはずだ・・・ゴリフターズ相手に勝機は無いと。だが、ドッペルゲンガーが逃げる事も不可能だ。
「この私を人質にしてこの場を乗り切る気だな。甘く見られたものだ」
この場において最弱であるのは認めるが・・・最弱だからと言って、ゴリフターズの戦いの足手まといになるほど弱くは無いと自負している。それに、貴様のオリジナルと戦った経験もあるのだ。よって、手足の一本を犠牲にして逃げ続ける位朝飯前だ。
「モンスター如きが、私達の旦那様を人質に考えるか・・・」
「ふっふっふっふ、その顔も考えも気に入りませんね・・・」
ゴゴゴゴゴゴ
ゴリフターズの『聖』の魔法が更に増大していく。高まる魔力で迷宮の大地が震え始めた。短期決戦を想定した力配分を行っていたはずなのだが、一気に勝負を付ける気か。
「「はああああああぁぁぁぁぁぁ」」
ズゴーーーーン
二人を中心とした爆風で足に力を入れねば吹き飛ばされそうになる。
やばいよ!! 本当にやばいって!! この二人だけ完全に世界が違うよ。神々しく輝くオーラに身を包んだゴリフ。この二人ならば、『闇』の使い手であるグリンドールとも良い勝負が出来るのではないかと思える程だ。
「行くわよゴリフリーナ」
「えぇ、ゴリフリーテ」
ゴリフターズがクラウチングスタートの構えを取る。その後ろにいる私・・・あれ?この位置はやばいと思い咄嗟に上空へと避難した。私が上空へ避難すると二人が地面を大きく削る程の脚力で走り出した。
あの場に居たら土砂に埋もれていたかも知れない。
ピーー(おーーと、ゴリフリーテ様。ゴリフリーナ様より先行してドッペルゲンガーに猛突進だ!! だが、ドッペルゲンガーはこれをぎりぎりで回避!! なんという運動能力でしょうか。しかし、それを先読みしていたゴリフリーナ様が移動先でドッペルゲンガーに体当たりを直撃させたぁぁぁーーー)
モナーー(なんという、再生力でしょう!! 『聖』の魔法で身を包んだゴリフリーナ様の突進を食らって原型を留めているだけで無く、既に再生を始めているとは・・・後で、破片を回収して分析しちゃうもんね)
飛行可能な蟲達が下で行われている出来事の実況を始めた。いや、確かに高みに見物だけどさ。緊張感のかけらもない。
ピッピ(ドッペルゲンガーがここで反撃に出たーーー!! タックルで飛ばされた先にあったゴリフリーナ様のトゲ棍棒を手に入れてしまった。まさか、これを計算して一撃食らったのでしょうか)
「偶然ではないだろうな。飛ばされる方向まで計算しての事だろう。あの二人相手に素手では厳しいのは明白。例え、貴重な再生回数を消費してでも武器を手に入れる価値はあったと思う。だが・・・」
まぁ、武器があっても代わりはしない。武器で防げるのは、物理攻撃部分に限られる。『聖』の魔法の形状を変化させて、対応すれば何の意味も無いのだよ。例えば。トゲ棍棒のトゲ部分だけを2mとか3mとか極端にデカくするだけで相手はそれを防ぐ術を失うのだ。
モッモナ(ゴリフリーテ様のハンマーを纏う『聖』の魔法の形状がアイスピックのように鋭くなりました。あっ・・・今、ドッペルゲンガーの心臓を貫きましたーー!! に留まらず、上半身が消し飛ばしたぁぁぁ!! 凄い。なになに、『旦那様と同じ苦しみを味わうがよい』と。か、かっこいいですゴリフリーテ様~)
本当にかっこいいな。いつの間にか観戦する蟲達が増えて、ゴリフコールが始まった。
ゴ・リ・フ!! ゴ・リ・フ!! ゴ・リ・フ!!
言葉が伝わらないので空中に蟲達が己の体を使って文字を描き始めてぞ。
「そろそろ、決めますわよゴリフリーナ!!」
「任せなさいゴリフリーテ」
二人がこちらを見る。あぁ、分かっているよ。
「愛する妻達。ゴリフリーテ、ゴリフリーナ・・・・・・殺れ」
ゴリフリーナがドッペルゲンガーの攻撃を受け流した。今まで力押しだけで攻めていたのだが、真逆の対応にドッペルゲンガーの反応が一瞬遅れる。それを逃さず、ゴリフリーナが裏拳でドッペルゲンガーの顎を削り飛ばした。危険を察知して直ぐに距離を取ろうとするドッペルゲンガーだが無駄である。既に、チャージを終えたゴリフリーテが合図を待っている状態なのだ。
「ドッペルゲンガーと言ったな。貴様の残存魔力から考えるに既に再生限界は後一回程度だあろう。ゴリフリーナのアレで最後の再生を消化する。そして・・・」
ゴリフリーナがドッペルゲンガーをゴリフリーテへと蹴り飛ばした。ゴリフリーテが得意のハンマーをブルンブルンと回転させており、遠心力+重さ+パワー+『聖』の魔法という謎の方程式ができあがっている。
「粉々になりなさーーーーい」
パーーーン
ドッペルゲンガーが綺麗に砕け散っている。
「これでラスト1を消化だな」
それにしても木っ端微塵になっても収束して再生を始める辺り凄いな。だが、先ほどまでと異なり、木っ端微塵にもなれば再生には時間を要するようだ。
おうおう、ついにクロッセル・エグザルの形態になるよりスライム状態になって逃亡を図り始めたぞ。間に合わないと理解したのか・・・。だが、その状態になろうとも代わりはしない。
ゴリフリーナが駆け寄りスライム状態のドッペルゲンガーを手に取り持ち上げた。
「GAAAAAaaaaaaaa*******」
スライム状になったドッペルゲンガーから、なんとも言えない苦痛の叫びがとどろいた。
「確実に、間違いなく徹底的に浄化します。地形ごと潰しても良かったのですが、取り残しがあると面倒ですからね。ドッペルゲンガー・・・なかなか強い存在でした。・・・はああぁぁぁぁぁ!!!」
プスン
ゴリフリーナが『聖』の魔法を持って、完全にドッペルゲンガーを浄化した。
「間違いなく始末したかね」
「はい旦那様。モンスターソウルの吸収も確認が出来ました」
あぁ、そうなのね。これで更に強くなったか・・・やばいな、どんどん引き離されるぞ。
「そうか。これで終わったな。では、みんなが待つ場所へかえ・・・」
いや、待てよ。よくある展開を考えるんだ。こういう場合・・・気を抜いた瞬間誰かが犠牲になるという事をしばしば見たことがあるぞ。
「どうか致しましたか旦那様」
「どこかお怪我でも!?」
大丈夫だゴリフターズ。
「疲労しているところ悪いが・・・ここら辺一体を吹き飛ばすだけの魔力と体力は残っているかい。それも地形を変える程の」
「可能ですが、魔力の消費から考えるに帰りは殆ど戦えなくなってしまうかもしれません」
「同じく」
それで構わん。多少の魔力回復なら蟲食で補える。
「念には念を入れてだ。万が一、キース・グェンダルの私兵が隠れており取りこぼしがあった場合やドッペルゲンガーが何かしらの要因で再生するかもしれない。よって、入念に消毒しておく必要があると考える」
疲労しているところ本当に申し訳ない。だが、これも必要な事なのだ。
帰りのルートは行きと比べて安全だ。トランスポートが利用できない以上、入り口から上がってくる者は居ない。食糧事情の問題で生存が出来ないからな。この階層に来るまでに出会った冒険者は全員白だ・・・よって、帰り際に会うことになっても襲ってくることは無い。襲われたとしても、この私だけで血祭りに上げることなど造作もない。
「旦那様が不安に思われるのでしたら、何かあるのでしょう。このゴリフリーテ!! 旦那様のご要望には全てお答え致しましょう」
「旦那様のお言葉であれば、不可能すら可能に致します!! 例え、魔力が尽きてもこの手足を持って、この階層を粉砕してみせましょう」
いや、別にそこまでしなくてもいいからね!! この周辺だけを入念に消毒して貰えればさ。二人の信頼が重いな~。まぁ、そこも良いところだけどね。
後ろで、蛆蛞蝓ちゃんがピンセットでドッペルゲンガーの砕けた残骸を採取して試験管に詰めている。そして、集めた死骸が詰まった試験管を私に渡してきた。
モッモナナー(帰ったら研究致しますので、持ち帰ってくださいね!! 絶対ですからね!! 捨てたら泣いちゃいますからね)
一体、何を目指しているのだろうか・・・研究って、モンスターがモンスターを研究するとか凄まじいな。だが、よく考えれば人間も人間の研究をしていたから普通の事なのかも知れない。
◇
結局、50層を綺麗に浄化したのだが・・・何も無かった。当然、良かった事なのだが実に拍子抜けである。
しかし、無事に迷宮の入り口まで戻った時に重大なミスに気がついてしまった。
「キース・グェンダルの首を飾る予定だったんだ」
始末したギルド幹部の首はギルド総本山の入り口に晒されている。時代遅れというかもしれないが、ギルドが凶悪犯を捕まえた際にはよくやる事なのだ。凶悪犯の方が可愛いくらいの連中だがな。
「ないものは仕方有りません。『ウルオール』王家の名でギルド幹部は全員始末したと公表致しましょう。さすれば、首が無くても周知される事でしょう」
「周知はして貰うにして・・・やはり雁首揃えないと見栄えが悪いのでリアル模型でも作成して安置しておくさ」
さぁ、家族が待つ場所に帰ろう。早く帰らないと瀬里奈さんが義弟達によって出血多量で死んでしまうかも知れない。心配だ・・・。
「ゴリフリーナ・・・そろそろ」
「えぇ」
なにやら、二人がソワソワしている。そんな二人でひそひそ話なんて、ちょっぴり悲しいぞ。夫婦の間で隠し事なんて無しにして欲しいよ。この私だって、隠し事は・・・・・・・・・結構あるな。未だに、瀬里奈さんと同郷だとは教えていないしな。
「どうしたんだい」
「「実は、二ヶ月目です!!」」
二ヶ月目・・・二ヶ月目・・・うーーーーん。はっ!?
頭の中で逆算してみた。心当たりがあるかと言えば、大ありだ!!
「よくやった!! ゴリフリーテ、ゴリフリーナ!! 今日は最良の日じゃ無いか」
年甲斐も無く大はしゃぎしてゴリフターズに抱きついてしまった。まさか、二人が妊娠していたとはね。いやはや、楽しみだわ。この私もついに父親か。
ここは、私に父親といっても過言で無いガイウス皇帝陛下に父親とは何かを教えを請わねばいけないな。いいや、ここは義理の父を頼るべきか・・・困ったな。
「ありがとうございます旦那様。喜んでいただけるか不安で不安で」
「旦那様、今私達は幸せです」
おうおう、泣くな泣くな。
その姿になってから辛い思いが多かったのであろう。女性としての人生を諦めていたのだろう。そんな思いが一気に溢れてきたのかな。全く、何を今更だ。いつも言っているだろう。
私は、二人を心から愛していると。
「愛しているぞゴリフリーナ。愛しているぞゴリフリーテ。そんな二人からのおめでたい報告を喜ばないはずが無いだろう。本当に私は幸せ者だ。こんなにも素晴らしい妻達がいるのだからな。これからも、末永くよろしくお願いしたい」
「「はい、こちらこそ」」
二人と強く抱きしめ合う。その裏腹、私は必死に蟲達を押さえ込んでいる。
ぐぉーーーー。蟲達が影から飛び出そうと必死だ。おめでたいという気持ちを伝えたいのだろうが、もう少し待ってくれ!! 今、夫婦の大事な場面なんだ!!
************************************************
鎮魂歌編はこれで完結です><
最後なのにレイアが戦わないのは仕様です@@
レイアより強い嫁が二人もいるのにそこに割り込まなくてもね!!
そして、次のお話・・・エピローグへ!!
エピローグは、3~4程度を予定しております。
今までレイアがお世話になった人達の現状などです。
どういった順で誰が登場するかは、作者の気の向くままになりそうですが・・・><
ここに到達するまで長かったぞ~。
第一話が2014/05/31に投稿されているから15ヶ月くらい掛かってここまで来たことになるな・・・本当に作者よくここまでやったと自画自賛してもいいよね><
当初は20話程度で終わる予定だったのにな・・・。
と言うわけで、最後まであと少しお付き合い頂ければ本当にうれしいです。
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