95 / 126
第二十五章
第百六話:苦しみの向こう(2)
しおりを挟む
読者の皆様へ。
いろいろ長い間更新を止めてしまい申し訳ありませんでした。
だけど!! 今日からは大丈夫だ><
しっかり執筆していくお~。
********************************************
◇
ギルドとの第一回目の取引で手に入れたお金を元に『ウルオール』から大量に食料を購入した。そのおかげもあって、『神聖エルモア帝国』並びに『ウルオール』は、バブルと言っても過言で無い好景気を迎えている。
その影で苦しむ国家…主に南方諸国連盟ではあるが、誰かが儲かれば誰かが損をするのは当然の帰結。故に、同情もしない。今までギルドがやってきた事を考えれば、報いを受けるのは当たり前だ。
死んで詫びろ。
「恐ろしいくらいに順調だな。さて、ガイウス皇帝陛下からの報告書を確認しよう」
積み上げられる報告書。そのどれもが想定通りに事が進んでいることを示している。ギルドという世界の膿を排除すべく、我々の行動を妨げる者は誰もいない。ギルドに肩入れしようとしても、『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』という二大国からの圧力に屈しない国家など殆ど無い。大国である『ヘイルダム』は不干渉を貫き、同じく大国である『聖クライム教団』は敗戦の戦後処理でそれどころでは無い。
ガイウス皇帝陛下から南方諸国連盟に潜り込ませているスパイからの情報を回して貰った。そこには、現在の南方諸国連盟の状況が事細かく書かれている。食糧難や物価高騰に伴う暴動や略奪。その対策にギルド総本山から鎮圧部隊まで導入されて、多数の死者が出ているとの事だ。
ギルドが主体で配給している食料では、圧倒的に不足している。自国で食料を確保できないように『闇』の使い手と入念に南方諸国の国土を荒らしたからな。そのおかげで、輸入に頼るしかない現状だ。ヴォルドー領が販売している物資の価格を考えれば当然・・・ギルドが予定してた量の1/10程度しか確保する事が出来ていない。
他にも面白い報告が混ざっていた。ギルド幹部の親族の何名かが謎の襲撃で亡くなったとの事だ。流石に、救いの手を差し伸べた全員が事を成功させた訳ではないが、成功例が何件かあがれば御の字だ。ギルド幹部の親族ともなれば小国とは言え王族関係者が多い。そのような場所に強襲を掛けてこの成功率は高い方だ。
そのおかげで、ギルドはただでさえ少ない精鋭達を自らの親族護衛に裂かなければならないのだから実にありがたい事だ。今後の仕事がやりやすくなる。
………
……
…
「ギルドの連中は、正気なのか」
報告書を読み進めると恐ろしい内容が書かれていた。
その場しのぎのやり方としては間違っていないが、国内の批判を国外に向ける事で難を逃れようとしている。此度の南方諸国連盟の大災害を『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』の陰謀と決定づけ、国民を誘導しているのだ。物証として白い蝗を前面に押し出しているとの事だ。
まぁ、間違っていないが酷い話だ。先に手を出してきた事を一切言わずに、直面している危機を前面に押し出しての広報。
「ギルドが正気だったら、今頃こんな事態にはなっていませんよレイア殿」
「だよな。ギルドの末端の連中まではわからねーが、幹部連中はマトモなのがいねーんじゃねーか」
ジュラルドとエーテリアも呆れている。この二人も、ギルドには色々と面倒を掛けられた口だろう。私ほどでは無いにしろ、命を狙われた事だってあるだろうしね。主に、ギルドの犬になるか死ぬか選べ的な事があったと聞いた事がある。
「二人の意見は、もっともだな。あぁ…そういえば、例のサロンから救った者達に知り合いとかは居なかった?『ウルオール』出身者が多いと言うことで若干不安には思っていたんだよ」
「…身内では、おりませんでした。ただ、妹の知り合いの子が一人死亡者リストに載っていました。私も昔に顔だけは会わせた事はありましたが、残念です」
ジュラルドに妹だと!! おぃおぃ、ここに来て初耳だぞ。過去のジュラルドの肖像画から間違いなく美少女であろうが、今では関係ない。私には、愛する妻達が居るのだからな。だが、ジュラルドの妹ともなればきっと優れた者なのであろう。場合によっては、うちの義弟達を紹介するのもありか。
「そうか、もう少し早く行動を起こしていれば救えたかも知れなかったのだが、申し訳ない。その遺族には、ギルドからせしめた金でしっかりと賠償を支払おう。なに、亡くなった者達の遺族への賠償金は、食料の値段を更につり上げて回収するから気にするな。偽善には変わりないが、それで救われる者もいるだろう。紳士として、差し伸べられる手は差し伸べないといけないからね」
グラシア殿との契約でもあるからね。救えた者達は当然として、可能な限りギルドの被害者には救いの手を差しのばさねばなるまい。その方が、『闇』の使い手への印象もよくなる。人から感謝もされて、恩を売りたい連中に恩を売れる。若干金銭面的に額が大きくなるが、それもギルドに上乗せすれば良いのだ…私は何も損をしない。
「流石、レイア殿です」
「やっぱり、いい男は違うな。流石だぜ」
褒めても何も出ませんよ二人とも。
モキューー(お父様の素晴らしさが分かるエーテリア様には、この私、絹毛虫ちゃんをナデナデする権利を差し上げましょう。さぁ、抱きしめてもいいんですよ…チラチラ)
モナー(お父様は素晴らしいお方です。それが分かるジュラルド様は、私が肩もみをしてあげます。あら~、大変凝っておりますね。ほぐしがいがあります)
絹毛虫ちゃんと蛆蛞蝓ちゃんが二人を接待し始めた。二人も苦笑しながら、蟲達の接待を甘んじて受けてくれている。流石は、紳士と淑女だわ。
◇
パリーーン
「悪い、力が入りすぎた。代わりの飲み物を頼む」
ギギ(ただいまお持ち致しますね。ガラス片が片付くまで動かないでください)
報告書に書かれた内容だけで、この私を怒らせるとはギルドの奴らめ。おかげで、『ウルオール』で購入したガラスのコップを一つ粉砕してしまった。結構、お気に入りだったのだが残念だ。
ギルドが万が一の為に備蓄していた食料庫も何者かに襲撃を受けて物資が強奪された。また、そこに付けるかのように瀬里奈さんが非道にも大饑餓を飯の種にしてボロ儲けしていると流布している。救いの手を差し伸べてやっているのに、瀬里奈さんの事を悪魔と罵っているのだ。
貴様等の命綱を握っているといっても過言でない我々に対して良くもそんな大きな口を叩けた物だ。もしかして、国民感情を利用して値段交渉に挑むつもりなのか。ヴォルドー家が南方諸国連盟に対して譲歩する事などあり得ない。寧ろ、今回の一件を受けて値段を更につり上げる所存だ。
「南方諸国並びにギルドの連中は、よくもそんな事が言えますわね。物資強奪!? 『ウルオール』の大切な国民の事を言っているとするならば、それ相応の覚悟をして貰わないといけません」
「私達がこの情報を知っているという事は、お母様も既に耳にしているでしょうね。個人的な予想ですが、『ウルオール』では、今回の一件を非常に重く受け止めるでしょう。物資も金もある現状…国内では、ギルドに対して戦争をという流れになるとみてほぼ間違いないかと思われます。国民性的にも好戦的な者達が多いので」
ゴリフリーテとゴリフリーナの意見は当然だ。なんせ、救い出した者達の半分は亜人であったからね。特にエルフが多かった。その事から察するに戦争まで秒読み状態であろう。
まぁ、南方諸国連盟の国民達もギルドが主体となって血税で非常食を用意していた事は知っている。だからこそ、物資と発表する他あるまい。他国から拉致監禁してきた身分の高い者達を強制労働させ、ギルド幹部連中のサロン運営資金担っていましたなんて口が裂けても言えない。
………まぁ、一部の紳士淑女達はギルドの汚い中身を知っているから驚かない可能性も高い。
「そいつは楽しみだな。『神聖エルモア帝国』としても、この間の『聖クライム教団』との戦争時には友軍を出して貰った恩もあるのでそれを返す良い機会になるだろう。『神聖エルモア帝国』の意向がどうであれ、ヴォルドー家としてはゴリフリーテとゴリフリーナ並びに瀬里奈軍を派遣しよう」
おまけに、サロンから開放された者達が続々と帰国しているのだ。そうすれば、大義名分が周辺諸国にも出来て『ウルオール』の戦争に乗じてお零れを貰う気で行動をするだろう。勝ち馬に乗って楽して分け前が貰えるのだから小国には実に美味しいだろう。それに、大国に恩も売れる。貧しい小国は、ギルド総本山に借金をしている所もある…故に、ギルド総本山が消失すれば、借金を帳消しに出来るのだ。この流れに乗らない国は少ないだろう。
ギルドという金づるが機能しなくなれば新しい蜜に群がりたくなる国家が多くある。それを有効活用させてもらう。普段は糞の役にも立たない小国だが、こういう事には役に立つ。
「旦那様…私達がここを離れると恐らくは……」
「ギルドが無理してでもこの地を…ヴォルドー領を奪うために動くだろうね。当然、先兵として派遣されるのがクロッセル・エグザエルだろう。この領地にいる蟲達を殲滅して、ゴリフリーテやゴリフリーナを迎撃できる可能性がある存在などやつしかいない」
当然、『神聖エルモア帝国』だって面子があるので、国家の領地を奪われるような事態は許容できない。だが、ランクAが武力占拠しているとなれば動くに動けないという状況に落ちる。下手な戦力を投入しても皆殺しにされる結果が見えているからだ。
仮に占拠されたからといって、農作業に従事している蟲達を統率する事は不可能だ。それに、蟲達には万が一の事態になったら農作物をダメにした上でミントの種をばらまいて畑自体を再利用不可にするように指示を徹底している。
そうなる可能性も当然ギルドの方も考えているだろう。
だが、無理にでも強行すると断言できるのは、瀬里奈さんの存在であろう。蟲達の言葉を理解して、指示を出せる。新たな『蟲』の魔法の使い手として最有力の候補なのだと考えているだろう。ゴリフターズの対応から瀬里奈さんが私の本当の母親だという新たな可能性も見出しているはずだ。その事から行動を起こすのには十分な理由がそろっている。
要は、瀬里奈さんの身柄を無傷で押さえる事こそギルドの真の狙いに近いだろう。そのような事態になれば、ゴリフターズとて迂闊に手は出せない。無論、この私も下手はうてない。
………まぁ、瀬里奈さん本体を抑えられればだがな!!
瀬里奈さんの本体の姿を知っているのは本当に一握りだ。以前に、私が殺されかけた際にクロッセル・エグザエルも瀬里奈さんのことを見ているだろうが私の母親だとはおもっていないだろう。
だから、瀬里奈さんの擬態がギルドの手に落ちようと痛くもかゆくもない。ガイウス皇帝陛下の渾身の作品であるから、ギルドの手に渡ってしまえばガイウス皇帝陛下が悲しむ事になるのが頂けないが、万が一の場合には謝罪をしよう。
「慎重な男のようですから、私達がいては現れないでしょう。なんせ、この間と違い私達も細心の注意を払っておりますので。だから、襲撃の一報を聞いてから戦場から駆けつければ」
「それだと十中八九逃げるだろうね。奴は強いが、それでもゴリフリーテとゴリフリーナを同時に相手取れる程ではない。だが、考えようによっては脅威である奴を排除できる絶好の機会。幸い、こちらには『闇』の使い手がいる。『闇』の魔法の射程距離まで追いやればこちらの勝利は揺るがない」
ギェェ『でも、頼る気はないんでしょう? その為に、アレを作ったんだし』
そうだ、その通りだ!!
瀬里奈さんが帝都で楽しい日を送るはずだった、大切な日をぶち壊したのだ。許せるはずがあるまい。この手で確実に殺さねば気が済まない。
無論、殺すに当たり何の算段もないわけではない。
人間の域を出ない身体構造をしている相手など倒す手段はいくらでもある。まぁ、正面から殺し合った場合の私の勝率は1割にも満たない。これが、頭脳明晰な蟲達が出した。当然、お父様補正という謎の補正が掛かっている結果なので実際は更に低いだろう。
「儂か…手伝っても良いが。別に、あやつに何の恨みもないからな」
「万が一、私が敗れた場合にはお願いしますね。当然、私にも意地があるので・・・死に際に『闇』の魔法の射程距離内までは届けますので」
乗る気ではないが、『闇』の使い手も頷いてくれた。これで、保険はかけられた。
「安心しろゴリフリーテ、ゴリフリーナ。何の勝算もなく挑むほど君たちの旦那は愚かではない。性能の差が絶対ではない事を証明して見せよう」
「旦那様・・・わかりました。旦那様に恥じない成果を持ち帰る事を誓います」
「南方諸国連盟を更地にして帰って参ります」
あぁ、信じてくれ。私も必ずクロッセル・エグザエルの首を持ち帰ろう。
************************************************
いろいろと大詰めに向けてがんばるぞ~。
次話で『筋肉教団』の活躍の場も出そうと思っております。ゴリヴィエ教祖とタルト副教祖あたりも登場予定。
いろいろ長い間更新を止めてしまい申し訳ありませんでした。
だけど!! 今日からは大丈夫だ><
しっかり執筆していくお~。
********************************************
◇
ギルドとの第一回目の取引で手に入れたお金を元に『ウルオール』から大量に食料を購入した。そのおかげもあって、『神聖エルモア帝国』並びに『ウルオール』は、バブルと言っても過言で無い好景気を迎えている。
その影で苦しむ国家…主に南方諸国連盟ではあるが、誰かが儲かれば誰かが損をするのは当然の帰結。故に、同情もしない。今までギルドがやってきた事を考えれば、報いを受けるのは当たり前だ。
死んで詫びろ。
「恐ろしいくらいに順調だな。さて、ガイウス皇帝陛下からの報告書を確認しよう」
積み上げられる報告書。そのどれもが想定通りに事が進んでいることを示している。ギルドという世界の膿を排除すべく、我々の行動を妨げる者は誰もいない。ギルドに肩入れしようとしても、『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』という二大国からの圧力に屈しない国家など殆ど無い。大国である『ヘイルダム』は不干渉を貫き、同じく大国である『聖クライム教団』は敗戦の戦後処理でそれどころでは無い。
ガイウス皇帝陛下から南方諸国連盟に潜り込ませているスパイからの情報を回して貰った。そこには、現在の南方諸国連盟の状況が事細かく書かれている。食糧難や物価高騰に伴う暴動や略奪。その対策にギルド総本山から鎮圧部隊まで導入されて、多数の死者が出ているとの事だ。
ギルドが主体で配給している食料では、圧倒的に不足している。自国で食料を確保できないように『闇』の使い手と入念に南方諸国の国土を荒らしたからな。そのおかげで、輸入に頼るしかない現状だ。ヴォルドー領が販売している物資の価格を考えれば当然・・・ギルドが予定してた量の1/10程度しか確保する事が出来ていない。
他にも面白い報告が混ざっていた。ギルド幹部の親族の何名かが謎の襲撃で亡くなったとの事だ。流石に、救いの手を差し伸べた全員が事を成功させた訳ではないが、成功例が何件かあがれば御の字だ。ギルド幹部の親族ともなれば小国とは言え王族関係者が多い。そのような場所に強襲を掛けてこの成功率は高い方だ。
そのおかげで、ギルドはただでさえ少ない精鋭達を自らの親族護衛に裂かなければならないのだから実にありがたい事だ。今後の仕事がやりやすくなる。
………
……
…
「ギルドの連中は、正気なのか」
報告書を読み進めると恐ろしい内容が書かれていた。
その場しのぎのやり方としては間違っていないが、国内の批判を国外に向ける事で難を逃れようとしている。此度の南方諸国連盟の大災害を『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』の陰謀と決定づけ、国民を誘導しているのだ。物証として白い蝗を前面に押し出しているとの事だ。
まぁ、間違っていないが酷い話だ。先に手を出してきた事を一切言わずに、直面している危機を前面に押し出しての広報。
「ギルドが正気だったら、今頃こんな事態にはなっていませんよレイア殿」
「だよな。ギルドの末端の連中まではわからねーが、幹部連中はマトモなのがいねーんじゃねーか」
ジュラルドとエーテリアも呆れている。この二人も、ギルドには色々と面倒を掛けられた口だろう。私ほどでは無いにしろ、命を狙われた事だってあるだろうしね。主に、ギルドの犬になるか死ぬか選べ的な事があったと聞いた事がある。
「二人の意見は、もっともだな。あぁ…そういえば、例のサロンから救った者達に知り合いとかは居なかった?『ウルオール』出身者が多いと言うことで若干不安には思っていたんだよ」
「…身内では、おりませんでした。ただ、妹の知り合いの子が一人死亡者リストに載っていました。私も昔に顔だけは会わせた事はありましたが、残念です」
ジュラルドに妹だと!! おぃおぃ、ここに来て初耳だぞ。過去のジュラルドの肖像画から間違いなく美少女であろうが、今では関係ない。私には、愛する妻達が居るのだからな。だが、ジュラルドの妹ともなればきっと優れた者なのであろう。場合によっては、うちの義弟達を紹介するのもありか。
「そうか、もう少し早く行動を起こしていれば救えたかも知れなかったのだが、申し訳ない。その遺族には、ギルドからせしめた金でしっかりと賠償を支払おう。なに、亡くなった者達の遺族への賠償金は、食料の値段を更につり上げて回収するから気にするな。偽善には変わりないが、それで救われる者もいるだろう。紳士として、差し伸べられる手は差し伸べないといけないからね」
グラシア殿との契約でもあるからね。救えた者達は当然として、可能な限りギルドの被害者には救いの手を差しのばさねばなるまい。その方が、『闇』の使い手への印象もよくなる。人から感謝もされて、恩を売りたい連中に恩を売れる。若干金銭面的に額が大きくなるが、それもギルドに上乗せすれば良いのだ…私は何も損をしない。
「流石、レイア殿です」
「やっぱり、いい男は違うな。流石だぜ」
褒めても何も出ませんよ二人とも。
モキューー(お父様の素晴らしさが分かるエーテリア様には、この私、絹毛虫ちゃんをナデナデする権利を差し上げましょう。さぁ、抱きしめてもいいんですよ…チラチラ)
モナー(お父様は素晴らしいお方です。それが分かるジュラルド様は、私が肩もみをしてあげます。あら~、大変凝っておりますね。ほぐしがいがあります)
絹毛虫ちゃんと蛆蛞蝓ちゃんが二人を接待し始めた。二人も苦笑しながら、蟲達の接待を甘んじて受けてくれている。流石は、紳士と淑女だわ。
◇
パリーーン
「悪い、力が入りすぎた。代わりの飲み物を頼む」
ギギ(ただいまお持ち致しますね。ガラス片が片付くまで動かないでください)
報告書に書かれた内容だけで、この私を怒らせるとはギルドの奴らめ。おかげで、『ウルオール』で購入したガラスのコップを一つ粉砕してしまった。結構、お気に入りだったのだが残念だ。
ギルドが万が一の為に備蓄していた食料庫も何者かに襲撃を受けて物資が強奪された。また、そこに付けるかのように瀬里奈さんが非道にも大饑餓を飯の種にしてボロ儲けしていると流布している。救いの手を差し伸べてやっているのに、瀬里奈さんの事を悪魔と罵っているのだ。
貴様等の命綱を握っているといっても過言でない我々に対して良くもそんな大きな口を叩けた物だ。もしかして、国民感情を利用して値段交渉に挑むつもりなのか。ヴォルドー家が南方諸国連盟に対して譲歩する事などあり得ない。寧ろ、今回の一件を受けて値段を更につり上げる所存だ。
「南方諸国並びにギルドの連中は、よくもそんな事が言えますわね。物資強奪!? 『ウルオール』の大切な国民の事を言っているとするならば、それ相応の覚悟をして貰わないといけません」
「私達がこの情報を知っているという事は、お母様も既に耳にしているでしょうね。個人的な予想ですが、『ウルオール』では、今回の一件を非常に重く受け止めるでしょう。物資も金もある現状…国内では、ギルドに対して戦争をという流れになるとみてほぼ間違いないかと思われます。国民性的にも好戦的な者達が多いので」
ゴリフリーテとゴリフリーナの意見は当然だ。なんせ、救い出した者達の半分は亜人であったからね。特にエルフが多かった。その事から察するに戦争まで秒読み状態であろう。
まぁ、南方諸国連盟の国民達もギルドが主体となって血税で非常食を用意していた事は知っている。だからこそ、物資と発表する他あるまい。他国から拉致監禁してきた身分の高い者達を強制労働させ、ギルド幹部連中のサロン運営資金担っていましたなんて口が裂けても言えない。
………まぁ、一部の紳士淑女達はギルドの汚い中身を知っているから驚かない可能性も高い。
「そいつは楽しみだな。『神聖エルモア帝国』としても、この間の『聖クライム教団』との戦争時には友軍を出して貰った恩もあるのでそれを返す良い機会になるだろう。『神聖エルモア帝国』の意向がどうであれ、ヴォルドー家としてはゴリフリーテとゴリフリーナ並びに瀬里奈軍を派遣しよう」
おまけに、サロンから開放された者達が続々と帰国しているのだ。そうすれば、大義名分が周辺諸国にも出来て『ウルオール』の戦争に乗じてお零れを貰う気で行動をするだろう。勝ち馬に乗って楽して分け前が貰えるのだから小国には実に美味しいだろう。それに、大国に恩も売れる。貧しい小国は、ギルド総本山に借金をしている所もある…故に、ギルド総本山が消失すれば、借金を帳消しに出来るのだ。この流れに乗らない国は少ないだろう。
ギルドという金づるが機能しなくなれば新しい蜜に群がりたくなる国家が多くある。それを有効活用させてもらう。普段は糞の役にも立たない小国だが、こういう事には役に立つ。
「旦那様…私達がここを離れると恐らくは……」
「ギルドが無理してでもこの地を…ヴォルドー領を奪うために動くだろうね。当然、先兵として派遣されるのがクロッセル・エグザエルだろう。この領地にいる蟲達を殲滅して、ゴリフリーテやゴリフリーナを迎撃できる可能性がある存在などやつしかいない」
当然、『神聖エルモア帝国』だって面子があるので、国家の領地を奪われるような事態は許容できない。だが、ランクAが武力占拠しているとなれば動くに動けないという状況に落ちる。下手な戦力を投入しても皆殺しにされる結果が見えているからだ。
仮に占拠されたからといって、農作業に従事している蟲達を統率する事は不可能だ。それに、蟲達には万が一の事態になったら農作物をダメにした上でミントの種をばらまいて畑自体を再利用不可にするように指示を徹底している。
そうなる可能性も当然ギルドの方も考えているだろう。
だが、無理にでも強行すると断言できるのは、瀬里奈さんの存在であろう。蟲達の言葉を理解して、指示を出せる。新たな『蟲』の魔法の使い手として最有力の候補なのだと考えているだろう。ゴリフターズの対応から瀬里奈さんが私の本当の母親だという新たな可能性も見出しているはずだ。その事から行動を起こすのには十分な理由がそろっている。
要は、瀬里奈さんの身柄を無傷で押さえる事こそギルドの真の狙いに近いだろう。そのような事態になれば、ゴリフターズとて迂闊に手は出せない。無論、この私も下手はうてない。
………まぁ、瀬里奈さん本体を抑えられればだがな!!
瀬里奈さんの本体の姿を知っているのは本当に一握りだ。以前に、私が殺されかけた際にクロッセル・エグザエルも瀬里奈さんのことを見ているだろうが私の母親だとはおもっていないだろう。
だから、瀬里奈さんの擬態がギルドの手に落ちようと痛くもかゆくもない。ガイウス皇帝陛下の渾身の作品であるから、ギルドの手に渡ってしまえばガイウス皇帝陛下が悲しむ事になるのが頂けないが、万が一の場合には謝罪をしよう。
「慎重な男のようですから、私達がいては現れないでしょう。なんせ、この間と違い私達も細心の注意を払っておりますので。だから、襲撃の一報を聞いてから戦場から駆けつければ」
「それだと十中八九逃げるだろうね。奴は強いが、それでもゴリフリーテとゴリフリーナを同時に相手取れる程ではない。だが、考えようによっては脅威である奴を排除できる絶好の機会。幸い、こちらには『闇』の使い手がいる。『闇』の魔法の射程距離まで追いやればこちらの勝利は揺るがない」
ギェェ『でも、頼る気はないんでしょう? その為に、アレを作ったんだし』
そうだ、その通りだ!!
瀬里奈さんが帝都で楽しい日を送るはずだった、大切な日をぶち壊したのだ。許せるはずがあるまい。この手で確実に殺さねば気が済まない。
無論、殺すに当たり何の算段もないわけではない。
人間の域を出ない身体構造をしている相手など倒す手段はいくらでもある。まぁ、正面から殺し合った場合の私の勝率は1割にも満たない。これが、頭脳明晰な蟲達が出した。当然、お父様補正という謎の補正が掛かっている結果なので実際は更に低いだろう。
「儂か…手伝っても良いが。別に、あやつに何の恨みもないからな」
「万が一、私が敗れた場合にはお願いしますね。当然、私にも意地があるので・・・死に際に『闇』の魔法の射程距離内までは届けますので」
乗る気ではないが、『闇』の使い手も頷いてくれた。これで、保険はかけられた。
「安心しろゴリフリーテ、ゴリフリーナ。何の勝算もなく挑むほど君たちの旦那は愚かではない。性能の差が絶対ではない事を証明して見せよう」
「旦那様・・・わかりました。旦那様に恥じない成果を持ち帰る事を誓います」
「南方諸国連盟を更地にして帰って参ります」
あぁ、信じてくれ。私も必ずクロッセル・エグザエルの首を持ち帰ろう。
************************************************
いろいろと大詰めに向けてがんばるぞ~。
次話で『筋肉教団』の活躍の場も出そうと思っております。ゴリヴィエ教祖とタルト副教祖あたりも登場予定。
0
お気に入りに追加
835
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)
屯神 焔
ファンタジー
魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』
この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。
そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。
それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。
しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。
正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。
そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。
スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。
迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。
父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。
一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。
そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。
毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。
そんなある日。
『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』
「・・・・・・え?」
祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。
「祠が消えた?」
彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。
「ま、いっか。」
この日から、彼の生活は一変する。

ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~
まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。
よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!!
ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。
目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。
なぜか、その子が気になり世話をすることに。
神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。
邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。
PS
2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。
とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。
伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。
2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。
以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、
1章最後は戦闘を長めに書いてみました。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします
ねこねこ大好き
ファンタジー
新庄麗夜は身長160cmと小柄な高校生、クラスメイトから酷いいじめを受けている。
彼は修学旅行の時、突然クラスメイト全員と異世界へ召喚される。
転移した先で王に開口一番、魔軍と戦い人類を救ってくれとお願いされる。
召喚された勇者は強力なギフト(ユニークスキル)を持っているから大丈夫とのこと。
言葉通り、クラスメイトは、獲得経験値×10万や魔力無限、レベル100から、無限製造スキルなど
チートが山盛りだった。
対して麗夜のユニークスキルはただ一つ、「モンスターと会話できる」
それ以外はステータス補正も無い最弱状態。
クラスメイトには笑われ、王からも役立たずと見なされ追放されてしまう。
酷いものだと思いながら日銭を稼ごうとモンスターを狩ろうとする。
「ことばわかる?」
言葉の分かるスキルにより、麗夜とモンスターは一瞬で意気投合する。
「モンスターのほうが優しいし、こうなったらモンスターと一緒に暮らそう! どうせ役立たずだし!」
そうして麗夜はモンスターたちと気ままな生活を送る。
それが成長チートや生産チート、魔力チートなどあらゆるチートも凌駕するチートかも分からずに。
これはモンスターと会話できる。そんなチートを得た少年の気ままな日常である。
------------------------------
第12回ファンタジー小説大賞に応募しております!
よろしければ投票ボタンを押していただけると嬉しいです!
→結果は8位! 最終選考まで進めました!
皆さま応援ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。