愛すべき『蟲』と迷宮での日常

熟練紳士

文字の大きさ
上 下
108 / 126
第二十六章

第百十九話:鎮魂歌(9)

しおりを挟む
シャルルの部屋の前で、しばらく呆然としていた。

考えてみれば、本人からは男だと言われた事は無い。

シャルルは男性に付ける名前だが、女性に付けては駄目だという法は無い、多分。

僕と言う一人称だって、王都では使ってる女性も見たことがある。
俺とか、ワシとか使ってる女性だっていた。

17歳でスリムな身体付きだが、女性だと分かればなぜ男だと思っていたのかと、自分を殴りたくなる。

ちゃんと丸みをおびた優しい身体だったのだ。

ふたつの膨らみはささやかだったが。

いや、膨らみの事は忘れよう。

これ以上突き詰めて考えては不味い事だった。

そう、彼女は女性だった。

可愛いと思っていた弟が、女性、、、妹だった?

妹、、、本当に妹?

俺はうずくまって、頭を抱えるのだった。




もう二度と顔を見せてくれないかと思ったが、夜には部屋から出てきてくれた。

「シャルル!
さっきはごめん。
俺が勝手に男の子だと思い込んでた。
君は一度も性別の話はしなかったのに。」

「別に男でも良い。
その方がお互い都合が良いでしょう。」

「都合が良い?
なんでだ?」

「同性の方が気兼ねしないでしょう。
こんな所に住んでいるんだから、男に思われていた方が安心だし。」

「シャルル、やっぱり俺と一緒に行こう。
女の子ならば、余計に一人では置いておけない。」

「ほうっておいて。
あなたは通りすがりの、ただの他人。
もう、私に係わらないで。」

シャルル、、、。




気まずい雰囲気のまま、そろろ旅に出なければならない時期がやってきた。

祖母殿はまだ帰らない。

このまま本当に、彼女をひとりで置いて行くのだろうか。

俺には彼女を説得する事が出来ない。

とても、無力だった。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~

まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。 よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!! ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。 目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。 なぜか、その子が気になり世話をすることに。 神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。 邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。 PS 2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。 とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。 伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。 2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。        以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、 1章最後は戦闘を長めに書いてみました。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ねこねこ大好き
ファンタジー
新庄麗夜は身長160cmと小柄な高校生、クラスメイトから酷いいじめを受けている。 彼は修学旅行の時、突然クラスメイト全員と異世界へ召喚される。 転移した先で王に開口一番、魔軍と戦い人類を救ってくれとお願いされる。 召喚された勇者は強力なギフト(ユニークスキル)を持っているから大丈夫とのこと。 言葉通り、クラスメイトは、獲得経験値×10万や魔力無限、レベル100から、無限製造スキルなど チートが山盛りだった。 対して麗夜のユニークスキルはただ一つ、「モンスターと会話できる」 それ以外はステータス補正も無い最弱状態。 クラスメイトには笑われ、王からも役立たずと見なされ追放されてしまう。 酷いものだと思いながら日銭を稼ごうとモンスターを狩ろうとする。 「ことばわかる?」 言葉の分かるスキルにより、麗夜とモンスターは一瞬で意気投合する。 「モンスターのほうが優しいし、こうなったらモンスターと一緒に暮らそう! どうせ役立たずだし!」 そうして麗夜はモンスターたちと気ままな生活を送る。 それが成長チートや生産チート、魔力チートなどあらゆるチートも凌駕するチートかも分からずに。 これはモンスターと会話できる。そんなチートを得た少年の気ままな日常である。 ------------------------------ 第12回ファンタジー小説大賞に応募しております! よろしければ投票ボタンを押していただけると嬉しいです! →結果は8位! 最終選考まで進めました!  皆さま応援ありがとうございます!

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。